白鯨の体内から脱出したメリオダスはそのまま地上へ着地する。
そこには丁度スバル、レム、クルシュが合流していた。
「メリオダス、お前はやっぱり無事だったか!」
スバルは白鯨に飲み込まれて尚メリオダスを忘れる人物はいなかった事から、霧によって消されてはいない、ならば生きていると信じていた。
「オレがいねぇうちに、随分と状況が変わったみたいだな」
「あぁ、ヴィルヘルムさんまで飲み込まれて、何とか脱出したんだがダメージがでかくて今治療してもらってる。それに・・・」
「白鯨が三体・・・どうしたもんか」
空を見上げると白鯨が三体に増えていた。
これは白鯨が三体に分裂した姿だ。その代わりに一体ずつはパワーダウンしているようで、そこにはスバル達も薄々気がついていたようだ。
前回のループで殲滅状態のメリオダスがさりげなく言った「白鯨の分身体」という発言でスバルは確信した。
「スバル、お前なら何か作戦があるんだろ?」
「あぁ、今あのデカブツを倒す作戦を思いついた。俺がさっき考えていたのよりもっと確実な作戦をな!」
さっき思いついた作戦とはスバルが一番高い位置にいる白鯨、つまり本体までレムの繰り出す氷柱にしがみつき、白鯨の体まで運んでもらう。
それから飛び降りてスバル特有の『魔女の残り香』で下に誘導する。
落下するスバルをレムがキャッチして愛竜のパトラッシュを走らせ、白鯨をフリューゲルの大樹まで誘き寄せ、クルシュの剣技で切込みを入れ、討伐隊の魔法攻撃で大樹をなぎ倒す。
そして大樹で白鯨を押し潰す。と言うのがスバルの考えた作戦だ。
しかしこの作戦は運頼りなところもある為、失敗する可能性が高い。
メリオダスがいなければ最善の一手とも呼べたであろうが、今はメリオダスがいる。
それを利用しない手はない。
「ーーという事で、後は手筈通り頼むぜ!」
「了解!」
スバルから作戦を聞いたメリオダスは白鯨の分身目掛けて飛び上がる。その瞬間、クルシュやレム、討伐隊が霧払いの魔晶石を叩き割り視界が一気に晴れた。
メリオダスが分身体に乗ると、それを踏み台にもう一度思いきりジャンプする。
勢い良く上昇していき、遂に白鯨本体を追い越し、月を背景に拳を振り上げメリオダスは魔力を集中させる。
「はあぁぁぁぁぁ!!!」
メリオダスの額に黒い痣が展開され、一気に殺気が増した。
それに気づいた白鯨は回避行動を取るがもう遅い。
地上から遥か上空、ここならばどれだけ本気を出しても巻き込まれる者はいない為、遠慮無くその一撃を放つ。
振り下ろされた拳は白鯨の背中に直撃し、霧が晴れて見えるようになったフリューゲルの大樹に白鯨を叩き落とす。
後はクルシュ等が大樹を切り倒して白鯨を押し潰す。驚いた事に白鯨まだ生きていた。
そんな白鯨の前に一人の男が剣を手に立つ。
落下しながら魔神化を解除したメリオダスは笑みを浮かべる。
「後は任せたぜ、ヴィルヘルム・ヴァン・アストレア」
雄叫びを上げながら白鯨を滅多切りにするヴィルヘルム。
治療魔法をかけたとは言え、重傷なのは変わらない筈だ。
しかしそんな満身創痍の体でも剣を振るう力強さ、気迫は変わらないどころか増し続けている。
大樹の下敷きになり、もはや抵抗出来ない白鯨が血を撒き散らしながらもがき苦しむ。そんな姿を見てもヴィルヘルムの剣は止まらない。
その姿をスバル、レム、クルシュ、それだけでは無い、この場にいる全ての討伐隊が黙って見守る。
白鯨の片目に自身の姿を移し、白鯨も又その剣鬼の姿を見る。
最後の一太刀が繰り出される時、メリオダスが静かに地上に降り立つ。
「眠れ。永久にーー」
振り下ろされた剣を最後に白鯨はその瞳を閉じた。
白鯨の分身体も消滅し、完全に決着が着いた。
白鯨の頭上に立ち、地平線の彼方を見詰めるヴィルヘルムは今どのような気持ちか、それは本人にしか分からない。
「ーーここに白鯨は沈んだ」
静寂の中、クルシュ・カルステンが地竜を歩かせ前へ出る。
「四百年の歳月を生き、世界を脅かしてきた霧の魔獣は・・・ヴィルヘルム・ヴァン・アストレアが、討ち取ったり!!」
この言葉と共に討伐隊は歓声を上げる。白鯨から勝利をもぎ取った騎士達は互いに抱き合い、讃え合う。
「数百年も続いた戦いが遂に決着、か・・・オレも、オレ達の戦いも終わらせねぇとなーーエリザベス」
メリオダスはらしくない表情で一人、歓喜の声を上げる騎士達を見ながらぽつりと呟くが、その様子に気づく者はいなかった。