心が穏やかになる温もり。俺は傷口を覆う黄色のオーラを、そんな風に感じていた。決して浅くはなく、傷穴から向こう側の景色が見えそうなくらいの重症だったはずなのに、一瞬にしてそれは治った。
「ありがとな。助かったよ」
「いいや、アンタがいなかったら危なかったぜ。そういえば、名前を聞いてなかったっスね。俺は東方仗助、アンタは?」
「俺は白石空也。呼び方は何でもいいよ」
外傷はなくなったが、戦闘が終わったからか、気が抜けてしまい、俺は若干焦げて黒っぽくなっている床から立ち上がれずにいた。
そんな時、仗助の友――広瀬康一という名の少年が、弓と矢を探しに行こうと言ったので、仗助たちは三階へと上がっていったが、俺はあとから行くと言ってこの場に留まった。
大半は精神的に疲れて、動きたくないという気持ちであるが、ちょっぴりだけ俺はここでしたいことがあった。それは先輩と話をすることだ。
「行くんですか? 虹村先輩」
もう立っているのもやっとのはずなのに、先輩は仗助たちが行った三階へと上ろうとしていた。そんな姿には、並々なるぬ執念を感じた。
「どういう事情があって、こんなことをしていたのか知りませんけど、他に方法はないんですか!」
「黙りやがれッ!」
虹村先輩の剣幕に、思わず俺は言葉に詰まってしまう。
「俺はもう、何人もの人間をこの手にかけちまってんだよ……! 今頃後戻りなんて出来るはずがねえッ!」
虹村先輩はそう言って、フラフラと階段を上がり始めた。
俺はそれを傍観するだけで、止めることもしないでいた。溜め息をついて壁にもたれかける。ここまでの疲労が目立つ。少し休もうと、目を閉じようとしたとき、誰かに声をかけられた。
「て、テメェ〜は一体、誰なんだ?」
それは億泰とかいう柄の悪い少年だった。すっかり忘れていたが、億泰の兄貴はとか、無能な弟とか会話にあったな。ということは、この少年は虹村先輩の弟…? 恐ろしく似ていない。
「俺は白石空也。お前の兄貴なら三階に行ったよ」
「よくわからねえが、ありがとよ!」
そう言って、足早に億泰は去っていった。
辺りを静けさが包む。しかし、先程までの戦闘の痕跡は確実に残っており、木っ端微塵になった窓から光が差し込んでいた。
そんな時、急に寒気がした。確信は何一つないが、どことなく悪い予感がする。俺は自身の感覚を信じ、階段を登り始めた。
「おめーらよ、この親父以外にもまだ身内がいるのかよ」
あと数段で階段を登りきれるようなところまで上がって来たとき、その声は俺の耳に届いた。俺はそれとさっきの悪い予感が重なり、焦りを感じた。
「身内……? 俺たちは3人家族――ッ!?」
その時だった。コンセントがいきなり発光し、そこから電気を帯びた派手なやつが飛び出したのだ。鳥のような、或いは恐竜のような見た目。コンセントの中から現れたところから、電気に関係したスタンド……ッ
「億泰ゥーーーーッ!!」
そんな中、虹村――いや、この場に虹村は二人いる。形兆先輩の叫びが響いた。
「ボケッとしてんじゃねぇぞッ!!」
そして、形兆先輩は自身の弟を殴った。傷つけるためではない、救うための拳。形兆先輩はコンセントの一番近くにいた億泰を殴り飛ばし、庇ったのだ。
次の瞬間、形兆先輩は血反吐を吐いた。胸から電気のスタンドの拳が生えている。
「あ、兄貴ィ〜〜!?」
簡単に形兆先輩の胸を貫くほどのパワー。俺はスタンドというものの危険さを、このとき痛感した。
『この弓と矢は俺が頂くぜェ〜、虹村形兆! アンタにこの矢で貫かれて、スタンドの才能を引き出されたこの俺がなッ!』
「……貴様…ごときが、この矢を……ッ!」
『虹村形兆! スタンドは精神力と言ったな? 俺は成長したんだよ〜! それとも、我がスタンド〈レッド・ホット・チリ・ペッパー〉がこんなに成長するとも思わないかいッ!』
「バッド……カンパニー……ッ!」
『うるせえぜッ!』
形兆先輩は自身のスタンドを出し、最後の抵抗をしようとするが、その瞬間敵スタンドの纏っている光が強くなる。より大量の電気を帯びているのだ。
「で、電気だ……ッ! 億泰くんのお兄さんが、電気になっていくよ!」
康一くんが叫ぶが、もうそれを止めることは出来ない。形兆先輩に触れようものなら、そいつも電気に変えられ、コンセントに引きずり込まれてしまうからだ。
だが策はある。形兆先輩に触れることが出来ないなら、コンセント自体を壊せばいいんだ!
『む? 弓矢だと〜? まさか、それコンセントを壊して、俺を逃げられなくするつもりなのか〜〜?』
コンセントに形兆先輩を引きずりこもうとしていたスタンドは、こちらを向いた。弓は少々、射るまでに時間がかかる。
ではなぜ、俺が既に会に入っているのか。それは俺が遅れてきたからだ。階段にいて、みんなより目線が低かったからこそ、いち早くコンセントが発光したことに気づくことができた。その瞬間に既に俺は弓を射る準備をしていたのだ。
『残念だったなッ! 俺のスタンドは成長したんだよ。矢なんて受け止められるんだよッ!』
俺は敵がなんと言おうが、関係なしに弓を射った。矢は追尾能力でコンセントに向かう。
しかし、その矢は宣言通り電気のスタンドにシャフト部分を掴まれ、止められてしまった。
『あめーんだよ〜!』
敵スタンドは完全に矢を止めた気でいた。しかし、その手から矢は通り抜けた。
『なにィ〜〜!?』
そして、そのまま矢はコンセントを破壊する。俺はそれを見届けてから、弓を倒した。
「スタンドは精神力。大きさは変えられる。シャフト部分を一度太くしてから、すぐに元に戻したんだ。当然ながら、お前の手の中には空洞ができるってわけだ。誰でもない、形兆先輩に教えてもらったことだぜ……」
コンセントは破壊され、俺が階段を塞ぎ、四方を仗助たちが取り囲む。正に形勢逆転の瞬間だった。
ッ、とか〜、とか多用しすぎかなって思い始めた。