新・小さな提督と艦娘日和   作:SAMICO

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指輪がバレてしまう、その相手を推測するうーちゃんず



ユビワの相手

「ぷっぷくぷー!大変ぴょん!!」

『卯月』が、艦娘達を駆逐艦の三人部屋に呼び込んでいた。

それぞれの目の前には、ペットボトルのお茶とスーパーなカップアイス。

所謂ふ(・)つ(・)ー(・)の(・)ラクトアイスである。

因みに『三笠』の前には、スーパーなカップが五(・)個(・)積まれている。

「何が大変なのだ?私は、アイスを食べるのに忙しいのだ」

憤慨しつつ、『卯月』の買ってきたアイスに釣られてやって来ている。

「何が大変なのよ?」

同じくアイスを食べながら、『瑞鶴』も問い掛ける。

「大変だぴょん。ミクちゃん提督が、左(・)薬(・)指(・)に(・)指(・)輪(・)を(・)し(・)て(・)い(・)る(・)ぴょん!!」

その言葉に全員が、

『えええええええええっ!?』

と声を上げる。

「まさか、ミクちゃん提督お見合いとかで……?」

『吹雪』が言うも、『時雨』(結有)が、

「ないない。ミクちゃん提督、男(・)運(・)無(・)さ(・)そ(・)う(・)だし。湊さんはそんな話、持って来ないでしょう?」

等とあ(・)っ(・)け(・)ら(・)か(・)ん(・)と(・)笑(・)う(・)。実に酷い。

「ネットに書いてあったぴょん!指輪を付けてるってことは既婚者で、しょ、しょ、しょやぴょんぴょん!!」

顔を真赤にして力説する『卯月』。耳(・)年(・)増(・)である。

「初夜はともかく。そもそも、何でそんな情報ばっかり見てるのよ?」

一応年長者の『瑞鶴』が諌める。

「しょやとはなんなのだ?」

『三笠』が、アイスを食べながら首を傾げる。

『吹雪』や『時雨』(結有)、それに『那珂』は顔を赤くしている。

「ええい!あんた等まで何、顔を赤くしてるのよ?」

てしっと、ツッコミのポーズを取る『瑞鶴』。

「だからしょやとはなんなのだ?」

『三笠』は更に首を傾げるも、『瑞鶴』が、

「取り敢えず、今度ミクちゃん提督に訊きなさい」

と流すと、『三笠』も

「うむ、解ったのだ」

と納得したところで、『卯月』が話を続ける。

「食堂を作った頃には、指輪なんてしてなかったぴょん!!」

その言葉に、一同がうーんと考え込む。

「そうなると、硫黄島事件で私達が寝込んでいる間に、ってことになるのかな?」

『那珂』がそう推理を立てると、『卯月』は、

「やばいぴょん、寿退社(結婚退役)ぴょん!!」

そう騒ぎ始める。

「ミクちゃん提督に辞められて困るのは判るけど、ミクちゃん提督って、まだ結婚できないわよ?」

『えっ?』

『瑞鶴』のツッコミに、全員が言葉を失う。

そうなのだ、海来はまだ15歳なのだ。あともう少しで、誕(・)生(・)日(・)を(・)迎(・)え(・)る(・)が……

「ミクちゃん提督、15歳でしょ?いくら16歳から結婚できる、と言っても、早過ぎでしょう?」

「それよりもぴょん!このことを片桐大佐に知られたら、大(・)変(・)な(・)こ(・)と(・)に(・)な(・)る(・)ぴょん!!」

『あっ………』

最(・)初(・)か(・)ら(・)、指(・)輪(・)の(・)相(・)手(・)か(・)ら(・)除(・)外(・)さ(・)れ(・)て(・)い(・)る(・)英太郎も哀れである。

「きっと大佐のことだから、『一緒に死ぬ!』とか言い出しかねないぴょん!」

「そ、それはやばいわね………」

サアっと、顔が青褪める『瑞鶴』。

いかにある意味、信(・)頼(・)と(・)実(・)績(・)の(・)変(・)態(・)か、物語っている。

 

