ウザ可愛いを書こうとしたらクソウザ主人公になりました。
自分が“御坂美琴”であることに気づいたのは、三歳の頃だった。
それまでの『私』の意識はゆらぎの空間でゆらゆらと漂っており、ある日ふと肉の身体に定着したのだ。これを物心が付いたと言うのだろうか。
そう、我が輩は前世の記憶を保持した転生者である。
物心ついてまず思ったのは、「御坂美琴とか子供にアニメキャラの名前付けるとかオタク親かぁー」である。いや別に親がオタクなことに文句があるわけじゃないよ。子供にアニメキャラの名前つけちゃうあたりがアレだなってだけだよ。
などと考えていたら、居間のテレビ(やたらでかい)に学園都市大覇星祭特集とかいって近未来SFチックな町並みが映ったではないか。
「んっ!?」
画面には、ありえない動きと速度で14、5歳ほどの少年達が街中をかっ飛んでいく様子が流れている。
強能力者リレーらしい。
オイオイオイオイ。
現代に転生っていうからなろうのジャンル:ヒューマンドラマ〔文芸〕あたりかと思ってたら、ハーメルンの憑依転生だわこれ。
要約すると、とある魔術の禁書目録の世界に、御坂美琴として転生した疑いが強い。
疑いが強い。そう、確信ではない。もしかするとテレビに映ってるのはドラマかもしれない。えっ、ラノベがこのクオリティで地上波実写ドラマ? それはそれで胸熱。
いや、疑いが強いのは『私』が御坂美琴なのかってことね。同姓同名の別人かもしらん。ビリビリ未遂。
容姿でわかるって? わかるわけねーだろ! 二次元が三次元になってしかも三歳児だぞ!
それはそれとしてだ。二次元の世界に転生。そこでやることと言えば……?
「ママー!」
「んー、どうしたの?」
「わたしもがくえんとしにいきたい!」
「あらあら、ミコトちゃんも運動会見にいきたいの?」
「んーん、わたしもちょうのうりょくしゃになるー」
「あらあら」
でも読心能力者とか居そうだよね学園都市って
私が転生者だってばれたらどうしよう。……まあどうとでもなるか!
「そうねーなれたら良いねー」
あ、これ本気にしてねえな。説得、説得しないと……。
◆
そして十一年の月日が流れた。
学園都市に行き、能力開発を行い、レベル1から能力を少しずつ鍛え上げた。
順調に能力の強度を上げ、あの名門校常盤台中学に入学することができた。お嬢様です。いや、こっち来る前の実家の時点で結構お嬢様だったけどね!
同姓同名の御坂美琴さんと出会うことなく、私は晴れてレベル5の大台に突入することになり、そして今私は――
「ジャッジメントですの!」
んーふふ、黒子の真似ー。
「御坂先輩、真似しないでくださいな!」
そう、
そこで白井黒子(原作キャラ!)と知り合って今では同じ常盤台の支部の所属としてコンビを組んでいるわけです。
「んんー、おほん、改めて。ジャッジメントですの!」
「それ私さっき言った」
「器物損壊および強盗の現行犯で拘束します!」
黒子達原作キャラと会って驚いたのは、声がアニメと違うところ。アニメの黒子の声ってすごい特徴的で大好きだったんだけど(すばらっ!)、こっちの黒子はなんか甘ったるい百合百合しい声をしてるのね。百合百合しい声ってなんだよ。お姉様とか言ってこないぞこの子。
ちなみに、録音して聞いた私自身の声も、アニメと違ってなんだか聞いたことのないぞわぞわする声をしていたよ。録音して聞く自分の声ってなんか違和感あってぞわぞわするよね。
「神妙にお縄に付くがよろしいですの!」
あ、これ言ったのは黒子ね。今私達は銀行強盗らしき現場に偶然居合わせてかけつけたところだ。
街中で黒子とアイス食べながらだらだら歩いていたら、急に銀行がぼーんって爆発したの。ぼーんって。
そして、その銀行強盗の前に腕章をこれ見よがしに見せつけながら、黒子が立ち塞がったのだ!
