転生したらボク、勇者になったよ!!   作:冬空星屑

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 これは、短編小説『転生したらボク、勇者になったよ!』の連載版です。

※短編同様、号泣シーンにシュールになってます。ご注意下さい。


プロローグ
死亡――そして転生――


 ユウキは、もはや遥かな昔のように思えるあの日、二人が剣を交えたまさにその場所に立っていた。

 

 

 あっ、アスナ……。来てくれてありがとう。泣かないでね。

「――ありがとう、アスナ。ボク、大事なことをひとつ忘れてたよ。アスナに、渡すものがあったんだ。だから、どうしてももう一度ここで会いたかった」

 これだけは渡さなくっちゃね。向こうでは渡せない、私が生きたこの世界で、唯一残せるモノだから。受け取ってほしいな。

「なに? わたしに渡すものって」

「えーとね……いま作るから、ちょっと待って」

 ウインドウを操作して……よし。

 ふぅ。全力でいくよ!

 

「やあっ!!」

 

 お母さん、アスナを守ってね。

 

 ボクが大樹をへし折る勢いで放った渾身の十一連撃は、青紫色の眩い光を四方に迸らせる。ボクは生じた突風に倒されないように必死だ。

 少しするとボクの剣の剣尖を中心にして、小さな紋章が展開していく。

 四角い羊皮紙が大樹の表面から湧き出すようにジェネレートして、青く光る紋章を写し取ると、端から細く巻き上げられていく。

 剣を戻し、完成したスクロールを左手で掴ん……あれ……?

 

 ……かしゃん。

 

「へんだな……。痛くも、苦しくもないのに、力が入らないや……」

 

 

≪確認しました。『痛覚無効』獲得……成功しました。続けて『精神攻撃耐性』獲得……成功しました。さらにエクストラスキル『剛力』獲得……成功しました≫

 

 

「だいじょぶ、ちょっと疲れただけだよ。休めば、すぐによくなるよ」

「うん……。アスナ……これ、受け取って……。ボクの……OSS……」

 ボクはスクロールを握った左手をアスナに向かって、ゆっくりと伸ばしていく。

 

 

≪確認しました。OSS……オリジナル・ソード・スキル……情報不足により一部実行不能。失敗しました。代行措置として、エクストラスキル『剣技習熟』を獲得……成功しました≫

 

 

「わたしに、くれるの……?」

「アスナに……受け取って……ほしいんだ……。さ……ウインドウを……」

 

 

≪確認しました。ユニークスキル『情報一覧(システムウインドウ)』獲得……成功しました≫

 

 

「……うん」

 アスナはウインドウをだして、OSSの設定画面を開いてくれた。ボクはそのウインドウの表面にスクロールを置く。ボクは必死に笑いながら、それでも消え入りそうな声で囁く。

「技の……名前は……≪マザーズ・ロザリオ≫……。きっと……アスナを……守って、くれる……」

 

 

≪確認しました。ユニークスキル『祈祷者』獲得……成功しました≫

 

 

 アスナはついに堪えきれなくなった涙を幾粒か、ボクの胸元に落とした。でも微笑みは消さないまま、はっきりとした声で言ってくれた。

「ありがとう、ユウキ。――約束するよ。もしわたしがいつか、この世界から立ち去る時が来ても、その前に必ずこの技は誰かに伝える。あなたの剣は……永遠に絶えることはない」

「うん……ありがと……」

 ボクの剣は絶えない、か……。嬉しいよ、アスナ。

 

 

≪確認しました。エクストラスキル『剣技習熟』をユニークスキル『絶剣(タエナキケン)』に進化させます……成功しました≫

 

 

 羽音……。

 だれか、きたのかな?

 ……あれ、みんな? なんで?

