大学生を満喫している春陽と医大生の冬夜
そして未来を語る三人に春陽の出した答えは
そう、これは何年も前………
「ねえ、のりちゃんはおおきくなったらぼくと冬夜どっちと結婚したい?もちろんぼくだよね!?」
春の陽のような、元気で明るい
「…ううん…ぼくとだよね?」
冬の夜のように、静かな
「冬夜は引っ込んでて!僕はのりちゃんが好き!」
「春陽は、いつもそうやって僕のものを取るんだ。のりちゃんのことは僕も好きだ」
いつも、紀子を巡って喧嘩をしている二人。
「あのね、わたし、三人がいいな?」
その明るい笑顔で、二人の心を同時に射抜いていた。
こうして小中高と、
―――――――――――――――
季節は変わり、夏本番になり出した七月。
「おー、ここが青ヶ島か!」
青ヶ島ヘリポートに降り立った、茶髪のツーブロックヘアの陽気な春陽は、ヘリから飛び降りると海に囲まれたこの島に、目を煌めかせている。
一応大学には通っているが、
「燥ぐなよ。
それを諌めるのは、ミディアムヘアで黒縁メガネを掛けたクールな冬夜。
―――――――
二人がこの島にやって来たのは、春陽の提案からだった。
二人は、エナツキハウスVer3になった時に、わざわざ東京の高校に編入して、引っ越して来たのだ。
曰く、
現在エナツキハウスVer3には、エナツキ10名と菅野さんの他、
エナツキハウスVer3は、エナツキ全員でお金を出し合い、高梨家の近くの矢部晋太郎の同期政治家が使っていた東京別邸を譲り受け、ほぼ新築に近い大改装を行って建築した、大型邸宅なのだ。
菅野さん?彼女は、一生をエナツキに捧げる、として、
もちろん、春陽と冬夜、それに堅に、響音、秋也に夏海も
正式メンバー10名に菅野さん、準メンバー8名で、総称もエナツキ軍団《レギオン》となっている。
エナツキ+サブメンバーズが、
そんなエナツキハウスでは、兄弟で
「なー、冬夜?」
「ん?どうした?」
勉強の手を止めると、顔をベッドに向ける冬夜。
「のりちゃん、今青ヶ島だろ?今度の土日遊びに行こうぜ!?」
「あのなあ?
陽気にワクワクしながら言う春陽を諌める冬夜。
「大丈夫だって。硫黄島に要塞出来てから、割と攻撃減った、ってニュースでやってたぜ?」
「むう、それじゃあ紀子に連絡を……」
「いや、サプライズで行こうぜ!」
「良いのかそれで……?休みじゃないかも知れないじゃないか?」
「そこはそれ。裏で手を回して、土日休みにしてもらって」
「もしかして、恵奈さんを使うのか?」
苦笑いをしながら春陽を見上げる冬夜に、春陽はサムズアップをする。
「いえーす!さすが天才!」
「誰でもわかるわ、アホ」
エアデコピンをする冬夜に、「ぐわっ!やられた!」と大袈裟に仰け反る春陽。
こうして、恵奈経由で海来に、その土日を休みにするよう依頼したのだった。
―――――
青ヶ島ヘリポートから、宿泊には青ヶ島に唯一ある民宿を取り、民宿の車で青ヶ島軍港に向かうのだ。
元々、現在の艦娘本部のシステムから少人数運営が多く、敷地付近に青ヶ島食堂もある為、
割と民間人の来訪は、可能なのだ。
もちろん、民間人は基本許可が要るが、そこも全て冬夜が恵奈を経由して手配した。
その為、二人は首から入構許可証を提げている。
青ヶ島民宿の客室で荷物を下ろすと、早速ゴロゴロし出す春陽。
ポケットからスマホを取り出すと、
「おっ。ここ、電波めっちゃ良いぜ」
そう感嘆の声を上げる。
「ん、マジだな。まさか、
冬夜も、部屋の真ん中に置きっ放しの春陽のキャリーケースを隅へ退けながら、スマホを取り出す。
そう。この島は、嘗て片桐英治が
「ほんで、軍港までの移動はどうするんだっけ?」
