早苗さんと神父くん 作:トマトルテ
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神父とか悪魔が行う舌戦の裏側。
平常通りに呑めや歌えやのどんちゃん騒ぎをしている表側。
そこでは酒が回った1人の少女が暴走していた。
「いいですか? 信一さんの髪型はトンスラと言ってハゲではありません。あれは髪型の一種で聖職者としてのアイデンティティーを示すものです。ハゲじゃないんです。由来としてはイエス・キリストの棘の冠を模したとも、聖人ペテロが反キリスト主義者に、頭頂部の髪を切り落とされたのを真似したからとも言われてます。要するにハゲじゃないんです。仏教でいうところのお坊さんみたいに剃っているだけなんですよ。だから、決して、決して! ハゲではないんです」
「まるでトンスラ博士だな、早苗」
酔った勢いでトンスラの説明をガァーっとまくしたてる早苗。
こうなった理由は至極単純。
横で死んだ目をしている魔理沙が『なんでお前の彼氏ってハゲなんだ?』と聞いたからだ。
そこからは酔いと愛の化学反応が起こした独壇場である。
とにかく自分の想い人はハゲではないと、これでもかとばかりに主張し始めたのだ。
これには流石の魔理沙も、虎の尾を踏んでしまったと猛省するばかりである。
誰だって一方的に話されるのは嫌なものだ。
それに、なにより。
「まあ……それにあのハゲは、一応私と一緒に幻想郷に来てくれるという覚悟の証でもあるらしいですし」
「おい、自分でハゲって言ってるぞ」
「おっと、ハゲじゃなくてトンスラでしたね」
ちょいちょい
しかも、ポッと頬を染めて、体を少しクネクネさせながらという気持ち悪さでだ。
ぶっちゃけ魔理沙は魔法をぶっ放したかった。主に早苗の顔面に。
「まあ、とにかく。これで信一さんの髪型がハゲではないことは分かってもらえましたかね?」
「おう……もう二度と聞きたいとは思わない程にな」
「それはよかったです」
魔理沙の返答に満足そうに早苗は頷く。
そこには普段の冷静さはなかった。元から冷静さなんて存在しない?
それは言わないお約束だ。
「霊夢さんも分かってくれましたか?」
魔理沙が納得したので、今度は今まで黙り込んでいた霊夢の方を見る早苗。
「……いや、ハゲじゃないのは分かったんだけど。じゃあ、なんであんたはやめさせないのよ? なに、もしかしてあの髪型が好みなの?」
「ハッ倒しますよ」
そして、霊夢のこの世のものとは思えぬ外道発言にブチギレる。
トンスラが好き? 馬鹿を言ってはいけない。
あの夜に、ロマンティックな空気を一撃で壊された恨みは今も忘れない。
ザビエルの肖像画を逆さ十字に吊るし、火炙りにかけてやろうかと思ったことは数えきれない。
ザビエルの方からすると八つ当たりも良いところであるが。
「そんな顔するぐらいならやめさせないよ」
「それが出来たら苦労していませんよ……この前だって『顔を覚えてもらいやすい』とか意味不明なこと言って断られましたし」
「いや、まあ…確かに覚えやすいのは分かるわ。私も一発で覚えたし」
「なので今度は、河童の労組と一緒にやめるように説得に行くつもりです」
「河童ぁ? なんでそこで河童が出てくるのよ」
確かに信一は西洋河童ではあるが、普通の河童との接点は低いはず。
そう思い疑問符を浮かべる霊夢と魔理沙に、早苗は悲しげに首を振ってみせる。
「信一さんが里でボランティア活動をしているせいで、里内で『あれ? 河童って実は良い奴なんじゃね?』という噂が広がっていましてね? それが河童の畏れが弱まる原因になると河童達が危惧しているんです」
「なに、その無駄に規模の大きい勘違いの渦は?」
これには妖怪退治を生業にする霊夢も苦笑いである。
妖怪は人間を襲い、人間は妖怪を恐れなければならない。
それが幻想郷の基本ルールであるが、一体誰がこんな理由でそれが壊されると思っただろうか。
仮にこれが意図して行われた計画だとしたら、実行犯は相当なキレ者かつ馬鹿である。
普通は考えついてもやらないのだから。
