プロローグ
「ーーー!」
...誰かに呼ばれた気がした。それに体を揺すられている気がする。流石にうるさいし、揺すられるのが目障りなのでやめろ、と言おうとした...のだが何故か声が出ない。それに体が驚くほど熱く...寒い。感覚がおかしいんじゃないか?と言われても実際そうなのだ。それに意識というか思考が中々回り始めない。どうしたものか、と体を動かそうとして
「...?」
激痛が走った。何処が、ではなく全身くまなく妙に痛い。1度知覚する幻肢痛でもあるかのように痛む、そんな感じで痛い。うつ伏せに倒れているのでせめて仰向けになりたかったが、この痛さと体の融通の利かなさから考えるにそれも無理だと理解した。と、そこまで考えて自分が起きる前に何をしていたか思い出した。そう、銃弾の嵐の前に飛び出した。では、なぜそんな特攻をかましたのか。SATの突入班の突一として違法組織のアジトに突入した。そこまでは確か、記憶の限り順調に進んでいたのだ。だが、気が付けば弾雨の前だ。それも拳銃や猟銃に使われる散弾銃などではなくアサルトライフルの殺意の塊とも言える、弾雨の前に。拳銃程度なら辛うじて弾いてくれるライオットシールドを過信した訳では無い。無謀にも自殺という訳でもない。ついでに言うとここは日本でアサルトライフルなどとは軍や警察の特殊部隊にでも入らない限り見ない代物だ。その前に飛び出した。俺がそんな無茶をした理由は理由は一つしか思い当たらない。
(人質にその凶器が向けられていたから。単純に、ごく普通に市民を守る警察官として咄嗟にとった行動...なんだろうなぁ...)
まあ恐らくこの倒れて、耳すら聞こえない体の状態から察するに、死は目の前なのだろう。少し目を開けて周りを見ると同僚が泣いていた。おそらく人質だったろう人もこちらを心配して必死に揺すったりしてくれる...が、残念ながら死の峠を超えかけているこの体では止血や意識を戻した所で9割9分9厘死ぬ。というそのまま死ぬなら意識を戻させずに死にたかったな、と思う。同僚の涙とか見てたらほら、生きたいと願ってしまうから。まあ、人質の無事が分かっただけでも俺の死には意味があると思えて安心して逝けるな、と誇らしく思ってしまう。
「ーーー!」
同僚のひとりが目を覚ましたことに気付き、仰向けに抱えてくれるが...やはりというか体が動かない。死の間際だし、美女に抱き抱えて欲しかったなぁ、と場違いというか頭おかしいだろ、と突っ込まれるような事を考える。でもだってほら、誰だって美女に抱かれて今際の際に挑みたくない?ない?......残念。
ゆっくりと、薄らとしか空いてくれない目を周囲に巡らすと大声なのか分からないが喚きながら救急班を呼んだきただろう隊長が見えた。その救急班は俺の傷を見る否や顔を顰めた。そして隊長に向け
「ーーー。ーー。」
......何を言っているのかは予想できた。周りは、あまり言いたくないが戦争の映画によくあるような血溜まりになっている。おそらくそれの血全部が俺の。ここに立っていたのは俺だけなのだから間違いない。つまり、救命が絶望的。そして無理やり救命したところで失血が待っている。死への時間の延長はできるだろうが、俺個人としては楽に死なせてもらいたい。
「ーー!」
隊長は相変わらず処置をしない救急班に怒り...いや悲痛な表情で何かを訴えていた。死ぬ身としてはあまりに冷静すぎるだろうが救急班が処置してくれないことに感謝してる。いやこうやって、思考を持たせてはいるがぶっちゃけノイズというか空白が混じり始めている。これが死の前兆とか言うやつなのか。だとしたら持つのは...数秒か、数分かもしくは今すぐなのか。だったら届くかは分からないが彼ら...いや、特に俺の死を背負ってしまう人質に対して言葉を投げかけたい。それが救いとはならないのは理解しているが、死ぬ者の義務だ。せめてこの人が前を向いて生きてくれるために言の葉に最期の思いをのせて、震えに震える口から無理やり絞り出した。もはや吐く血も無いのか、ドラマやアニメのような吐血がない。構わず力を振り絞って、人質の方を見て
「無事...で......、良かった...です。」
......これ以上紡げないか、と毒づく。可能なら同僚達にも一言遺したかったのだが...諦めよう。自然と瞼が落ちる。周りがなんと言ってるのか分からないがまだ、必死で意識を持たせようと揺さぶったりしてくれている。が、その声にならない叫びも徐々に遠くなっていく。感覚も鈍くなって、体が首から下から石のように冷たく感じられた。最初に意識を戻した時のような熱さは既にもうない。最期に意識を落とす時自然と思ったのは
(父さん母さん...それに妹も......バカな真似して逝くことを許してくれたらいいなぁ...)
