早苗さんと神父くん   作:トマトルテ
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六話:神様は大体お節介焼き

 『セックスしないと出られない部屋』。

 その微妙に流行に乗り遅れた張り紙の前に、2人の男女が取った行動は。

 

「うわぁ、本当にあるんですね。写メ写メっと」

「雨が止むまでどのみち出て行けんのだ。しばらく寛がせてもらおう」

 

 特に慌てることもなく呑気なものであった。

 何かあれば、取り敢えず写メるという現役JKらしい行動に出る早苗。

 張り紙などなかったと言わんばかりに、椅子に座り寛ぎ始める信一。

 

 甘い空気など欠片も存在しない。

 

「信一さん、雨が止むまで暇ですしポーカーでもしません? 奇跡のロイヤルストレートフラッシュを見せてあげますよ」

「奇跡を起こせる汝が言うとイカサマ宣言にしか聞こえんな」

「直接カードに何かをするわけじゃないので、セーフです」

 

 2人の空気はどちらかというと修学旅行。

 今日は寝ないで朝まで遊ぼうぜ! という定番のアレだ。

 今夜は寝かせないぞ? と言ってることは変わらないのに、実態は大きく変わる言葉のマジックである。

 

 しかしながら、そんなことでは天井(てんじょう)から見ている側からすれば面白くとも何ともない。

 

「……やっぱり手ごわいね」

「流石は私の風祝。……というよりもあの2人らしいってだけでしょうけどね」

 

 野次馬根性を全開にして、屋根裏で小屋の中の早苗と信一を観察している2人組、もとい二柱。

 そう。全ては下世話な日本の神様の偉大で尊大な計画だったのだ。

 またの名を要らぬお世話というやつである。

 

「で、どうする? あの2人のことだから、このまま何時間でも遊び続けると思うよ」

「このまま閉じ込め続けて根競べというのもあるけど、私にも縁結びの神、大国主の子としてのプライドがあるわ」

「だったらこっちから仕掛ける? ただ待つだけなんてつまらないし」

「勿論よ。さあ、見せてあげましょう。神の()()を」

 

 小屋の中を盗み見ながら神奈子は自信満々に笑う。

 そもそも東風谷早苗の起こす奇跡とは、信仰する二柱の力を借りたものに過ぎない。

 今となっては、風祝自体に信仰が集まったこともあり、早苗固有の能力となりつつはあるが、根本的な所は変わらない。

 

 つまり、東風谷早苗に出来ることで、諏訪の神に出来ぬことはないということだ。

 

「またの名をTo LOVEるな奇跡だね」

 

 諏訪子がゲッゲッゲッと下品な笑い声をあげる。

 そう。二柱は今から自らの権能(ごんのう)を用いて2人をウフン、アハンな展開へと導こうというのだ。

 彼女達を本気で信仰していた者達が聞いたら、悲嘆の涙にくれることは間違いない。

 

「まずは小手調べ。何もないところでコケて相手の胸に飛び込む奇跡よ」

「おー、まさに王道だね。女子高生のピチピチのおっぱいに触れて理性を保てるかな?」

 

 しかし、当の本人達は今を楽しむので精一杯である。

 神奈子は早速とばかりに神の力を行使して、奇跡(ラキスケ)を起こす。

 

「む?」

「あ…ッ」

 

 そして、神の意図したとおりに何もないところでこける人間。

 驚いたような声を上げるがもう遅い。

 何かに掴まって踏みとどまることも出来ずに、相手の胸の中へと飛び込んでいく。

 そう。―――硬く、筋肉質な信一の胸の中に。

 

『逆だ!?』

 

 思わず声を揃えてツッコミを入れてしまう神奈子と諏訪子。

 しかし、すぐにこのままではバレてしまうと気づき口を塞ぐ。

 幸いなことに信一と早苗、双方に気づいた様子はなく、抱き留め合う形で固まっている。

 

「す、すいません。何故だか足がもつれて」

「別に気にしてなどいない」

 

 慌てた様子でパッと信一から離れる早苗と、無表情ながら目を逸らす信一。

 意図した作戦とは大分変わってしまったが、それを見て二柱は悪くない反応だと思う。

 

「結構いい感じになったわね」

「これならもっと攻めれば簡単に落ちてくれそうだね」

「恋だけにってやつかしら?」

「ふふふ、上手いでしょ? ま、そんなことより次は私の番だね」

 

