新・小さな提督と艦娘日和   作:SAMICO

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工廠のおはなし



ミクちゃんと工廠妖精

ミクちゃん提督の朝は早い。

0600(マルロクマルマル)に目を覚ますと、紅茶を淹れる。

『母親』である湊に似て、「コーヒー嫌い」である。

 

提督私室で裸のまま、紅茶の香りを楽しみながら余韻に浸ってると、

0630(マルロクサンマル)に起床ラッパが鳴り響く。

『♪パッパラッパ パッパラッパ パッパラッパパッパパー パッパラッパ パッパラッパ パッパラッパラッパパー♪』

もちろん、吹いているのはレジェンド結有である。といっても、この娯楽のない孤島で流れ着いたトランペットを修理して吹き始め、今では趣味になっているからだ。

レジェンドの朝は、()()()()()のだ。

 

結有の朝は、未明に目を覚まし、準備運動とばかりに、近海の駆逐艦級を()()()()()()()()()()()で蹴散らして、戻って来る。

さすがは、()()()()()()漢女(オトメ)である。

特別教導団時代に、本気攻撃あり(何でもあり)の格闘トーナメント決勝で、

父であり、特別教導団司令官の各務原裕二准将の骨を、数本へし折って病院送りにしただけのことはある。

各務原裕二も、もう50代過ぎ、そろそろ衰えを感じる頃なのだ。

 

その起床ラッパの音で、軍服に着替える。

母親を踏襲して白い詰め襟の軍服上着を着ずに、ワイシャツにネクタイ、若草色のカーディガンを身に着ける。そしてズボンは、海軍の迷彩ズボンである。

曰く「白い軍服は汚れるから、公の席以外は着ません」とのこと。

母親より徹底している。

 

司令官私室に隣接する執務室に入ると、『卯月』が朝食のトレイを二人分持って来る。

「ミクちゃん提督、朝だっぴょん!」

「おはようございます」

「おはようさん」

後ろからは、『吹雪』とレジェンド結有が、朝食のトレイを持ってやって来る。

 

一人では味気ないから、と最初三人で食べていたのが、今は四人に増えた為、

ダイニングテーブルを新調して、そこで食べるようになった。

他の泊地では、艦娘と提督の同席の食事は余り見られない、と言うが、

この泊地では()()()()()ということで、()()()()()()()()()()のだ。

「うーちゃん達は、今日もレジェンドと訓練に行くっぴょん」

「うん。『今日も何故か』深海棲艦の数が少な目だし」

 

まさに、縁の下のレジェンドである。

 

朝食を終えた海来は、訓練を始める三人と別れて、工廠へと足を運ぶ。

「おはようございます」

声を掛けると、作業をしていた工廠妖精さん達の動きが止まり、一列に整列する。

「司令官殿にけいれーい!」

工廠長妖精さんが号令を発すると、皆びしっと敬礼する。

そんな、ちっちゃな妖精さん達に、海来も答礼する。

 

提督の適性が、高ければ高いほど妖精さんが見えるようになり、

更に、艦娘も妖精さんが見える。

逆を言えば、()()()()()()()()()()()()は、()()()()()()()()なのだ。

ブラック泊地のような真似をすれば、妖精さん達はそっぽを向いて、見えなくなって行く。

()()()()()、最低限の整備等はきちんとやるが、ただ()()()()なのだ。

海来が、敬礼を返した後しゃがみ込むと、数人の妖精さんが海来の体によじ登る。

海来が、工廠妖精さん達に好かれている証なのだ。

「あはっ、くすぐったいですよ」

ちょっと身体を捩らせながら、その妖精さんを肩に乗せると、

「そろそろ、あの子達の装備を新調したいな、と思うんです」

そう言うと、工廠長妖精さんは、

「いや、あの()()()共の練度向上が先かと思うんだ」

と、バッサリと両断してくれる。

「そっかぁ、そうですよね……あまりにも当たらないから、水上電探でも付けようかな、と」

「ふむ………」

工廠長妖精さんは腕を組む。

「昨日、レジェンド専用汎用艤装には、追加スラスターを設置しておいたんだが……」

工廠長妖精さんは、元フルアーマー綾波ことレジェンド専用汎用艤装を、()()()()()()()のが趣味なのである。

その資材は、工廠長妖精さんが()()()()()持ってくる為、海来も不問にしているのだ。

「あの、レジェンド結有さんを()()()()()んですか?」

そんなツッコミはどこ吹く風で、話題を元に戻す工廠長妖精さん。

「それで、電探を付けるのか?確かにそうなんだが、電探以前の問題だと思うのだが?」

「やっぱりそうですよね……」

そう溜め息を吐きながら、思案を巡らせる。

「確かに、()()()()()()()()から、今の近海でのイ級との戦闘ででもいいんだが、一発でも当ててくれんことにはなあ、戦果が……」

第四世代艦娘の特徴の一つに、()()()()()がある。よっぽどの事(大破進撃)をしない限り、沈むことはないし、旗艦は沈まないのだ。

 

 