だった。享年35歳。死因は人質を守って多数の銃弾を身に受けたことでの失血死。階級は二階級特進で警視正。
それで俺の短い人生は終えた。
「はずだったんだけどなぁ...」
「どうかしましたか?」
「あ、いえなんでこんなところにいるのだろう、と。」
ちょっと遠い目をしてそう答える。だって、俺は今本来ありえない場所にいるのだから。
「それは主神オーディンが私に貴方を自分のところに運んできなさい、との命令をしたからですよ。」
驚かないで聞いてください。父さん、母さん...妹よ......俺は今、北欧神話の舞台のひとつ、アースガルズにいます。いや嘘とか頭がトチ狂ったとかではなく、マジでいます。だって今、虹の橋歩いてるんです。確か名前はビフレストだっけ?そこ、歩いてます。めっちゃ道幅が広いです。そして、今目の前をあのワルキューレさんが先導して歩いています。めっちゃ美人です。銀髪です。......生前男女経験がない俺がまさかこんな美女と歩けるとは思わなかったなぁ...なんてしみじみ考えているとワルキューレさんに声をかけられました。
「...本当にどうされました?こう、年寄りが醸し出すような達観した雰囲気を貴方から感じるのですが。何かあるなら言ってくだされば答えますよ?」
あまりの衝撃に俺の精神は老人レベルに跳ね上がったらしい。
「じゃあ1つ...というか。なんで自分がこんなところに居るんです?ヴァイキングじゃあるまいし、北欧の血を引いてるわけでも別に北欧神話を信仰している訳でもないですよ、俺。むしろ日本人だから神道らしく輪廻転生やら地獄行きとか黄泉の国行きが正しいと思うんですけど。」
まあこの疑問はみんなが抱く事じゃないだろうか?神の世界がもしあったとして、日本人の俺が北欧神話のとこに招待されるのはどう考えてもおかしいのだ。日本で生まれ死んだのだから日本神話らしく黄泉の国とか、日本らしく天国とかほら、輪廻転生みたいなのするのが妥当と思います。
そんな質問にワルキューレさんは先を歩きながら答えてくれた。...こっちを見て答えてくれる辺りとても親切だ。...こんな美人さんと結婚したかったなぁ......。いやでも悲しませるような死しか俺を待ち望んでいない気がするので、やはり結婚しなくて良かった。
「その辺りの事情は私も詳細は知らされていない...としか。ですが、貴方は主神オーディンに見込まれるような心の強さ...所謂何があっても心を折らず自分を曲げない不屈の魂と、それを見合う行動をしたのでしょう。でしたら、どこの生まれであれ、主神オーディンはそういう人を好み、ここに運び込ませていますから。」
つまり何やら俺の死が勇敢で、導くに値する戦士として受け取られたようです。というか、ヴァイキング達だけではなくいろんな国からここに勇敢な死を遂げた人達がここに運び込まれているんですね...知らなかったです。まあ、それを聞いて..自分が北欧神話の主神オーディンに選ばれて嬉しい反面、ちょっとだけだが憂鬱な気分になる。ワルキューレさんに導かれるということは詰まり
「あー...ということは、もしかして俺はエインヘリャルに選ばれた、というわけで?あの...もしかしてラグナロクに参加するんですか?」
そう。死に至り、ワルキューレに認められた戦士はヴァルハラに運び込まれ、ラグナロクの際の神側の兵力[エインヘリャル]の一員になる。ヴァイキング達や、その血を引く気高き北欧の人々なら喜ぶべき事なのだろうが...日本人の俺からすればせっかく天国とかでゆっくり出来るんだろうなぁ...なんて思っていたので正直また、戦いで死ぬのかなんて思ってしまう。だが、ワルキューレさんの返答は違った。
「いえ、事情が事情なので私から申し上げて話をこじらせてはいけないので、申し上げれませんが...貴方は来たるラグナロクの為のエインヘリャルの一員として選ばれた訳ではありません。」
......?どういうことだろうか?ワルキューレさんに導かれる=エインヘリャルの一員になる、と言うのが北欧神話を少しでも知っていたら分かる一般常識だ。そうではない、ということはオーディンへの供物だろうか?やだなぁ、だって首つられて槍で串刺しですよ?そんなものの為に呼ばれたのだろうか?いやでも勇敢な死でオーディンに選ばれたんだしそれは無い...まあ可能性の1つとして置いておこう。俺の苦い表情からワルキューレさんは考えていることを理解したのか笑顔でそれを否定する。
「あ、供物とかではありませんよ?既に主神オーディンはその身を自らに捧げているのでそれ以上の供物がいりませんから。」
「......心読めるんですか?」
「異民族、異なる神を信仰し、北欧神話をかじった人がここに導かれてよくする表情ですから。エインヘリャルは、強くあれば誰にでもなれる資格はありますからね。」
「さいですか...。」
まあ、エインヘリャルになるのってバイキングだけだと思ってたからなぁ...。というか、大半の人がエインヘリャル=バイキングだと思っているのではないだろうか。先にここに来た勇敢な死を遂げた人々に同情する。...この場合俺も俺の後に来た奴に同情される側になるので、謎の先達気分になれて嬉しい。そんな話をしながら、虹の橋ビフレストを歩いていると...いた。とてもイケメンで、隣に素晴らしい毛並みの黒い馬と微笑ましい光景を広げている、あの門番が。名前を...