 クツクツと笑いながら、次は自分の番だと諏訪子が意気揚々と前に出る。

 

「神奈子が胸なら、私は下半身だよ」

「つまり?」

「こけた拍子に服を掴んで、そのままパンツを露わにする奇跡さ」

「ベタね。でも、だからこそいいわ」

 

 再び始まる神々の奇跡(はためいわく)

 悲しいことに、今度もまた神の力は存分に振るわれてしまった。

 まさに奇跡としか言いようがない程に、何もないところで足が滑る。

 当然、藁をも掴むように手を伸ばし、相手の衣服を剥ぎ取ってパンツを表出させるのだった。

 

 信一のパンツを。

 

『だから逆ッ!!』

 

 またしてもの事態に、思わずズッコケてしまう二柱だが、中の2人はそれどころではないので気づかない。信一のズボンを引きずり落とすというラッキースケベを起こした早苗は固まり、そんな彼女を信一は冷ややかな視線で見下ろしているのだ。色気も糞もない。

 

「ふぅ……早苗よ。汝は天然、暴走、アホ、という属性を既に持っているにも関わらず、今度はドジっ娘属性まで手に入れようと言うのか。いささか強欲過ぎはしまいか? 理解に苦しむ」

「してませんよ!? 本当に何故か足がもつれただけなんです!」

「だから、天然のドジっ娘ですとアピールしなくともいい。少々痛々しいぞ」

「信じてくださいよーッ! あと、暴走とアホは取り消してください!」

 

 冷めた目でズボンを穿き直す信一に、縋るように訴える早苗。

 こんな光景を見せられては、セックスしなければ出られない部屋など頭に残らない。

 故に、仕掛け神である二柱も諦めたように、溜息を吐いていた。

 が、しかし。

 

「あッ!」

「ぬお…ッ」

 

 奇跡は起きた。

 

 ズボンを穿き直す際中かつ、早苗に縋りつかれていた為に裾を踏んで足を滑らせる信一。

 そんな信一を掴んでいたため、なおかつ体重差があるために自動的に引っ張られる早苗。

 このままでは2人揃って怪我をすると思い、信一は柔らかい着地点―――ベッドに落ちる。

 早苗が押し倒したように、立派な胸が潰れる程に密着して折り重なる2人。

 その光景は紛うことなき。

 

『ベッドイン来たーッ!!』

 

 ベッドインであった。お赤飯を炊かないと(使命感)。

 

「流石、奇跡の巫女早苗。奇跡は起こるものじゃなくて起こすものと言わんばかり! そこに痺れる憧れるぅ!」

「早苗……ずっと子どもだと思っていたけど、貴方も一人前になっていたのね」

 

 相手の体にこれでもかと密着し、お互いの鼓動すら感じられる距離に完全にフリーズする2人。

 二柱はそんな2人の様子を見ながら、喜びを分かち合う。

 神奈子にいたっては何故か嬉し涙を流している程だ。

 

「あ、あのー、ごめんなさい。すぐに退きますね!」

「……待て、早苗」

「し、信一さん…ッ。な、なんで抱きしめて…!」

 

 信一の体温をボーっと感じていた早苗だが、そんな自分を客観的に認識し、恥ずかしさから何とか意識を再起動させて退こうとする。だが、その背中に力強い腕を回されて動けないように固定される。その突然の行動に、せっかく再起動した頭もすぐにショート状態に戻り、どうしようもなく頬の熱が上がっていく。そして、否応なしに考えてしまう。これから行われるであろう()()を。

 

「も、もしかして本気で私のことを――」

 

 抱こうとしているのかと、早苗が聞こうとしたところで。

 

「動くな、曲者(くせもの)だ」

 

 信一が彼女の頭上に、つまりは二柱が隠れ潜んでいる天井に枕を投げた。

 それはもう、枕が空気抵抗で半分に折れてピッタリとくっつき合う程の勢いで。

 

「ええ!?」

「バレた!?」

 

 天井越しに、しかも相手はただの人間ではなく正真正銘の神々。

 枕ごときで、否、人間の身で何かダメージを与えられるはずもない。

 しかし、遂に情事が始まるのかと、期待して身を乗り出していた二柱を驚かせるには十分だ。

 そこに居ることと、声で正体が何者であるかが分かれば良い。

 そうすれば。

 

「……神奈子様? 諏訪子様…?」

「ヤバい、バレた!」

「さ、早苗。少し落ち着きなさい…ね?」

 