「というか、いくら見た目が河童だからと言っても、途中で人間って気づかないか? そもそも妖怪は、大手を振って里に入ることができないだろ?」
「それはですね、魔理沙さん。信一さんがあまりにも人間離れした行動をしているからです」
「人間離れした行動…?」
額に手を添えて、何かを思い出すように溜息を吐く早苗。
その姿からは、長い間彼女が信一に振り回されてきたのがよく見て取れる。
「生身で悪魔祓いをするのは、まあいいでしょう。そういう職種ですし。でも、雷に打たれて平気とか、1人で教会を作り上げるのとかはおかしいでしょう。木やレンガ、ガラスやその他諸々の金属まで、材料は全て自分で揃えたとか言ってるんですよ? 里の人達からは、子守りから妖怪退治まで、なんでもござれの
朝は職漁師の手伝い。
昼は忙しい主婦の代わりに子守り。
夕方は食事処の手伝い。
夜は妖怪を恐れる猟師の代わりに山に狩りに行く。
忙しい時は素面でこんな日常を送っているのだ。
そりゃあ、早苗や里人達も信一を人間かどうか疑いたくなる。
早苗に至っては、ときたま普通の人間であることをナチュラルに忘れるほどだ。
「だから人間としてみるより、河童として見た方が納得しやすいのか…?」
「恐らくはそんな感じかと。
「河童は好きじゃないけど、この件に関してだけは同情してあげるわ……」
さしもの魔理沙と霊夢も、河童に同情して白目をむくしかない。
幻想郷では人間が空を飛ぶことも不思議ではない。
だが、それが普通かと言われればそうではない。
そして普通でないものに人間は理由をつける。そうすることで安心ができるのだから。
突如起きた嵐を天狗の仕業と。家の中で聞こえるはずのない祭囃子を狸の仕業と。
人間を超えたスペックを見せるのは河童だから。
このように安心するために、信一河童説はまことしやかに広まっていったのだ。
「
「一番あいつを知ってるあんたがそんな態度なのも、噂に拍車をかけているんじゃないのかしら…?」
ついでに言うと、早苗のこんな態度も原因ではある。
それもそうだろう。明らかに親しい間柄の人物が人間扱いしていないのだ。
会っても間もない自分の見立てよりも、正しいと思う人間の方が多いに決まっている。
「というか今思いついたんだが」
「なんですか、魔理沙さん?」
「人間離れしてるのは神の加護とかそういう類なんじゃないのか? 十字の神ってのは外の世界で一番人気の神なんだろ。だったらそのぐらいの恩恵があってもおかしくないんじゃないのか?」
魔理沙の言葉に霊夢はそういうこともあるかと思う。
神という存在は、祈ったからと言って必ず恩恵を人間に与えるわけではない。
だが、その反面。神は気に入った人間は面白い程に贔屓する。
源頼光などが良い例だろう。
彼は酒吞童子を討伐に行く際に神から鬼の毒となる酒を貰っている。
藤原秀郷は八幡神に祈りを捧げた弓矢で大ムカデを討っている。
このように英雄と呼ばれるような人間には、神は人知を超えた力を授けている。
もしかすると信一もそういう類の人間かもしれない。
そう、考えるのだったが。
「ないです」
真顔の早苗にバッサリ切られてしまうのだった。
「……いやに自信満々だな」
「そりゃそうですよ。ずっと一緒に居ましたから」
酔いのせいか恥ずかしがることもなく言い切る早苗。
そんな彼女の姿に、霊夢と魔理沙の方が思わず恥ずかしくなってしまう。
「というか、聖書の神から自分だけに送られた恩恵なんてものがあったら、今頃信一さんは泣きながら大盛りの白米を食べてますよ」
「嬉しさを表す基準が白米なのかよ……」
「コホン…まあ、信一さんの奇特な性格は置いておきましょう。まず、前提条件として、信一さんは自分の信じる神の姿を見たこともなければ、声を聞いたこともないです」
「聖職者なのに? 西洋の神様っていうのは随分ともったいぶっているのね」
神の声を聞いたことがないという事実に、霊夢は意外そうな声を上げる。
