Write to reach you ~希望の暁~ 作:けんごち
神などいない――何度その言葉を心の中で呟いただろうか。妻が病気に倒れたとき、担当の医者がもうどうしようもないと言ったとき。それ以外でも数え切れない。
日々痩せ衰えていく妻の姿を見るたびに、私は顔で笑って、心で呪った。何度も何度も祈ったのだ。神に救いを。神が本当にいるのなら、妻のような人間が天に召されるわけがない。この世から消えるべき人間は他にたくさんいる。
私は敬虔な人間であったと思う。魔導士としての才能には大して恵まれなかったため、学校は出たものの魔法を活かすような仕事には就けなかった。だが、それはそれでかまわない。魔法の才能など、持たないものが大半だからだ。
私は花屋で働かせてもらう傍ら小説を書き始めた。特に低俗と呼ばれるようなエンタテインメント小説を好んで書いた。異形の怪物、幽霊、悪魔……子供のころから、そういった存在に心惹かれていた。魅入られていた、と言ってもいいのかも知れない。私が魔導士として大成できなかったのは、それも理由の一つだと思う。高尚な魔術書に描かれる物語には、私は全く興味を持てなかった。
妻とは、花屋で働いていたときに出会った。私の素人くさいホラー小説をおもしろいと言ってくれて、彼女自身が収集した不思議な話や怪談などを語って聞かせてくれた。不思議な伝説がある街の話を妻がどこからか聞いてきて、二人で取材旅行にも出かけた。そして、私が執筆に集中出来るように、と彼女は私の生活を支えてくれて、いつの間にか妻になっていた。
私は神に感謝していていた。この全ての巡り合わせに、神の慈悲を見ていた。しかし、それは間違いだった。神などいないのだ。私の祈りなど、誰にも届くことなくむなしく虚空に消えただけだったのだ。
もう動かなくなった妻の体を見つめ、私は思った。神などいないのなら、神の名の下の禁忌など意味はないと。人はそれを神に逆らう行為だと言う。しかし、それは間違いなのだ。神など存在しないのだから、それに逆らうも従うもない。
しかし、私は失敗した。二つの長い牙を見せてこちらへと向かってくる妻であった妻ではない何かに、私はもう一度死を与えた。妻の二度目の死に、私の中の何かも同時に死んだ。
そして妻の血に染まりながら私は悟った。やはり神などいないのだ。――ならば、神を創り出せばいい、と。
*
「何か問題でもあったか?」
無機質に響くフィリップの声にジョナサンは我に返った。
「いや、なんでもないよ。ちょっとばかり感慨にふけっていただけさ」
「……私としては別に問題はないが、時間を掛ければ掛けるほど我々としては不利な状況になる恐れがある。事は迅速に進めることをおすすめする」
「わかってるよ」
ジョナサンはフィリップに向かって苦笑いを浮かべる。フィリップ相手に愚痴ってもしょうがないことだが、やはり融通が利かない男だ。
「禁域の中にあるものまで魔法でセキュリティを施してあるわけではないね」
「ものにもよるが、迂闊に魔法を掛けて何が起こるかわからない。物理的に鍵を掛けて魔法力を遮断し保存するのが、もっともよいやり方だ」
「なるほどね。ま、そのおかげで私たちはこうして簡単にお目当てのものを手にすることが出来たんだから、その点については感謝だね」
ジョナサンは唇の端を伸ばして笑ってみせる。そして、禁域の一番奥へと向かって進む。
「確かにフィリップの言うとおりだ。探すのに骨が折れるかと思ったけど、なんのことはない、すぐに見つかったね」
ジョナサンは禁域の一番奥、周辺に何もなくただ真ん中にぽつんと置かれたチェストを指さす。フィリップが言うように、魔法力同士が干渉することを恐れるというのなら、そこにあるのはこの禁域の中でも最も恐れるべきもの――つまりアカシックレコードに違いない。
