東方英霊伝   作:来翔

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お久しぶりです。2ヶ月ぶりの更新です。長らくの間申し訳ございませんでした。
今回は古明地こいしとヘラクレスです


閉じた恋の瞳と不死身の大英雄

「ふんふ〜ん♪」

 

古明地こいしは上機嫌だった。幻想郷では、見たことがない巨人と見紛うほどの巨躯を持った男の肩に乗っていることが上機嫌の理由だった。

巨大な男は、ご機嫌な様子のこいしを落とさないようにゆっくりとした足使いで、とある場所を目指す。

 

この、巨大な男は現在幻想郷を騒がせている、サーヴァントと呼ばれる存在の1人だ。

しかし、こいしと彼との出会いは他のサーヴァントとは違い劇的な出会いはしておらず、目の前にいた男にこいしが勝手に乗ってきたという単純な出会いである。

 

「いけいけー!」

「そんなに暴れると落ちますよ」

 

筋肉隆々な外見からは想像もつかない、穏やかな言葉遣いで肩の上でバタバタと足を振るこいしを支える。

 

「大丈夫大丈〜うわっ!?」

 

足をバタバタと振っていたせいかバランスを崩し、こいしは男の肩から背中から落ちていく……が。

 

「よっと。ふぅ、セーフ!」

 

ふわっと浮くと、綺麗に着地してみせる。それを見た男は安堵の表情を浮かべる。

 

「だから言ったでしょう。落ちると」

「着地したんだから大丈夫だよ。動かないでね〜……っと」

 

こいしは男の肩に再び乗る。

 

「ところでどこまで行けばいいのでしょうか。行先も言わずに肩に乗ってきたので」

「とりあえず私が案内した場所までお願い。家族の元……かな?」

「……家族。分かりました」

 

男はこいしの口から家族の単語を聞くと何かしらの表情を浮かべるのをこいしは気づいたが、特に追求することは無かった。特に興味も無かったからだ。

対する男は、何故家族と聞いただけで心の奥がモヤモヤとしているのか理解出来なかった。

 

「家族はどこにいるのですか?」

「地底だよ。お姉ちゃんとお姉ちゃんのペット達と暮らしてるんだ〜」

「地底……冥界のことですか?」

「ん〜まぁそんな感じかな。正確には旧地獄って言うんだ。たくさんの妖怪や鬼とかがいるけど貴方なら大丈夫そうだね!」

「さぁ……それはどうでしょうか。しかし、地底か……お嬢さん。しっかり捕まっていてくださいね」

 

男は何を思ったのか、片手に持っていた斧を思い切り振り被ろうとしていた。

 

「ちょっ……ちょっと待って!何をしようとしてるの!?」

「いえ……穴を開けようと思いまして」

「そんな事しなくても地底への入口はあるからね?」

「そうなのですか」

「うん、それじゃ案内するからそこまで行こう〜!」

 

男は、こいしの指さした方向へ向けて歩き出す。

 

〜それかれ数時間後〜

 

常人なら歩くのすら限界とされる距離を難なく歩く男に、こいしはあることを思っていた。

この人は姉が言っていたサーヴァントと言う存在なのではないかと。しかし、確証があった訳では無いので口に開くことは無かった。

 

「ここにあるよ」

 

男の目の前に広がったのは、巨大な山だった。

 

「ここにあるのですか?」

「うん、妖怪の山って言うところだよ。ここに、地底への入口である縦穴があるんだ」

「なるほど……そこを目指せばいいのですね」

「そいうこと。でも、気をつけてね。ここの山は白狼天狗っていう人達が警備してるから。見つかることは避けてね……と言いたいけど貴方の見た目じゃバレちゃうから出来るだけ戦うことは避けてね、何かあったらお姉ちゃんに怒られちゃうから」

 

男はこいしの言葉にゆっくりと頷くと、山の中へと足を運ぶ。

彼が地面を踏む度に、木々が揺れ何かが動く気配を感じる。

 

(白狼天狗とやらがいるな。俺の隙を伺っているようだ。それは好都合だ、この少女に戦闘は避けろと命令されたからな。もし、見つかった時は……)

 

「お嬢さん。穴はどこにあるのですか?」

「えっとね、あそこの方だよ!」

「分かりました」

 

こいしが指をさしたのは、山頂付近。男はそれを確認すると、ふっと静かに笑った。

その時だった。

 

「何者だ!」

 

いつの間にか、男とこいしを囲むように木の陰や茂みから白い髪に犬のような耳を持ち盾と剣を構えた集団が現れる。

 

「わわっ……やっぱりバレた!」

「……これが白狼天狗……」

「武器を下ろせ……!そこにいるのは……地霊殿の!」

「妹に何かあったら私達がどうなるか……。とりあえず、その男から離れるんだ!」

「えー嫌だー。ほら、さっさと行こ!」

「分かりました。では、しっかりと捕まっていてください」(地霊殿とやらの主人の妹なのか。しかし、コイツらがここまで怯えるとはどのような奴なのだろうな。地獄と言っていたからハデスのような者か?)

