東方英霊伝   作:来翔

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今回はベティヴェールと咲夜さんです


完全で瀟洒な従者と銀色隻腕の騎士

「これでいいのですか、咲夜殿」

「はい、ありがとうございます。ベティヴェールさんが来てから仕事が楽になりましたよ」

「いえいえ、倒れていた見ず知らずの私を助けてくれたのですから、恩を返すのは当然です。それに女性では辛いものもあるでしょうから……特に今の咲夜殿には」

 

ベティヴェールと呼ばれた青年は、目の前のメイド服を着込んだ女性を見つめる。その先にいる女性は頬を赤くしているが、決して恥ずかしいという訳では無い。

 

「いつから気づいてたのですか……?」

「会った時からですよ。足取りがおぼつかないですし、何より咳を堪えています。風邪をひいたのですね、咲夜殿」

「すいません……気をつけてはいたのですが……昨日の雨だと思います。ですが、大丈夫ですよ」

 

青年は、無言で首を横に振ると女性に近づき

 

「今日はゆっくりとお休みください。お嬢様には私から仰っておきます」

「いえ!メイド長たる私が休む訳には……」

「倒れられるとお嬢様や皆が逆に心配されますよ?」

 

青年の言葉に女性はぐうの音も出なかった。彼の言う通り、彼女は非常に信頼されている。それが故に皆から心配される可能性は高いだろう。

 

「分かりました……。体調が良くなりましたら復帰しますので」

「では、復帰される前に仕事を終わらせておきます。もう仕事には慣れましたので」

「ふふっ……では、お願いします。ベティヴェールさん」

 

女性は感謝の礼をすると、自分の自室に戻っていく。彼女の名前は十六夜咲夜。紅魔館と呼ばれる館でメイド長として勤めている。

そして、青年の名はベティヴェール。とある事がきっかけで紅魔館での執事を勤めることになった。

 

「さて……咲夜殿に休んでもらうために急いで終わらせないと」

 

ベティヴェールは、駆け足で残りの仕事場へと足を運ばせる。

彼がこのような事になったのは、2週間前の事だ。

 

 

~2週間前~

 

いつも通りの朝を迎えたつもりだった。だが、いつもの朝とは違っていた。

庭の掃除をしようと外に出ていたら、鎧を着ていた男性が倒れていた。

 

「大丈夫ですか?あの、もしもーし?」

 

顔に近づき呼吸をしているか確かめると、静かではあるが息があった。とりあえず最悪の事態だけは避けられたようだ。

しかし、困った。侵入者であるのは間違いないのだが、何故中庭で倒れていたのだろうか。物陰に隠れているのなら分かるが、わざわざ目立つ場所に居るのはおかしい。

とりあえず、お嬢様に報告しなければ。私は、そう思い男性を背負おうとすると

 

「うっ……」

 

男性から声が聞こえた。

 

「ここは……」

「目が覚めましたか?ここは、紅魔館です。貴方はここ……中庭で倒れておられたのです」

「紅魔館……聞いたことがないですね」

 

紅魔館を聞いたことがない……という事は外来人なのは確実。しかし、鎧を着ているのはあまりも異様。

もしかして……あの方と同じなのかもしれない。

 

「すいません、無礼を承知で聞きますが……サーヴァントの方ですか?」

「はい……そうですが。サーヴァントを知っているという事は……マスターか魔術師でしょうか」

「いえ、私はどちらでもありません。サーヴァントに詳しい方が居られますのでその方から聞いているので知識だけは有ります。なるほど……サーヴァントですか。本来ならば侵入者とあれば排除するのですが……今は丁度お嬢様が居られますのでお嬢様に問いかけてみます。付いてきてくれますか?」

「はい……構いませんが……」

 

男性は私の言葉に気になることがあるようだが、納得はしてくれたような表情を浮かべている。仕方のない事だ。

本来ならばサーヴァントであろうと何者であっても、お嬢様の許しを得て入ってきてない者には制裁を与えなければならないのですが、あの方からサーヴァントは通すように言われているのですから。

 

「それでは行きますよ。途中で逃げたり背後から襲おうとしても無駄ですよ。私からは逃げられませんし、逆に返り討ちに合うと思いますので」

「そんな事はしませんのでご安心ください。背後から女性を襲ったり等は致しません」

 

男性は真っ直ぐな瞳で答える。しかし、油断はできない。もしもの時は能力を使って一撃で落とす。

私はそんなことを思いながら、お嬢様の居られる部屋に着くとノックをしながら

 

「お嬢様、お客様です。ヴラド様、居られますか?」

「ええ、ヴラドはいるわ。通しなさい、咲夜」

 

返事を受け取ると、私は扉を開け男性を部屋にお通しする。

 

「ほう……随分と面白い客人だな」

「あら、ヴラド何かを感じるのかしら。咲夜、この男性は?」

「はい、中庭で気を失っておりましたのでお連れしました」

「ふぅん……でもただ気を失っていたのではないのね。侵入者なら誰であろうと排除しろと命じているけど、例外がいる。つまり」

「はい、この方はサーヴァントです」

 

サーヴァントという言葉にヴラド様はフッと笑うと、男性を見つめるとお嬢様にアイコンタクトをとられた。この合図こそはお2人にしか分からないが、少なくとも男性の答えによってはこの部屋が血だらけになるのは避けられない。

 

「貴様、真名はなんと申す。余はヴラド。クラスはランサーだ」

「なっ……自分から真名を明かすなど!そんなことしては、自殺行為ですよ」

「通常であればな。しかし、理由は知らんが聖杯がこの世界にはない。しかも、この館の者の全てを確認したが令呪は無かった。つまり、この世界には聖杯戦争が起こってないにも関わらず我らは存在しているのだ。聖杯が無いのに我らが争う理由はあるか?」

