「しかし、龍歴石が認めたからと言え人選に問題があるのでは?」
フェルトが王候補である事をラインハルトが証明した瞬間、一人の貴族が不服を示した。
「我々騎士が、人選を見誤ったと?」
その貴族に対して近衛騎士団団長のマーコス・ギルダークが質問し他の騎士達も一斉に貴族の方に顔を向けた。
「何か不穏な空気になってきてるぜ・・・」
「ま、俺は別に気にしねぇけどな」
「フェリちゃんも別ににゃんとも〜。だって、フェリちゃんの忠誠はもうたった一人に捧げちゃってるわけだし〜」
「私も同じだよ。既にアナスタシア様に剣を捧げている」
皆それぞれの主に忠誠を誓っている事を示し、スバルも気持ちではここにいる者達に負けていないと思っている。
そうしている間に貴族の方でフェルトが王候補である事に対して不満を口に出し始めた。だがそれを賢人会の代表を務めるマイクロトフが鎮め、ラインハルトにフェルトを選んだ経緯を聞いた。
「フェルト様はおよそひと月前、貧民街の一角で保護しました」
「貧民街の浮浪児だと!?」
「・・・浮浪児で悪かったな!!勝手に連れて来たのはお前らだろうが!!」
再び貴族達が騒ぎ始め、フェルトも流石に我慢出来なかったらしく怒鳴り散らした。するとそこにプリシラがフェルトに呆れ、侮辱するような発言をしていた。エミリアもフェルトを庇い、プリシラに謝罪を求めたが聞き入れてもらえないだけでなく侮辱の対象となってしまった。
「では、王選候補の皆様、こちらへ」
王選候補者が一人一人呼ばれ演説する事になり、まずはプリシラ、その次にクルシュ、アナスタシアの順番で行われた。
「エミリア様とその推薦人のロズワール・L・メイザース辺境伯並び、仮騎士メリオダス」
「私の望みはただ一つ、公平である事。全ての民が公平である国を創る事です」
「そーぉれにしても、こうして騎士達が介添人として続いた後だと、私達の場違い感が凄くて困りものだーぁよね」
「オレも本物の騎士じゃないからな」
続いてラインハルトとフェルトが呼ばれたが当のフェルトは王選に参加する事を否定した。
「では、フェルト様は王候補を辞退すると?」
「たりめぇだクソッ!」
「戯言だ!これまでは非常時故に見過ごしてきたが、この身勝手には話しにならん!!」
「全くだ、浮浪者を担ぎあげようとするアストレア家にも半魔を王に推挙するメイザース辺境伯の愚挙も!」
「ハーフエルフを半魔等と呼ぶのは悪しき風習ですよ」
フェルトの辞退によって堪忍袋の緒が切れた貴族がまだ騒ぎ出し、エミリアも半魔呼ばわりされたがロズワールが否定した。
「銀髪の半魔はかの”嫉妬の魔女”の容姿にそっくりではないか。玉座の間に入れることも恐れ多いとなぜ気づかぬ!汚らわしい!」
「おいお前・・・」
「ふざけてんじゃねぇぇぇ!!!!!」
エミリアに対する悪態があまりにも酷かったのでメリオダスが言い返そうとした時、スバルが激昴した。