「鍵がかかっているが、この程度、魔法を使うまでもない」
チェストに近づいたフィリップは、引き出しの口を閉ざしている南京錠の裏表を確認した後、それを無造作に引きちぎる。
「強引だね」
茶化すようにジョナサンが笑いかけると、フィリップは不思議そうにジョナサンの顔を見上げた。
「魔法を使ったとしても、私の場合、この南京錠を切り落とすことになる。引きちぎっても鍵を破壊して開けるという点では変わらない」
「そうだね。まったく、本当に君は頼りになるよ、フィリップ」
「……私は元よりそういう存在だ」
何の感慨もなく言ってのけると、フィリップは引き出しを開け、その中から一冊の古びた本を取り出す。
「アカシックレコード。もっと分厚いものかと思ったけど、片手で収まるほどとは」
「……いや。形は小さくても、とんでもない圧縮率で情報が圧縮されている。確かにこの技術は、現在の社会には存在しないものだ」
「さすがは『神の啓示』といったところか」
含み笑いを浮かべながら、ジョナサンはそれを受け取る。
「ついに……手に入れたぞ。あとは悲願を達成するのみだ」
受け取ったアカシックレコードの重みを確認した後、ジョナサンはそれを再びフィリップに戻す。
「さぁ、始めようか、フィリップ。このロンドンの全ての人間を生け贄に――私たちは神を生み出そう」
フィリップは頷き、ゆっくりと口を開く。
*
魔導協会へと向かう光正、サム、チャックの三人。グリーンパークから協会までの距離は、徒歩で十分程度。走れば五分もあれば到着する。今日一日歩き回って疲れていた光正ではあったが、ここが最後の踏ん張りどころとばかりに必死に足を動かす。
そして三人は魔導協会の建物の前までたどり着いた。入り口の扉、その鍵が破壊されている。そのことに気づいたチャックは息を呑み、事態が悪い方向へと進んでいることを察した
「鍵が、壊されている」
「……こんな鍵などないも同然ということか。すでにジョナサン達は中に侵入しているとみるべきだろう」
光正は驚愕に口を開き、サムは目を眇める。
「きっと、テューダーさんやウィローハウスさんがここに来てくれているはず。大丈夫」
チャックは自分に言い聞かせるように、一人言を呟いた。そのときだった。協会の建物が激しく揺れ始めた。
「じ、地震か!」
思わず光正が叫んだ。日本出身の光正は、これまで何度か地震に遭遇したことがある。目の前の光景は、そのときに建物が揺れ壊れていく様子と似ていた。しかし、サムとチャックはお互いの目を見てから周囲を見回す。
「いや、違う。見ろ。あそこの木々は揺れていない。揺れ動いているのは、この建物だけだ」
サムは自分たちがやって来た公園の方向を指さす。確かにサムの言うとおり、風も凪いでおり、木々は真っ直ぐに立っているままだ。
建物の揺れは激しさを増す。壁のレンガが崩れ落ちはじめ、周囲に土埃が舞う。ただの揺れではない。これは崩壊の前兆だ。
「危ない!」
チャックは叫び駆け出した。しかし、その動きはサムがチャックの右手を掴むことにより止められた。
「何をしようとしている! 崩壊の危険がある。今は中に入るべきではない」
「しかし!」
サムを振り返ったチャックの表情には、普段の彼からは想像も出来ないような焦りが見られた。
「この中には、私の同僚がいるかもしれない! このままでは彼らは建物の下敷きに」
「落ち着け。今、俺たちに出来ることはない」
サムが冷静にチャックを諭す。
「それ以前に、この建物が崩壊するなら、近くにいる僕たちも危ない! ここから離れるんだ!」
光正もチャックに向かって手を伸ばし、その体を引く。
「しかし、私の同僚達が!」
「チャック! 君の同僚なら、君のように優秀な魔導士なんだろ?」