そんなこととは露知らず、海来はいつものとおり執務をしている。

部屋の中には、従卒の紀子と参謀長の英太郎。

英太郎は左手に、腕(・)ま(・)で(・)隠(・)れ(・)る(・)黒(・)い(・)手(・)袋(・)を着けて書類作業をしている。

人工皮膚は汚れやすい為、こうやって義手の部分を覆っているのだ。

「今日は、黒井中佐がお見えになりますね?」

紀子が、今日の予定を二人に配布する。

「はい、先日連絡がありましたね。第14泊地(硫黄島泊地)への赴任で、立ち寄られるみたいですねぇ」

大島(第11)・御蔵島(第12)泊地の艦娘を引き連れて、黒井が硫黄島(第14)泊地司令官に任命され、

橋頭堡となっている硫黄島に、基地を建設するのだ。

その途中でせっかくだからと、青ヶ島(第13)泊地を表敬訪問する、という話なのだ。

「そろそろ見える時間ではないかな?」

英太郎はポケットから懐中時計を取り出すと、海来は窓の方を見る。

遠くから、輸送船が近づいてくるのが見えると、

「出迎えの準備をしましょう」

そう言って立ち上がる。

 

 

艦娘達は工廠の物陰に隠れて、遠くからやって来た輸送船が何か、覗き込んでいる。

「もしかしたら、あの輸送船にミクちゃん提督の婚約者が乗ってるかもぴょん」

既に、英(・)太(・)郎(・)以(・)外(・)の(・)誰(・)か(・)と(・)婚(・)約(・)し(・)て(・)い(・)る(・)という『卯月』の仮(・)定(・)が、確(・)定(・)事(・)項(・)となっている。

普段は止める役目の『瑞鶴』すら、今回その婚約相手に興味津々で、もはや止める者がいないのだ。

「そういえば、今日は黒井提督が立ち寄られるって……」

昨日、そんな会話をチラッと『吹雪』が耳にしていた為、婚(・)約(・)者(・)黒(・)井(・)説(・)が浮上し出す。

「黒井提督って、この間救援してくれた、あのイ(・)ケ(・)メ(・)ン(・)の「サラリーマン提督」?」

『那珂』が首を傾げる。

「今度、第14泊地の司令官になるとか……」

『時雨』(結有)の情報に全員は、もし婚約者が黒井なら、英太郎にどう話そうか、頭を悩ませている。

「お前等何やってんだぁ?」

そんな艦娘達を、工廠長妖精さんが不思議そうな顔で見ているが、すぐに仕事へと戻って行く。

 

 

輸送艇が埠頭に接舷すると、黒井崇矢中佐が降り立つ。左薬指には銀(・)色(・)の(・)指(・)輪(・)が、海(・)来(・)の(・)デ(・)ザ(・)イ(・)ン(・)と(・)似(・)て(・)い(・)る(・)シンプルなものが填められている。

出迎えに待ち受けている二人は、黒井中佐の姿を見つけると、歩み寄っていく。

「ご無沙汰しています。中佐、大佐」

その姿を見つけると、黒井も歩み寄って海来と握手をする。

その様子は、工廠に置いてあるス(・)ナ(・)イ(・)パ(・)ー(・)ラ(・)イ(・)フ(・)ル(・)の(・)ス(・)コ(・)ー(・)プ(・)で、『卯月』が覗いている。

もちろん安全の為、弾薬は抜いてある。

「この度は、助けていただいてありがとうございました」

そう笑顔の海来に、笑顔を返すイケメン提督こと黒井中佐。

「いや、お役に立てて光栄でした」

「それと、硫黄島の赴任とご昇進、おめでとうございます」

「いやあ、また遠くに赴任になって、妻に叱られますよ」

黒井崇矢は既に結婚している。サ(・)ラ(・)リ(・)ー(・)マ(・)ン(・)時(・)代(・)に結婚して、小学生の子供も居る。

現在御年34歳なのだ。

「ふふふ、流石に硫黄島までは、ご一緒出来ませんものね?」

「それが妻は、なら転勤願を出して母島に行く、と言い出してまして……」

「黒井くんのところはカカア天下ですかな?」

「それがその通りでして。気が強くて、私なんか敵いませんよ」

そんな他愛もない話をしながら、三人共楽しそうに庁舎の方へと向かって行く。

黒井は一瞬ちらりと、工廠の方へ視線を向けるが、すぐに二人の案内で庁舎に入って行く。

 

