メラスキュラの魔力によって暗黒世界に閉じ込められてしまったメリオダスは困惑していた。
「何故、お前がここに居る?」
「・・・魔神王様からの命よ。貴方を探せ、とね。苦労したわよ? 貴方の魔力を探し出して獄門を開くのは。何せ世界そのものが違うから予想以上に時間が掛かってしまったわ」
メラスキュラはにっこりと笑みを浮かべメリオダスを見下ろしている。
「それにしてもあの忌わしい女神も居るなんて、ホント腹立たしいわ!」
「メラスキュラ、オレを此処から出せ」
「出す訳ないでしょ。貴方を逃がしたら魔女教とか言う連中が好き勝手出来ないもの」
メラスキュラの口から魔女教と言う言葉が出て来た事にメリオダスは驚き、何故メラスキュラが魔女教の味方をしているのか理解出来なかった。
「いつから魔神王から魔女に鞍替えしたんだ?《信仰》の戒禁を持っているお前らしくないぜ?」
「ふざけないでちょうだい!私が信仰しているのは魔神王様だけ!!魔神王様がこの世界の魔女とやらに興味を示されたから、調査として味方してやっているだけよ!」
「そういう事か・・・これで疑問が一つ晴れたぜ」
「なっ!・・・まぁ、そういう事だから貴方を此処から出さないわ。せいぜい魔女教徒達に愛するエリザベスが命を奪われるのを想像してなさい」
そう言うとメラスキュラは闇の中に消えて行った。疑問が一つ晴れたとはいえこの暗黒世界から抜け出せないと言う状況は変わらない。
エリザベスは記憶を取り戻した三日後にメリオダスの目の前で死ぬと言う呪いにかかっているので死にはしないが他の住民は別だ。
なのでメリオダスは一刻も早く暗澹の繭から脱しなければ行けないのだが・・・
メリオダスはどうにかして抜け出そうと足掻いていたが全ては無駄な努力だった。
メラスキュラ曰く「この暗澹の繭はゼルドリスが魔神王の魔力を行使しない限り破れない」出そうだ。
そしてメリオダスは脱出できないまま数時間の時を過ごし、ある一つの方法を思いついた。
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ーー殺す・・・殺す・・・
魔女教のアジトと思わしき洞窟の中から腕を鎖に繋がれた少年がぶつぶつと呟いている。先程まで抜け出そうと暴れていたのか、手首からは血が流れ袖にまで染み付いている。そんな彼の前方から何かが近づいてくる。
その正体はロズワール邸のメイド姉妹の内の妹、レムだった。しかし彼女の手足は骨が折れており、地面を這いつくばりながら鎖に繋がれた少年ーーナツキ・スバルの下に向かっていた。
「レム・・・レム・・・!」
「・・ヒュー・・・マ・・・」
スバルはレムを自分の下まで引き寄せて呼び掛ける。そしてレムは最後の力を振り絞って魔法を詠唱しスバルの鎖を外した。
「生、き・・・て・・・」
「レム!」
「大・・・好き・・・」
レムはそれだけ言い残した後、静かに息を引き取った。スバルは泣くことした出来ず、彼女の死に対する慟哭が洞窟中に響き渡った。
暫くしてスバルはレムを抱えて洞窟を抜け出しロズワール邸に向かおうとした。辺りはすっかり夕方になり空もオレンジ色にそまっていた。
「行こう、レム・・・」
途中アーラム村を通ったが既に村の住民は惨殺されていたがスバルはそれに目を向けること無く、ただひたすらある男の名前を呟き続け歩いていた。
ロズワール邸が見えて来た所で既に辺りは吹雪いており屋敷の庭では巨大なオオカミの様な猛獣とスバルが見たことの無い形態のメリオダスが激闘を繰り広げていた。
あれは
「メリ、オ・・・ダス?」
しかしメリオダスをよく見ると常時不敵な笑みを浮かべている、その様子からまだまだ余裕・・・と言うより、おそらく彼にとってあの猛獣との戦いは"ただの遊び"なのだろう。
「っ!・・・うわぁぁあ!!!!」
その戦いに見入っていたスバルは戦いの余波で身体は凍りつき黒い炎によって粉々になってしまった。