「ぷっぷくぷー!大変ぴょん!!」
『卯月』が、艦娘達を駆逐艦の三人部屋に呼び込んでいた。
それぞれの目の前には、ペットボトルのお茶とスーパーなカップアイス。
所謂
因みに『三笠』の前には、スーパーなカップが
「何が大変なのだ?私は、アイスを食べるのに忙しいのだ」
憤慨しつつ、『卯月』の買ってきたアイスに釣られてやって来ている。
「何が大変なのよ?」
同じくアイスを食べながら、『瑞鶴』も問い掛ける。
「大変だぴょん。ミクちゃん提督が、
その言葉に全員が、
『えええええええええっ!?』
と声を上げる。
「まさか、ミクちゃん提督お見合いとかで……?」
『吹雪』が言うも、
「ないない。ミクちゃん提督、
等と
「ネットに書いてあったぴょん!指輪を付けてるってことは既婚者で、しょ、しょ、しょやぴょんぴょん!!」
顔を真赤にして力説する『卯月』。
「初夜はともかく。そもそも、何でそんな情報ばっかり見てるのよ?」
一応年長者の『瑞鶴』が諌める。
「しょやとはなんなのだ?」
『三笠』が、アイスを食べながら首を傾げる。
『吹雪』や
「ええい!あんた等まで何、顔を赤くしてるのよ?」
てしっと、ツッコミのポーズを取る『瑞鶴』。
「だからしょやとはなんなのだ?」
『三笠』は更に首を傾げるも、『瑞鶴』が、
「取り敢えず、今度ミクちゃん提督に訊きなさい」
と流すと、『三笠』も
「うむ、解ったのだ」
と納得したところで、『卯月』が話を続ける。
「食堂を作った頃には、指輪なんてしてなかったぴょん!!」
その言葉に、一同がうーんと考え込む。
「そうなると、硫黄島事件で私達が寝込んでいる間に、ってことになるのかな?」
『那珂』がそう推理を立てると、『卯月』は、
「やばいぴょん、
そう騒ぎ始める。
「ミクちゃん提督に辞められて困るのは判るけど、ミクちゃん提督って、まだ結婚できないわよ?」
『えっ?』
『瑞鶴』のツッコミに、全員が言葉を失う。
そうなのだ、海来はまだ15歳なのだ。あともう少しで、
「ミクちゃん提督、15歳でしょ?いくら16歳から結婚できる、と言っても、早過ぎでしょう?」
「それよりもぴょん!このことを片桐大佐に知られたら、
『あっ………』
「きっと大佐のことだから、『一緒に死ぬ!』とか言い出しかねないぴょん!」
「そ、それはやばいわね………」
サアっと、顔が青褪める『瑞鶴』。
いかにある意味、
そんなこととは露知らず、海来はいつものとおり執務をしている。
部屋の中には、従卒の紀子と参謀長の英太郎。
英太郎は左手に、
人工皮膚は汚れやすい為、こうやって義手の部分を覆っているのだ。
「今日は、黒井中佐がお見えになりますね?」
紀子が、今日の予定を二人に配布する。
「はい、先日連絡がありましたね。
橋頭堡となっている硫黄島に、基地を建設するのだ。
その途中でせっかくだからと、
「そろそろ見える時間ではないかな?」
英太郎はポケットから懐中時計を取り出すと、海来は窓の方を見る。
遠くから、輸送船が近づいてくるのが見えると、
「出迎えの準備をしましょう」
そう言って立ち上がる。
艦娘達は工廠の物陰に隠れて、遠くからやって来た輸送船が何か、覗き込んでいる。
「もしかしたら、あの輸送船にミクちゃん提督の婚約者が乗ってるかもぴょん」
既に、
普段は止める役目の『瑞鶴』すら、今回その婚約相手に興味津々で、もはや止める者がいないのだ。
「そういえば、今日は黒井提督が立ち寄られるって……」
昨日、そんな会話をチラッと『吹雪』が耳にしていた為、
「黒井提督って、この間救援してくれた、あの
『那珂』が首を傾げる。
「今度、第14泊地の司令官になるとか……」