「ヘイムダル様。主神オーディンの使い、ただ今使命を果たし戻りました。」
「ご苦労様。それと、君がオーディン様に認められた異民族の...か。うん、僕はヘイムダル。ここの門番だ。二度と会うことはないだろうけど、よろしくね。」
馬の毛繕いから手を休めこちらに親切にも挨拶してくれるのは、ビフレストの門番ヘイムダルだ。...アメコミヒーローのマイ〇ィー・ソーとか生前よく見てたからどうしても筋肉ゴリマッチョのイメージがあるけど、本物はどうだ。めっちゃイケメンである。ヒゲとか無く、〈ザ・北欧のイケメン〉みたいな顔立ちとスタイル、そりゃ北欧随一の美しさを持つ、と言われるほどの男が嫉妬する美貌の持ち主だ。そんな彼に爽やかで穏やかな笑顔を向けられたの想像してください。きっとみんなドキッとしたりするのではないでしょうか?俺?俺も無論ドキッとして性別男だと分かっていても緊張しました。無論性癖は腐っておりません。とりあえず、ドキドキしながらも挨拶をされて返さないのは失礼なので挨拶を返す。ついでに疑問に思ったことがあるので聞いてみる。
「えと、よろしくお願いします。...それと二度と会うことはない......とはどういう......?」
それを聞いた彼は、それはもう何かを隠しているような笑みで
「ふふっ、それはオーディン様から直接聞いた方がいいよ。オーディン様はそれを告げた時の君たち人の反応に堪らなく気に入ってるようだから。」
「...北欧の主神オーディンと言えばめっちゃ堅苦しかったり嵐のような暴れん坊だったりこう...武人みたいな雰囲気醸し出す超絶イケメンの老人みたいなイメージがあるんですけど...」
パズ〇ラとか、グラ〇ルの影響でイケおじみたいなイメージが強いんです...。
だって子供の頃とかホント、パズ〇ラばっかりやってたし、その印象強いんです...。子供の頃に受けた影響って本当に長く続くんだなと思いました。けれど、そんな俺のイメージを払拭するようなオーディンのイメージがヘイムダルさんの口から出てきた。目を瞑り、顎に手を当て考える仕草をしながら、
「んー、そうでもないよ?厳格そうだけど実際話すと結構砕けて話すし、主神だからって自分の意見通しまくる暴れん坊じゃないし、それどころか言いたいことを理解するまで話してくれるし、こっちが困っていたらそれに役立つ知識を教えてくれたりするし。あぁ、当然イケメン...というか当世風に言うならイケおじだよ?それに...」
「えぇ...?」
いやそんなまさか。それじゃまるでF〇Oの新茶ではないか...。え、主神とかってこう厳格じゃないの?...いやギリシャ神話のゼウスはいろんな媒体でイケおじ風に書かれているけど中身畜生だし、まさか人に知らされていないだけでオーディンもそんな残念主神なのだろうか、と軽く悲嘆に明け暮れそうになったが、続けて紡いだヘイムダルの言葉に俺は本当に声というか何かを失った。
「結構お茶目だよ?」
「???」
この人...いや神か?神は何を言っているのだろうか。嘘でしょ?オーディンがあろう事かお茶目だなんて。
「君のその反応は面白いなぁ...もしかして自分のイメージしてたオーディン様とは違った?......呆然としてる辺り当たりのようだね。」
「いや...え?お茶目?あろう事か主神としての権限振り回す暴君とか戦の神らしく冷徹とかではなく?え?お、お茶目?」
「うん、お茶目。人を驚かしたり、あの馬鹿野郎ロキとは言わないけど知識のために嘘ついたりするし。蜜酒の話は知ってるよね?優れた吟遊詩人の為にならああいうこともしちゃうし。オーディン様、気に入った相手にはとことん物を与えてあげるんだよね。」
「お茶目どころか親しみやすいおじいちゃんってイメージ、というか神様なんですか...。」
「うん、それが一番かな。」
「なんか自分の中のオーディンのイメージが一気に瓦解しました。」
さらばパ〇ドラのオーディン。さらばグラ〇ルのオーディン。こんにちは原典。35になってようやくオーディンの本当の人柄がわかりました。というか、親しみやすいおじいちゃんが一番イメージが近いとか、誰も想像つかないのではないだろうか。
「あ、そう言えば、人の世だとオーディン様って武人とか厳格な神として書かれていたね...。うん、ちゃんと書き記さなかった吟遊詩人とヴァイキングが悪い。というか、大体ヴァイキングのイメージが悪い。」
「ですね。」
「まあ、彼らは書き記したりするの全くと言っていいほど出来ない戦闘民族だからそこに期待するのは筋違いなんだろうけどね。ヴァイキングの大半はエインヘリャルとして召集されているし。」
あの無口のイメージが強いヘイムダルさんが、ここまで饒舌に語らってくれるとは思わなかった。なのでここら辺でもう一度聞いてみよう。上手く口を滑らせてくれるかも
「おっと、君のその質問には答えないよ?オーディン様の楽しみ...というか愉しみを奪ってしまうからね?」
「心読めるんですか?」
「いやいや、さすがにそんな能力は。ただある程度先の未来を見ることが出来るからね、君が何を考えているのかさえ読めれば君が言いたい質問の未来を見ることも出来るんだよ。」
「それってつまり...」
「そういうことだね。でも僕のは望む未来を測定するような未来の選定を行うような未来視じゃない。色々な未来を見ることが出来るのさ。」
そこまでひた隠しにするのって......。