「優秀……確かにそうではありますが」
華やかで冗談と悪戯が好きなテューダー。いつもふざけているようでつかみ所のないウィローハウス。二人とも、生真面目なチャックとは全く性質の異なる人間だ。堅物と呼ばれるチャックにとっては、お互いやりにくいところも理解できないところも多々あると思う。しかし、魔導士としての実力については、チャックはこの二人に対し一目を置いている。
「なら、彼らを信じて、僕たちは僕たちのことを!」
不承不承ながらもチャックはサムと光正に従い、元来た道へと戻っていく。その間にも、建物の外壁は崩れ落ちていき、崩壊が進んでいく。
「……一体何が起きているというのだ? しかも、この巨大な建物を壊さんばかりのエネルギー。これが魔法で生み出されているとしたら――まさか!」
「どうしたんだよ、チャック!」
呆然とした様子で壊れていく建物を見つめるチャックの肩を光正が揺する。
「アカシックレコード……奴らはアカシックレコードを手にしたのか!」
チャックは揺すられている肩を気に掛けることもなく目を見開き叫んだ。
禁域の鍵を奪われた時点で考えられる最悪の事態。それが、アカシックレコードがジョナサン達の手に渡ることである。
「そのアカシックレコードってなんだよ!」
光正が叫ぶようにして尋ねた。
「アカシックレコードとは、元始からのすべての事象が記録されているというものです。私自身もただのおとぎ話としか思っていませんでした。実際に協会の検閲官になるまでは」
半ば呆然とした様子でチャックは語った。もしもジョナサン達がアカシックレコードを手にしているとしたら、テューダー達はどうしたのだろうか? チャックから禁域の鍵が奪われた時点で、彼らはそれに気づいているはず。ここへ到着するのが間に合わなかったのか、それとも――
「……平たく言ってしまえば、魔法における最強のアンプリファーだ。何せ全ての記録を言葉として持っているのだからな。しかし、まさかそれが実在するとは。あまりにも突拍子もなさすぎて、それが存在することを考えたことすらなかった」
サムもまた何も出来ないまま崩壊していく建物を見つめる。ただの魔法を用いた戦闘なら、サムにもそれなりに自信はあった。しかし、もしも本当にアカシックレコードがジョナサン達の手に渡ったとするなら――事態は相当に問題のある状況だ。
「協会内でも誰も触れたことがない禁忌なのです。しかし、なぜ……鍵は三つなければ扉は開かないはず。そして、テューダーさんやウィローハウスさんにも私の鍵が奪われたという知らせは行ったはずなのに、どうして」
うなされるように呟きながらチャックはよろめく。
「――なんとなく状況がすごく危機的なことはわかったけど、悩んでいたって何も解決しないだろう! チャック! 気をしっかり持て! アンタはロンドンの秩序を魔法で守る検閲官だろ! 今こそアンタの踏ん張りどころじゃないか!」
「ロンドンの秩序を守る検閲官……」
「何が起こるかわからないけど、きっと何かが起こる! 僕たちはそれに立ち向かわなくちゃいけない! 落ちこぼれ魔導士の僕ですらこうして勇気を振り絞っているんだ! アンタがしっかりしなくてどうするんだよ!」
「……まったく、赤星さん。貴方は好き放題言ってくれますね。確かに貴方の言うとおり、私はロンドンの秩序を守る検閲官です。私が先頭を切って立ち向かわねば」
チャックの心に熱い火が灯る。もともと怪物になりかけていたところを拾われた今の命だ。それに――何が起こっていたとしても、テューダーならこう言ってくれるだろう。てめえの使命をしっかりまっとうしな、と。
「……ふっ。なかなか言うじゃないか、光正」
「魔法じゃ、僕は役に立てないからね」