「やばい……ぴょん」

その様子を覗いていた『卯月』は、真っ青になる。

「どうしたのよ?」

その様子を、『瑞鶴』が見咎めると、

「ミクちゃん提督と黒井提督……同じ指輪付けていた……ぴょん」

『ええっ……?』

あまり事態が分かっていない、『三笠』以外の顔がサァァッと青くなる。

「どうしたのだ?皆、顔色が悪いぞ?」

アイスを頬張りながら呑気に訊く『三笠』に、『卯月』は、

「悠長にしている場合じゃないぴょん!黒(・)井(・)提(・)督(・)が(・)ミ(・)ク(・)ち(・)ゃ(・)ん(・)提(・)督(・)の(・)婚(・)約(・)者(・)だ(・)っ(・)て(・)こ(・)と(・)だぴょん!!」

「急がないと!!それを知られたら、片桐大佐がど(・)う(・)発(・)狂(・)す(・)る(・)か!?」

『時雨』(結有)も慌て出す。

そして一同は、そろそろと応接室に向かって行ったのだった。

 

そんなこととは露知らず、呑気なミクちゃん提督夫妻カ(・)ッ(・)コ(・)カ(・)リ(・)と黒井中佐は、

『艦これ』戦術談義に花を咲かせている。

「この場合は、私はこのデッキを使って………」

「そうですか。そうなりますと、私はこうですね」

タブレットを使いながら、以前の戦闘記録を再生させている。

「さすがは『迅速の黒矢』と言われるだけの、見事な艦娘捌きですな。先日は助けられました」

その様子を横から見ながら、英太郎も勉強になると言わんばかりに頷く。

「先日ヘルズゲートに挑戦しましたが、敵いませんでした」

「いやあ、アレはまぐれですよ。何とか判定勝ちに出来ましたけど、次はそうはいかないでしょう?」

「どんどん進化していく自己進化型AI、恐ろしい限りですな」

 

そんな様子を、扉の外から伺っている六人娘(へっぽこーず)。

そんな彼女達に、丁度コーヒーのおかわりを持ってきた紀子が声を掛ける。

「あんた達、何やってるのよ?」

『あっ』

その声の後に扉が開くと、海来が立っていた。

「何してるんですか?皆さん……?」

その問い掛けに、『卯月』が、

「ミクちゃん提督は、黒井提督と結婚するぴょん!?」

「えっ?」

そして部屋の中で、コーヒーを噴く音が二つ聞こえた。

 

「……ということだぴょん」

応接室で、並んで立っている六人から事情を聞いた海来は、あはははっと笑い出した。

黒井もああ、と納得がいったようだ。

「だから、スナイパーライフルのスコープを向けられていたんですね?」

「黒井提督は、既に別(・)の(・)方(・)と(・)ご(・)結(・)婚(・)さ(・)れ(・)て(・)ま(・)す(・)よ」

「でも、指輪がそっくりだぴょん……」

『卯月』の指摘に、黒井が苦笑いする。

「ああ、私達は旧(・)艦(・)娘(・)本(・)部(・)の(・)ケ(・)ッ(・)コ(・)ン(・)リ(・)ン(・)グ(・)を特別に使わせてもらったんだ。結婚相手がその……武蔵なもので……」

そう。結婚相手が、黒井退役大将の総秘書官を歴任し、警察官になった武蔵なのだ。

もちろんお見合いであるが、本人同士デートを重ねて恋(・)愛(・)結(・)婚(・)に発展したのだ。

「それじゃあ、ミクちゃん提督の結婚相手は誰だっぴょん?」

その指摘に、英太郎が苦笑いになる。

「何だ、海来。まだ言ってなかったのか?」

手袋を外しながら言う英太郎の言葉と、左(・)薬(・)指(・)に(・)填(・)め(・)ら(・)れ(・)て(・)い(・)る(・)指(・)輪(・)に、艦娘達が驚愕する。

「み、みく!?」

「言おう言おうと思って時期を逸してしまいました。いいですか、皆さん。この指輪は、英太郎さんと婚約カッコカリをした『証し』なんですよ。最初は私(・)の(・)ス(・)ト(・)ー(・)カ(・)ー(・)でしたが、あの時命をも捨てる覚悟で迎えに来た英太郎さんに、私も恋に落ちてしまったようです」

