(祝・一周年)転生したらエボルトに乗っ取られて勝手に色々されてた件   作:スカーレット@エボルト憑依中

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三人の想い。……自分の、正義は。

「っ……たば、ね…?」

 

お兄ちゃんが目を見開いて驚いているが、篠ノ之束は気にせずに続ける。

 

「うん、りゅーくんの束さんだよ。

…まずは……なんでこんな事に?」

 

篠ノ之束が聞くと、お兄ちゃんは目を逸らしながら話し始めた。

 

 

「……杏は知らないと思うが、父さん達から話を聞いて出ていった後の話だ。

 

俺が一人で外にいると急に二つのボトルが追加されたんだ。

二人は見てなかった…このラヴァーボトルと、何度か見せたヴィランボトル。」

 

すぐに空中投影ディスプレイを出現させ、二つのボトルを出して見せてくる。

 

「……二つのボトルが、追加された?急に?」

 

すると篠ノ之束は表情を変え、お兄ちゃんに聞く。

 

「ああ、そうだけど……それがどうかしたのか?」

 

「……ううん、なんでもない。続けて。」

 

そう言って笑うが、どこか気にしているような感じだ。

お兄ちゃんもそれに気付いてはいるだろうけど、圧力に負けたように続ける。

 

「…それで、このヴィランボトルを手に取った途端に悪意や狂気のようなものに襲われて…気付けば、俺は…

 

……人が死ぬ所を見るのが、壊す事がどうしようもなく楽しくなって…所詮、俺もエボルを悪の為に使ってたんだ。

 

力を手に入れて、舞い上がってたんだよ。

 

俺は……偽善者の偽りのヒーローでしか、ない。」

 

拳を握り締め、下を向いて震えた声で呟いている。

その拳は、透明な雫が一つ、また一つと落ちて濡れていた。

 

「……」

 

篠ノ之束は何も言わず、お兄ちゃんに近付く。

 

「…りゅーくん。」

 

「…たば…っ…!!」

 

お兄ちゃんが顔を上げると、篠ノ之束は力強くお兄ちゃんの頬を叩いた。

 

「…馬鹿、言わないでよ…

 

だったら、りゅーくんは今まで壊す為に戦ってきたって言うの?

 

助けを求めて、泣いてる人達の為に戦ってきたんじゃないの?

 

私はそんなの、許さない。

私は、桐生さん達はそんな事のためにライダーシステムを創ってきたんじゃない。

 

目の前で失いそうな命を守る為に、誰かの明日を守る為に創ってきたんだよ。」

 

篠ノ之束はお兄ちゃんの頬に手を当てて、震えた声で続ける。

 

「だから、私は…りゅーくんがエボルで誰かの…明日を、創れるって……信じてる、から…」

 

篠ノ之束は堪えきれずに、お兄ちゃんを抱き締めて涙を流し始めた。

多分、こいつも分かってる筈なんだ。

 

仮面ライダーになったからこそ、罪を犯してしまったお兄ちゃんの気持ちが。

いつも皆を笑わせるように振る舞っていたお兄ちゃんが、自分の気持ちを押し殺していたのが。

 

転生前も、お兄ちゃんの弱さと強さを沢山見てきた。

 

お兄ちゃんは、昔から人の笑った顔が大好きで。

仮面ライダーになる事とは違う、『もう一つの夢』を小さい頃にいっぱい語ってくれた。

 

だけど、私もお兄ちゃんも仮面ライダーになって、大勢の人々の明日を奪ってしまった。

 

いくら後悔しても、いくら謝っても、その事実は変わらなくて。

 

だからこそ、お兄ちゃんの気持ちが痛い程分かる。

 

気付けば、私も涙を零していた。

 

 

 

 

 

「……」

 

杏も、束も、涙を流している。

 

泣いて欲しくなかった、笑っていて欲しかった。

 

だけど、俺が招いたのはこの結果で。

 

