明石な審神者と刀剣男士   作:よしの桜

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ちょっと蜂須賀の性格がわからなかったので遅くなりました。


明石な審神者と演練大好き刀

審神者の睡蓮は基本本丸を出ることはないがゴロゴロする、もとい休むにはそれなりの事務仕事をこなさないといけない。

今日は初期刀山姥切が短刀達と出ていたので代わりに蜂須賀虎徹が審神者の補佐をしていた。

蜂須賀はこんのすけの助言を聞きながら、慣れないパソコンと向き合い書類のチェックを素直にこなしていた。

 

頃合いを見て、蜂須賀は睡蓮に休憩を申し出た。

 

「1時間集中して書類作業をしたからね、そろそろ休憩をした方が良いと思うよ」

「・・・いまだかつて、俺は休憩しようと労わってもらった事がなかったよ、蜂須賀」

「それは睡蓮様が他の皆様が休憩を言い出す前に勝手に休んでいるからですよぅ」

 

お茶が出されている机に移動して、ほっこり休んでいると蜂須賀は申し訳ない顔で茶菓子をだす。

 

「この本丸は料理上手な刀がまだいないから、既製品のお菓子で申し訳ないけど用意したよ」

「いや、十分だよ」

「早く歌仙が来ると良いなぁ。彼の料理とお菓子は絶品らしいね」

「いやいやいや! 君達の料理とお菓子は十分美味しいよ!!」

 

歌仙と折り合いの悪い(見習い時代に経験済)睡蓮は思いっきり顔を横に振って、昨日の夕食の蜂須賀の手料理の美味しさを語ると、蜂須賀は少々頬を赤らめて笑った。

 

「俺も刀だからやはり敵を倒したい。けれどまだまだレベルが低くて刀装を良く破壊してしまってすまないね」

「いや、刀装は消耗品だから気にしなくていいから」

「そうか・・・いや、刀装も経費がかかるし気になるよ。だからまだ人数は足りないけど演練に出たいのだが」

 

じぃっと見つめてお願いを言ってくる蜂須賀に睡蓮はちょっと下を向く。

 

はっきり言って演練に行くのがめんどくさい。

山姥切にだったら素直に言えるが、蜂須賀には言うのがちょっと恥ずかしい。

 

蜂須賀にため息をつかれちゃうかな、とチラリと視線を上げると蜂須賀は右手に小さなカギを持って睡蓮に見せる。

 

「これは何のカギだと思う?」

「ん? あ、それは?!」

 

数秒考え、慌てて立ち上がり棚のとある場所に手をやる。セロハンテープで張ったカギがない。

 

「巧妙に隠れているけど、その棚の下、小さな冷凍庫だね?」

 

にこにこ笑う蜂須賀に、冷や汗が出る。

 

「そして、そこにあるのはハー〇ンダッツ。ちょっとお高いアイスクリームだったかな」

「・・・・!」

「主はお風呂上りにそのアイスを食べるのが殊更好きみたいだね」

「・・・・!」

 

ばれてる、と心中つぶやく睡蓮に蜂須賀がとどめを刺した。

 

「山姥切も主と同じく抹茶味が大好きだって前に言っていたよ?」

「や、山姥切が戻ったら演練、行ってみようか、蜂須賀」

 

睡蓮が負けを悟って演練に誘うと、蜂須賀は花の様な笑顔を見せた。

 

 

 

***

 

「ほら、主は歩くのが好きじゃないんだろう? これに座ると良いよ」

「いや、好意だけもらっておくよ。ありがとう、蜂須賀」

 

隊長を山姥切に、蜂須賀他2名を連れて演練会場に入った所、蜂須賀がすばやく入口にあった車椅子を引いて持ってきたので睡蓮は全力で断る。

 

「主、遠慮はしなくてよいぞ。俺達が超特急で試合場まで運んでやる」

「山姥切も、好意だけもらっておくよ」

 

試合場はちょっと離れているのでぞろぞろと歩いていたが、睡蓮はいやな予感に襲われた。

 

自動販売機にフードコーナー、喫茶店にレストラン。なぜかそれらを横切る形になっているので睡蓮は短刀ではなく、己の初期刀の襤褸布をしっかり握った。

 

案の定、良い香りがするたびに山姥切がふらりとそちらに行きそうになるので引っ張る。

 

「主、あの美味しそうな丸い団子が俺を呼んでいるんだ、行かせてくれ」

「あ~、あれはお前だけじゃなく財布が重い全ての刀を呼んでいるんであってお前は呼んでないぞ」

「氷が細かく刻まれているぞ、あれなら試合前に食べても大丈夫だ」

「ダメです。あれは食べたら舌に色がつく食べ物なんだ。相手に笑われちゃうよ」

 

遅々として進まない審神者と初期刀コンビに、蜂須賀が苦笑して振り返る。

 

「では、今日一番手柄を立てた刀が帰りに食べたい物を指名する権利をもらうっていうのはどうだい?」

「そうだよ主さん! ボクだって選びたいな!」

「こんのすけにはお土産買っていけば納得してくれるぜ!」

 

乱と愛染も加わってきたので、睡蓮はあいまいにうなずいた。

 

「まぁ5人プラスこんのすけなだけだから、お財布的にはOKだけど」

「良かったな、山姥切」

「ああ、今日の誉は誰にも譲らない」

 

 