それもそうだろう。霊夢は不良巫女ではあるが、道祖神の声を自然に聞けるし、神にお願いをして金属を作ってもらったりなど出来るのだ。そのくせして、神様って本当に居るんだと言うような性格になったのは、どういう訳かと問い詰めたくなるが。
「まあ、西洋の神様というか、基本的に外の世界では神が直接的に人間に関わること自体が減っていましたけどね。ともかく、聖書の神は信一さんの祈りを聞き届けたことはありません。……ただの一度も」
声が一気に低くなり、早苗の目にドロリと濁ったものが映る。
「どれだけ祈ろうとも、賛美しようとも、聖書の神は何もしない。
それなのに信一さんは自分の信仰が足りないからだと、全ては試練だって言うんです。
目の前に
恩恵もなく。慈悲もなく。救いもなく。ただ、苦しみだけを彼に与えていた。
それでも。あの人は自分の神だけに
酔っているせいだろうか。
感情の発露を止められない。
「その信仰の在り方は1人の信徒として尊敬できるものです」
綺麗だと思った。
報われぬ信仰。終わりのない試練へ挑む覚悟。
ただの無関係な人間なら応援すらしていたかもしれない。
ああ、だが、しかし。
「でも、一柱の神としては許せなかった」
彼を愛した神としては、そんな救いのない人生など許せなかった。
「私なら祈りの声に応えてあげる。辛い時は傍に居てあげる。愛を捧げてくれるのなら全力で返してあげる。願いがあるのなら叶えてあげる。
いや、許せないなどという高尚な理由ではない。
もっと、単純に。もっと的確にこの感情を表す言葉があるだろう。
そう。この心臓を締めあげる黒き大蛇の名前は。
「それでも信一さんは、見返りのある信仰じゃなくて―――無償の信仰をとった」
嫉妬だ。
「神である私が保証します。信一さんは聖書の神の恩恵を受けていない。仮に受けているとしても、それは全ての人間に平等に与えられている類のものです。特別なものは何もないんですよ……私なら与えられるのに」
ボソリと。しかし、遠くまで響くような早苗の声に、霊夢と魔理沙は一気に酔いがさめる。
逆に早苗の方は嫌なことを忘れようとでもするかのように、どんどんと酒を呑んでいく。
きっと、彼が人として一番愛しているのは自分なのだろう。
それに疑いはない。安心して信じていられる。
でも。神としてはどうだろうか?
きっと違う。その全ての愛は聖書の神に向いている。
当然だ。それが唯一神を信じるということなのだから。
前はそれでも納得が出来た。信仰の愛と、男女間での愛は違うと。
だが、今は。
「もし叶うなら、私があの人の唯一神になれたらいいのに」
全ての愛を自分だけに向けてほしいと願っていた。
それはただの少女としての独占欲。
ただ、彼女の場合のそれは可愛らしいものではなく、祟り神の血を引くに相応しいものだった。
「あ、すいませんね。なんだか私だけが話しちゃって」
「べ、別にいいわよ。ね、魔理沙?」
「こっちにふるなよ、霊夢…ッ。と、まあ酒の席なんだ。それぐらい気にするな。そういえば、ずっと一緒に居たって言ってたが、いつからなんだ?」
「あ、聞いちゃいます? 聞いちゃいます? いやー、長い話になりますけど聞かれたからには答えないわけにはいきませんねー」
そんな恐ろしい表情を見せる早苗に、肝が冷えたのか話題の転換を図る魔理沙。
するとそれが功を奏したのか、今度は一転して機嫌のいい表情に変わる早苗。
もっとも、その変わり身が霊夢達にとっては逆に恐ろしかったのだが。
「そう。あれは私達が6歳の時でした……」
ついでにこれからの惚気話は、長くなるだろうなという絶望も感じながら。
「お、信一。良いところに来たね。せっかくなんだからお酌してよ」
「なぜ我がそのようなことをせねばならんのだ。邪神諏訪子」
「人間が神にお酒を捧げるのは普通のことでしょ?」
「それは神道の価値観だろう。キリスト教徒の我には関係ない」
「あら、日本には目上の者にはお酌する文化があるのを忘れたのかしら?」
「神奈子殿……」
お互いに負けを認めることなく終わった、レミリアとの舌戦の後。
信一は良い感じに酔っぱらった諏訪子と神奈子に絡まれていた。
「それにお目当ての早苗なら今は女子会の最中よ」
