それは、エナツキハウスでの出来事だった。
エナツキハウスは、総勢18人で暮らしている大所帯である。
そんな中春陽は、リビングで漫画を読んでいた。
「「ねー、おいたん」」
そう声をかけるのは
母美雪の弟である彼は、
「おー、チビ達どうした?」
「
「そうそう、海ね」
明るく元気な方が夏海、父に似て穏やかな方は秋也。
「海かぁ、
「「うんっ!」」
元気良く二人が返事すると、美雪がキッチンから出て来る。
「何?春陽、チビ達連れてどっか出かけてくれるの?」
「おう、青ヶ島にな」
その言葉に、暫し考え込む美雪。
「最近エナツキのスケジュールが押しててさぁ、そうしてくれると助かるわ」
そう。エナツキの露出は、10年前より格段に上がって来ているのだ。
恵奈は工廠部の仕事があるから、活動を控えめにシフトしている中、
暁と美雪と真由は、エナツキでもらうお仕事を精力的に熟しているのだ。もちろんメインチャンネルは毎日投稿を欠かさず行っており、その撮影もある。
その為、エナツキ日和は雷と響と結衣に任せて、エナツキニュースを夕張と晋太郎で行うスタイルに移行しているのだ。
そして
その為第4チャンネルは、動画を全てエナツキ日和にお引越しして、惜しまれつつ廃止になっている。
その代わりに、長寿番組の「食いしん坊天国」レポーターに大抜擢されて、全国各地の名物料理を美味しそうに食べる姿は、評判となっているのだ。
菅野さんは、相変わらずの多忙っぷりで、エナツキ
そして暁が、収益受け取り上エナツキ二代目リーダーになったのと同時に、
とにかく、メインメンバーは大忙しの日々を送っているのだ。
そんな事情から、エナツキの
春陽と冬夜は、甥姪から「おいたん」と呼ばれているのだ。
そんな会話をしていると、リビングに
「ねーちゃん。おいたんが海連れてってくれるって!」
「おー」
響音は、白い髪で独特の雰囲気を持つ
「また、恵奈さん経由で入構許可証貰ってくっからさ。海来ちゃんにも会えるぜ?」
「ほんと!?」
「久しぶりだもんね」
「うん、結婚生活聞きたい」
三者三様の反応を見せる子供達。
――――――――――
青ヶ島ヘリポートに降り立った一同は、
「着いたぞー、チビ共」
と、春陽が先にジャンプで降りると、チビ達を抱き抱えてヘリから降ろしてあげる。
宿泊先は、
今回は、お泊まりの荷物を先に宅配便で海来邸に送って、身軽でやって来たのである。
「よっしゃー、軍港まで歩くぞ―!」
「「「おー!」」」
子供みたいにはしゃぐ春陽と、それに従いていく子供達。
青ヶ島環状線を、青ヶ島軍港に向かって歩いていると、後ろから走って来る集団に遭遇した。
「お、春冬兄弟に夏秋姉弟に
先頭を走っていた結有が声を掛けると、ちび達が笑顔になる。
「「「こんにちはー、結有おねえさん」」」
礼儀正しく挨拶する三人に、しゃがんでそれぞれ頭を撫でる。
「ねえ、後ろの人達が艦娘さん?」
その響音の言葉に、『那珂』が真っ先に反応する。
「もしかして、日和に出てる秋也くんになっちゃん、それにねーちゃん!?」
「うん、そうだよ」
響音が答えると、『那珂』は一気に
「すごい!生で見られるなんて『那珂』ちゃん感激―!」
「『那珂』お姉ちゃんもエナツキ見てるの?」
「ああ、エナツキ―ズさん」
その反応に、夏秋姉弟も『那珂』に声を掛ける。
「そうだよ。『那珂』ちゃん、エナツキの大ファンで、欠かさず見てるんだぁ」
早速自己紹介が始まる。
「私は『三笠』である」
「私は『大和』です」
「うーちゃんだぴょん!」
「『吹雪』です!」
「『瑞鶴』よ」
それぞれの自己紹介に春陽が、
「こっちの白い髪の毛の子が響音、響く音と書いておとね、愛称はねーちゃん」
紹介されると響音は、
「よろしくー」
ペコリと頭を下げる。
「こっちが双子で、俺の姉貴の子の秋也と夏海」
「宜しくお願いします」
「よろしくねー!」
丁寧に頭を下げる秋也に、元気良く手を挙げる夏海。
「それじゃあ、トレーニング中だからまたあとでね?」
と言う言葉と共に、艦娘達を引き連れて再び走り始める結有。
それを見送った一行は、軍港へとやって来た。
一行は高梨夫妻のお出迎えを受ける。
「こんちはっす!今日はお世話になります!」
英太郎に頭を下げると、
「ようこそ。こっちの子達が、連絡のあった甥っ子姪っ子さんと、一緒に住んでる子かな?私は海来の夫で英太郎だ。よろしくね」
「うん、響音って言います」
「あたし夏海!」
「ぼくは秋也です」
英太郎の言葉に元気よく挨拶すると、偉いね、としゃがんで頭を撫でる英太郎。
「ご結婚おめでとうございます」
代表して響音が言うと、英太郎も「ありがとう」と再び頭を撫でる。
「……はーい!質問!海来お姉ちゃんと、英太郎おじさんは『ふーふのいとなみ』してるんですか!?」
いきなり
「……うちのパパとママは毎日してる。ねーは寝た振りしてるけど」