...やっぱり供物じゃないの?いや、供物じゃなくてもラグナロクの時にオーディンはフェンリルに丸呑み...もしくは噛み砕かれて死ぬ。その時の身代わり的なあれだったり、そういうのも考えれるわけで...。
「そこのワルキューレも言っただろうけど供物じゃないよ?それに君が思い描くラグナロク...黄昏は我々にとって避けようのない運命だ。その運命を変えることは無いよ。変えてしまえば、人の世は大きくズレてしまうからね。」
「......やっぱり表情で分かるんです?」
ラグナロクについては有無を言わさない雰囲気だったのであえてスルーしました。目に見えている地雷を踏むような真似は、少なくとも俺には無理だね。
そんな俺の配慮(と言うより逃げ)を知ってから知らずか...いや知ってるだろうヘイムダルさんは同じようにラグナロクについてはスルーして
「いやもう何人もが通ってきた道だからね、かくいう僕もやってくる君たちの反応が堪らない。」
なんてことを言ってくれやがりました。
「...北欧の神様たちって割と人間味が多いんですね...。あとそれにこうやってただの人間と話してくれるなんて...。」
もしこれがギリシャ神話だったら俺は確実に死んでた。だってあの神話の神様たち、大体人間=駒だもん。自分の遊び道具だもん。北欧神話で良かったと安堵する俺にヘイムダルさんは照れるように頬をかいて
「いやぁ、門番が神様に話しかけるとは何事ぞ、みたいな奴だとダメだからね。そりゃあ、敵に対しては冷徹に敵対心をもって行動するけど、親愛とか敬意を評してくれる者達にそれは失礼だろう?まあだから僕は、あくまで神とここに来る人とを分け隔てなく接しているだけだよ。」
うーん、内面までイケメン要素と来た。北欧の神随一の美しさとは肉体だけでなく心の事も指していたのか...と思う。と、先程からワルキューレさんが会話に入ってこないのでそちらを見てみると、ニコニコしていた。気になったので率直に聞いてみた。
「どうしてそんなにニコニコされてるんです?」
「いえ、こうやって神と人が話し合う、と言うのはやはり良いですね、としみじみ思っていただけですよ。」
「えっと?」
うーん、とワルキューレさんは考える仕草をする。可愛い。これは心のアルバム行きだな、と心の録画ボタンを押す。はぁ...いやほんとあの、こんな人と結婚したいなぁ!!!下心丸出しの思考だが、仕方ない。だってそれほどに美人なんですもん。釣り合う、釣り合わない以前にこういう人がいいなっていう憧れ抱いてるだけ...です多分。襲いたいとか思ってませんよ?そこでニコニコしているヘイムダルさんに殺されますし、そんなことしたら。と、俺の内心の葛藤を他所にワルキューレさんは先程の言葉を補足してくれた。
「その言葉、そのままの意味です。なにせ人は何千年も進化を遂げている存在です。不変の象徴である我々神に新たな知識、刺激を与えてくれるのは、貴方達、人ですから。」
なるほど。つまり新しい知識などが手に入ることが神様にとっては嬉しいらしい。なら、俺が話せること...主に「ジャパニーズ・サブカルチャー」とかの話でもしてみるかな?と話してみたところ...結構話し込んでしまった。時間にして小一時間と言った頃だったろうか、どこからともなく声が、まるで風のように流れてきた。
(我が使いよ......勇敢なる者の到着...まだかの?そこで話し込むのも良いのだが......儂の事、忘れてたりしないかの?)
「「「あ...」」」
3人揃ってその声に、ビクッと反応する。俺はこの声を聞くのが初めてだが...この声が誰だか一瞬で分かった。主神オーディンだ。......いや忘れてた訳では無い。断じて無い。あまりに話が盛り上がっただけなのだ。
ヘイムダルさんを見てみる。彼は苦笑いして話し込みすぎたかな...と言っている。可愛い。男じゃなければそこに萌えてた。
ワルキューレさんはと言うと、あちゃーという表情をしていた。可愛い。これも俺の心のアルバムに保存しよう。ナニに使うのかは言うまでもないだろうが。いやナニする余裕があるのは知らないけれど。
(儂のこと忘れてた?儂抜きで盛り上がった話してた?......儂は悲しい。)
本気で悲しんでいるらしく気を落としてるような感じが声から、ひしひしと伝わってくる。いやほんと武人とかのイメージが崩れたよ。ベルリンの壁のごとくあっさり崩壊したよ。
「も、申し訳ありません。すぐに連れてまいります!」
(まあ、時間なんていくらでもあるからいいんじゃよ?いいんじゃけど。忘れておったことなぞ全く気にならぬし、癪にもさらわぬが、呼んだ彼には重要な使命がある手前、色々と説明したいんじゃ。)
話をハブられていたオーディンの恨み節のある言葉の中に聴き逃してはならない言葉あったのを俺は、確かに聞き逃さなかった。なので反芻してみる。
「重要な使命...ですか。」
(うむ、エインヘリャルになる...ということより更に重要じゃな。まあそのことについては儂が懇切丁寧に話してやるから早く来るのじゃ。)
返答の時のオーディンの声は真剣味を帯びていた。つまり、本当にエインヘリャルの一員になる事よりも本当に重要な事なのだろう...。というか、どうして俺がそんなものに選ばれたのだろうか。と、後ろでワルキューレさんがヘイムダルさんの後で彫像のように固まっている黒毛の馬を借りれないか、聞いていた。
