ぶどうヶ丘高校弓道部   作:エタリオウ

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虹村兄弟 その③

「何故、アンタが?」

 

 

 少年は真剣な眼差しを向ける。その後ろでは、ここまでの道標となっていた血筋を描いたにしては、肌色が良すぎる者が、怯えた目でこちらを見ていた。

 考える。何故、俺はこの少年の力になりたいと思ったのか。

 それは少年が億泰と呼ばれた男を治したからだ。敵を治した彼が、悪人のはずがないだろう。

 そして、いま後ろで怯えている友を助けようとした、あの形相。俺はそんな気高い少年だからこそ、力になりたいと思ったんだ。

 

 

「君が……、悪人には見えないからだ。」

 

 

 しばらくの沈黙の後、少年は小さく「そうかい」と答えた。

 その後ろで、彼の友が何事も起きなかったことに安心したのか、ホッと息を吐き、胸をなでおろした。

 

 

「敵は、億泰の兄貴は、この階にいる。正直、康一を守りながら戦って勝てるかはわからない。アンタもスタンド使いなら、自分の身は自分で守ってくれ。」

 

 

 そう言ってから立ち上がり、少年はライターをつけた。

 一瞬にして、部屋の中の闇は晴れる。同時にすばしっこい何かが天井の闇の中を走ったように見えたが、すぐに隅に消えた。

 

 

「なんだよ。視認してみれば、案外パワーのなさそうなちっこいやろうじゃねェか」

「仗助くん、一体どうしたの!?」

 

 

 高校生にしては背が小さすぎる少年が、この異様な状態にようやく口を開くが、少年――仗助が、特に説明することなく、自身の後ろに下がらせた。

 

 

 そして次にその小さな何かが現れいでた時、戦闘は始まる。

 同時に、俺は驚愕した。――圧倒的既視感

 緑色の兵隊たちは、その容姿に似合わず、勇ましかった。自分よりも何倍も大きい者に立ち向かったのだから。

 少年が自身のあの筋肉質のスタンドを出現させ、兵士たちを殴りつける。二人くらい屠れたかと思えたが、多くは横に避けて、パラシュートで地に降りた。

 

 

「何だ、沢山いるぞッ! それにこの服装はッ!」

 

 

 俺は知っている。この服装を、この規律正しいスタンドをッ!

 

 

極悪中隊(バッド・カンパニー)ッ!?」

「何! 知ってるのかッ!」

 

 

 俺の反射的に出た叫びに、仗助は素早く反応した。しかし、話す暇など与えないと言うかのように、鉛玉が飛んでくる。

 仗助はほかの部屋に続くだろうドアの近くに避け、俺はその反対側へ体を動かした。

 

 

「くッ! 奥の部屋に逃げ込むしかねえッ!」

 

 

 執念深く仗助に追撃を入れるようとする兵士たちから逃れるために、仗助はドアを開けて、滑り込むかのよう入り込んで行った。

 しかし、その逃亡も虚しく、兵士たちはドアに一斉射撃を仕掛けて、木っ端微塵に破壊して、仗助たちを追いに行った。

 そう、ほとんどのスタンドは仗助たちを追いに行ったが、一人だけが、その場に佇んだままでいた。

 

 

『俺は確かに、お前に行ったはずだぜェ〜? 俺の邪魔をするようなら、俺はお前の頭を容赦なく吹き飛ばす、ってなァ〜?』

 

 

 スタンドはスタンドを通じて会話することができる。こいつ脳内に直接! というよくあるあれだ。

 それはともかく、どうやら兵隊を一人だけ残したのは、俺の頭を吹き飛ばすためらしい。あのドアを破壊したパワーを見て、サイズは小さくとも威力は本物ということだろう。

 

 

『しかし、お前のスタンドは非常に使い勝手が悪そうだが、お前(本体)は俺の弟と違って無能じゃない。だから交渉を持ちかけよう。

 その奥の部屋にいる仗助とかいうガキを射抜き、確実に殺せ。そうすれば、命だけは取らないでおいてやるよ』

 

 

 俺は知っている。仗助の能力が『治す』能力だということを。確かに後方支援としてはその能力は力となるだろう。しかし、戦闘においてそれが何になる? それに仗助が巻いていた手の包帯から見て、彼は自分の傷を治すことが出来ないのかもしれない。

 そして何よりも、虹村先輩のスタンドだ。規律正しい兵隊たちに加え、ヘリや戦車までもが備わっていた。そもそも群れ型のスタンドは数の有利があるのだ。

 この戦い、仗助が勝つ可能性は限りなく低い。

 しかし、それでも――

 

 

 

 俺は信じられる白の中に立っていたい。

 

 

「――だが断る。先輩、アンタがしてることは間違ってるッ!」

『そうか。なら、死ぬしかないなァ〜、白石ィーッ!』

 

 

 相手はたった一人の小さな兵士。しかし、それだけでもよく能力もわからない俺のスタンドでは不利であった。だが、俺には考えがあった。それほど複雑でもない、単純な考えだ。

 いくら威力が本物の銃同様でも、BB玉よりも小さい弾丸なんだ。少しくらい当たっても、死にはしないと。

 つまり俺は負傷覚悟で、突っ込もうとしたのだ。

 

 しかし、俺の歩みは止まった。緑色の兵隊が持つライフルの銃口が確実に俺の頭を捉えていたからだ。

 

 

「まずいッ!」

 

 

 医学には詳しくはないが、頭を貫かれれば死ねる自信がある。

 しかし、避けるには遅すぎた。俺は咄嗟に手で顔を覆おうとする。

 ――バッド・カンパニーが引き金を引くのが先か、俺が手で防御するのが先か。正に紙一重の差で鉛玉は俺の右手に食い込む。

 

 

『計画通りだ。俺はお前の頭に弾丸が当たろうと、手に当たろうが、どっちでもよかったんだよォ〜。お前のスタンドは弓! どんな能力かは未だ未知だが、右手をズタボロにされれば最早引くことが出来ねェからなァ?

 トドメはその後にゆっくりさせばいい。』

 

 

 正に傷一つない、完璧な作戦であると言えた。要は最初っから俺は詰んでいたということなのだから。

 けれど、やはり手で防御しててよかったかな。

 俺は左手に矢を出現させ、同時に兵士に向けて突き立てた。肉が裂けた鈍い音がする。

 

 

『な…ぜ……?』

 

 

 串刺しにされた兵士が、最後の断末魔のようにそれを嘆いた。

 それはそうだ。届くはずのない距離から、俺は矢で兵士を串刺しにしたのだから。

 

 

「スタンドは精神力。大きさが変えられるって、アンタが教えてくれたんだぜ? 先輩。」

『俺の完璧だったはずの策が……、こんなことで……ッ!

 だがッ! 右手を負傷したお前は、最早スタンドを使うことは出来るはずがない。我がバッド・カンパニーは最強の軍隊だ! 貴様も仗助も、必ず生きては返さん。』

 

 

 そうして、一人の兵士は消えていった。だが、まだ終わりじゃない。何十体もいる中のたかだか一人である。

 しかし、希望はある。

 俺は撃たれた右手を見た。俺のスタンドは矢、弓、弓掛で一つ。右手にはその弓掛が嵌めてある。

 だから助かった。弓掛っていうのは保護用に親指の部分に木が埋め込んである。弾丸はそこにめり込んでいたのだ。

 

 まだ、戦える。

 

 

 

 

 

 

 




 部活動対抗リレー、袴着てやるとか勝つ気ないよなぁ
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