気づいたら周りが大体バンドをしてた件について 作:黒須レイク
「あー、今日もだるい。はやく帰りたい」
「仁志はいつも同じようなこと言ってるな」
「いやだってさわかりきってる授業出る意味無くね?てかわかんない授業もだるいけど」
「まぁまぁ、あと一個で昼休みだからさそこまでは頑張ろうぜ。まぁ本当に辛かったら保健室連れてってやるからさ」
「谢谢」
「なぜ中国語」
そう言って適度に俺のやる気を出させてくれた親友のタケシは自分の席に帰っていった。
キーンコーンカーンコーン
昼休み前の授業が終わりお弁当タイムだ。学校の中で一番好きな時間と言っても過言ではない(授業中爆睡といい勝負)。タケシがこっちにやってきてお互いに弁当を食べ始めた。
おっと、自己紹介忘れてた。俺の名前は南仁志。南(みなみ)が姓で仁志(にし)が名前だ。自分でも思うのだが親は何でこんな方角みたいな名前をつけたんだろうな?まあ別に不自由してるわけじゃないからいいんだけどさ。
「仁志、どうした?弁当食べてるときに何か考え事なんて珍しいな」
ちなみにこいつは親友のタケシ。タケシと言っても目が細くて岩タイプのジムを構えているわけではない。長男で料理が上手いところは同じだが。
「いや、考え事ってほどでもない。なんか自己紹介しなきゃいけない気がして自己紹介してた。タケシの分もしておいたぞ感謝しろ」
「なんだその意味わからん話は」
「気にするな、本当は彼女欲しいなぁとかモテたいなぁとかそういう話だ」
「あー、なるほどな。まぁ俺からのアドバイスとしては一旦落ち着いて周りを見てみろって話だな」
「そんなもんかね」
タケシは少し呆れたようだったが2人でそんな雑談をしていると昼の時間は過ぎていった。
俺の放課後の日課はライブハウスCiRCLEでアルバイトすることだ。ちなみにタケシは実家の羽沢珈琲店というカフェの手伝いで忙しいのだがとある理由があって臨時でバイトに入ったりしている。まぁその辺の理由はまた機会があったら話そう。
いつものように先輩のまりなさんと見た目が結構いかついおばあちゃんのオーナーに挨拶をしてから営業にはいる。
「おい、仁志。あんた今失礼なこと考えただろ」
「いえ、そんなことないです。オーナーの見た目がいかついなって思っただけです」
「はぁ、そうかい。私とかにはいいけどあんまり素直に話しすぎるんじゃないよ」
「うす」
オーナーは見た目に反して結構優しい。
このCiRCLE平日は大体夕方頃から営業が始まる。基本的にお客さんは学校終わりの高校生が多いかな。その中に結構知人が多くてびっくりしてる。そんで大体このくらいの時間に来るのは
「やっほー!仁志先輩!練習しにきたよー!」
元気いっぱいで受付の俺のところに突っ込んできたのは同じ学校の後輩戸山香澄だ。香澄はPoppin'Partyというバンドを組んでいる。
「お、香澄来たな。ほれ、これブースの鍵あんまりはしゃぎすぎて機材壊すなよ」
「そんなことしないよー!じゃあ行ってきまーす!」
元気に走って行ってしまった。
その後ぜぇぜぇ息を切らして香澄のバンドメンバーの市ヶ谷有咲がやってきた。この有咲一年生ながら立派なものをお持ちだ。ナニとは言わないが。
「仁志先輩!香澄のやつ来ませんでしたか?」
「来たよ、ついさっき」
「やっぱりか、あいつ向かってる途中で我慢できなくなったのか走って行っちゃったんですよ」
「あー、なるほどな。だから今日1人だったのか、あいつ本当にバンド好きだな」
「本当ですよね…振り回されるこっちの身にもなって欲しいですよ」
「とか言いながら有咲も楽しんでるんだろ?」
「まぁ…多少は…」
「ならいいじゃねえか、これからもバンド活動がんばれよ」
そんなことをいいながら俺は有咲の頭を撫でる。こいつ結構身長は小さいから小動物感あって可愛いんだよな。
「せっせせせせ先輩!急になんてことするんですか!」
「いやすまん、有咲が可愛くて。俺頑張ってる子好きだし」
「あぁぁ、かわい……すき……って先輩が……鈍感なのわかってるけど……」