「よ、良かったぴょん……片桐大佐に知られたら、心中とかするんじゃないか、と思ったぴょん……」

安堵する『卯月』に、英太郎が憤慨する。

「失礼な。私がそんな無分別な男だと思っていたのか!?」

「ぴょん……」

叱られた『卯月』はしょんぼりしてしまう。

「まあまあ。この件は、一件落着ってことで」

苦笑いしながら、『卯月』を慰めて頭を撫でる『瑞鶴』。

「ところで、しょやというのはしたのか?結婚すると、しょやというものをするらしいぞ?」

「ふぁっ!?」

自(・)信(・)満(・)々(・)の(・)ド(・)ヤ(・)顔(・)で言い放つ『三笠』に、場が凍り付いた。

頭を抱える頭(・)痛(・)鉢(・)巻(・)き(・)の紀子に、苦笑いをする黒井。顔が真っ赤の艦娘五人衆に、同じく真っ赤でフリーズ中の英太郎。

そんな中、一人海来がケラケラ笑ってから、妖艶な笑みを浮かべる。

「はい。ちゃぁんと、『据え膳』を召し上がりいただきましたよ」

『おー……』

顔が真っ赤なまま興味津々の、『三笠』以外の艦娘達に、まだ顔が真っ赤でフリーズしている英太郎。

「ところで、しょやとはなんだ?」

『三笠』の言葉に、艦娘達がずっこける。

海来は、更にツボに入ったのか、大笑いしながら『三笠』を呼び寄せて耳打ちする。

『三笠』は、みるみるうちに顔が真っ赤になる。

「は、破廉恥なのだ!!そんな……そんなことを!!」

ワタワタし出す『三笠』は、艦娘達の所に戻って海来から聞いた内容を耳打ちする。

艦娘達は顔が真っ赤になる。

「あ……朝まで……」

ボソリと『瑞鶴』が呟く。

海来はコホンと咳払いをすると、

「まあ取り敢えず……今日のお客様が黒井提督だからこれだけで済んだものの、何やってるんですか?今日のアイスは無しですね?」

「そ…そうだぞ。黒井提督にお詫びをしなさい」

漸く復活した英太郎も、艦娘達を叱責すると、

『えーーーっ!?』

と抗議の声が上がる。『三笠』に至っては、

「アイスが……アイスが抜きになるのだ……」

と、この世の終わりのような涙目になっている。

「まあまあ。私は気にしてませんし、許してあげたらどうでしょうかね?」

黒井は、苦笑いしながら二人に声を掛ける。

その黒井の言葉に、艦娘達の視線が海来にも注がれる。

「わかりました。公表しなかった私にも非はありますし、アイス抜きの処分は取り消しです」

『やったーっ!!ばんじゃーい!!』

全員で万歳三唱する様子を、三人の佐官は生(・)暖(・)か(・)く(・)見守っているのだった。

 

黒井が硫黄島に向かい、艦娘達も出撃して行った応接室。

紀子も気を利かせて退室して行った。余談だが紀子は美雪の弟の双子(春陽と冬夜)とは今でも恋人関係が続いている。

「何か今日は疲れたな」

「ですね」

その言葉にふふっと笑いを浮かべる。

「ねぇ、英太郎、もうバ(・)レ(・)ち(・)ゃ(・)っ(・)た(・)ことですし、一緒に住みません?」

「いいのか?」

寄り添う海来を抱き寄せながら、英太郎が訊くと、

「はい、この間ちょうどいい空き家を見つけました。軍港から徒歩三分」

「その前に、湊さんに報告しなくてはな……」

「そうですねー…今、私達は離れられないので、母に来てもらいましょう」

「そうだな……」

そう言いながら、海来は湊にメールを送るのだった。

 

 

――――――

その頃。

「あれ?海来からメールですね。どれどれ……『会わせたい人がいます』?」

首を傾げる湊に、電が声を掛ける。

「湊、どうしたのですか?」

「どうしたの?」

「あのね、電、むっちゃん。海来から『会わせたい人がいます』って、連絡が来たんだけど?」

『へっ?』

「という訳で、ヘリの準備をお願いします。明日にでも、顔を出しに行きましょう」

「「了解」なのです」

 

翌日、『不敗の女神様』が聖(・)地(・)青ヶ島にやって来る。




次回、「湊リターンズ」
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