 早苗が気づく。人から神へと至った少女が二柱に敵意を向ける。

 

「なーんか、おかしいと思っていたんですよ。現人神の私があんなドジをするなんておかしい。でも、神様2人の力なら現人神である私にも干渉できる」

 

 ゆらりと、まるで幽鬼のように表情の無い早苗がゆっくりと立ち上がる。

 基本的に彼女は温厚な性格かつ、信心深いので自らの神に反攻することはほとんどない。

 そう、()()()()だ。

 

「神奈子様、諏訪子様。私だって怒るんですよ?」

「待ちなさい早苗! 謝るから落ち着きなさい!」

「そうだよ、幾ら反抗しても風祝である以上は私達には勝てないんだよ」

 

 風祝である以上は二柱の存在無くては成り立たない。

 早苗は二柱を越えることは出来ない。しかしながら、越えることが出来ないだけだ。

 彼女は現人神。単なる人間がかんしゃくを起すのとは訳が違う。

 

 例え、主たる神に届かなくとも。

 いや、届かないからこそ、怒りで我を失った早苗は。

 

「出来る出来ないじゃない、やるかやらないかです!」

「ちょッ! その詠唱は…ッ」

「不味いなぁ、私が雨雲を集めてたせいで、詠唱も最小限ですんじゃう……」

 

 100%やらかす。

 

「天雲よ! 暗き空を切り裂き、神鳴る(いかずち)を降らせたまえ!」

 

 尋常ではない雷鳴が辺り一帯に響き渡り、今から何が起こるかを知らせる。

 もう止められないと、二柱が諦めた顔で空の見えぬ天井を見上げ、これから来るものを待つ。

 

「ファイト一発ッ! 早苗サンダーッ!!」

 

 巨大な雷が小屋へと落ち、容赦なく粉砕していく。

 二柱が危惧し、結局防げなかったものとは、そう。

 

「加減を知らんか! このアホ巫女がッ!!」

 

 爆発オチだ。

 

 

 

 

 

「で、何か申し開きはあるか?」

「カッとなってついやってしまった。今は反省してます」

「よし、歯を食いしばれ」

「ちゃんと謝ったのにぃー!?」

 

 正座させた早苗に向け、冷たい目で拳を振り上げる信一。

 その本気の殺意に対しては、さしもの早苗も平謝りするしかない。

 因みに神奈子と諏訪子は、爆発して粉々になった小屋の瓦礫の上で苦笑いをしているだけだ。

 

「そもそもの話、なんで私だけ怒られてるんですか! 元はと言えば、神奈子様と諏訪子様が変な部屋で、私達を罠に嵌めようとしたからじゃないですか!」

「ヤリ部屋だけにハメるかい? 早苗も下ネタを言うんだねぇ」

「違いますよ!? なに、私に変な属性を付与しようとしてるんですか、諏訪子様!」

 

 ケラケラと笑いながら早苗をからかう諏訪子に、再び怒りを見せる早苗だが、先程のことがあるので爆発することはない。諏訪子のからかいはそれを読んだ上でのものだ。何とも祟り神らしい陰湿さである。

 

「というか、今一番気になっていることは信一さんが無傷なことなんですけど。なんで、神でもない普通の人間が爆発に巻き込まれて平然としてるんですか?」

「日頃の鍛錬と信仰のたまものだろう」

「私が言うのも何ですけど、信一さんって本当に人間?」

「純度100%の人間だ、たわけ」

 

 爆発に巻き込まれたというのに無傷で、あろうことか元気に自分を叱っている存在が人間だとは到底思えないと、早苗は白目を向ける。

 

「しかし、まあ汝の言い分にも一理ある」

「え? やっぱり人間じゃないんですか!」

「そっちではない。大元の原因が邪神と神奈子殿にあるということだ」

 

 そう言って、剣呑な目のまま視線を二柱の方にずらす信一。

 しかし、流石は神と言うべきか、二柱は彼のまなざしを涼しい顔のまま受け止める。

 

「なにゆえ、このような戯れをしたのだ? 邪神よ、答えろ」

「既成事実でも作れば改宗するかなぁーて思ってね。後は思い出作り?」

「そんな憶測で私の貞操は捨てられそうになってたんですか!?」

 

 かなりいい加減な理由で、身の危険に晒されていたことを知り、怒りをぶり返させる早苗。

 だが、続く神奈子の言葉で瞬時にその気勢を削がれるのだった。

 