「なるほど……確かに争う意味が無ければ明かさない理由にはなりませんね。では、真名を明かさせていただきます。私はベティヴェール。クラスはセイバーです」

 

ベティヴェール……どこかで聞いたような名前ですね。パチュリー様の本で読んだのかしら。

しかし、ヴラド様には正体が分かるのか笑っておられた。

 

「ベティヴェールか。そうかそうか。かの円卓のか。喜べ、レミリアよ。汝の新しき僕は円卓の騎士であるぞ」

「騎士ね。私にはぴったり……円卓の騎士!?」

 

お嬢様が驚いたように私もヴラド様の言葉に驚いてしまった。

円卓の騎士については本でしか読んだ事がないため詳しくは知らないが、外の世界のある国の王様であるアーサー王に仕えている騎士だということは知っている。本の中の物語だとばかり思っていたため実在するとは思ってもいなかった。

(後に知ったのだが、ヴラド様も外の世界では有名な方らしいという事を貸本屋で聞いた)

 

「そんなに驚かれるとお恥ずかしいです。確かに円卓の騎士ではありますが……その中では実力不足故に持ち上げられると恥ずかしいのです。……それはそうとしてお1つお聞きたいことがえります」

「あら何かしら?」

「先程僕と仰りましたね。話が見えないのですが……」

「そうだったわ。話を急ぎすぎたわね、謝罪するわ。ベティヴェールと言ったわね。貴方に問うわ。今この世界には貴方が仕えし主は居ない。そこで私を主として仕えてみるのはどうかしら。円卓の騎士ともなれば実力は申し分ない。もちろん、断ったからと言って命を貰ったりすることは無いから安心しなさい。貴方の意思を尊重するわ」

 

お嬢様の仰る通り、ベティヴェールさんが仕えていたアーサー王は幻想郷にはいない。外の世界で有名な方が忘れられるはずがないからだ。サーヴァントになっていれば幻想郷にいるかもしれない。

もし、ここでベティヴェールさんが断れば右も左も分からない状態で幻想郷を放浪することになる。勿論幻想郷のルールなど知るわけがないので、円卓の騎士と言えど夜道を妖怪に襲われて命を落とすことだって有り得る。

 

ベティヴェールさん。貴方の選択は以下に

 

「得体の知れない私を保護してくださった上、殺さずにここで生活することを選択させてくださってありがとうございます。この恩は一生をかけてもお返し出来ないかもしれません。このベティヴェール、貴方の僕となり貴方に仕えます」

「……わかったわ。ベティヴェール、これからよろしく頼むわよ。咲夜」

「はい、なんでしょうお嬢様」

「ベティヴェールは執事として雇うわ。彼の世話頼むわね」

「分かりました、お嬢様」

 

執事か。ここには私とメイド妖精しか居ないため男手が欲しかったので有難い。ベティヴェールさんなら不埒なことはしないだろうと断定は出来ないが、信頼は出来るため安心して仕事を任せられる。

 

「では、私は失礼します。ベティヴェールさん、私について来てください」

 

ベティヴェールさんはお嬢様に礼をすると、私の後に続いて部屋を後にする。

 

「そういえば自己紹介をしてなかったですね。私は十六夜咲夜。ここ紅魔館でメイド長を務めております。そしてあのお方はレミリア・スカーレットお嬢様です。紅魔館の主です。そして、隣にいたのが」

「ヴラド三世。ルーマニアにおける大英雄にして串刺し公の異名を持つ王ですね」

「お詳しいですね。やはり外の世界では有名な方なのですね。ベティヴェールさん含め円卓の騎士は外の世界では本にもなっていますよ」

「……そうですか。もったいないです」

 

この人は何故か自虐的なところがある。先程ご自分で実力不足と仰ていたので、実力不足な事が自虐的になっているのだろう。円卓の騎士の1人と呼ばれる存在なので誇ってもいいとは思うが、この人の性格的にそれはないのだろう。

 

「そういえば気になったのですが、何故、仕えようと思ったのですか?アーサー王に仕える騎士なので誰かに仕えるのは抵抗があると思っていましたので」

「確かに私の主は我が王だけです。ですが、先程も言った通り得体の知れない私を……もし、反旗を翻すかもしれない私を殺さずに生かしてくれたのは感謝しかないからですよ。勿論、咲夜殿にも感謝しています」

「いえ、私はヴラド様からサーヴァントは連れてくるように言われてるだけでしたので」

「だとしてもですよ。有難うございます」

 

微笑んでくるベティヴェールさんに私は釣られて微笑んでしまう。この人は安心して背中を預けることができる人だと私の中で判断した。

 

「さて、ベティヴェールさん。早速ですが……執事服がございませんのでメイド服で我慢出来ますか?」

 

顔も女性のように綺麗なため案外似合うかもしれない。

 

「な、何故ですか!?用意出来るまでこのままで大丈夫ですよ」

「ふふ、冗談ですよ。では、よろしくお願いしますね、ベティヴェールさん」

「はい、咲夜殿」

 

 

〜今に至る〜

 

「ふぅ……咲夜殿の能力があってこそこの館の掃除は早く終わるのですね。早く終わらせないと……」

 

ベティヴェールは咲夜が起きるまでに掃除を終わらせると決意をかためた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうでしたか?久しぶりに書いたので文がおかしくなってしまい申し訳ありません。
読んでくれた方には感謝しかないです。

セイバーと表記されたヴラドのクラスですが誤字でしたので、ランサーに修正しました

神霊系や誰かを依代としたサーヴァントは出した方がいい?

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