虹村兄弟 その①
「『立』…『禁止』……?」
確か空き家だったはずの館の前に、その薄汚れた看板は立っていた。
うちの部活は試合の次の日は、部活がない。そのため、いつもより早く俺は下校することとなったのだが、その奇妙な看板を見て、歩を止めた。
「おかしい……。そうだ『入』がないんだ。本来は『立入禁止』と書いてあるはずだ」
劣化により文字が剥げたのかとも思ったが、それにしては『入』があっただろうスペースがない。
いや、それだけではない。奇妙なのは、その看板だけではない。道端にぶちまけられた植木鉢も不自然だが、何より玄関まで、いや、その奥まで続く血のようなものが、明らかにおかしい。
何かあったんだ。血は空き家に続いてるということは、何者かが空き家に潜んでいるということだ……
目を凝らし、少しだけ開いている玄関の扉の奥を見つめる。
しかし、何かが確実に潜んでいるだろうそこは、薄暗く、何も目視することができなかった。けれど、俺はこの奇妙な出来事に巻き込まれることとなる。
物音と同時に、玄関の壁を突き破り、誰かが出てきた。
学生服に見を包む、奇妙な髪型の少年。あれはリーゼントヘアーというものだろうか。実際にしているやつは初めて見た。
いや、今はそんなことはどうでもよかった。彼はさっき共に引き釣りだしてきた顔面血だらけな少年と何か話をしていたみたいだが、それが終わると、筋肉質な男を急に横に出現させたのだ。全体的に筋肉がむき出しのようなピンク色の見た目で、水色の鎧のようなものを纏っている、いかにも強力そうなやつだ。
「あれは、スタンド……!?」
俺が動揺しているうちに、少年はそのスタンドで、手刀なのかチョップなのかよくわからん動作で、倒れ込んでいる男を攻撃しようとしていた。
「おい! 何やってんだ!?」
俺はすぐに彼の動きを遮るように、声を張り上げ、少年に近づいていった。
「スタンド使い……ッ!? 康一にはもう時間がないっていうのによッ!」
少年はこちらを向くと、臨戦態勢に入る。
その額を流れる汗から、焦りが伺える。そういえばさっきも時間がないとか言っていたことを思い出した。
「待て。俺はただここを通りかかってきただけだ。お前はとても焦ってるように見えるが、何かあったのか?」
「俺のダチがピンチなんだッ! やり合う気がねぇなら、俺は先を行かせてもらうっスよッ!」
「そうはいか――」
俺は屋敷へ突入する少年を呼び止めようとしたが、言葉に詰まった。今横たわっている男に何をしようとしていたのか、訊くつもりだったが、その男の顔は、何事もなかったかのようになっていたからである。
「治って…いる?」
次回も無駄な会話はカットしていくッ!