 

「なんだよ……みんな、お別れ会は……こないだ、したじゃん。最後の見送りは……しないって、約束……なのに……」

「見送りじゃねぇ、カツ入れに来たんだよ。次の世界で、リーダーが俺たち抜きでしょぼくれてちゃ困るからな」

 

 ジュン……。

 

「次に行ってもあんまウロウロしねえで待ってろよ。俺たちもすぐに行くからさ」

「何……言ってるの……。あんますぐ……来たら、怒る……からね」

「だめだめ、リーダーはあたしらがいなきゃなんもできないんだから。ちゃんと、おとなしく待っ……待って……」

 

 ノリ……。

 

「だめですよ、ノリさん……泣かないって、約束ですよ……」

 

 シウネー……。

 タルケン……、テッチ……。

 

「しょうがないなあ……みんな……。ちゃんと、待ってる……から、なるべくゆっくり……来るんだ、よ……」

 

 元気でいてね……。

 

 

≪確認しました。ユニークスキル『祈念者』獲得……成功しました。続けてユニークスキル『祈念者』をユニークスキル『祈祷者』に、『情報一覧(システムウインドウ)』により統合。同系統の能力を得たことにより、ユニークスキル『祈祷者』はユニークスキル『祈願者』に進化しました≫

 

 

 そのあと、キリトにユイ、リズベット、リーファ、シリカが飛んできた。

 みんな……。

 そのあともまだ飛翔音は続いている。幾つも、幾つも重なって、荘厳なパイプオルガンみたいだ……な……。

 

 

 それは世界中に反響していく。妖精たちが、愛した(・・・)妖精の門出を寂しがりながらも、祝う(・・)が如く……。

 

 

 あぁ……。

 

「うわあ……すごい……。妖精たちが……あんなに、たくさん……」

 

 

≪確認しました。ユニークスキル『妖精之寵子(アイサレルモノ)』獲得……成功しました≫

 

 

「ごめんね、ユウキは嫌がるかもって思ったんだけど……わたしが、リズたちにお願いして呼んでもらったの」

「嫌なんて……そんなこと、ないよ……。でも、なんで……こんなに、たくさん……夢……見てるのかな……」

「だって……だって……」

 アスナはまた、ポタポタと涙をこぼす。泣かないで、アスナ……。

「ユウキ……あなたは、かつてこの世界に降り立った、最強の剣士……。あなたほどの剣士は、もう二度と現われない。そんな人を、寂しく見送るなんて……できないよ。みんな、みんなが、祈ってるんだよ(・・・・・・・)……ユウキの、新しい旅が、ここと同じくらい素敵なものに、なりますように、って」

「…………嬉しい……ボク、嬉しいよ……」

 すぅ……、ふぅ――。

「ずっと……ずっと、考えてた。死ぬために生まれてきたボクが……この世界に存在する意味は、なんだろう……って」

 

 

≪確認しました。ユニークスキル『求道者(モトメルモノ)』獲得……成功しました≫

 

 

「何を生み出す(・・・・)ことも、与える(・・・)こともせず……たくさんの薬や、機械を無駄遣いして……周りの人たちを困らせて……自分も悩み(・・)苦しんで(・・・・)……その果てに、ただ消えるだけなら……今この瞬間にいなくなったほうがいい……何度も何度もそう思った……。なんで……ボクは……生きてるんだろう……って……ずっと……」

 

 

≪確認しました。ユニークスキル『死逝者(シニイクモノ)』獲得……成功しました≫

 

 

「でも……でもね……ようやく、答えが……見つかった、気がするよ……。意味、なんて……なくても……いきてて、いいんだ……って……。だって……最後の、瞬間が、こんなにも……満たされて……いるんだから……。こんなに……たくさんの人に……囲まれて……大好きな人の、腕のなかで……旅を、終えられるんだから…………」

 アスナ、大好きだよ。ありがとう……。

「わたし……わたしは、必ず、もう一度あなたと出会う。どこか違う場所、違う世界で、絶対にまた巡り合うから……その時に、教えてね……ユウキが、見つけたものを……」

 ……うん。は――――っ!?