「お前等何やってんだぁ?」
そんな艦娘達を、工廠長妖精さんが不思議そうな顔で見ているが、すぐに仕事へと戻って行く。
輸送艇が埠頭に接舷すると、黒井崇矢中佐が降り立つ。左薬指には
出迎えに待ち受けている二人は、黒井中佐の姿を見つけると、歩み寄っていく。
「ご無沙汰しています。中佐、大佐」
その姿を見つけると、黒井も歩み寄って海来と握手をする。
その様子は、工廠に置いてある
もちろん安全の為、弾薬は抜いてある。
「この度は、助けていただいてありがとうございました」
そう笑顔の海来に、笑顔を返すイケメン提督こと黒井中佐。
「いや、お役に立てて光栄でした」
「それと、硫黄島の赴任とご昇進、おめでとうございます」
「いやあ、また遠くに赴任になって、妻に叱られますよ」
黒井崇矢は既に結婚している。
現在御年34歳なのだ。
「ふふふ、流石に硫黄島までは、ご一緒出来ませんものね?」
「それが妻は、なら転勤願を出して母島に行く、と言い出してまして……」
「黒井くんのところはカカア天下ですかな?」
「それがその通りでして。気が強くて、私なんか敵いませんよ」
そんな他愛もない話をしながら、三人共楽しそうに庁舎の方へと向かって行く。
黒井は一瞬ちらりと、工廠の方へ視線を向けるが、すぐに二人の案内で庁舎に入って行く。
「やばい……ぴょん」
その様子を覗いていた『卯月』は、真っ青になる。
「どうしたのよ?」
その様子を、『瑞鶴』が見咎めると、
「ミクちゃん提督と黒井提督……同じ指輪付けていた……ぴょん」
『ええっ……?』
あまり事態が分かっていない、『三笠』以外の顔がサァァッと青くなる。
「どうしたのだ?皆、顔色が悪いぞ?」
アイスを頬張りながら呑気に訊く『三笠』に、『卯月』は、
「悠長にしている場合じゃないぴょん!
「急がないと!!それを知られたら、片桐大佐が
そして一同は、そろそろと応接室に向かって行ったのだった。
そんなこととは露知らず、呑気なミクちゃん提督夫妻
『艦これ』戦術談義に花を咲かせている。
「この場合は、私はこのデッキを使って………」
「そうですか。そうなりますと、私はこうですね」
タブレットを使いながら、以前の戦闘記録を再生させている。
「さすがは『迅速の黒矢』と言われるだけの、見事な艦娘捌きですな。先日は助けられました」
その様子を横から見ながら、英太郎も勉強になると言わんばかりに頷く。
「先日ヘルズゲートに挑戦しましたが、敵いませんでした」
「いやあ、アレはまぐれですよ。何とか判定勝ちに出来ましたけど、次はそうはいかないでしょう?」
「どんどん進化していく自己進化型AI、恐ろしい限りですな」
そんな様子を、扉の外から伺っている
そんな彼女達に、丁度コーヒーのおかわりを持ってきた紀子が声を掛ける。
「あんた達、何やってるのよ?」
『あっ』
その声の後に扉が開くと、海来が立っていた。
「何してるんですか?皆さん……?」
その問い掛けに、『卯月』が、
「ミクちゃん提督は、黒井提督と結婚するぴょん!?」
「えっ?」
そして部屋の中で、コーヒーを噴く音が二つ聞こえた。
「……ということだぴょん」
応接室で、並んで立っている六人から事情を聞いた海来は、あはははっと笑い出した。
黒井もああ、と納得がいったようだ。
「だから、スナイパーライフルのスコープを向けられていたんですね?」
「黒井提督は、既に
「でも、指輪がそっくりだぴょん……」
『卯月』の指摘に、黒井が苦笑いする。
「ああ、私達は
そう。結婚相手が、黒井退役大将の総秘書官を歴任し、警察官になった武蔵なのだ。
もちろんお見合いであるが、本人同士デートを重ねて