「…俺、は…誰も死なせずに、誰も殺さずに……皆の、明日を創りたかった…皆の、笑っていられる明日を守っていたかった…なのに、俺は…っ…」

 

子供の頃から憧れてた、どんなに傷付いても、どんなに苦しくても皆の為に戦っていたヒーロー。

 

俺ならこうする、俺ならこんな事はしない。

 

なんて、偉そうに考えていたけど、実際には上手くいかないことばかりで。

 

誰かの真似事をし続けては、自分のやりたい事も自分自身の正義も持つ事はできなくて。

 

自分というものは、最初から無くて。

 

「…お兄、ちゃん…私、ね…今の目的が終わったら、罪を償おうと思ってるんだ…どんな事を言われても、どんな罰を与えられても…私は、喜んで受け入れよう、って…

…だから、お兄ちゃんもきっと…やり直せる筈だよ。

これ以上誰も死なせない為に、誰かの、為に……」

 

「…そうだよ…りゅーくんは、諦めないって…皆の明日を創る為に、また戦えるって…信じてる、から……だから…」

 

優しく抱き締めてくれる二人は、とても暖かい。

昔持っていた夢を、ふと思い出す。

 

 

「ねーおにいちゃん、おにいちゃんってかめんらいだーになるいがいにしょうらいのゆめはあるの?」

 

「夢?…そうだなー…

 

俺は、皆の笑顔を守っていたい。

皆が笑って過ごせる明日を、つくっていけるような……そんな奴になりたい。」

 

「わぁ…!おにいちゃんかっこいい!」

 

「そんな事ないって、俺だってかっこ悪い所はいっぱいあるんだぞ。」

 

「…じゃあ、わたしはおにいちゃんをまもれるようになる!

おにいちゃんがみんなのわらったかおをまもって、わたしがそのおにいちゃんをまもる!」

 

「……ははっ、じゃあ杏は誰に守ってもらうんだ?」

 

「んー……わかんない!」

 

「なんだそれ。」

 

「「…あははは!!」」

 

 

そうだった。

俺、夢を持っていたんだ。

 

ただ、笑っていられる毎日が欲しくて。

 

皆が笑っていられる、そんな明日を守って、創りたかったんだ。

 

 

なら、俺はもう一度やり直したい。

 

エボルが正義の為に、皆の笑っていられる明日を創れる、ライダーシステムの一つになれるように。

 

皆の笑顔を、守る為に。

 

 

瞬間、俺の右手に握られていた狂気や悪意の塊は光を放ち始める。

 

力強く、優しい。

そんな光を。

 

「……」

 

光が収まり手を開くと、そこにヴィランボトルは存在していなかった。

 

先程まで湧いていた悪意や狂気は完全に失われ、代わりに勇気や力が湧いてくる。

 

不思議と、涙は止まっていた。

 

 

「…ごめん、杏、束…ありがとう。」

 

俺はボトルを両手に握ったまま、二人を抱き締めた。

力強く、優しく。

 

 

 

「…はは、久しぶりに泣いちゃった…」

 

「これでまた同じ事になったらクリティカルストライクだからね!」

 

「絶対同じ事にならないって誓うからそれは勘弁してくれ。」

 

ここにいる全員が、笑いながら涙を拭う。

 

そして、杏が小さく呟いた。

 

「…じゃあ、私も教えないとだね。

 

私の、転生する事になった理由。」

 

その言葉を聞くと、束と俺は同時に杏の方を見る。

 

「……私ね。

 

転生する時、自殺したんだ。」




「自意識過剰でナルシストな正義のヒーローの息子」を理由として戦っていた龍兎は、自分自身の戦う理由を見つけました。

そろそろNGシーン集とか番外編出したい(台無しにする一言)

これからの更新について

  • 特訓回を本編に入れる
  • 特訓回を番外編にして修学旅行編を更新
  • なんでもいいから更新しろ♡
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