高梨海来は追い詰められていた。
逼迫する財政に……
そう、大食らいに……
「おかわりなのだ!!」
「おかわり~!!」
とにかく、『三笠』と
鳳翔フードサービスの給食では足りずに、いつも免許を持っている紀子が、スーパーあおがしままで、お惣菜を買い出しに行って来るのだった。
コンビニすらない
その出費は、全て海来のポケットマネーから出している。
いくら実家が
海来は、割と追い詰められていた。
「うーん………」
執務机でウンウン唸っている中、書類に目を通しながら、片桐英太郎の、
「私も、いくらかは出せますが?」
「いや、根本的な解決になってないです」
という、彼の申し出に首を振る。
「何か、食堂的なものがあれば。あの士官クラブみたいな」
「「それだ!」」
紀子の言葉に、二人は声を揃えて立ち上がった。
こうして、すぐに電話したのは
「という訳で、大食らいを満足させる為の、食堂を設置したいんです」
『ああ、
「そこなんですよね。代金を取ったら、
『そこが問題ですよね………』
二人で溜め息を吐いている。
前大戦時のように、気前よく給料を出してやることが出来ないのだ。
かと言って、アルバイトをさせるのも、新・艦娘基本法の観点から厳しい。
「食堂かぁ………」
溜め息を吐きながら、海来は夜遅くまで悩んでいた。
そんな中、艦娘達も緊急会議を開いていた。
会議に参加しているのは、へっぽこーずに英太郎である。
英太郎は、『卯月』の、
「参加してくれたら、
と言う言葉に釣られて、参加している。
「という訳で、いかに食費を減らすか、会議を始めるぴょん!」
「おー!」
「おーっ!」
「おー」
「うむ!」
「えっと、おー!」
「うむ」
『卯月』の号令と共に声を上げる、『吹雪』『那珂』『瑞鶴』『三笠』
「そもそも、お前達の食べる量を減らすというのは」
そう英太郎が言った瞬間、『三笠』は泣き出しそうになる。
「無理だろうな……」
その言葉で、『三笠』に笑顔が戻り、
「うむ」
等と自信満々に言っている。
「僕も、お腹が空いちゃって………」
「この
英太郎は、頭痛がする思いだった。
「この前ネットに書いてあったぴょん、裸をネットで送っ……」
「「「「だめーっ(駄目だ)!!!」」」」
その提案に、『三笠』以外全員で却下する。
「? だめなのか?」
『三笠』は首を傾げる。
「あのな。普通に犯罪だから!とっ捕まるのは、
英太郎は、二人にツッコミを入れる。
「むむむ。では、どうしたら良いのだ?」
『三笠』が不服そうに言うも、
「正直、
「あ、そういえば農家の人が、傷物野菜は捨てるしか無い、って言ってたわね?」
英太郎の呟きに、『瑞鶴』が
「やはり、島民の協力が不可欠になるか……」
翌日から、艦娘達は農家に協力を求めに行った。
「こんにちはーっ!」
元気良い声で、農作業をしているおじちゃんおばちゃん達に声を掛けるへっぽこーず。
「お?ああ、艦娘のお嬢ちゃん達か。いつもありがとうねぇ」
おじちゃん達が、農作業の手を休めてこっちへやって来る。
「おじちゃん、お願いがあるっぴょん」
「私達に傷物野菜を分けてくれませんか?」
『卯月』と『吹雪』のお願いに、農家のおじちゃんは少し考えると、
「構わんよ。何たって
「そうそう。肥料にしないといけない、
「「「「「わーい!」」」」」
その言葉に、小躍りするへっぽこーず。
そんな、へっぽこーずの頭を下げさせて、
「有難うございます」
と、お礼を言う『瑞鶴』だった。
次に、丁度遠征から帰って来た第二隊にも、話を持って行った。
「あん?移動中に漁をして来い、だって?」
『天龍』が訝し気に問い返すと、
「実は、大食らいの艦娘の為に、もっと自給自足できる食堂が出来ないかな、って」
『瑞鶴』の答えに、『天龍』も腕を組んで考える。
「ふうむ、提督に相談してみるわ」
「よろしくお願いね」
こうして、海の幸と野菜は何とか揃った。
もちろん海来も、何もしない訳ではなかった。
母を通じて、『
真っ先に協力を申し出たのは、鳳翔ホールディングスグループだった。
鳳翔としても、
そして、食堂には腕利きの料理人を送り込んで、新・艦娘基本法の範囲内での『
運営はプロに任せた。
海来や艦娘達はそのお手伝い、ということなのである。
こうして、青ヶ島食堂はオープンした。
軍港直ぐ側の、嘗て居酒屋鳳翔があったところ。
そんな中、英太郎は青ヶ島食堂には行こうとしなかった。
「中佐はどうしていかないぴょん?」
「私は、
自嘲染みた言葉に、『卯月』はむっとなった。
「そんなの、行ってみなけりゃ判らないぴょん!」
「お、おい……」
英太郎は、『卯月』に無理やり連れて行かれた。
今日も、青ヶ島食堂は大賑わいである。
『三笠』と
海来はその様子を、グリーンサラダを食べながら眺めている。
「片桐中佐を連れてきたぴょん!」
「もしかして、あんた……?」
日本酒を飲んでいた、おっさんが声を掛けると、
「
苦い顔をしながら、そう告白した。
「……はっはっは!何だ、
その朗らかな声に、「そうだそうだ」と声が続く。
「まあ、こっち来て座れや」
漁師の親父さんが、バンバンと自分の横の椅子を叩く。
「いやあ、
「えっ……?あぁいただきます……」
驚いた顔をして『卯月』を見ると、ニコニコとダブルピースをしている。
「全く、
ふっと笑ってから、酒を煽る。
そんな英太郎を、海来はニコニコと眺めていた。
酔っ払った英太郎と二人、歩いて庁舎に帰る海来。
「全く。こんなサプライズを受けるとは、予想外だった」
「良いじゃないですか?片桐中佐は
「むぅ………」
「こうやって一つ一つ、問題を皆で解決して、楽しくやればいいかな?って思います」
「いずれは、大きな問題が出てくるだろうしな?」
そう。まだ
「何十年かかるか判りませんけど、人の犯した過ちは人自身で取り戻すべきです」
「そうだな…………」
「その時、
「人じゃなくたって、私は海来さんは海来さんだと思っている」
「有難うございます。今夜はどうします?」
ふふっと流し目で笑みを向けると、英太郎はドキッとする。
「あんまり
「ふふっ、『艦これ』に決まってるじゃないですか?」
楽しそうに笑いを零す海来。
「どうも、君には弄ばれている気がするな」
「人聞きの悪い。私は、そんな悪女じゃないですよ―だ」
「うん、分かっている。君はいい
「えっ……?」
キョトンとして振り向くと、真顔になった。
「
「そうだったのか。だが、
「………ふふっ、有難うございます」
海来は笑い出すと、数歩前を歩き出した。
「でも、私は守られたいタイプなんですよ?」
「……心得ておこう」
そう言うと、二人並んで官舎へと帰って行った。