全員の愛が海来に届くのか
硫黄島海域に到着した第13泊地連合艦隊は、空母ヲ級の空爆を受けていた。
ヲ級部隊の空爆を、必死に歯を食い縛りながら、『卯月』達防空隊が防いでいる。
そんな中、
水雷戦隊は、更に『三笠』も加えて前進しつつ、砲撃を加え始める。『三笠』の六連装酸素魚雷もお見舞いするが、
どんどん補充されて行く
「どうするの!?」
「まだだ!まだ持ち堪えるんだ!!」
通信から、
「もう限界ぴょん!!」
「諦めるな!諦めたら
心の折れそうになる『卯月』を激励しながらも、通信機に耳を傾ける。
そして、漸く待ち望んだ通信が耳に入る。
『
「支援艦隊が来たぞー!!!」
その英太郎の言葉に、艦娘達の士気が上がって行く。
英太郎も、ガトリングガンで敵機を撃墜し始める。
反動が体を襲い、全身に激痛が走る。
「ぐっ!
奥歯をぐっと噛み締め、スラスターで反動を相殺しながら、
その大爆音で、ヘッドセットがない方の、片耳の鼓膜は破れているだろう。
支援艦隊の航空・砲撃支援を受けながら、航空部隊の始末に掛かっている。
その直後だった……
「これは、サブハープーン!?」
英太郎は、過去のDSキラーの資料を取り寄せていた。
サブハープーンが狙っているのは、『三笠』だった。
「危ない、『三笠』!!!」
「何をするのだ!?」
英太郎が『三笠』を押し退けて前に出ると、ガトリングガンを乱射する。
ミサイル弾頭にHEIAP弾が誘爆すると、目の前で大爆発を起こす。
アクティブクロークで防御するも、英太郎は吹き飛ばされて海面に叩き付けられる。
「ぐうう……」
よろよろと起き上がる英太郎。
「中佐!大丈夫か!?」
『三笠』が駆け寄ろうとするも、手を上げて制する。
「愚か者ぉ!!敵はまだいるぞ!全艦、海面スレスレに飛んで来る
DSキラーのサブハープーンは、弱っているせいか速度も遅く、『那珂』や『三笠』の必死の砲撃で次々と墜としている。
だが完璧ではなく、その度に『三笠』が庇っている。
『三笠』は、
その間にも航空攻撃は止むことはなく、支援艦隊も今は敵艦隊と交戦中で、これ以上の支援は期待できそうもなかった。
「ここまで……なの?」
「もう……無理」
艦娘達の心が折れそうになった時、二隻の深海棲艦が近づいて来た。
DSキラーとDSアサシンである。
「………」
「オマエラノシレイカンハ、コチラガワニツイタ。アキラメテ、ウミノソコニシズメ」
「そんな……嘘だって言ってぴょん!」
『卯月』の悲痛な叫びにも、DSキラーは何も言って来ない。
「諦めるな!」
そんな艦娘達に、檄を飛ばす者がいた。
そう。
「思い出せ、
「あの時の感覚を……」
その言葉に、『吹雪』がはっとなる。
「思い出すぴょん……」
『卯月』が、キッと空を見上げる。
「皆、『ミクちゃん提督を想う』んだよ!」
『那珂』が、皆に呼びかける。
「わかったわ!」
『瑞鶴』が、折れかけた弓に矢を番えながら応える。
「うむ。ミクちゃん提督と、
腕を組んで、ニイッと笑う『三笠』。
「うんっ!!」
「よっしゃあ!世界水準超えてるところを見せてやるぜ!」
『天龍』が吠える。
「行くわよ!!」
『雷』が叫び、
「なのです!」
『電』が、ぐっと両手を握る。
『見ていて!ミクちゃん提督!!』
艦娘達が光り輝くと、
「橘花改発進!」
改二甲へと変化した『瑞鶴』から発進した橘花改が、上からヲ級を艦載機諸共、全艦海に沈める。
「チッ、イマイマシイカンムスドモメ」
DSアサシンが接近して、ソードを振り上げたところで、
「カガミハラユウ……キサマァ…!」
「今だ!