言いながら光正は崩壊していく建物を睨みつける。その姿を頼もしそうに見つめると、サムは一歩前へと出た。
どうしてこんなところにいるのだろうか、とサムは考える。もともとはチャックに禁書執筆の疑いを掛けられ、それを晴らすためだった。同時に、リオたちの暮らすこの街で、怪物達が闊歩しているという事実も許せなかった。全ての因縁は、サムが代筆屋となったときから始まっていた。ではなぜそもそも魔術書の代筆などを始めたのだろうか? そう、その答え――サムが最も望むものは。
「俺は……俺が何者なのか知りたい。こんなところで立ち止まるわけにはいかないんだ。ペンは剣よりも強し……代筆屋サムの妙技、見せてやろう」
サムが懐の魔術書に手を伸ばした瞬間、魔導協会の建物が獣の断末魔のような音を立て土煙を巻き起こしながら完全に崩壊した。
「なんということだ……」
あまりにも現実離れした光景にチャックが呟いた。
「待って。あの土煙の中、何かいる!」
光正が崩壊した建物を指さす。もくもくと舞い上がる土煙の中、一つの大きな影が揺らめいていた。
「……なんだ、あれは。まるで、鯨のような」
少しずつ薄くなっていく土煙の中で『鯨』の姿がはっきりとしていく。そして月明かりの中に浮かぶその姿は、三人を驚愕させた。
「な……なんだよ、これ」
「まさか……こんなことがありうるのか」
「……あれは、戦艦か」
三人が見つめているもの。それは夜空に浮かぶ巨大な戦艦の姿であった。
*
――鋼鉄の鯨が、海から顔を出す。それは産業革命の裏で誕生した、人造の海獣だった。それはまるで海を泳ぐようにゆっくりと空へ舞い上がり、月を覆い隠した。
「想像力は万能だ。時に現実まで変えてしまう力がある」
フィリップのゴーグルの奥の瞳がロンドンの街を睥睨する。魔導協会を破壊して飛び立ってから、高度は上がり続けている。
「魔導協会の建物からこんな戦艦が作り出せるとは! さすがだよ、フィリップ!」
ジョナサンが愉快な気分で笑っている。しかし、相変わらずフィリップは褒められても表情を変化させない。
「ハハハ! ロンドンがまるで小人の街だ! フィリップ、もっと高くだ。月より高く!」
ジョナサンは大きく右手を呷った。すでに高度はロンドン塔をも超えている。ロンドンの街を見下ろす――これは、かつて誰もたどり着けなかった高さだ。
「これが超未来の科学力……これがアカシックレコードの力……フフ、実に興味深い」
珍しくフィリップが表情を崩した。
アカシックレコード――そこに納められている現在過去未来全ての事象は、アカシックレコードを世界の全てが詰まっている究極の魔術書たらしめている。全ての叡智、それをもってすれば鋼鉄の軍艦を飛ばすことなどわけもないこと。そして――全知全能の力はきっと神ですら生み出せる。
*
光正達三人は、ロンドンの空へと向かって浮かび上がっていく軍艦の姿を見上げることしか出来なかった。軍艦の影が月明かりを覆い隠し、まるで闇に地上が飲まれていくようだ。
「鋼鉄の戦艦が空を……? あれでは追跡などとても……」
呆然とした様子でチャックが呟く。ジョナサン達がアカシックレコードにたどり着いた可能性を考えた時点から、ある程度覚悟はしていた。しかし、この状況はチャックの予想を大きく上回っていた。イギリス海軍ですらこんな巨大な軍艦を持っているのかどうか、そんな代物が高く宙に浮いているのだ。
チャックは腹をくくった。もはや体裁などどうでもいい。とにかくなんとしてでもここで奴らを食い止めねば。
チャックは数歩歩き、サムと肩を並べる。
「……代筆屋、ジョナサンの拘束に協力してくれませんか」
チャックは敢えて『代筆屋』と呼んだ。必要なのは『サム』という個人ではなく、『代筆屋』としての力であることをチャック自身が意識するために。