「うん、いいよ。使うといい。帰りは勝手にここに帰ってくるからオーディン様の元についたら降りるだけでいいよ。」
「ありがとうございます。では行きましょうか。」
もしかして、もしかしなくとも二人乗りですか...と問う暇もなく気がつけば馬に乗せられ、ワルキューレさんにしがみつく俺。後ろを振り返ると猛烈なスピードで遠ざかるヘイムダルさん。
当然挨拶するような時間があった訳ではなく。ニコニコとこちらに手を振るヘイムダルさんでした。
............余談だが、このせいで俺は馬に乗れなくなりました。軽くトラウマです。いやね?だって馬がレーシングカーレベルの速度出すなんて聞いたことねーです。
と、殺人的高速でアースガルズをかける馬...途中にはいろんな神様がいました。一々誰それ、と聞いていられないのですが北欧神話の神様の大半を見ることが出来た。そしてヴァラスキャールヴフ...オーディンの暮らす、輝く銀の宮殿についた。馬を降り、ワルキューレさんに連れられ...宮殿内でワルキューレさんに似たメイドっぽい人と結構な頻度ですれ違ったが、フリズスキャールヴ、オーディンがいる部屋についた。
思わず俺はこの宮殿について独りごちった。
「......デカい、輝きすぎ...。」
その独り言に、ワルキューレさんは誇らしく律儀にも返答してくれる。
「我らの主が住む場所ですから、それはもう当然かと。あなたの住んでいた日本では、こういうのは...無かったですね。」
「日本では木造建築が最先端でしたから。伊勢神宮...あー、こっちの主神格の神様が住む所も結構質素です。その代わり、こう......優しい感じの神聖さ?が漂ってますけど。」
日本で豪奢と言っても...いや確かに金閣寺はあるけども。こんなバカでかくて見る限りすべてが銀で作られて感想が、銀、銀、銀...なんていう代物はさすがにない。というか、世界中探してもないだろう。こんなものを作った日には世界の銀が枯渇してしまうのではないだろうか......そんな大きさだった。
なので、今目の前にある扉も銀色だ。どうやって入るのか悩んでいたら独りでに扉が空いた。......まさかの自動ドアか......。
「どやぁ。」
「.........。」
落ち着け、俺。この右手はこの人を殴りたがっているがダメだ。だってこの人オーディンだもん。俺の知ってる衣装きたオーディンだもん。つばの広い帽子、黒いローブ...長い髭と隻眼。いやオーディンですよね?
「..................。」
「なーに考えとるか分かるから答えるがの、確かに儂はオーディンじゃ。ん?......どうした固まりおって?この儂のあまりの神々しさに我を失ったか?」
何か言っているが、いややっぱりただの老人じゃないだろうか。だって俺の知る姿だけど...姿だけど!こんな性格とか、こんな茶目っ気出す様な神じゃ!!!
「うーん、フリーズしておるな。まあいい...お主の知る北欧神話の主、オーディンじゃよ、ワシは。」
現実を見ろ、と告げている。...まさかこの人、いやこの神がオーディンだとはなぁ...。
「はぁ......。」
「ため息とも落胆ともとれる返事やめい。と、よく連れてきてくれたな、ワルキューレ。下がって良いぞ。」
落胆するに溜息で返すオーディン。未だ気持ちを元に戻せない俺をよそに、オーディンはワルキューレに命令を下した。
「この精神状態で1人にするのはアレですが......いえ、わかりました。では失礼します。」
隣にいる超絶美人のワルキューレさんが下がっていく...あぁ、胸に顔埋めたかったなぁ。
「ほれ、そんな下心丸出しにせんと、とっとと入って席に腰掛けよ。」
「はい...。」
言われた通りにフリズスキャールヴに入る。と、同時にオーディンのことなんて気にならない程の驚きに俺は支配された。その姿に、またしてもしてやったり...という声音でオーディンが俺に声をかけてくる。
「ふ、どうじゃ?お主の期待は超えれたかの?」
「これが...万物を見通す...。」
「うむ、あらゆる世界を観測する、天文台じゃ。無論、儂専用のな。」
部屋の天井にはプラネタリウムの如く宇宙が描かれていた。いや絵ではない。動いているのだ。そして更に驚くべき事に宇宙がひとつではない。幾つもの宇宙が、そこにある。これが指すところは...別宇宙あるいは別次元があるということだ。つまり、天才ホーキングが提示した宇宙は複数ある、ということ...何説かは忘れたがそれが証明されたことになる。
「凄、い。」
「あぁ、その反応が人を招いた時の儂の愉しみじゃ。で、話をしたいのじゃが...あぁ、葡萄酒は飲めるかの?」
オーディンに話しかけられて、まだ完全に驚嘆の余韻から冷めれた訳では無いが頷く。
「は、はい。ワインならなんとか。お酒は生前嗜む程度...いや、仕事の付き合いぐらいでしか飲んだことがないので...。」
「結構。ならば少し度数の低いものを出すとしようかの。...ふむ、これならばお主にも飲めるはずじゃ。」
席を促され座る。.....神に、しかもあろう事か主神にお酒を注いでもらう、という畏れ多い行為だがオーディンは気にせず話を進める。......なんというか、変わった神様だと俺は思う。北欧神ってこんなに人と寄り添う神格だったか、と。
