転生したらボク、勇者になったよ!!   作:冬空星屑

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 さあ、やっと三話目。
 お楽しみに。

 


三人の異世界人

「うおおおおぉぉ!!!!」

 

 遠くから誰かが叫ぶ声が響く。

 

「うん? 何かあったのかな? 行ってみよう!」

 

 背中から半透明の紫色の羽を出して、ユウキは声のする方向へ飛び出した。

 少しすると、巨大な蟻が群れて走り、それから逃げる四人の人が見えた。

 

「『解析鑑定』! ふーん、巨大妖蟻(ジャイアントアント)か。蟻って、食べられるかな?」

 

 空腹なユウキは今は食べることにしか興味が無いようだ。

 

 

「死んだらカバルの枕元に化けて出てやる~!!」

「ふははははは! それは無理ってもんだぜ! なぜなら、俺も一緒に死んじまうからな!!」

「もう、いや~!!」

 

 どうやら必死に逃げている所のようだ。前衛職らしい男がカバル。化けてでそうな女の子は、魔法使いだろう。他には斥候(シーフ)のような男と仮面の人。

 すると覚悟を決めたのか仮面の人が蟻に振り向く。

 

「私が足止めをしよう」

「シズさん!? おい、よせって!!」

 

 斥候の男が叫ぶが仮面の人――シズと言うらしい――は立ち止まり剣に手を掛ける。

 

「心配いらない。あなたたちを逃がすくらいなら、今の私にもできる。この……」

 

 そして、巨大妖蟻(ジャイアントアント)の群と相対した。

 

「……"炎の力"を用いれば」

「ねぇ、ボクも助太刀するよ!」

「「「「えっ?」」」」

 

 そのとき、四人の声が重なる。

 空から降ってきた女の子に驚いたのか、はたまたその可愛らしさに驚いたのか。

 だが、それを待ってくれる程巨大妖蟻(ジャイアントアント)は甘くない。

 ユウキとシズに一斉に襲いかかる蟻たち。

 最初に動き出したのは、勿論≪絶剣≫ユウキだ。

 『思考加速』と『超絶反応』、さらにここ数日の修行とユニークスキル『情報一覧(システムウインドウ)』の補助によって習得した『魔力感知』を使用して、ただ一本の剣で蟻たちを蹂躙していく。

 逆にシズは"炎の力"を用いて蟻たちを焼き切り、切られた蟻はそのまま燃え尽きていく。

 スキルという点では、ユウキの複数あるユニークスキルに軍杯が上がるが、剣技では圧倒的にシズの方が上だ。

 当たり前だが、いくら≪絶剣≫とは言え、たった三年やそこら剣を振った少女が、五十年以上も研鑽を積んだ"英雄"に、技量(レベル)で叶うわけもなく。

 だが、少し焦って見えるシズの剣筋はわずかに鈍い。故に多少はユウキの剣も追随しているように見える。

 

 そして、ユウキの参戦もあり、比較的早く終わった殲滅戦に、シズがわずかに気を抜いた。

 その時……

 

「シズさん! まだだ!!」

 

 三人の内、誰が叫んだのかわからない内に傷が浅かった巨大妖蟻(ジャイアントアント)がシズを襲う。

 

 

「――伏せろ」

 

 その言葉と同時に天から黒く染まった巨大な稲妻が落ち、巨大妖蟻(ジャイアントアント)を焼き殺した。

 

 抉れた地面からはもぅもぅと煙が上がり、その稲妻の凶悪さを物語る。

 腰を抜かしたのかシズは座り込んで動けないでいる。その際に仮面が外れ素顔が見えていた。顔の左半分は痛々しい火傷の痕があるが、見た目は若く、美人と言える。

 カバルが「シズさん、大丈夫か?」と言いながら駆け寄る。続いて、斥候(シーフ)の男が近くに寄り、魔法使いの女の子が介抱をする。

 カバルたちが黒い稲妻を怪しく思っているとそのすぐ後、煙の向こうから声が聞こえてきた。

 

