リカードのコントロールミスによって白鯨に飲み込まれてしまったメリオダスは暗闇の世界にいた。
地面は熱くヌメりがあり、不規則に脈を打っている。
ここは白鯨の体内だと確信する。
「真っ白な世界の次は真っ暗な世界か」
辺りを見回しても当然何も見えない。
白鯨討伐戦が開始されてから視界が悪くなってばかりなのはさておき、メリオダスはどうにか灯りを見つけようと考える。
思いついた対処法は、掌に直径三十cm程の獄炎の球を創り出しそれを松明代わりにすることだった。
「まぁ、ねぇよりマシだな」
獄炎の黒い炎は攻撃に長けているのであって、松明代わりに使うことは想定されていない。その為、足元を照らす程度の光力しかなかった。
こういう時に七つの大罪メンバーの一人、キングの神器って便利だとメリオダスは改めて思った。
「とりあえず、白鯨の口に向かって行けば外に出れそうだが・・・口ってどっちだ?」
足元を照らす光だけを頼りに内臓の壁を伝い適当に歩いていると、メリオダスには見えていないが少し広い場所に出た。
「・・・ん?」
周りに違和感を感じたメリオダスは広場の中央辺りまで歩く。
「ーーッ!」
次の瞬間、メリオダスを向かって何かが高速で飛んで来る。
暗闇で、しかもここは白鯨の体内という事もあり、油断していたメリオダスはその攻撃を避けられなかった。
しかし正確にはメリオダスではなく、メリオダスの掌にある獄炎の球を狙って攻撃していた。
何者かの狙い通り獄炎の光は消え、完全にこの空間は闇に包まれていた。
「・・・まさか、オレ以外にも誰かいたとはな」
白鯨はこれだけの大きさだ。食べた動物や魔獣を一々咀嚼して飲み込むほどマメな魔獣には見えない。
なので生きたまま飲み込まれた魔獣がいたとしても何ら不思議ではない。
メリオダスが周りを警戒すると、四方向から攻撃が来る。それを全て紙一重で防ぎ、反撃に移るとすぐさま離脱する。
「どうやら一匹だけじゃなさそうだな」
しかもここの魔獣は全て暗闇での戦闘に長けている。
白鯨の体内で何年、或いは何十年、お互い仲間も他の魔獣も関係なく殺し合い、喰らい合いながら生きて行かなければいけない弱肉強食の世界だ。
そのため気配、音、殺気を殺し攻撃する事など容易い。まるで熟練された暗殺者だ。
この劣悪な環境で生き残ってきた先鋭達にとって新入りなどただの餌。その餌が無くなり腹が減ればまた互いに殺し合うだろう。
しかし幾ら地の利があるとは言え、メリオダスの戦闘経験は奴らの数千倍はある。
「ほッ!」
四方から来る魔獣の攻撃をメリオダスは勘だけで捌き、ついに反撃をする事に成功した。
「浅いな・・・」
攻撃は通ったが浅い、これでは何年続けても倒せない。
この局面を打開するために策を考えるが、魔獣はその隙を与えてくれない。
攻撃を躱しているうちにメリオダスは背後に壁を感じたが、構わず魔獣はメリオダスに襲いかかって来る。
追い詰められてしまった。
「なんてな」
攻撃をジャンプで避けて壁を蹴り、ロストヴェインを抜いて魔獣の背後の広場に向かって
「神千斬り!」
神千斬りによって広範囲に獄炎を撒き散らし広場を炎で埋め尽くす。
そして炎によって魔獣の姿が照らし出される。
「ギギィ・・・」
魔獣は全員で五体。それぞれ種族は違うだろうが、視力が退化しているのは間違えないようだ。
「さてさてさーて、今度はお前らが追い詰められたようだが・・・こっからどうする?」
余裕の笑みを浮かべて炎とメリオダスに追い詰められた魔獣達には既に戦意は無く大人しくし死を待っていた。
自分達とメリオダス戦力差を既に察していた。地の利を生かしても勝てなかった相手だ、ハンデ無しでは到底敵わない。
今まで散々仲間を殺しまくった魔獣達は「次は自分の番か」と悟った。
「・・・・・・」
メリオダスはロストヴェインを構えて力を入れーー
「はぁぁぁ・・・・・・!!!」
ーー斬る。
しかし魔獣達は五体無傷、背後に風を感じた魔獣達は思わず振り返る。視力が退化し、ほぼ盲目状態だが分かった。
((この穴は外へと続いているッ!))
困惑する魔獣達を横切りメリオダスは斬り空けた穴を覗き込む。
「お、以外と近くて良かった!」
意気揚々と外へ向かうメリオダスに疑問を投げかけるように魔獣の内一人が立ち上がる。
それに気づいたメリオダスは振り返りいつものように微笑む。
「お前らに罪はねぇ・・・」
それだけ言い残して飛び降りる。
ここへ残るか、外へ出るかは自分次第、なのでこの後魔獣達がどんな選択をしたかはメリオダスの知るところではなかった。
メリオダスは落下の途中で「最初からこうしておけば良かった」と若干後悔していた。