でも悲しいね。黒子ってば背の低いちんちくりんツインテールだから。
「ギャハハハハッ! どんなヤツが来たかと思えば、風紀委員も人手不足かあ?」
いつも悪人さん達に舐められちゃうの。悲しいね。
でも大丈夫。なぜなら黒子は護身術という名の格闘技が得意な森の賢者だから。
「ぐわー!」
さっそく銀行強盗(推定)三人組のうちの一人を地面に沈めた。
「さすが黒子、森の賢者」
「誰がゴリラですの!?」
ゴリウーは褒め言葉なのになぁ。まあ黒子は全然筋肉質じゃない綺麗なスリムボディをしているんだけどね。ぐへへ。
と、さらにもう一人黒子が腕をねじって無力化したところで、リーダー格っぽい男が手の平に炎をまといだした。
「
「レベル3だ!」
男がにやりと笑って宣言する。ちなみに黒子ちゃんはレベル4です。
まあしかしここで黒子に任せては私は何もしていないでくの坊になってしまうので。
「黒子、こうたーい!」
と、腕ねじりで忙しい黒子の盾になるよう火の男との間に割って入る。
「さあ来なさい」
前羽の構えで男に立ち向かう私。ちなみに私は森の賢者じゃないので、風紀委員の研修で落第点ぎりぎりだったへなちょこ護身術しか使えないぞー!
「てめえ、この炎が怖くねえのか!」
「風紀委員とは死ぬことと見つけたり」
「っ! じゃあ死ね!」
炎をまとった男のテレフォンパンチが私に襲いかかる!
私はそれを……ライフで受ける!
「ってえ!」
鈍い音が周囲に響き渡り、まるで人体以上の硬い物でも殴ったかのように、男は顔をしかめた。
彼が殴ったのは私の顔。いや、正確には、私の顔の位置にあった――
「バーリアー! 平気だもぉーん!」
無敵最硬バリアーが全てをシャットアウトしていた。
「からのー。バリア空気投げ!」
男の足元に発生した無敵やわらかバリアーが、男の体勢を崩し、転ばせる。
そして黒子にならって男の腕をねじりねじりしたところで、ようやく
「これにて一件落着ですの」
んーふふ、黒子の真似ー。
「御坂先輩、わたくし、そんな時代劇みたいなこと言わないですの……」
神妙にお縄にとか言ってたくせに。
「御坂、御坂だと……風紀委員の御坂と言やあ……常盤台の……!」
私のねじりねじりを受ける男が黒子の言葉を聞いていたのか、意味深な言葉を言って黙る。
常盤台の……! じゃねえよ! 最後まで言えよ!
「そう、私こそが学園都市二三〇万人の頂点、七人の
「先輩、いい加減その最強とか無敵とかのセンスどうにかならないですの……」
「可愛いでしょ」
「いいえ全く」
そしてそのまま男達は警備員に連行されていった。
なおこの後めちゃくちゃ報告書書かされた。
知ってる? 風紀委員って基本的に学校の校舎内で活動するもので、よほどのことがないと校外で犯罪者の取り締まりなんてしないんだよ。学校の外は警備員、つまり大人の管轄。私は風紀委員に入るまで知りませんでしたはい。
いやちょっと聞いてよ。超電磁砲アニメの風紀委員支部って街角の雑居ビルにあったじゃん? それで校外が管轄外とか思わないじゃん?
でも実際所属してみると、支部ってどこも学校の校舎内にあるのよね。私が見付けた数少ない
◆
さて、落ち着いたところで一つ振り返ってみよう。
私は常盤台のエース
私の能力は、バリアーを張る能力である。私が拒絶したいと思ったものはあらゆるものを寄せ付けない。衝撃から音から熱から光から人の視線から人の意識から守ってくれる。反射はできないよ。いっつーさんじゃあるまいし。
まあそんな名付けて超ウルトラスーパーATフィールドを、レベル1からひいこら言いながら鍛えて鍛えて、何とかレベル5に到ったのが現在の私というわけです。順列は六位。
バリアーって工業的価値科学的価値すごいあると思うのにこの順位は納得がいかん! いや、順位高すぎると、変な学者とかに目を付けられる可能性が高まりそうだから、低くていいんだけど。超電磁砲みたいに万能能力じゃないし、低くても仕方ないのか。
じゃあなんで能力が超電磁砲じゃないのかっていうと、これはあれだ、
知ってる知ってる前世から知ってる。禁書の一巻に出てくる超重要ワードだよ。私三巻までしか読んだことないけど。ア、アニメは超電磁砲全話見たし……。
自分だけの現実っていうのは、まーざっくり言っちゃうと独創的な妄想力ですね。
私は炎を出せる!って妄想できる人は発火能力者に、電気を出せる!って妄想できる人は発電能力者になるわけだ。
型月風に言うと空想具現化――じゃなくて固有結界の方ね。一人一能力これ絶対。
つまり、私は電気を出せる!って妄想できない人なわけだ。何故かというと私は本当の御坂美琴じゃないから。本物とは精神が違う。妄想するのは心だからね。脳のシナプスの配置とかも原作の美琴ちゃんとは欠片も似通ってないだろうしね。
私のクローンを作れば能力はどうなるかって? 知らん。そんなことは私の管轄外だ。
きんじすとろふぃーとか私知らないですし! でもDNAマップなんて、いつの間にか勝手にかすめ取られてるのが学園都市って場所だよね!って知り合いが言ってた。
◆
などということを考えていたのが悪いのか。
私は私のクローンにある日突然出遭った。
ゴーグル、ゴーグルしてたから多分電気能力ビリビリだと思う。あれって磁力線だかなんだかを視覚で捉えられるようにするための補助具か何かだったよね。無敵バリアー能力に魔眼能力とかないし。
あ、でも見えなくても演算で熱とか光とか電磁波とか外からの影響シャットアウトできてるんだよなぁ。
「ミャー」
うわ、やっぱり生で聞く自分の声ってぞわぞわする。
とか言ってる場合じゃねえや!