「うおおぉ。手加減したのに威力ありすぎだろ、この能力(スキル)……」

 

 そんなことを言いながら、煙の中から青白い粘体が現れ、

 

「うわぁ、ビックリした。すごい威力だね! 助けてくれたの? ありがとね、"スライム"さん」 

 

 ユウキがそれに声を掛けて礼を言った。

 ユウキは既に『解析鑑定』でこの場にいる全員の能力を調べ済みだ。故にただ一匹、≪妨害≫されたスライムに警戒していた。

 そして現れたのは、仮面を引っかけた月白色の何処か気品のあるスライムらしくない態度のスライム。

 戦闘での疲れが表れたのかシズは横になっているが、残りの三人は目を丸くする。最初に口を開いたのはカバルだ。

「…………え? スライム?」

 

 当然の疑問だろう。巨大妖蟻(ジャイアントアント)を一撃で倒す黒い稲妻を放ったのが、最弱種族(スライム)だと言われれば誰だってそう思うだろう。ユウキは実力の一端に気がついているが、そこは言及しない。

 

「なんだ、スライムで悪いか?」

「あ、……いえ」

 

 カバルの反応に少し気を悪くしたのか、少し威圧的だ。

 

「ほれ、仮面。そこのお姉さんのだろ?」

 

 シズは手を伸ばしそれを受けとる。

 

「すまんな、使いなれないスキルだったんで、手加減が分からなかった。怪我はないか?」

「ええ、大丈夫」

 

 スライムは何故か訝しげにシズの顔を覗く。

 だが、シズは気にせずに――あるいは気が付いていないのか――小さくスライムに微笑む。

 

「ありがとう。助かったよ」

 

 その言葉と、シズの雰囲気で空気が緩んだのか、男たちがどっかりと腰を落とす。そして盛大にため息を放った。相当疲れているようだ。

 

「どうしたお前ら? 怪我でもしたのか?」

 

 スライムに問に何の抵抗もなく二人は答える。

 

「いや、精神的な疲労っつうか」

「あっしら、もう三日も巨大妖蟻(ジャイアントアント)に追われてたんでやす」

 

 一度喋り出せば、決壊したダムの如く延々と愚痴が続いた。

 荷物を落とした……。振り切ったと思ったら寝込みを……。どんどん増えて……。ぐだぐだ……。ペコペコ……。

 

「ええ~。ボクなんか、生まれてから一度もご飯食べたことないよ。もうペコペコでペコペコで」

「「「「「え?」」」」」

 

 五人――四人と一匹か?――の声が重なる。

 当然だろう。十五才くらいの女の子がそんなことを言えば。

 

「はあ、仕方ないな。簡単な食事ならご馳走するよ」

「スライムさん。この辺に住んでるの?」

 

 くるっと回り進みだしたスライムに、魔法使いの女の子が前のめりで質問する。

 

「そうだよ。引っ越したばっかでさ、この先で街を作ってる途中なんだ」

 

 三人組はボソボソと相談を始めるがユウキは違う。

 

「街!? ご飯もあるの?」

 

 "食事"におもいっきり飛び付いた。さっきまでの警戒はどこえやらだ。

 だが、他の四人はいまだ怪しんでいる。そこに、

 

「俺はリムル。『悪いスライムじゃないよ!』」

「「ぶっ!」」

 

 その言葉に二人ほど吹き出した。

 

「どうしたんでやすか? シズさん」

「いえ、なんでもない。それよりついていきましょう。この子はきっと信用できる」

 

 そういうと、シズはスライムを抱え、道を訪ねながら森を歩き出した。

 そのあと、何故か楽しげにシズとスライムは笑いながら街と向かった。

 

 ちなみに、スライムの登場が印象的過ぎて忘れかけられていたユウキは、道中にやっとお礼を言われた。

 

 

 




 予定の半分も進まなかったが、明日は平日。
 多分、書けないので、ここで投稿します。
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