 その時一瞬だったけど、ボクはアスナの瞳のその奥に、見えた気がするんだ。

 あれ? ボクまで涙が出ちゃうよ。

 

 

 ユウキの紫の瞳が、ぴたりとアスナの瞳を捉えた。かつて出会った時と同じ、無限の活力(・・・・・)勇気に満ちた輝き(・・・・・・・・)が、刹那のあいだ煌めいた。それはすぐに二つの水滴へと形を変え、溢れ、ユウキの白い頬を伝って滴り、光となって消えた。

 唇がごくわずかに動いて、微笑みのかたちを作った。

 

 それは世界に直接、響くかのように……。

 

 

 ねえちゃん……。

 

 ボク、がんばって、生きた……。ここで、生きたよ……。

 

 

 無垢な雪原に最後の結晶がひとつ落ちるように、≪絶剣≫と呼ばれた"勇者(ユウキ)"の魂は、世界を渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 あれ? ここ、何処だろう?

 

 気が付いたら、目の前に何処までも生い茂ってそうな広大な大森林があった。

 さっきまでは綺麗な青空が広がっていたのに、妖精が一人も見つからないや。

 

 

 あまりにも非現実的な様子にユウキは悟った。

 

 

「あは! まさか本当に"次の世界"にこられるなんて……」

 ジュン……、ボク、思ってもみなかったよ。

 

 

 ユウキが辺り一帯を確認すると、近くに巨大なムカデの化物が現れた。

 ユウキは咄嗟に左腰に手を伸ばし、愛用の細めの片手用両刃直剣(マクアフィテル)を抜き放つ。じゃりーん、と高い音が響き、木々に吸収される。黒曜石で作られたその剣は紫黒色に輝いている。

 

 あはは、装備はそのままみたいだな。それなら……、

「みんな、ボクはここで、精一杯生きるよ! 待ってるからね。だから、ゆっくり、うんうん。当分来なくて良いからね! はあぁ――!!」

 

 

 そして、ユウキはムカデの化物――エビルムカデ――に向かって走り出す。

 悩んで苦しんだ旅は、大好きな人の腕の中で終わった。

 

 

 今度はここから始めよう!

 

 

≪確認しました。ユニークスキル『死逝者(シニイクモノ)』がユニークスキル『旅立者(イキダスモノ)』に変化しました≫

 

≪確認しました。"界渡り"で魂が鍛えられたことにより、条件を満たしました。群衆からの『寵愛』『祈り』『祝福』の三要素が揃ったのを確認しました。また、『悩み』『苦しみ』『勇気』などの要素を確認しました。"勇者の卵"が宿ったことを確認しました。自動的に"能力改変(オルタレーション)"が発動……成功しました。ユニークスキル『妖精の寵子(アイサレルモノ)』、ユニークスキル『旅立者(イキダスモノ)』を統合して、ユニークスキル『祈願者』は究極能力(アルティメットスキル)祈望の神(ガネーシャ)』に進化しました≫

 

 

 少女の旅は終わり、また新たに始まった。

 しかし、少女の祈りと願いは世界を越えて届くだろう。

 これは"眠る騎士"たちがすぐには集まらないように祈り願った、一人の"勇者"の物語。

 だが、勇者になれば、因果は巡る。再び、騎士たちが相見(あいまみ)えるまで。

 

 

 

 

 

 

 




 楽しんで頂ければ幸いです。感想などがあれば、どしどし。



PRESENT STATUS

ユウキ・コンノ

種族――闇妖精族(インプ)
加護――勇者の卵
称号――絶剣
魔法――なし
固有スキル――『暗視』『飛行』『壁走り』
アルティメットスキル――『祈望の神(ガネーシャ)
ユニークスキル――『情報一覧(システムウインドウ)』『絶剣(タエナキケン)』『求道者(モトメルモノ)
エクストラスキル――『剛力』
耐性――『痛覚無効』『精神攻撃耐性』


 少しだけ編集しました。
 ルビとかルビとかルビとか。
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