「神なぞ人の信仰が成り立たねば存在すらままならん者達じゃぞ。人を大切にするのは当然よ。...と、では早速で悪いが話を進めて良いかの?」
「はい。...あ、このワインとても美味しいです。」
「それは良かった。...コホン。では色々と説明が長くなるのじゃが...覚悟の程は?」
スっとオーディンの雰囲気が変わる。さっきまで陽々とした雰囲気だったのが今は剣呑な雰囲気だ。一瞥されただけで心臓にナイフを突きつけられた感覚に陥る。
「は、い。お願いします。」
「うむ。ではーーーーーー」
長かった。いや長いだけじゃない...中身が膨大過ぎた。というか、脳がオーバーヒートしている。伝えられた情報を脳が適切に処理できていない気しかしない。この体感五時間ほど俺は、人が理解する範疇に収まってない事をオーディンに伝えられた。学者やらニュースキャスターとかの意識高い系のようなわざわざ難しい単語を用いた理解し難い説明ではなく、オーディンの説明は理解しやすいように噛み砕かれていた。それでも、俺には完全に理解出来た気がしない。なので、確認を取るためにもオーディンに言ってみた。
「えーと、つまり?オーディン...さんの義弟のロキが神の監視を掻い潜ってを別世界に、自らの子供達を送り込んだ、と」
「...うむ。」
あまりの事態なのかオーディンは帽子越しに気まずそうにしている。
「その子供達というのが......フェンリル、ヨルムンガンド、ヘル...ですか?」
「...うむ。」
はあ、と溜息を吐く。最悪すぎる。最悪すぎるのだ。フェンリルと言えばこの、目の前にいるオーディンを容易く屠った神狼。恐らく最強の生物だ。
そしてヨルムンガンドと言えば大蛇...。大きさだけで言えばモン〇ンのダラ・〇マデュラサイズらしい。つまり400メートル程...まだ成長途中にあると仮定するならさらに大きくなっている可能性もあるだろう。最後にヘル...なのだが。これといった逸話がない。ヘルヘイムの主、ぐらいだろうか。
「ヘルって何かやばい逸話とかありましたっけ?」
「ニーズヘッグとガルムを従えておる。それと死者である無名であるが、それなりの強さを持つ戦士や騎士の亡霊も無数に。」
ニーズヘッグはユグドラシルの根を齧るドラゴンだ。何に怒り狂ってるのは分からないが常に怒り狂ってるらしい。ガルムは...確か軍神と相打ちになった狼だ。フェンリルとしばしば同一視されるモノだが、どうやら別物のようだ。
「それでそれが送られた世界って...」
「うむ、お主もよく知る魔法少女リリカルなのはじゃ。」
「......やっぱりおかしいですよね?なんでその世界が実在するかは置いておくとして...。なぜ、その世界にロキは子供を送り込んだんですか?」
アニメの世界が実在するとか、生前に転生物を沢山読んだ俺はもはや動じない。あって当たり前...その認識でいた方が楽だ。だが問題は別にある。なぜロキは子供をこの世界の人の世に送らず別世界に送り込んだのか、だ。それについては全く検討が付かない。が、そのことについては、悩んでいる俺に気づいたオーディンがすぐに補足してくれた。
「この世界よりもそっちの方が世界に影響を与えれるからじゃよ。」
「??どういうことですか?」
「奴が望むのは混沌。世界の破滅を愉しむ畜生じゃ。と、なれば。より影響の大きい世界を混沌へ貶めた方が奴からすれば面白いのじゃろう。なにせ、あちらの世界じゃと並行世界をひっくるめて100は下らん世界と繋がっておるからの...それが全て滅びみい。この世界にも少なからず影響が飛んでくるのは目に見えておる。」
「...なるほど。」
だが、いくら何でも人...それもただの一般人の俺に転生して倒せ、というのは無茶が過ぎないだろうか。あ、言い忘れたけどオーディンは俺にコイツらを倒して来て欲しい、と言いました。はっきり言うけど、勝てない。勝ち方が分からない。フェンリル、ヨルムンガンドなんて人智を超えた範疇にいる怪物だ。よしんばヘルの無数の戦士や騎士を相手に戦えるとしてもガルムやニーズヘッグには勝ち目がない。
と、言うかである。そもそも神が転生すればいいのではないだろうか?それこそインド神話のヴィシュヌ...だっけ?アレみたいに神が直接手を加えた方が手っ取り早い気がする。が、その思考を読んでいたのかオーディンは首を振り俺の思考を否定した。
「先に言っておくが、儂含め神は別世界に干渉することは禁じられておるからな?」
「?え、じゃあなんでロキはそんなことが出来るんですか?」
神が、別世界への干渉が出来ないとなると転生なんて以ての外だ。無論、ロキの子供も送り込めないはずだ。それも別世界への干渉に当たるのだから。
「奴が作ったレーヴァテイン...あれのせいじゃよ。」
「レーヴァテイン...確かユグドラシルのうにいる鶏殺せる剣でしたっけ?」
「それは人の世に伝わる伝説じゃ。あれの本来の役割は『鍵』じゃ。」
鍵?どいうことだろうか。レーヴァテインと言えば、俺が言ったように世界樹の頂上にいる鶏を殺せる剣だ。あとの伝説...後世の研究ではスルトの持つ炎の剣と同一のものであったり、フレイの勝利の剣であったりする。だが、この剣についての伝承は本当にこの程度だ。よくアニメとかでカッコイイ名称として使われているが実際の能力などについては全くと言っていいほど謎である。だが、オーディンはレーヴァテイン。を『鍵』と言った。アニメで培った脳をフル活用するに...