先ほどグリーンパークでは、サムと光正の力は借りないと言っておきながら、なんと言う体たらくだ、とチャックは思う。しかし、チャック自身のみの力では、ジョナサン達に対抗できないのは明白であった。
「怪物騒ぎの真犯人も彼です。君への容疑は晴らすと約束する……頼む」
チャックは敢えてサムの潔白を証明することを口に出した。疑うだけ疑って、追い回して、それでいざとなったら協力を仰ぐなんていうのは虫がよすぎる。せめてここでサムに対してせめてもの誠意を見せねば、と考えた。容疑を晴らす、それが不器用な彼なりの精一杯の誠意であった。
しかし、サムはそんなチャックを一瞥して軽く鼻で笑ってみせる。
「ふっ。今さら改まって何を言うかと思えば」
「……申し訳ない」
チャックは申し訳なさそうに顔を伏せたが、その肩を光正が叩いた。そして、チャックに向かって、気にするな、とばかりに笑ってみせる。出会ってからまだ数時間しか経っていないが、サムという男の人となりはなんとなくわかっている。無愛想で傲慢でとっつきにくいように見えるが、突拍子もない発想で逃げるついでに観光案内というような妙なことをやるような男で、意外と親切でもあり――つまりは信じていい。
「……俺もこのままロンドンが滅茶苦茶にされるのは癪だ。連中を追うぞ」
案の定だった。サムはさも当然のように言ってのけ、空に浮かぶ戦艦を睨みつける。そして魔術書を開く。
――それは銀河を渡る鉄道でした。地球を出発し、まずは月へと向かいます。この宇宙にある一つ一つの星が駅なのです。機関車は星の砂を燃やし、星のかけらを煙突から出します。そうしてこの列車は宇宙を走り、それは遙か遠く蠍座の一等星までも走るのです。
サムが魔法を詠んだ。柔らかい光の粒が光正達の目の前に集まり、それが一つの形を成していく。
「うわぁ! これは……空飛ぶ汽車? サムの魔法で創り出したのか?」
光正の目の前に現れたもの。それは汽車だった。煙突からはもくもくと煙が上っているが、不思議とそれを煙たいとは感じない。鼻につく石炭が燃える独特の匂いもしない。
「あれも人が生み出した物語だ。代筆屋の俺が書けない道理はない」
なんでもないことのようにサムは言った。代筆屋としての矜持。この世界に存在するどんな魔法でも、彼に代筆できないものはない。
「……ちょっと待ってサム、まさか……汽車ごと戦艦に突っ込むつもり?」
呆然と汽車を眺めていた光正だったが、すぐにサムの目的に気がついた。遙か上空に浮かぶ戦艦。ジョナサン達を捕らえるには、まずはあの戦艦に乗り込まなくてはならない。
「なんという力だ……。まさか、アカシックレコードで生み出された魔法ですら、代筆してみせるとは」
驚愕を隠さずにチャックが呟く。代筆屋としての彼に協力を求めたのは自分であるが、ここまでやるとは想像すらしていなかった。
「なにをやっている。さっさと追うぞ」
先頭を切ってサムが汽車の運転室に乗り込む。慌ててチャックがそれに続いた。
「……僕もついていく! 僕だって魔導士のはしくれだ」
光正も叫び、二人の後を追う。
「それに……魔導書を書いてもらうまでアンタから離れないって言ったろ!」
光正が運転室に飛び込む。その姿をみて、サムはどこか愉快そうに相好を崩して見せた。
今まで代筆を頼んできた人間はそれなりにいた。しかし、光正ほどしつこい者については全く心当たりがない。魔術書を代筆してもらうために、わざわざ日本からロンドンまでやって来た日本人の落ちこぼれ魔導士。しかし、その情熱と根性は、サムがこれまで見知ってきたどの魔導士をも上回っている。
「……フッ、勝手にしろ。さぁ、反撃開始と行こうじゃないか」
サムが魔術書に力を込める。汽車は大きく汽笛を鳴らし、空へ向かって真っ直ぐに登っていく。