「民宿の人に、車を貸してもらうように手配した」
「おー、さすが天才!」
「煽てても、何も出ないからな?」
いつものごとく、頼れる双子の弟を持ち上げる春陽に、それをサラッと流す冬夜。
「早速出発すっか」
「ん。運転はどっちがする?」
二人共、高校卒業と共に、普通車免許を取っている。
「冬夜に任せる!」
ビシッと敬礼する春陽に、
「何だそれ?」
と突っ込む冬夜。
「いやあ、軍港だろ?敬礼しないといけないじゃん?練習したのよ」
「そんなこと練習してんなよ」
この兄弟漫才は、エナツキ日和でも割と好評なのだ。
二人は、冬夜の運転で青ヶ島軍港に向かったのだ。
青ヶ島軍港の駐車場に車を停めて、軍港敷地内に入ろうとする所に、『卯月』が声を掛けた。
「不審者だっぴょん?」
「不審者じゃないし!この入構許可証あんだろ?」
「君は艦娘だね?高天原紀子さんは居るかな?」
入構許可性を、印籠のように見せる春陽に、しゃがんで目線を合わせ、笑みを向ける冬夜。
「おー!お客さん!『卯月』でっす!よろしくだぴょん!びしっ!」
自ら擬音を付けて敬礼する『卯月』に、びしっと敬礼を返す春陽。
「それじゃあ、案内してもらえるかな?」
頭を撫でる冬夜に、『卯月』は笑みを向けて、
「えへへっ、了解だぴょん!」
と二人を案内する。
紀子は、休日でもろくな娯楽がない
もちろん、海来は勤務時間中である。
英太郎は、今日は休暇で、今は診療所に通院中である。
紀子は、スマホゲームをしながら紅茶を飲んで……
バタンっと扉が開かれて、『卯月』が部屋に入って来る。
「ミクちゃん提督、お客様だぴょん!」
その言葉に扉の方を見て、紀子は紅茶を噴いた。
「来ちゃった!」
「紀子、元気だった?」
「どういうことなの……?」
その直後、二人が首から提げている入構許可証を見ると、はっと海来を見る。
海来はニコニコ顔である。
「謀ったわね……海来……」
「久しぶり、海来ちゃん!びしっ!」
海来にも敬礼する春陽に、座ったままで敬礼を返す。
「お久しぶり、海来ちゃん」
「うん、二人共元気みたいですね?」
「ちょっと、出てくるわね」
紀子がふう、と立ち上がると海来は、
「うん。行ってらっしゃい」
そう見送る。
三人は、艦娘達が沖合で演習している埠頭にやって来た。
「何だって、突然来たのよ?」
「そりゃあ、サプライズってやつ?」
「まあ、驚く紀子も見たかった、ってのもあるかな?」
溜め息を吐く紀子に、笑顔の二人。
「全く。最前線に来て……」
「大丈夫、民間人退避命令も出てないし」
「……という訳でね」
そんな二人に、ふふっと紀子が笑みを浮かべる。
そんな三人に、艦娘達も寄って来る。
「二人は、紀子さんの彼氏だっぴょん?」
『卯月』が問い掛けると、
「おう!」
「そうだね」
と同時に応える兄弟に、『卯月』は驚く。
「うっぴょおおん!!紀子さんモテモテだっぴょん!」
「しょやはしたのか!?しょやは!?」
「こら!いきなりそんなこと言って、失礼でしょうが!?」
それを諌める『瑞鶴』。
「あ、エナツキの春冬兄弟だー!!のりちゃんの彼氏だったんだ!!」
エナツキファンの『那珂』ちゃんは、指を指して笑顔になる。
「あ。せっかくのデート、お邪魔してすみません」
「えっとー、どうも。『時雨』です」
二人のことは、
「はいはい。デートの邪魔だから、行きましょうね?」
『瑞鶴』が一同を連れて行くと、再び三人になる。
「……ねえ?二人共、将来の事考えてるの?今は良いけど、これから先……」
急に真剣な顔になって、ポツリと口にする紀子。
「うーん、先ねえ?」
「……僕は、医者になることは変わらない」