工廠から外を見ると、レジェンド結有を標的に、艦娘達が必死に射撃訓練を続けている。

「狙いが甘い!もう一度!」

「「は、はいっ!」ぴょん!」

朝からずっと、こんな調子なのである。

結有の汎用艤装は、かつての綾波のものと比べると、()()()()になっており、()()()()()()()()である。

駆逐イ級程度の砲弾では掠り傷程度しか付かず、搭載兵装のウェポンラックには、多種多様の近接戦用装備が搭載されている。

更には、アクティブクロークで直撃弾を、数発までなら防いでくれる。

それこそ、駆逐艦型程度なら、蹴散らすことができる()()()なのだ。

そして、対人装備も充実している。こちらは、余り使う機会は無いが……

 

艦娘達も、レジェンドの指導により、ちょっとずつ上達して来ている。

厳しく、優しくがモットーなのだ。

「ところで。電探を狙って、開発してみるかい?」

工廠長の呼ぶ声で我に返ると、腕を組んで考える。

「そうですねえ。22号対水上電探辺りが出ればいいんですけど……()()ばっか出ますし」

と、謎の物体とペンギンのぬいぐるみの山(開発失敗の副産物)を指差す。

装備開発は、望んだものが出るとは限らない。失敗したり不要なものが出たりするのだ。

失敗はともかく、余剰なものに関しては、軍事サーバの「teitoku.go.jp」でアクセスできる、フリーマーケットに出品するのだ。

不要な装備を、必要な装備や資材と物々交換する。

現役復帰し、艦娘本部長に戻った安藤龍大将の発案で、鳳翔倉庫運輸と提携して食事便と同じタイミングで、物資融通もできるようにシステム化しているのである。

もはや日本のインフラの半分は、鳳翔ホールディングスが握っていると言っても過言ではない。

「最近、電探の出品も少ないしな」

工廠長妖精さんも、()()()()()()()()()()()で、端末にアクセスする。

電探等は人気で、品薄なのだ。

「恵奈さんに頼る訳にも行かないですし……」

その()()()()()は恵奈であるが、彼女は今、艤装本体の建造に忙しく、そこまで手が回らない。

新装備開発は彼女の業務ではあるが、()()()()()()()()()()()()()()()には、新装備なんぞ回ってくる訳がないのだ。

「今日も回してみるか?」

「うーん……資材的には、うーちゃんの建造分を本部に納めて、まだ余裕があるっちゃありますけど」

「それとも、本部に建造申請を出すか?」

建造申請とは、「どの資材を使って建造を行ってください」と、本部に申請を出すものだ。

その送られた資材と引き換えに、新しい艦娘候補生に作られた艤装を装着して、艦娘として送り込むのだ。

コレも、「何が出るか」わからないのだ。

どこぞの泊地では、『那珂』ちゃんばかりが出て即返品、解体して候補生に逆戻り、ということも有り得るのだ。

「いっその事、『大型建造申請』出しちゃいます?」

大型建造申請とは建造の一種だが、資材の量が()()()()()()で、大型戦艦や正規空母を狙う建造なのだ。もちろん、今の泊地の資材では、()()()()()()()()()()()()()()()

「おい馬鹿やめろ」

「ですよねー。冗談ですよ」

ふふっと笑うと、そのまま床に横座りで座る。

「もう一つの手は『近代化改装』だな。余剰艤装を今ある艤装に合成して、艤装の性能を引き出す……んだが、命中率は上がらんのよな」

近代化改装とは、前述の大量『那珂』ちゃんのような時に、艤装を取り外し合成して、候補生を送り返すことである。

候補生は、再び別の艤装を纏って別の泊地に送られるが、

その艤装の特性に応じて、艤装の能力が上昇するのだ。

 

尚、()()()()()()別に『那珂』ちゃんに恨みなど無い。ナカチャンハアイドルデスヨー……

 

「その、近代化改装をする為にも余った艤装が……」

「それがあるんだな。レジェンドが、艤装を数個引き上げて来てくれたぞ」

「は?」

初耳である彼女は、口をあんぐりと開けていた。

工廠妖精さん達が艤装を並べる。

『綾波』『敷波』『電』『漣」『那珂』

「今のうち(第13泊地)には、『那珂』ちゃんは戦力として欲しいですね。配備申請を出しておきましょう」

「あいよ、今日の昼便で送っておくわ。早くて明日の朝かな?」

こうやって、釣り上げた艤装を本部に送ると、艦娘として配備申請もできる。そのままここで解体もできるし、近代化改装もできるのだ。

 

そう言うと、海来は司令官端末を取り出して配備申請を出す。

「残りの駆逐艦は、近代化改装をしてみましょうか?雷装が増えるのは、いい感じです」

「あいよ、今晩やっとくわ。『綾波』と『電』を『吹雪』に、残りをウサ公(『卯月』)に、でいいな?」

「はい、お願いします」

 

こんな感じで、海来は午前中、工廠に入り浸って終わるのだ。

「そろそろお昼にするよー」

という、レジェンド(結有)の声が聞こえると、皆庁舎に戻って、お昼がてら反省会を開くのだ。

 

 

 




レジェンドマジレジェンド

那珂ちゃんマジアイドル
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