「……いつ、我が早苗を探していると言いましたかな?」
「あははは! 私達を見て、すぐに他に人が居ないか探してたじゃない?」
「そもそも、私達のとこに来たのも早苗目当てでしょ?」
そこまで言い当てられてしまうと、照れ隠しも言えずに黙り込むしかなかった。
二柱はそんな信一の姿を、最高の肴だと言わんばかりに美味そうに酒を飲み干す。
年寄りは若者の困る姿が好きだというが、どうやら本当のことらしい。
「ほら、杯が乾いたから早く注いでよ」
「もちろん、貴方も呑んでいくわよね?」
「はぁ…仕方あるまい」
もう逃げられないと悟り、信一は若干投げやり気味に二柱の盃に酒を注ぐ。
そして、今度は二柱から酒を注いでもらい一気に飲み干す。
「お! いい飲みっぷりだねぇ」
「しかし、早苗もそうだけど坊やもお酒を飲める年になったのね。感慨深いわ」
「ただ単に外の世界の法律がなくなっただけどね」
「それは言わない約束よ」
そう言って心底愉快そうに笑い合う諏訪子と神奈子。
もっとも、信一の方は酔った人間がこれほどまでに面倒な存在なのかと、頭を抱えたい気分であったが。
「まあ、それでも2人が成長したのは事実だけどね。特に最近は早苗の成長が著しいし」
「早苗の成長?」
「お、流石は彼氏だね。彼女の話には興味津々だね」
「…………」
こいつ、うぜぇ。
そんな態度を隠そうともせずにジト目で諏訪子を睨む信一。
だが、そんな視線ごときで酔っ払いが怯むわけもない。
むしろ、『図星? 図星? ねえ、ねぇ、図星?』とさらに煽るありさまである。
「
「邪神に近づいている?」
「自分以外の神に祈ることに嫉妬するところとかかな?」
「共同統治なんてものをしていた神がそれを言うか」
「ククク…! 忘れた? そもそも共同統治なんてことになったのは、私以外の神に祈ることで祟られないかって恐れたからだよ。そういう性格でなきゃ、初めから恐れられたりなんかしない」
ベロリと舌を出して、挑発するように動かしてみせる諏訪子。
自ら以外の信仰は許さない。唯一神にも似た考えは何も一神教だけのものではない。
日本でもお犬様の神社を勧請してきたら、氏神である狼の怒りをかったという話がある。
そもそもの話、浮気というものがあまりよく捉えられない。
「で、神様は何も人間を祟るだけじゃない。ちゃんと恩恵を与える」
自らを信仰してくれたものに恩恵を与える。
それは何も、お賽銭や捧げものだけの関係ではない。
もっとシンプルに考えられるものだ。
「神が人を愛し、人が神を愛す。そうなることで人間は神からの恩恵を受けることが出来る」
「恩恵の欲しい欲しくないに関わらずにね」
相互間での愛情。それもまた、れっきとした信仰となる。
天の主が人間を愛し、人間が主を愛す。キリスト教の信仰と変わらない。
これは
「……何が言いたい?」
だが、何も
「んー? もし、神と人間が恋をしたら、確実にその人間は恩恵を受けるって話だよ」
男女間での愛というものもある。
「それは……早苗の神としての恩恵を、我が受けているということか?」
「さあ、そこら辺は本人達の気持ち次第だからね。私達には分からないよ」
ふと、信一の頭の中にそんな言葉がよぎる。
「ああ、でも。もし早苗が恩恵を与えているなら、雷が落ちて崩壊した小屋で生き残る奇跡。人間離れした鍛錬を耐え抜く奇跡。……こんなことも可能かもしれないね」
「便利な恩恵ね。努力を怠らなければ奇跡という偶然を起こしてくれるんだから」
諏訪子と神奈子はニヤニヤと笑いながら杯の中の酒を回す。
これだけの話ならば、ただ単に2人の熱い仲を冷かしているように見えるだろう。
しかしながら。
「ただ。そんな恩恵を受けてる人間を―――天の主とやらはどう思うんだろうね?」
あなたの神はこのわたしだけだ。
わたしは嫉妬深いから、わたしとほかの神を同時に愛することは許さない。
信一の頭に聖書の一節が思い出される。
主は嫉妬深い。妬みの神とすら言われるほどに。
だとすれば、他の神にうつつを抜かしている人間に声をかけるだろうか?