更に響音も、しなくていい報告をして来る。響音は自分のことを「ねー」と呼ぶのだ。
「だめだよ。
秋也は止める役である。
「ばっか、夫婦だからやることやってんだろ?今頃紀子と冬夜もしっぽり……」
「うふふ、ご想像にお任せします」
「そ、そうだぞ。子供にはまだ早い」
妖艶に笑ってスルーする海来に、タジタジになりながら諌める英太郎。
一行は海来邸に向かう。
海来邸は5LDKの二階建ての家である。一階には二人のLDKに寝室、英太郎の書斎、海来の部屋、お風呂、トイレ、脱衣・洗面室。二階には使用未定の部屋が二つあり、今回は響音と夏海、春陽と秋也で借りる予定なのだ。
因みに海来には、彼等が滞在中は
「ちゃんと水着も持ってきたんだよ!」
そう言って、夏海が取り出す水着。子供が着るにしては、ちょっと布面積が少なめ。
「ねーも持ってきた……」
取り出したのは、所謂
「まだ早いよ。艦娘さん達と一緒に、海に行く約束でしょ?」
安全域になりつつあるものの、DSアサシンやはぐれイ級がいない訳ではないのだ。
今は、下手な本州の海岸に行くよりは、艦娘達と海水浴した方が安全なのだ。
「はいはーい!質問!今日は海来お姉ちゃんは、ぱんつじゃないの?」
「……うん。英太郎さんから服着なさい、って叱られちゃったの」
またまたぶっ込んだ質問に、海来は苦笑いで応える。
「………」
その言葉に、英太郎は頭痛を覚えていた。
「紀子から聞いてるっすよ。まっぱのミクちゃんを目撃したって」
「……あれは
「……ですね」
春陽の言葉に英太郎は苦い顔をし、海来も苦笑いになる。
「こんにちはー」
やがてランニングを終えて、日課終了の『那珂』がやって来る。
『吹雪』と『瑞鶴』と『三笠』は、軍港待機である。
そして『卯月』は、『大和』と一緒におやつを食べに行った。あれ以来『卯月』は、『
「あ。さっきのおねーちゃんだ!」
夏海が玄関に向かうと、『那珂』に抱っこされて戻って来る。
「どうぞ。『那珂』ちゃんだけなんですね?」
「うん。うーちゃんは大ちゃんとおやつで、後は軍港待機かな?」
「『那珂』ちゃん、恵奈お姉ちゃんからエナツキ―ズさん居る、って聞いたから、お土産持って来た」
そう言うと、背負っていたリュックから、今年モデルのエナツキTシャツを取り出す。まだ
「えええっ!?いいの?『那珂』ちゃん感激!!!」
テンションが跳ね上がりながら、「早速着てみるね」と言って脱衣場に行ってから、Tシャツ姿で戻って来る。
「
春陽の
「ほら、見て―!今度発売するモデルのだよね!?」
クルクル廻りながら喜ぶ『那珂』を見て、響音もニッコリ笑う。
「そうだ、ちょっとこっちに寄って?」
響音が『那珂』の隣にやって来ると、『那珂』はしゃがんで顔を近づける。
スマホを取り出して、Tシャツと二人の顔が映るように
「『那珂』ちゃん、エナツキの皆に送っていい?」
「うん!もちろん!」
『那珂』の許可を得てから、響音はスマホを取り出して『エナツキレギオン』グループに、その写真を送る。
すぐに皆から、『可愛い!』とか『似合ってる!』とか反応が返って来る。菅野さんからは、『発売まではSNSに上げないでね?』と、注意喚起もされる。
「今月の発売までは、ネットに載せないで、って」
「うん、解ったよ!」
海来と夏海と秋也と『那珂』が、『大激闘!ストライクブラザーズ』と言うテレビゲームに熱中している間、
英太郎と春陽と響音は、夕食を作り始めている。
「ねーちゃんは、バーグこねこねしてもらえっかな?」
「春陽君も料理はできるんだな?」
英太郎が、ポトフの材料を切りながら感心すると、春陽は、
「いやあ。うち、シェアハウスじゃねっすか?朝夕の飯の作る様子は生放送だし、交代で作るから、自然とできるようになるんすよ」
「海来に、
英太郎の言葉は、海来にも
春陽は、刻み玉ねぎを炒め終わると、
「熱いから気をつけなー」
そう言いながら、挽き肉のボールに入れると、響音が再びこねこねし始める。
その後は、パン粉等を入れてから、二人で一緒に形作りを始める。
その頃には、『那珂』も手伝いに混ざる。
「何かエナツキ日和みたい~」
なんて言いながら、和気藹々とハンバーグを作って行く。
英太郎担当の、ソーセージ入りのポトフができる頃には、ハンバーグも焼き上がる。
その後は、そのフライパンでハンバーグソースを作っている間に、英太郎はキャベツを千切りにする。
ハンバーグにソースを掛けて、キャベツの千切りを添えると、響音はご飯をよそってトレーに載せ、リビングに向かう。
今日は大人数なので、リビングの大きな卓袱台で食べるのだ。
「明日は艦娘の皆と海水浴しましょうねー?」
「「「わーい!」」」
子供達が、喜びながらハンバーグを食べる姿を見つつ、自分達も親になったらこんな感じなんだろうな、と思う海来だった。
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