 

男は疑問に思いながらも時ではないと判断し、膝を曲げ始め足に力を込める。明らかに跳ぶ姿勢であったが、誰もが跳ぶとは思わない。仮に跳んだとしても縦穴までは届かない。

普通であれば。

 

「しっかりと……です!」

 

そう、この男は普通ではない。何を隠そうサーヴァントと呼ばれる存在だ。幻想郷の常識にすら囚われない彼に、普通という言葉は通用しない。

その証拠に、ただの飛躍であれば地面がへこむだけで済むかもしれない。だが、彼の飛躍は地面に大きな穴を開け強風を巻き上げながら飛躍していく。

その様子に白狼天狗達は、呆気にとられてしまう。

 

「古明地こいしは大丈夫だろうか……」

 

白狼天狗の面々は、男の肩に乗っていたこいしを心配してしまう。もし、彼女に何かあったら地霊殿が動くかもしれないと不安があったからだ。

 

「うわぁぁ〜たっかぁい!」

 

当の本人であるこいしは、怖がるどころか寧ろ喜んでいた。空は飛べても、ここまで早い速度で跳ねる事は無いため新鮮だった。

とある天狗や魔法使いに捕まれば、出来るとは思うが両者ともあまりやらせてくれないので、したことが無い。

 

「お嬢さん。あそこですか?」

 

男はそんなこいしに、山中に少し開けた場所を指さす。

 

「えっと……あ、うん。あそこに縦穴があるよ」

 

男はこいしの言葉に頷くと、一旦地面に降りては跳躍を繰り返しては指さした場所を目指していく。

 

「ここか……」

 

数回の跳躍を終え、縦穴のある場所へと辿り着いた2人。

男はこいしを降ろすと、穴を覗き込む。

 

「そこが見えないな。お嬢さんはどうやって降りていくのですか?」

「私達は浮けるからそのまま降りるだけだよ。あなたは……浮けないよね。さて、どうしようかな」

「では、こうしましょう。お嬢さん、乗ってください」

 

こいしは首を傾げながらも言われた通り、男の肩に再び乗る。

それを確認すると、男は先程出した斧を構える。

 

「え、どうす」

 

こいしが問いかけるよりも先に男は、勢いよく飛び跳ねるとそのまま縦穴目掛けて落下していく。そして、斧を壁に突き刺して降下していく。

止まりそうになれば、再び飛び跳ね再び壁に突き刺すを繰り返していく。

その度にこいしは、その突き刺している斧が折れないか不安で仕方がなかった。

 

そして、数回それを繰り返していくこと十数分後。

 

「よし、着きましたよ」

 

無事に着地できる距離まで来ると、男はそのまま斧を抜いて降降りる。

 

「すっごく楽しかったよ!またやってね!」

「はい、またいつか。機会があれば」

 

こいしは男から飛び降りると、嬉しそうに笑いながら駆け出していく。その男は何かとこいしを重ねながらゆっくりとした足取りでついて行くと、見たことがない光景が彼の目に映る。

 

「ここが旧地獄だよ」

「なっ……!?」

 

男は驚きを隠せなかった。彼の想像していた地獄とは違っていたからだ。

彼の想像していた地獄は、阿鼻叫喚が似合う場所であった。しかし、目の前にあるのは洞窟をくり抜いたように街が出来ているように見えた。

 

「何故このような場所が地獄……」

「詳しい話はお姉ちゃんから聞いて〜。あの橋を超えた先が旧都。地底に住む人達が暮らしてるよ。そして、奥にある館が地霊殿。お姉ちゃんとそのペットが暮らしてるんだ」

「なるほど……。案内お願いできますか?」

「おっけーい!それじゃ、着いてきて」

 

こいしは先頭に立ち歩き出すが、橋に着いた途端立ち止まり何かを探すように周囲を見渡す。

 