「わ、わかった!全艦斉射だ!!」
『三笠』の号令により、全艦砲撃を加える。
「チイッ!!!」
「グウッ!!」
直撃を受けた、DSアサシンも
DSキラーも、それに追随して後退して行く。
光に包まれた艤装がパンッと解除されると、全員中破状態になってしまう。
「くうっ……もう……」
ヲ級の代わりに、今度は戦艦ル級部隊が迫って来る。
「まだ諦めるでない!」
今度は『三笠』が檄を飛ばして、全速前進でル級に飛び込む。
「この『三笠』には、
背中に背負っていた
そのまま魚雷をゼロ距離でぶっ放すと、『三笠』はこちら側へ吹き飛ばされ、ル級は沈んで行く。
『三笠』は大破で、衝角も壊れて動かなくなっている。
「駆逐艦、突っ込むぴょん!」
「うん!」
「わかったわ!」
「なのです!」
駆逐隊が、ル級を足で翻弄しながら、チクチクと有効打を積み重ねていく。
『瑞鶴』は、大破した
『那珂』は、中距離からの砲撃で、ル級を牽制している。
そして、ル級の陣形に隙ができた瞬間だった。
御蔵島・大島連合艦隊が再び敵陣を突破し、援護射撃を撃ち込んで来た。
沈むル級。何体か残っているル級は、小癪な支援艦隊の方へ向かって行った。
今、硫黄島までのルートはがら空きだ。
「全艦突撃!硫黄島に乗り込むぞ!!」
英太郎は父の最期の地、硫黄島に向かって、突撃命令を下した。
硫黄島に上陸すると、軽巡達がワラワラ向かって来ていた。
艦娘達も、腰に帯びているショートトマホークや軍刀で、白兵戦を繰り広げる。
その中で英太郎は、汎用艤装を強制パージすると、腰に帯びている九ミリ自動拳銃とショートトマホークで応戦する。
恵奈は、
「アワレナニンゲンドモ……!」
軽巡を撃ち抜いて斬り払う英太郎に、DSアサシンが立ちはだかっていた。
その横にはDSキラー。
「海来さん、
「ムダダ……」
DSアサシンは、ソードを英太郎に振り下ろす。英太郎は避け切れず、銃を持っていた腕を斬り飛ばされた。
「ぐあっ……」
血の噴き出る左腕。しかし、DSアサシンの目に入ったのは、
「ここで、
「チイッ!!」
ザンッ…と振り上げたトマホークで、DSアサシンの身体を斬り裂いた。
胸から血が流れ出るDSアサシン、そして肉体の限界を超えても、
「ダガ、モウオワリダ、シネ」
再びソードを構え直したDSアサシンが、英太郎を斬り裂こうと前に出た時、艦娘達がDSアサシンの前に立ちはだかった。
「海来ちゃん!!」
叫ぶ『吹雪』。
「目を覚ますぴょん!!」
涙を流す『卯月』。
「海来ちゃん!!私だよ―!!『那珂』ちゃんだよー!!」
必死に声を上げる『那珂』。
「海来ちゃん!!貴方の心はそこまでなの!?」
檄を飛ばす『瑞鶴』。
「愚か者!!目を覚まさんかい!!誰が私に、アイスをくれるんだ!?」
それに続く『三笠』。
「海来さぁぁぁぁぁん!!!」
声の限り叫びを上げる
「バカヤロウが!!せっかく助けてくれたのによ!!」
「今度は私達が貴方を助けるわ」
「目を覚ますのです!!!」
第二隊も負けずに声を張り上げる。
『目を覚ませぇぇぇぇぇぇぇ!!!!』
全員の叫びは、
「!!!」
DSキラーは、はっと目を覚ました。
「皆……私………」
「皆、海来さんを助けに来たんだ!目を覚ませ!!」
「片桐中佐!!」
英太郎の檄で、完全に目を覚ました
「チッ……ニンゲンドモノレイシガタカマッテイル……マタアオウ、ニンゲンドモ、タカナシミク」
DSアサシンは、闇に包まれるように消えて行った。
まだ残っている軽巡は、DSキラーと艦娘達が片付けている。
「ぐぁ……!!」
英太郎は、激痛に膝を突いた。
「動かないで!止血するぴょん!」
そう言うと『卯月』は、汎用艤装のウェポンコンテナに入っていた捕縛用結束バンドで、斬り飛ばされた腕をしっかりと締め上げる。
「ぐあああああああ!!!!!」
英太郎が、激痛で声を上げると、
「これでも噛んでなさい!」
『瑞鶴』が、
「むぐぐ……!!」
操っていたDSアサシンがいなくなったことで、海上の艦隊は統率が取れなくなって、次々と海へと沈んで行った。
英太郎は、海来が駆け寄ったところを最後に、意識を手放した。
目を覚ました英太郎は、河原に立っていた。
その
「ふん、我が息子ながら情けない。こんな若さで私の後に続きたいか?」
「親父!俺はあんたを許さない!!お前のせいで、どれだけ苦しめられたか!?」
その言葉に、憤怒の表情で英太郎が叫ぶ。
「だったら帰れ。私もキサマのような腑抜け、顔も見たくないわ」
ニヤッと笑った英治は、シッシと手を振った。
「こっちこそ願い下げだクソ親父!二度と会うものか!?」
英太郎は、
目を覚ました時には、青ヶ島診療所だった。
「ここは………ぐうっ」
「診療所よ」
起き上がろうとして激痛が走った英太郎を、夕雲が押し留めて寝かせる。
「
夕雲が、溜め息を吐くように言うと、
「あんたの左腕、可動義手を着けさせてもらったわよ。
その言葉で、英太郎は左腕を上げる。
左腕は、
「っ……」
再び起き上がろうとすると、今度は夕雲は止めない。
「全く、馬鹿ね。貴方達が命がけで救った司令官は、今頃
「……だろうな」
辺りを見回すと、艦娘達は皆、ベッドに横たわっている。
ただ独りだけ、『三笠』が
あの戦いの後、到着した
そのまま、青ヶ島診療所に転がり込んだのだ。
次に重傷だったのは『三笠』で、「アイスが食べたいのだ……」等と言いながら、治療を受けていた。
「結局、洗脳された原因は何だったの?」
執務室で紅茶を差し出した紀子に、海来は苦笑いを浮かべる。
「結局は、
現在海来は、大量の始末書を書いている。英太郎が行った越権行為等々、全ての責任がおっ被さる事になったのだ。
「まあ、片桐中佐にはお礼を言うことね?」
「そうですねぇ……
頬杖を突いて、笑みを浮かべる海来に、紀子は、
「満更でもない、って顔をしてるじゃない?」
「私は、
海来の言葉に、紀子は肩を竦める。
「ま、良いわ。今は、始末書を片付けなさいな?」
「次は、
海来は、始末書を書き続けている。
次回は3日の午前9時予定です。