当然ながら、初心者レベルの山姥切チームは負けに負けたが、倒した人数が多かったのは意外な事に蜂須賀だった。

 

落ち込む山姥切だったが蜂須賀も打刀、それも名刀なので「じゃぁこの店で」と指さした店はうなぎ店だった。

 

「特上うなぎ定食」

「特上大盛うなぎ定食」

「レディースうなぎ定食お願いね!」

「俺は主と一緒にするからウナギ定食2つ。あと土産用のうな重1つ」

 

茶で、と注文しようとした睡蓮を察し、最後に愛染がさっさと注文してパタンとメニュー表を閉じる。

店員は乱の注文に動じることなく復唱して去って行った。恐らく他の本丸の乱もレディースを堂々と注文するのだろう。

 

「アンタ、詰めが甘いな。俺なら牛丼屋だとでも思ったんだろうが、俺以外だったらここと大差ない出費だと思うぞ」

「う~ん、ボクだったらイタリアンだったなぁ」

「俺だったら寿司だな!」

「寿司とイタリアンか、どっちも良いね。でも、うなぎって一度食べてみたかったんだ」

 

目を輝かせる蜂須賀に、短刀2人も「まぁ、僕も興味あったんだよね」と仲良くうなずく。

 

演練が終わって夕食を外で食べて本丸に帰ると既に7時。

目を輝かせて土産のうな重を食べるこんのすけを見ていた睡蓮に、腕まくりをしながら山姥切が尋ねてきた。

 

「夕飯は何が食べたい? うな重の礼だ、簡単な物ならアンタの要望を聞くぞ」

 

「・・・え、山姥切、これから夕食?」

 

呆然とする睡蓮に、室内着に着替えて顔を出した蜂須賀が当然の顔をしてうなずいた。

 

「うな重は別腹だよ、主」

「そうだね。別腹だったかな」

「うん、別腹だな!」

 

遠い目になりながらも、「あ、俺はおなかいっぱいだから君達だけで食べるといいよ」と言うと「じゃぁその気になったら食べれるようにお鍋にしよっか」と乱が言い出したので、4人はすごい勢いで野菜を適度な大きさに切りだした。

 

「睡蓮様・・・刀剣男士様達と生活をすればどこで驚くか、審神者あるあるです」

「あ、やっぱり?」

 

ペロリと平らげたこんのすけがそっと話しかけてきたので声を落として同調すると、こんのすけが深刻にうなずいた。

 

「特に審神者様は書類作業等の体を動かさない管理職。つい刀剣男士様達の食欲につられて大食いになる傾向があり近年、審神者の成人病患者は急増しております」

「ひぇぇぇ」

「特に」

 

ギラリ、とこんのすけの目が底光りしたように見えたのは睡蓮の気のせいだろうか。

妙な迫力を感じて身じろぎした睡蓮の手をこんのすけがふんずけた。

 

「睡蓮様の様な、食っちゃ寝至上主義の審神者様は早くに健康を害する事が統計的にわかっています」

「いや、食っちゃ寝至上主義って程でも」

 

睡蓮の抗議を聞いていないのか、こんのすけはトーンを落とさずに爆弾発言を落とした。

 

「ですから、高カロリー食の摂取を一人で楽しむ審神者をこんのすけは許しません」

 

その言葉に、睡蓮は思い当たって目を見開いた。

 

「ま、まさか、こんのすけ・・・お前が見つけたのか冷凍庫!」

 

犯人を見つけた心境の睡蓮に、こんのすけはニヤリと笑った。

 

「そして、こんのすけは健康管理につきましては、初期刀様と手を組むことは良くあります」

「え?!」

 

いやな予感に襲われて、こんのすけの手を振りほどき食堂に行くと、鍋を食べ始める刀達のお膳に1つずつアイスが置かれていた。昨日通販で取り寄せておいたはずの!

 

「あ、主さんも食べに来たの?」

「お先にいただいているよ」

 

無垢な笑顔で迎える乱と蜂須賀。

 

「やっと来たのか。遅かったな」

「やっぱアイスはちょっと溶けた所が美味しいよな!」

 

確信犯な笑みを浮かべる山姥切と愛染。

 

もちろん、自分の膳には1つだけアイスが乗っている。ただし、あまり好きではないイチゴ味だが。

 

「ごめんね、主。俺は執務室にある冷凍庫は君だけのアイス入れだと思っていたよ」

 

アイスを手にへこんでいる睡蓮に、蜂須賀が箸をおいて軽く頭を下げた。

 

「あれはアイス用の冷凍庫だったんだね」

「ああそうだ。アイス用に調整された温度だからな。これからはあそこに置くといい」

「アイスって美味しいよね。ボク、具現してもらえて良かった!」

「ああ、敵をいっぱい倒して給料をもらってアイスを買うのが楽しみになってきたよ」

「あ、それならこれからは自分が買ったアイスには名前を書かないとな」

 

和気あいあいにお鍋とアイスを食べる刀達を見ながら、睡蓮はアイスを開けて一口食べる。

 

柔らかいアイスが口の中で溶けていく。

 

「アイスの為に事務作業が多くなるのか・・・」

「アイスの味を教えたのは睡蓮様ですからね」

 

めんどうくさい、と言いかけたがこんのすけの言い分ももっともなので睡蓮は文句をアイスと共に飲み込んで溜息を吐いた。

 

 

 

 




お鍋を作る速さが早い刀剣男士達・・・
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