「……と鳴く四足歩行生物がピンチです」
「た、た……」
「……聞いていますか? とミサカはたずねます」
「た、た、たた……」
「多々?」
「助けて上条さーん!」
他力本願! でもやべえよ! いっつーさんはマジやべえよ!
「助けて上条さーん!」
「おうバリバリ中学生、どしたー!」
誰がバリバリの実の能力者か。って、めっちゃ近くにいたな上条さん。探す手間がはぶけたわ。
「妹が出てきていっつーさんとかマジヤバイ」
「
「マジで! 惚れるわー」
「ボンドガールとかいらんから飯おごれよな! 今回は一発殴られたら即死の世界だぞ!」
さすが
今の短い会話の中で、どんな意思のやりとりがあったかというと
妹→御坂シスターズ。つまり私のクローンが生産されている。
が出てきて→レベル6シフト計画が後半まで進行している。私のクローンが殺されまくってる。許せない。
いっつーさんとかマジヤバイ→許せないけど、阻止するには一方通行という最強の能力者を倒すなりなんなりしなければいけない。ヤバイ。
俺に任せろ→惚れる。
とまあこんな感じなわけですよ。
なおこの憑依転生者な上条さんに助けを求めるのはこれで五回目です。御坂美琴ボディに入っておいて第六位止まりの私と違って、彼は主人公ボディに憑依転生するに相応しい本当のヒーローだよ。本人は「新約入ったらどうしようもなくなる程度の精神力だよ」とか言ってるけどね。新約って何?
ちなみに昔、上条さんに禁書読んだことある転生者だって教えたら、原作知ってて学園都市に来るとか正気かと言われたよ。まあ治安悪いよねここ。
◆
「うおおおおバリバリ中学生バリアー」
禁書は三巻まで読んだ。だから知っている。一方通行は上条さん一人で倒したわけじゃないって。
それはそれはヒロインの鑑だったわけで、女として生まれたからにはあやかりたいものだ。
でも、だからって。
「肉壁はないでしょーがぁ!」
一方通行さんの貫手を両腕の絶対防御バリアーで受け止める。
知らなかったよ。無敵バリアーってベクトル操作も防げるんだね。これで科学的価値第六位って低すぎやありません?
「からのー、
「ごはッ!」
上条さんは前世でカラテマスターだっていうからね。一発殴るチャンスあればこうもなる。
ちょっと離れた向こう側では、妹の一人がきりもみ回転して吹っ飛ぶ一方通行をぽかーんとした顔で眺めていた。
「じゃあインデックス連れて高級焼き肉店行くか、お前の奢りでな」
「えー、私あの子苦手だなぁ」
「同じ転生者同士仲良くしろよ」
「あいつ転生者じゃなくて去年からの憑依者疑惑あるじゃん!」
「同じ同じ」
「で、この場に残されるであろう
「…………」
「…………」
わからない……! 上条パンチでシーンが幕切れになって、次のシーンは病院だった原作の幕間で、残された御坂美琴が何をしていたのかがわからない……! えっと、この子匿えばいいの……? 別に負傷してないから病院連れてく必要も無いし。
「寮住まいの私には……何もできない……!」
「いやまあ俺もすでに部屋にインデックスいるから、これ以上は手狭になぁ……」
「途端に薄情になりましたね、とミサカは白い目を向けます」
……焼肉は美味しかったです。
――私は一連のこの事件で心底安心していた。
御坂美琴という人物は私一人で、他には居ない。この私から作られたクローンが原作と同じ
この心の内を上条さんに伝えたら軽蔑されるだろうか。