「あれ〜いないなぁ。呑みに行ってるのかな」

「誰かおるのですか?」

「うん。地上と地底の結ぶあの穴の番人がいるんだけど……お友達と呑みに行ったみたい。ま、通っても大丈夫でしょ」

 

こいしは、男を見ながら微笑むと街の方へと駆けていく。それに男は遅れないように着いていく。

やがて、街の中へと入っていくと男は目を奪われていく。見た事の無い建物にそこに暮らす人々。どれをとっても男にとっては新鮮でしか無かった。

 

「地獄……と言う割には賑やかですね。楽しそうに酒を飲んだり食事を楽しんだりしている」

「まぁね〜。ここは嫌われた者達が集まる場所だからね。そもそもここは、元々は裁判とかをやる本物の地獄だったんだけど……なんかあって地獄を別の場所に移したんだ。だからここは、地獄の跡地ってことだね。だから、あなたの思い描くイメージとは違うと思うんだ」

「確かに私のイメージしていた場所とは違います……む?」

 

男性は、突然視線を感じそちらに目を向けると見たことがない異形な存在がこちらを見ていた。警戒をする彼であったが、自分への敵意は感じられなかったため前を向こうとしたその時

 

「いたっ……」

 

こいしの、痛みを訴える声が聞こえた。彼女を見ると、痣や血の跡は無いがどこからか飛んできたであろう石が転がっていた。

そして、その犯人はすぐに見つかった。犯人は、先程自分と目が合った者だった。

 

(あいつか……何を笑っている。幼子を遠くからでしか狙えない……卑怯者めが)

 

彼の中で何かが動き、彼はゆっくりと犯人の元へと足を運んでいく。

 

(なんだこの感情は……怒り?初対面も名も知らぬ少女が傷つけられたからか?いや……違う。これは……なんだ……何故この少女が傷つくのは嫌なのだ)

 

自身へ自問しながら歩んでいると

 

「ま、待って!大丈夫だから!こんなの慣れっこだから」

 

こいしが男の腕を掴みつつ静止の言葉を投げかける。その言葉に彼は足を止めるが、納得のいかないような表情でこいしを見やる。

 

「大丈夫だからね?ほら、行こっ♪」

 

こいしは、にっこりと笑うと街の中を駆け出していく。その後を追い越さない速度で男は追いかけている。

 

「お嬢さん……何故あのような事を?」

「……それは私達、覚妖怪は嫌われてるから。覚妖怪は心が読めるからね。だから私は心を閉じた……でも、お姉ちゃんはそんなことしないでずっと目を開けたまま」

 

こいしの返答に男は何も返す事が出来なかった。こんなに幼い身体に重い過去を背負っている彼女に下手な慰めはかけられないだろうと男は思ったからだ。

その時

 

「あ、見えてきたよ。あれがお姉ちゃん達と住んでる地霊殿だよ!」

 

こいしの指さした場所には、西洋風の屋敷があった。

 

「よーし、そろそろ着くね。お姉ちゃんに紹介するの楽しみ〜っ!」

 

それから数分が経ち、地霊殿の扉の前に着いた。

 

「よーし……お姉ちゃんー!帰ってきたよー!」

 

扉を開けながら、こいしは叫びながら屋敷の中へ入っていく。男も続けて中に入った時

 

「っ!」

 

突如男に何者かが襲いかかった。

 

「……サーヴァントの気配がするかと思えばやはりそうでしか」

 

外の暗さによって中の明るさに慣れるまで、男はシルエットでしか見えなかったが、目が慣れてくると自身を襲ったのは紫の髪に目隠しを付けた長身の女であった。

 

「……俺を知っているということは貴様もサーヴァントか」

「ええ、まさか地霊殿に来るとは思いませんでした。コイシ……何かされましたか?」

「ううん、何もされてないよ?」

「お嬢さん……奴と知り合いなのですか?」

「うん!お姉ちゃんの新しいペットだよ!」

 

男はそれを聞いても警戒を解くことはなかった。

 

「あら……メドゥーサ。お客様かしら?」

 

奥の階段からピンクの髪をしたこいしとほとんど変わらないであろう少女が降りてくる。

 

「あ、お姉ちゃんー!ただいまー!」

「こいし……。そこのお方こいしを連れてきて下さったのですね。ありがとうございます」

「お姉ちゃんこの人ね、紹介したいの!」

 

こいしは、男の肩に乗るなり嬉しそうに姉に報告する。

 

「……そう、分かったわ。立ち話もなんです……こちらへ」

 

さとりによって男は、さとりの執務室へと案内された。

 