「それじゃあ、ミクちゃん提督の結婚相手は誰だっぴょん?」
その指摘に、英太郎が苦笑いになる。
「何だ、海来。まだ言ってなかったのか?」
手袋を外しながら言う英太郎の言葉と、
「み、みく!?」
「言おう言おうと思って時期を逸してしまいました。いいですか、皆さん。この指輪は、英太郎さんと婚約カッコカリをした『証し』なんですよ。最初は
「よ、良かったぴょん……片桐大佐に知られたら、心中とかするんじゃないか、と思ったぴょん……」
安堵する『卯月』に、英太郎が憤慨する。
「失礼な。私がそんな無分別な男だと思っていたのか!?」
「ぴょん……」
叱られた『卯月』はしょんぼりしてしまう。
「まあまあ。この件は、一件落着ってことで」
苦笑いしながら、『卯月』を慰めて頭を撫でる『瑞鶴』。
「ところで、しょやというのはしたのか?結婚すると、しょやというものをするらしいぞ?」
「ふぁっ!?」
頭を抱える
そんな中、一人海来がケラケラ笑ってから、妖艶な笑みを浮かべる。
「はい。ちゃぁんと、『据え膳』を召し上がりいただきましたよ」
『おー……』
顔が真っ赤なまま興味津々の、『三笠』以外の艦娘達に、まだ顔が真っ赤でフリーズしている英太郎。
「ところで、しょやとはなんだ?」
『三笠』の言葉に、艦娘達がずっこける。
海来は、更にツボに入ったのか、大笑いしながら『三笠』を呼び寄せて耳打ちする。
『三笠』は、みるみるうちに顔が真っ赤になる。
「は、破廉恥なのだ!!そんな……そんなことを!!」
ワタワタし出す『三笠』は、艦娘達の所に戻って海来から聞いた内容を耳打ちする。
艦娘達は顔が真っ赤になる。
「あ……朝まで……」
ボソリと『瑞鶴』が呟く。
海来はコホンと咳払いをすると、
「まあ取り敢えず……今日のお客様が黒井提督だからこれだけで済んだものの、何やってるんですか?今日のアイスは無しですね?」
「そ…そうだぞ。黒井提督にお詫びをしなさい」
漸く復活した英太郎も、艦娘達を叱責すると、
『えーーーっ!?』
と抗議の声が上がる。『三笠』に至っては、
「アイスが……アイスが抜きになるのだ……」
と、この世の終わりのような涙目になっている。
「まあまあ。私は気にしてませんし、許してあげたらどうでしょうかね?」
黒井は、苦笑いしながら二人に声を掛ける。
その黒井の言葉に、艦娘達の視線が海来にも注がれる。
「わかりました。公表しなかった私にも非はありますし、アイス抜きの処分は取り消しです」
『やったーっ!!ばんじゃーい!!』
全員で万歳三唱する様子を、三人の佐官は
黒井が硫黄島に向かい、艦娘達も出撃して行った応接室。
紀子も気を利かせて退室して行った。余談だが紀子は
「何か今日は疲れたな」
「ですね」
その言葉にふふっと笑いを浮かべる。
「ねぇ、英太郎、もう
「いいのか?」
寄り添う海来を抱き寄せながら、英太郎が訊くと、
「はい、この間ちょうどいい空き家を見つけました。軍港から徒歩三分」
「その前に、湊さんに報告しなくてはな……」
「そうですねー…今、私達は離れられないので、母に来てもらいましょう」
「そうだな……」
そう言いながら、海来は湊にメールを送るのだった。
――――――
その頃。
「あれ?海来からメールですね。どれどれ……『会わせたい人がいます』?」
首を傾げる湊に、電が声を掛ける。
「湊、どうしたのですか?」
「どうしたの?」
「あのね、電、むっちゃん。海来から『会わせたい人がいます』って、連絡が来たんだけど?」
『へっ?』
「という訳で、ヘリの準備をお願いします。明日にでも、顔を出しに行きましょう」
「「了解」なのです」
翌日、『不敗の女神様』が
次回、「湊リターンズ」