「ん~、しっかし暇だなぁ」
現在メリオダスは王都の街中を歩いている。特に目的があるという訳ではなくただ暇を潰しているだけだ。
「スバルのやつ、いったい何をそんなに焦ってんだ?」
そんな事を呟き、先程スバル達と別れた際にスバルから言われたことを思い出す。
「・・・悪い、メリオダス。お前は暫くの間街でも散歩してきて来てくれ・・・俺は少し用事を思い出した」
そう言うとスバルはレムの手を引っ張ってスタスタと歩いて行った。その時のスバルの顔には何者かに対する怒り、そしてメリオダスに対する恐怖があった。
「ま、考えても分からねぇし、ちょっと酒場にでも・・・」
「昼間から飲酒とは感心しないな。メリオダス」
酒の誘惑に魅了されていたメリオダスに声をかけた赤い髪を靡かせこちらに微笑みを見せている美青年、王国最高戦力である『剣聖』ラインハルト・ヴァン・アストレアだ。
「よぉ、こんな所で会うとは奇遇ですな。一緒に飲む?」
「嬉しい誘いだけど、僕は遠慮しておくよ」
しかしメリオダスの誘いは即答で断られてしまった。
「ところでメリオダスはどうしてここに?てっきりスバルと一緒に行動しているものだと」
「あぁ、あいつなら用事があるってどっか行っちまった。んでオレは暇潰ししてたんだ。ラインハルトも暇なのか?」
「僕はこれから任務だよ。だけどそれまでまだ時間があるから王都を巡回してたんだ」
つまりラインハルトもメリオダスと同じ暇人なのだ。するとメリオダスはあることを思いついた。
「それならオレと模擬戦でもしてみねぇか?時間はまだあるんだろ?」
「僕がメリオダスと?確かに時間はまだあるけど、しかし・・・わかった。じゃあ闘技場に行こう。そこなら周りに気を使わずに済む」
メリオダスの提案にラインハルトは少し悩み快諾した。そして二人は闘技場に向かった。その闘技場というのは嘗てスバルとユリウスが闘った場所。いや、守られたと言っても過言では無いだろう。
「助かったぜラインハルト。ここに来てから大分体が訛ってたからな」
「君が喜んでくれるなら僕も嬉しい限りだよ」
準備運動をするメリオダスとただ静かに佇むラインハルト。暫く静寂が続いたがその静寂はインパクトと共に終わりを告げた。
メリオダスが顔面に目掛けて放った蹴りはラインハルトによって容易に防がれてしまう。しかしメリオダスはそれに動じること無く続けて連撃を放つ。
「かなり強いね、メリオダス」
「涼しい顔で防いでるやつに言われてもな!」
そう言い終わると一度メリオダスはラインハルトから距離を取り背中のロストヴェインを抜いた。
「ラインハルトもその腰の剣抜けよ」
「すまないメリオダス。実はこの《龍剣レイド》は来るべき時にしか抜けない様になってるんだ」
「なるほど、そんじゃこれならどうだ?」
メリオダスは力を入れ集中し、そして黒いオーラが身体を覆い始めた。徐々に瞳が黒く染まり額に黒い紋章が浮かび上がり自身の闘級も跳ね上がる、魔神化だ。
「どうだ、抜けそうか?」
「・・・いや、まだ抜けそうにないね」
なんとメリオダスの魔神化でさえも龍剣レイドは抜けなかった。さすがにメリオダスも少し悔しそうな表情をしている。
「まぁ良いさ。せっかくだからこのままやっちまおうぜ!」
ロストヴェインを鞘に戻しラインハルトに殴り掛かった。先程とは違ってメリオダスの攻撃は入りつつある。
しかし次の瞬間メリオダスの脇腹に衝撃が走る。
ラインハルトの蹴りだ。
その衝撃でメリオダスの身体は遠くに吹き飛ばされてしまった。たが透かさず地面を強く蹴り真っ直ぐラインハルトに突っ込み腹部に拳を叩き込む。
それによって一歩後ろに下がったラインハルトに回し蹴り、肘打ち、裏拳の順で攻撃を決める。
飛ばされたラインハルトは空中で体勢を立て直し着地する。
「殆ど効いちゃいねぇか・・・思ってた以上に厄介だな」
「メリオダスこそ、まだまだ本気じゃないんだろう? 街に被害が出ていないのが何よりの証拠だ」
「と言っても多少揺れただろうけどな。それじゃあ続きを·····」
「残念だけどここまでだ。任務の時間が来てしまった」
「そうか・・・結構楽しかったぜ!」
ラインハルトの言葉を聞いて魔神化を解き臨戦態勢も解いた。そして二人は別れを告げてそれぞれ帰る場所へと帰って行った。空はすっかり暗くなり街の灯りを頼りにカルステン家に向かったがスバル達は既にそこにはおらずクルシュから大体の事情を聞き宿へと向かった。