勝手に他の神から恩恵を受けている人間に、恩恵など与えるだろうか?
常に他の神の傍に居て、声を交わす者にその姿を見せるだろうか?
「私ならそんな浮気者は無視をするね」
諏訪子の言葉が答えだった。
早苗という神の恩恵を受けていれば、主が微笑むはずもない。
不信者へ裁きを下す。もしくは信徒とは見なさずに無視をする。
他の神を愛する者を、愛すわけもない。
「……何が言いたい」
「やっぱり
冗談めかした口調で告げる諏訪子だが、その目は本気だ。
早苗を愛し続けるなら、主への信仰は諦めなければならない。
主の愛を受けたければ、早苗を愛するのを諦めなければならない。
どこまでも重い詰問。だが、しかし。
「何度も言わせるな。信仰を捨てず、早苗と共の道を歩む。その両方を選び取ってみせる」
信一は最初から決まっていたとばかりに即答するだけだ。
「都合の良い考えね。本当にできると思ってるの?」
「無論―――神は乗り越えられぬ試練は与えぬ!」
できると思っているのか。
そう厳しい顔で問い詰める神奈子に対し、信一は言い切ってみせる。
瞳に燃えるような情熱を宿しながら。
「聖書では人間は神を模して作られたとある。そして、神は全知全能」
「それがどうしたと言うのかしら」
「人が神を模されたというのなら、人間には
それは完全に信一個人の解釈だ。
人間は全知全能にはなれない。しかし、全ては出来ずとも限界はない。
不可能を可能に変えることは出来るはずだ。
そう言っているのだ。
「主は許さないと言われた。しかし、不可能とは言ってはおられぬ。
キリスト教と言えど家族を持ち愛することはあるのだ。
ならば我は、早苗の愛は混じりけのない家族愛だと誤解を解く。
そして、主への
他の神を愛しています。でも、これは家族愛だからセーフ。
信一は、要はこういったことをやろうとしているのだ。
「……神ではなく、ただの人間としての早苗を愛しているってこと?」
「神でも人間でもない。我は東風谷早苗という個人を全身全霊をもって愛しているだけだ」
「ぷ…ハハハハハハッ!!」
真顔で堂々と惚気を言い切る信一に、堪えきれないといった様子で大笑いする二柱。
それでも信一は表情を変えずに、否。むしろ誇らし気に胸を張ってみせる。
それだけでも分かるだろう。彼の本気の愛情が。
「ホント、早苗は良い男を捕まえたよ。でもね、女の子は」
しかし、だからこそ祟り神は確信するのだった。
この男はやはり、乙女心というものが理解できていないと。
だから。
「神様でなくても、自分だけを見てほしいものなんだよ」
いつの日にか、2人は大喧嘩をする日が来ると予言してみせるのだった。
女の子の嫉妬っていいですよね(真顔)