「異世界への鍵...ということですか?」
「ご名答じゃ。とはいってももう二度と使えんがな。アレは所有者が望む所へ門を繋ぐ機能を持っておった...。それゆえスルトの妻は封印しておったのだろうが......。まあ、こういう結果になった訳じゃ。」
「...恐ろしい武器だったんですね...。」
つまりロキは不正にレーヴァテインを使い子供を送り込んだことになる。だが、ここで疑問がまたしても生じる。レーヴァテインはもう使えないと言った。つまり、だ。俺はまだ決めかねているがもし、転生することになったらどうやって転生するのだろうか?
「そこは安全せい。向こうとの話はつけてある。等価交換じゃがな、向こうの1人の魂とお主の魂を交換することになった。......禁止の約定を破っての行動になるのじゃから仕方ないとはいえ、もうひとつ重いものを課せられたのじゃが、お主には関係ない事じゃ。とりあえず気にせんで良い。」
「それいいんですか?」
構わん、とオーディンは葡萄酒を飲み干しながら答える。...だが、まだ俺の疑問はある。恐らくこれが俺が動くか否か、の問題だろう。......いや、心は既に決まっている。何かを守るためなら喜んで命を差し出そう、それこそが俺の生前の正義だった。今回、この話を聞いて俺は、またその厨二っぽい正義心が疼いている。だが、迷っている。
その後押しが欲しい。
「なぜ、この世界の人じゃなければダメなんですか?...向こうの人でも倒せるのでは?」
「アレは儂ら北欧神か、北欧神の加護を受けたものでないと殺せん。神性の問題じゃ。向こうの神にも向こうの人間にも、フェンリルどもバケモノは傷一つけられぬじゃろう。だからこそ、儂はたまたま勇敢な死を遂げたお主を送りたいと思っておる。」
...オーディンは俺が欲しい答えをくれる。だが、たまたまとはなんだ。まさかよくある転生ものの、神の都合で殺されちゃったのか...?いやでもあの死は俺が覚悟した死だったし違うと思いたい。...コホン。そんなどうでもいい、過ぎたことは気にしない。だから、俺は俺が欲しい答えのために、俺の背中を押して貰うための質問をした。
「...最後に一つだけ。」
「うむ、聞くが良い。」
「どうして俺、なんですか?エインヘリャルの方が俺より強いはずです。どうして己の身を守れなかった、しがない警官...異民族を、オーディンさんは...」
なぜここまで期待するのだろう、と紡ごうとしたらオーディンに遮られた。
「確かにエインヘリャルの方が強い。それは疑いようもないことじゃ。が、それはあくまで『誰かのための』強さではない。自分のための強さじゃ。...言わんとすることは分かるかの?」
「......。」
頷けない。強さ、なんてものは結局自分の保身の為のものだ。肉体的強さは自分が強いことを示す。心が強いことは何事にも折れないことを示す。でも、それが他者のための強さに繋がることない。
「ヴァイキング達は他者の為に命は貼らない。そこが問題なのじゃ。だが、お主は『誰かを守る為に』その身を犠牲にする。......それは偽善と言われても仕方ないものじゃろうが、善は善じゃ。誰かを守る為に力を振るえる者こそ、1番望まれる強き者。...お主がそれだった、というわけじゃ。」
......。
「まだ、迷うかの?だとすれば、もう一言だけお主にかけてやろう。『名も知らない誰かがお主の助けを必要としているぞ』とな。」
「ッ!」
それだけで充分だった。もしこれを断れば、俺の生前が無意味と自分で言うようなものだ。血肉を国と国民に捧げた人生。他者のために命を張った俺を俺は否定したくない。助けを求める人がいるなら出来うる限りで助けてやりたい。だから、
「......やります。いかせてください。」
オーディンはそれを着て満足そうに穏やかに微笑んでくれた。
やることが決まった、となれば話はトントンと進む。
「まず戦うための武器じゃが...何か望むものはあるかの?」
欲しい武器は...ある。あるがせっかく異世界に転生するのだ。...化け物を殺す他にやりたいことも一つや二つ出てくるものだ。だからオーディンに聞いてみる。
「武器を決める前に聞きたいことがあるんですけど...」
「む、なんじゃ言うてみい。」
「その...物語の流れを変えていいのか、どうかです。」
「......なるほどの。つまり死する運命にある者達を救いたいのじゃな?」
「はい。それによって俺の望む武器は変わります。」
そうか、とオーディンは呟き、しばし考え事をするように目を瞑った。
魔法少女リリカルなのは...まあ、原作で死んでしまうキャラを救いたいと思うのはおかしいだろうか?せっかく介入するのだ。出来うる限りのハッピーエンドを迎えさせたい。......よく物語をハッピーエンドにしようと足掻く転生者の気持ちが、今ようやくわかった。とオーディンは目を開いて返答をくれた。
「良い。やりたいようにやって良いとの事じゃ。あちらの神としてもハッピーエンドは望むところらしいからの。」
......今の一瞬で別世界の、性格には魔法少女リリカルなのはの世界の神と通信していたらしい。何とも恐ろしい次元を超えた通信技術、あこれなのはの世界でも余裕でやれてたな、そういや。まあ、それは置いておいて。許可は頂いた。ならば、後はそれを実行するための武器をオーディンに伝えるだけだ。
「サイコフレームってあります?」
「サイコフレーム...あぁ、なるほどの...。お主奇跡を起こす気じゃな?.........まあ良い、あるとだけ伝えておこうかの。」
ダメ元で聞いてみたが、まさかのサイコフレームはあるらしい。あのオーパーツを作れるとは...
