「白鯨・・・?」
「説明してる暇はありません!今は逃げ切る事だけを考えましょう!」
スバルは突然の出来事で混乱していたが直ぐに正気を取り戻し白鯨を位置をレムに聞くが辺りが暗く見つけられなかった。他の竜車も逃げているようだが位置までは分からなかったようだ。
白鯨による暴風でまたスバルは竜車から投げ出されてしまったが鬼化したレムがモーニングスターでキャッチしそれと同時にメリオダスが襲い掛かってくる白鯨の胴体を上から殴る。
「はぁっ!!」
白鯨は悲鳴を上げて地面に落下する。それを見てオットーは白鯨から距離を離す為一気に加速した。
「や、やりましたか!?」
「いや、大して効いてねぇ。また直ぐに追っかけて来るだろうな」
そう言うとメリオダスはまた竜車から離れ追いついてきそうな白鯨を迎撃しては地面や竜車に着地しまた迎撃するを繰り返す。
「・・・これじゃキリがねぇな。レム、オレは白鯨を倒してくる。その間スバル達の事は頼んだ!」
「相手はあの白鯨です!いくらメリオダス君と言えど一人でなんて無茶です!」
「そうだメリオダス!今から俺が打開策を考えてやるから少し待っててくれ!!」
「心配要らねぇよ。かるーくぶっ飛ばして来てやるぜ!」
心配する二人をメリオダスはいつもの笑顔で元気づける。この状況でそんな笑顔を見せられて呆気に取られている隙にメリオダスは竜車から飛び降り白鯨の元へ向かう。
「メリオダス!!!・・・くそっ!!」
メリオダスを止められなかったスバルは自分の無力さを嘆き竜車の床を殴る。
「何で執拗に僕らを・・・竜車は他にも居るでしょうに!!」
「泣き言言ってても変わらねぇ!!何か打開策を・・・考えろ考えろ考えろ!!」
スバルが必死に打開策を見つけようと頭を抱えている様子をレムは見ていた。
「スバル君、これを受け取ってください」
レムがスバルに手渡したのは商人達の報酬である大金が入った布袋だった。
「レム?」
「レムが竜車を降りてメリオダス君の援護をします。その間にスバル君は森を抜け出して下さい」
レムの提案にスバルは言葉を失う程驚いていた。そんなスバルを置いてオットーに報酬についてを話す。オットーはこんな状況で何を言っていると言いたげな顔をしている。
「スバル君、レムは頭が悪いのでこんな案しか思いつきません」
「待てよレム・・・行かせねぇ、行かせねぇぞ!お前まで死んだら俺は・・・」
ガタンッと竜車が揺れた弾みでスバルはレムを強く抱き締める。この時レムは自分は幸福なのだと心から思いこの瞬間が永遠に続けば良いと思った。
「レムはこの時の為に生まれてきたんですね・・・」
「何をーー」
レムの手刀によりスバルの意識が遠のき、レムが竜車を降りるのを黙って見ている事しか出来なかった。
一方メリオダスは白鯨と激闘を繰り広げていた。白鯨の攻撃はメリオダスに当たる事はなく空振り続ける。何度も反撃を受けてまるでサンドバッグの様だ。しかしメリオダスの反撃を何度受けてもけろっとしている様子から防御力はかなりのものだ。
「本当にタフなデカブツだな」
白鯨は身体から霧を噴き出し視界を遮る。そして巨大な口を開け地面を抉りながら進みメリオダスを飲み込もうとしたがメリオダスはそれをジャンプで避け一気に急降下し蹴りで白鯨を地面に叩きつけた。
「おおぉぉおおおおぉぉっ!!!!」
叩きつけられた白鯨の角を両手で掴みそのまま投げ飛ばした。そしてロストヴェインを構え白鯨を滅多斬りにして最後に後方へ飛び《神千斬り》を放った。苦悶の声を上げている白鯨の鮮血が辺りに飛散した。
「驚いたな。まだ生きてんのかーー」
メリオダスが感心していると突如白鯨の目の色が赤くなり地面を揺らす程の咆哮が鳴り響く。メリオダスは驚き一歩後ろに下がった瞬間先程の霧の量とは比較にならない程の霧が白鯨の身体から噴き出し周辺を霧で覆い尽くした。
「くっ・・・・はぁっ!!」
メリオダスは魔神の力を纏わせた腕で霧を払うと目の前には既に白鯨は居らず平原だけが広がっていた。
次の瞬間背後から白鯨が尻尾で攻撃をしてきた。その攻撃をもろに受けたメリオダスは吹っ飛ばされフリューゲルの大樹に激突する。
「いててて・・・・・どういう事だ?白鯨が三体に増えてやがる」
「メリオダス君!!」
すると先程竜車で逃げた筈のレムが大樹の根元でメリオダスに向かって呼びかけてきた。
「レム!何でここに来た!」
「レムはやっぱり、メリオダス君を置いては行けません・・・それにここで白鯨を止めなければスバル君が危険です!レムはスバル君がこれ以上壊れる様を見たくありません・・・ですからどうか一緒に戦わせて下さい!」
レムの真剣な眼差しにメリオダスもそれに応える。
「・・・わかった。レム、行くぞ!」
「はい!」
そう言うとメリオダスとレムは三体に増えた白鯨に向かって行った。