「まず自己紹介から。私は古明地さとり。こっちは私の妹の古明地こいし……そして、こっちはサーヴァントのメドゥーサよ」

 

メドゥーサの名を聞いて男は彼女を凝視してしまう。メドゥーサとも呼ばれし者が協力していること、そしてサーヴァントが真名を明かすことを止めなかったことに驚きを隠せない。

 

「サトリ、彼もサーヴァントです。あなた……真名は明かせますか?まぁ……普通は無理でしょうけど今は」

 

メドゥーサは男にここが、幻想郷という世界である事。また幻想郷でのサーヴァントのあり方を説明する。

 

「なるほど……マスターが居なくともサーヴァントは現界しているのか。ならば……俺のマスターはコイシになる訳か。我が真名はヘラクレス」

「ヘラクレス……?どこかで聞いた名前ね」

「ヘラクレスと言えばギリシャという国での大英雄です。私も勝てるか分かりません」

「へぇ、そんなに凄いんだー!ねぇ、お姉ちゃん!ヘラクレスを私のペットにしていい?」

「ヘラクレスさん。あなたはどうするのですか?」

「……未知なる世界での冒険こそは慣れているが彼女が良ければ護衛を勤めよう。石を投げるような連中がいては溜まったものでは無いからな」

「そう……分かったわ。なら……少し試させてもらうわ。あなたにこいしが守られるかどうかを……『想起「テリブルスーヴにニール」』」

さとりのサードアイから、光が放たれるとヘラクレスの顔に当てる。対するヘラクレスは、未知の攻撃に少しだけ怯むが特に気にする事はなかった。だが、彼の心の奥にはとあるものが浮かぶ。

浮かんだ物とは、自分の息子や異父兄弟の息子を火に投げつけ、殺している自自身の姿だった。

この記憶は、彼にとってのトラウマのひとつ。狂気に吹き込まれたからと言って忘れてはいけない罪。彼の偉大なる偉業はこれがきっかけと言っても過言ではない。

 

「……子供を殺してるのね。そう、そんな人が本当にこいしを守れるのかしら?いつ、あなたが狂気に取り込まれこいしを殺さないと言えるのかしら?」

 

さとりへの質問にヘラクレスは、しばらく無言であったが

 

「……その時は俺を殺せ。コイシに手をかけようものなら俺を殺せ。俺はサーヴァントであるが故死は恐れぬ。それが覚悟だ。俺はその覚悟の元彼女を守ろう……必ずだ。化け物であった俺を受け入れてくれた数少ない人物だからだ」

「嘘はついていないようね」

 

さとりは、光を当てるのを止めるとヘラクレスに微笑みかける。

 

「では、ヘラクレスさん。妹をよろしくお願い致します。もし、迷惑をかけたら叱ってやってください。それでも直らないのであれば私に伝えてくださいね」

「いいのか……?」

「はい。あなたは私が心を読めることを知った上で本音をぶつけた。疑う余地はありません。どんな存在も心だけは騙せませんからね。メドゥーサ、ヘラクレスさんの案内を任せるわ。こいしはこっち」

「分かりました」

「はーい、またねヘラクレス〜♪」

 

さとりに続き、こいしは手を振りながら部屋を出ていく。

2人残されたメドゥーサとヘラクレス。暫く無言が続いたが、先に沈黙を破ったのはメドゥーサだった。

 

「しかし、大英雄ともあろう貴方が幼子1人に必死になるとは。そんなにトラウマが効きましたか?」

「……いや、そんなのでは無い。良くは分からないが……あの声を聞く度に脳裏を何か横切るのだ」

「声ですか……私と同じですね。私もサトリの声を聞くと守らねばと思うようになるのです」

「そうか……」

 

メドゥーサは、静かに頷くとヘラクレスを案内しようと部屋を先に出る。

1人残されたヘラクレスは

 

(何故かはわからん……。だが、今度こそあの少女の傍にいるのだ)

 

右腕に残る謎の温かさを感じつつ、メドゥーサの後に続いて部屋を後にする

 

 




今回この2人になったのは、前回メドゥーサとさとりでもモデルとなったアールグレイがモデルです。
アールグレイでは、こいしの声をイリヤスフィール・フォン・アインツベルンの門脇舞以が務めているのでヘラクレスと組み合わせてみました。
さとりのスペルカードですか、アレは自分なりの解釈ですのでご了承ください。
あと、ヘラクレスの口調ですか、タイころから持ってきました
では、次回をお楽しみに

神霊系や誰かを依代としたサーヴァントは出した方がいい?

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