「あら、本気で嫌がってたわけじゃないでしょ?」

「な、何を言ってるんですか? 神奈子様……」

 

 ビクッと、体を震わせながら、早苗はぎこちなく神奈子の方に顔を向ける。

 より正確に言えば、赤くなった顔を信一から逸らすためである。

 

「貴方、あの部屋に入ってから一度も慌ててなかったじゃない。それはつまり、最悪そういう事態になっても、悪くないって思ってからじゃないかしら?」

「そ、そそそんなこと思ってるわけないじゃないですか! 現役のJKの貞操がそんなに安いわけねーですし!」

「慌てすぎて変な口調になってるわよ、早苗」

 

 アタフタと全身を震わせながら必死に否定する早苗。

 そんな彼女の姿に、流石の信一も感じ入ることがあったのか、助け舟を出す。

 

「そういう行為は()()()()者がやるべきことだ。我と早苗には相応しくない」

「ふん!」

「なぜ、我を叩く? 限りなく正しいことを言っただけだが?」

 

 しかし、その助け舟は早苗を不機嫌にしただけで終わってしまう。

 ムスッとハブてた表情を見せる早苗に、信一は困惑したように彼女を見つめる。

 そんな2人だが、神奈子と諏訪子は彼の言葉の真意に気づき、抑えきれずにニヤニヤと笑う。

 

「そうだよねぇ、()()()()者がやる行為だよねぇ」

「……何だ、邪神諏訪子。その嫌らしい顔は?」

「いいやー、確かに片方だけじゃ愛し合ってるとは言わないよねー」

「…………」

「もしかして、自覚無し? まあ、ここら辺でやめておいてあげるよ」

 

 祟り神に相応しい、敢えて言うならばお節介なおばちゃんのような表情を見せる諏訪子。

 そんな様子に、信一は内心で苛立ちを見せるが、得意の無表情でそれを押し隠す。

 そして、話題を変えるようにいつもと同じ返答を繰り返すのだった。

 隣の少女に自身の気持ちを悟られないように。

 

「……何を言われようとも、我が信じる神を変えることはない」

「本当に? この先何があっても?」

 

 少年が隠すことを選んだのは、これから先も少女との日々が続いていくと思っているからだ。

 だが、終わりの無いものなどない。全てに変化は訪れる。

 何より神とは、平穏に堕落した人間に試練を与える存在だ。

 

「何が言いたい……邪神」

「私達に鞍替えしないと、早苗のことを()()()()?」

「――諏訪子様それは!」

「黙っていなさい、早苗。坊やには知る権利がある」

 

 諏訪子の告げた内容に早苗が慌てて声を上げるが、神奈子の一声で口を(つぐ)まされる。

 そんな三人のこれまでとは違う様子から、信一も只事ではないと佇まいを直す。

 

「……詳しく聞こうか、神奈子殿」

「簡単に言うとね。私達は信仰の薄れたこの世界から、幻想郷という場所に引っ越しをするの」

「話の流れからして、そこがもう二度と会えない場所のようなものだとは分かる。だが、忘れるとはどういうことだ?」

 

 遠く離れた場所に引っ越す。それだけであれば、何も珍しいことではない。

 現代社会であっても、否、現代社会であるからこそ地球の裏側まで行くこともある。

 だが、しかし。幻想郷に行くというのはそのような単純なものではない。

 

「幻想郷は世界から忘れられた者達が集う場所。普通なら忘れ去られた結果として、そこにたどり着く。でも私達は違う。自分達から幻想郷に行くのだから、その存在は世界から忘れ去られる。特に、神でも妖怪でもなく、人である早苗はね」

 

 早苗は現人神であるが、結局の所は“人”である。

 何百、何千と生きてきたわけでも、妖怪のように概念が抽象化された存在でもない。

 だからこそ、彼女は伝承として残ることすらなく、本当の意味で忘れ去られる。

 

 幼少の時より共に過ごしてきた少年の記憶の中からすら。

 

「もし、早苗を忘れたくないと思うのなら私達についてきなさい。私の信者なら連れていける」

「……そこに我が主はおられるか?」

 

 キリスト教をやめて、自分の信者になれと言う神奈子に信一が頷くことはない。

 主を信じることをやめるなど、神父である彼には口が裂けても言えるはずがないのだから。

 例え、幻想郷に行くのだとしても、それだけはやめることが出来ないと暗に告げる。だが。

 

