翌日、スバルはヴィルヘルムに剣の稽古を付けてもらった後、レムが真剣な顔でスバルを呼びクルシュの下に向かった。そしてメリオダスはというと、中庭でスバルの稽古を終えたヴィルヘルムに出会った。
「おや、メリオダス殿。何か御用ですかな?」
「たいした用じゃねぇんだけどさ、近頃戦でも始めるのか?」
メリオダスの質問に対してヴィルヘルムは少し眉毛を上げ驚いた様に見えた。
「・・・何故、そう思ったのですか?」
「まずオレ達がこの屋敷に来てから四日間、王選が始まるとはいえ人と物の出入りが多過ぎる事。これは昨日の夜、クルシュが言ってたから間違いねぇ」
「・・・」
「そして何より、あんたからはオレと似た底知れねぇ野心・・いや、復讐心に近いものを感じた・・・と思ったんだが?」
メリオダスの言葉にヴィルヘルムは苦い表情で黙って耳を傾けていた。そしてメリオダスがヴィルヘルムから感じた感情、それは愛する者を奪われた感情だった。
「・・・見事、と言うべきですかな・・・メリオダス殿・・"白鯨"をご存知ですか?」
「白鯨・・・?」
ヴィルヘルムの口から出てきた言葉はメリオダスを賞賛するものと白鯨という単語だった。聞き覚えのない言葉にメリオダスは困惑するのを見てヴィルヘルムは白鯨の説明をしようとした。
「かつて魔女が生み出した三大魔獣の一角、四百年の間この地を踏み荒らし膨大な数の犠牲を出て来た"霧"の魔獣です・・・」
ヴィルヘルムの説明しながら発せられた声には怒りや憎しみがこもっており、メリオダスもその説明に納得した。
「そして十五年前の大征伐、白鯨を倒さんと選りすぐりの騎士達が集いました」
「そこにあんたの愛した人が参加ていた・・・」
「はい・・・私の妻、テレシア・ヴァン・アストレアが大征伐に参加し、命を・・・・その時私は大征伐に参加出来ずにいました。ですから、私はこの手で白鯨を倒し仇を討ちたいと思っているのです・・・!」
そう言ったヴィルヘルムの眼は燃え盛る炎の如く光っていた。
「・・・オレも、似たようなもんさ・・・」
「もしやメリオダス殿も・・・」
「あぁ、オレはすぐ側に居ながら一度も救ってやれなかった・・・あの時も・・・」
メリオダスの脳裏には十六年前、今は亡きダナフォールで起きた悲劇・・・最愛の恋人である
「だから・・・今度こそオレは約束を果す・・・!」
「メリオダス殿、おそらく貴方は私が想像しているより遥かに壮絶な過去を抱えておいででしょう・・・その様子だと何度も経験されていましょう」
「全く、勘のいい爺さんだぜ・・・」
「しかし不思議です。私には貴方が複数の女性を愛している様には見えません」
「・・・なぁ爺さん、あんたは転生って知ってるか?」
ヴィルヘルムはメリオダスが複数の女性を愛していると勘違いしたらしく、メリオダスはエリザベスの呪いについて少しだけ話そうとした。
「転生・・・ですか?それは・・「メリオダス!!」・・・スバル殿?」
「スバル?どうしたんだ?」
「今すぐロズワールの屋敷に戻るぞ!!」
急に話しを割って入って来たスバルに対してヴィルヘルムとメリオダスは疑問を抱くが、そんな二人をよそにスバルはロズワール邸に帰ると言ってきた。