ポリポリと頭を掻く春陽に、しっかりと自分の意見を言う冬夜。
「今は、
「冬夜と結婚すれば良いんじゃねえか?」
「「えっ?」」
春陽の意外な言葉に、二人は春陽の顔を見る。
「俺は、バカだからさ、やっぱり結婚するなら、
「……春陽……」
「……それで良いのか?」
二人の言葉に、春陽はふっと真面目な表情になる。
「今の世の中、
『………』
沈黙する二人に、春陽は続ける。
「俺は多分、普通のリーマンになって、普通に終わるけど、冬夜は頭は良いから、良い医者になると思うんだよ。だから身内には、
『………』
「まあ、
ははっと笑う春陽に、冬夜は眼鏡を掛け直す。
「本当にバカな兄貴だ、有難う。そういうことだから紀子、
「……最初から答えは決まってるでしょ?何年来の付き合いだと思ってるのよ?」
ふふっと笑うと、二人を抱き寄せる紀子。
「わわっ」
「おっ」
「是非、
そう言うと、二人の頬にキスをする。
その夜は、青ヶ島食堂で皆で食事会である。
英太郎も交えて、五人でのお食事会である。
艦娘達は艦娘達で、食事会の最中である。
「紹介します。私の婚約者で、参謀長の片桐英太郎さんです」
「よろしく頼む。その、いずれ
少し照れながら、自己紹介をする英太郎に、
「おお、年の差カップルっすか?いいっすね」
とパリピノリになる春陽。そんなノリに、苦笑いになる英太郎。
「こら!英太郎さんに失礼だろ?」
「あてっ」
チョップで突っ込む冬夜。
「こっちのバカが春陽、こっちが冬夜です」
「よろしくっす」
「大林冬夜です」
紹介をする紀子に、海来が、
「英太郎さん、二人共紀子の彼氏なんですよ」
「そうなのか。高天原もモテモテだな?」
ふふっと笑う英太郎に、紀子は真顔で、
「三人で話し合って決めたんです。私は
「ふむ……」
英太郎は暫し考えた後、言葉を選ぶように語り出した。
「
「ふむ……」
「そうですね」
「そうね……」
その言葉を、噛み締めるように聞いている春陽に、同意する冬夜と紀子。
「私達も年齢差ありますし、偉そうに言えないですけど、二人と紀子が決めたらそれで良いんじゃないですか……?という訳じゃないんですが」
ごそごそと、鞄から指輪ケースを三つ取り出す。
「実は、春陽くんから相談受けてたんですよ。お代は春陽くんから頂いてます。バイト代を一生懸命貯めたんですって。
霊子結晶のリングは、希少金属ながら人気のある素材なのだ。お値段も割と張るが、春陽は何年もバイトして貯金して買ったのだ。
「春陽……」
「お前……」
驚く二人に、春陽はヘヘッと笑う。
「驚いただろ?きっとこうなる、って自信があったから買っちまった」
「もぅ……」
「お前なぁ……」
そんな二人に春陽は、
「紀子に指輪を着ける栄誉は貰っていいか?」
「ああ、春陽に任せる」
頷く冬夜。
春陽は、ケースから指輪を取り出すと、紀子の左薬指に填める。
「……それじゃあ二人には、私から着けるわね」
紀子は、今度は冬夜から指輪を填めて、次に春陽に指輪を填める。
三人の指輪は、綺麗な輝きを帯びている。
「
『おめでとー!!!』
海来の祝福の言葉と艦娘達の声に、店内の皆も祝福ムードになる。
仕舞いには、漁師達により二人が胴上げされたり、夕雲には、
「紀子が、後期研修時まで
と言ってくれたり、大盛り上がりになった。
そんな、大賑わいの青ヶ島食堂で、三人の指輪は綺麗に輝き続けているのだった。
Tips《不可思議さんの姓》
【名字】不可三
【読み】ふかみ
【全国順位】 52,130位
【全国人数】 およそ40人
だそうです。
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