「言ったでしょう。幻想郷は忘れられた者達が集う場所。同じ神として悔しいけど、聖書の神が忘れ去られることはまずあり得ない。ユダヤ教・キリスト教・イスラム教という圧倒的な信者の数、信仰の深さ、何より神は居るという所から全てが始まる宗教観は、幻想郷とは相性が最悪ね」

 

 その偉大さ故に、幻想郷に聖四文字(YHVH)が行くことはあり得ないのだ。

 何より、主は人の信仰の薄れを感じ取れば、ノアの大洪水のように滅ぼすことも(いと)わない。

 愛と罰を司る神格は決して人を逃しはしない。否、人が逃れることなど出来ないのだ。

 

「なるほど……神の居る世界に残れば早苗を忘れ、早苗を忘れなければ神を捨てるというわけか」

「そう言うこと。さあ、改めて問わせてもらうわ」

 

 だからこそ、これは試練なのだ。

 信仰の強さを、人間の意志を見るために神から与えられし試練。

 

 

「早苗と信じる神。貴方はどちらを選ぶかしら?」

 

 

 嘘や、虚実は許さないとばかりに真紅の瞳が信一を射抜く。

 その視線に彼にしては珍しく目に見える動揺を見せる。

 否、視線ではなく、問われた内容がそれだけの動揺を生み出すものであったのだ。

 

「我は………」

 

 だから、その声にいつもの強さはない。

 答えることが出来ない。悩んでしまっているのだ。

 どちらを選択すればいいのかと。

 

 このまま時間をかけて悩めば、あるいはこの場で答えが出せたかもしれない。

 しかし、答えを出されることを望まない者がこの場には居た。

 

「やめてくださいッ!」

「早苗……」

 

 遂に我慢が出来なくなったのか、神奈子の言葉に逆らい震える叫びを上げる早苗。

 

「神奈子様、諏訪子様。信一さんは何があっても神を捨てません」

「なんでそう言い切れるの?」

「それが信一さんだからです」

 

 理由になっていない。何の説明でもない断言。

 しかし、その言葉は当の信一からしても納得のいくものであった。

 唯一絶対の神を信じることこそが、西山信一たる理由なのだ。

 

 神を信じ無くなった自分など想像できるはずもない。

 神を信じる人間がそう簡単に神を捨てられるはずがない。

 その信仰が深ければ深い程に執着も深くなるのだから。

 そして、それは。

 

「早苗……汝も神を捨てることが出来ぬのだな」

「当たり前です。私は守矢神社の風祝。神を捨てるなんて到底できません。だから、私は二柱に従い幻想郷に行きます」

「そうか……」

 

 早苗は迷いを感じさせない強い口調で言い切る。

 あるいは、迷いなどないと自分自身を騙すために、敢えて強く言っているのか。

 神ならざる信一には分からなかった。ただ。

 

「すいません、私は先に帰らせてもらいます」

 

 彼女がこれ以上自分と話すことを避けているのだけは分かった。

 しかしながら、それが分かったからと言って、今の信一には呼び止める言葉も返す言葉もない。

 

「あー、すねっちゃったね。後で機嫌を直しておかないと」

「私達も帰らせてもらうわ。……色よい返事を待っているわ」

 

 早苗に続いて諏訪子と神奈子も帰って行く。

 その後ろ姿を追うこともなく、信一は黙って空を見上げる。

 自らの神がいるはずの空を。

 

「主よ……我は何故こうも迷っているのでしょうか」

 

 神へと問いかける。だが、答えはない

 声をかければ返事をしてくれる守矢の神とは違う。

 姿も見えねば、声を聞くことすらできない。触れることなどもっての他だ。

 

「何故―――少女ではなく主を選ぶと答えられなかったのでしょうか?」

 

 故に、何度問いかけようとも、神が彼の声に応えることはない。

 

 

 

 永遠に。

 




シリアスですね。
りゆうは終盤に入ってきたのと。
あとはギャグテンションが続かなくなったからですかね。
すいません、もう少しで完結させます。
はやく、別の物語を書きたくなりまして。
まあ、ちゃんと完結させるのご安心を。
ええ、しっかり終わらせます。
ふっかつする可能性もありますけど、一区切りですね。
りそうとしては天地創造と合わせた7日(7話)で終わらせるつもりだったので。



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