顔を真っ赤にして黙ってしまった。そんな感じで5分くらい撫でていると残りのメンバーの花園たえ、牛込りみ、山吹沙綾がやってきた。
「あー、有咲が仁志さんに頭撫でられてるー。いいなー」
「あっ、有咲ちゃん大胆…」
「やるねー有咲」
と三者三様の意見。
「あー!香澄ー!お前の所為だかんなー!」
3人の発言にふと我にかえった有咲は走り出してしまった。
「有咲!部屋番号は6番だから!」
「じゃあ私たちも行きますね」
「おう、がんばってこい!」
そして3人も見送ったのだった。
そんな感じでバンドの子達とたわいもない話をしたりCiRCLEで行われる企画を考えたりしている。
バイトの時間も終わりまりなさんにも帰って良いと言われたので帰ることにした。両親が海外で仕事をしているため夕飯は自分で用意しなければならない。めんどくさいなぁと思いつつもスーパーによって帰ることにした。
「今日は何を作ろっかなー」
なんか適当な歌を歌いながら歩いているとスーパーの前でタケシを発見した。
「おーい、タケシ」
「おっ、仁志か。今帰りか?」
「そうなんだなーこれが、飯の材料買おうと思ってさ…そっちは?」
「家の買い出しだよ。飯食ってないならうち来るか?なんか作るぞ」
「まじ?お前の飯うまいからなぁ行きます行きます」
「あいよ、家に連絡入れるから待ってろ」
「うぃーす」
そういいながらタケシはスマホで家に連絡をとる。
「あっ、そうだ今家にAfterglowの子達いるから」
今、タケシが言っていたAfterglowとはタケシの妹であるつぐみが所属しているバンドで幼馴染の仲良しグループだ。しかも妹のつぐみ以外の4人はおそらくタケシに好意を持っている。リア充爆発しろ。
羽沢珈琲店に到着するともう店の中にはお客さんは殆どおらずAfterglowの子達だけになっていた。
「ただいま」
「おじゃましまーす」
「いらっしゃいませ!仁志さん。お兄ちゃんもお帰り」
真っ先に出迎えてくれたのは可愛らしい格好をしたつぐみちゃんだった。
「あれっ、つぐみ?着替えたの…あ、いやなんでもない」
つぐみちゃんの姿をみてタケシは何か言っていたが俺は特に気にせずつぐみちゃんに空いている席に案内してもらった。
「突然来ちゃってごめんね」
「いえ!そんなのことないですよ。いつでも来てください」
「ありがとうね。つぐみちゃん」
そんな2人を見ながらタケシはAfterglowの残りのメンバー美竹蘭、青葉モカ、上原ひまり、宇田川巴に気になったことを聞いていた。
「つぐみの格好さっきと違うよね?」
「そうですね、タケシさんから電話をもらってすぐに部屋に戻って着替えてましたよ」
代表して答えたのは巴。
「なるほど、いつも通りか」
よく考えたらいつも通りのことだったので納得する。たしかにつぐみは仁志が店に来る時にはいつもおしゃれをしている。というのもこのくだりを見てもらうと察せると思うが我が妹は親友に惚れている。まあ仁志は悪いやつじゃないから正直へんな男に引っかかるよりかは全然いいんだけど。問題は仁志が全く気づいてないことなんだよな。
「タケ兄〜お腹すいたー」
モカが机にぐでーっとしながら話しかけてきた。そういえば飯食わせるために仁志を呼んだんだった。そろそろ作り始めるか。
「ちょーっと待ってろよ。今から仁志の分作ろうと思ってたから一緒に作るよ。みんなも食べてくよね?」
「はい、お願いします」
と蘭が答え、巴もお願いしますと言っていた。ひまりは仁志とつぐみをいかにも興味深々といったように見ていた。返事はないけど多分食べてくだろ。
「じゃあ、少し待っててね」
俺は台所に向かった。
タケシの作った夕飯を食べた俺は家に帰ることにした。つぐみちゃんが今度店に来た時に食べてもらいたいものがあるから来る前に連絡くださいと言っていた。つぐみちゃん考案の店の新メニューかもしれない。楽しみだ。
「今日も学校行ってバイトしたなー」
俺にとって当たり前の充実した日々。こんな日常がいつまでも続けばいいななんて考えてしまった。