「じゃ、じゃあその...ユニコーンガンダムのアームドアーマーD.E.をですね...」
「お主盾好きじゃな。」
生前も盾が1番しっくりきてたし、俺に一番合うのは盾ってそれ1番言われてるんです。
「まあ、いいじゃろう。それとビームマグナム...じゃな?となると儂からの加護の形式は自然とニュータイプになるが...」
「待って、待って待って下さい。え、ニュータイプになれるんです?というかビームマグナムって用意できるんです?」
いや、え。出来るんですか。ビームマグナム...え?そんな簡単にいいんですか?
「出来るとも。あの程度の技術、儂らの鍛冶師がおれば余裕じゃわ。無論、あちらの世界で使う為の細工、改造はしておくがの。」
わーい、という訳でビームマグナム、アームドアーマーD.E.貰えました。...でも、どうやって持っていくんだろうか...。転生となれば1から人生を始めるものだ。いくら何でも母胎からビームマグナムとアームドアーマーD.E.を持って生まれてきた子供は...うん。想像するだに恐ろしい。
「安心せい。お主の心の中に入れておくだけじゃ。...あとお主のサポートのためにデバイスの形式はインテリジェント・デバイスにしておくからの。」
皆さん聞いてください。神様のサポートほんとやばいです。生命保険とか社会保険とかそんなの豆粒いや、米粒レベルです。武器だけじゃなく、それを扱う為のサポート要員すら用意してくれます...北欧神最高!崇めるはやっぱりオーディンさんだね!
「やっすい奴じゃのぅ...。まあええじゃろ。と、とりあえず転生するにあたり気をつける...まあ、どうせ忘れるんじゃが注意事項を伝えておくぞ?」
「?」
忘れるとはどういうことだろうか?
「まず一つ...お主に授ける力は、時が来るまで使えない。それと生前とここでの記憶もそれまで封印を受ける。」
「なるほど...つまり、赤子からヒャッハー!は出来ないと。」
「端的に言えば、そういうことじゃ。それにお主の力は対フェンリルなどのイレギュラー用のものじゃ。無闇矢鱈に力を使わせない為の保険と思って構わぬ。奴らが動き出した時こそ、お主はその力を存分に振るう時じゃからの。」
なるほど、つまりあまり物語を変えないためのものなのだろう。これは大きなハンデだが...封印さえ解ければいつでも力の行使は可能とのこと。つまり、奴らが動き出した時から俺は力の行使が自由に出来るということだ。...改めて見て特に問題ない制約だ。
「うむ、これは向こうとの神との約定じゃからな。まあ、奴がいつ動くかは分からぬがさして問題にはならぬものじゃな。それと2つ目、じゃが。」
「?」
オーディンが気まずげに目をそらす。...露骨すぎてあれだが、とりあえず聞いてみる。
「どうしたんです?」
「いや、その2つ目なんじゃがな?神の加護を受ける代償として、そのじゃな?......面倒ごとに巻き込まれやすい...体質というか運命を持つことになるのじゃ...。」
「あぁ、よくある...。でもわかりました。要するに助けを求める人が、自然と俺を引き寄せるってことですね?」
「うむ。」
「でしたら、問題ありません。その問題事にいる人も助けて見せますとも。」
人を助けることが俺のアイデンティティだ。面倒ごとに巻き込まれるのは上等、巻き込まれて渦中にいる、助けを求める人を助けるのなんて当たり前だ。覚悟は決めた。だから、仕事の為の表情をする。...が、オーディンはそれを見て
「そんな固くせんでもええじゃろ...。まあ良い、他に聞くことはあるかの?無いのならばもう送ろうと思うのじゃが。」
無い、と答える。と、オーディンは席を立ち部屋にある魔法陣へ向かった。俺も席を立ち向かう。
「では、用意は良いかの?いつ記憶が戻り使命を背負うかは分からぬが......必ずや全うせよ。」
「はい、お任せ下さい。必ずや、全うしてきます。」
「うむ。......ではな、在り来りじゃが祝福がお主にあるように願っておる。」
「ありがとう、ございます。」
最期の挨拶はそれで終わり。オーディンはどこからともなく取り出した杖を構える。
「今生の別れ...というか、もう二度と会うことは無いじゃろうが。さようならじゃ、未来の勇士。」
魔法陣に光が溢れる。
「ではなーーーー」
光が視界をも完全に遮った時......俺の意識は暗転した。
はい、という訳で主人公はユニコーンガンダムの武装をデバイスとしています。流石にアームドアーマーD.E.だけでは決め手にかけるので仕方なくビームマグナムを持たせました。
ちなみにこれが登場するまで残念ながらあと何話か挟みます。
バトルを楽しみにしてくれる人はごめんなさい。もう少しだけお待ちください。