そして
悲しみも少しだけ和らいだ九月半ば。
青ヶ島に、ヘリコプターが降り立った。
「長かったね、意外と」
一番始めに降り立ったのは
「そうだね。あ、ちーちゃん、ちょっと待っててね」
次に杏奈が降りると、
「ありがと」
次に、夕立がぴょんと飛び降りる。
「着いたっぽーい!」
最後に瑞希が降りる。
「うむ………」
荷物は、既に引越し業者に送ってもらった。
海来の家の近くにある、空き家をリフォームして、漸く入居可能になったのだ。
「皆ー!久しぶり!!」
結有が、待ち構えるように声を掛けながら駆け寄ると、皆走っていく。
杏奈は、
真っ先に、
「もう、久しぶり過ぎて……
半泣きで抱き付いて、胸に顔を埋める
次に、夕立が横から抱き付く。
「毎日の電話だけじゃ不満っぽかった!これで一緒っぽい!」
「結有、これでまた一緒に暮らせるし、また
瑞希は、この開戦時から深海棲艦としての力を取り戻していたのだ。いわば、
弱体化はしたものの、自主訓練のおかげで、ある程度は戦うことも出来るのだ。
「はいはい。ちーちゃんも、抱き付きたい、ってよ」
「ただいま。また、皆で暮らせるね?」
千里の笑顔に、皆で千里を抱き締める。
「家の方は準備できてるよ。全部引越し業者がやってくれたし。荷物も皆の部屋に」
6LDKの部屋は、結有、瑞希、杏奈、千里、夕立、
寝る時は、皆一緒の部屋で寝られるように、一番広い12畳の部屋を寝室に決めた。
軍人組と瑞希は、軍の制服を着込んでいる。
瑞希もこの
相変わらず、『仕えるのは各務原結有』と言うスタンスだが、海の平和も願っている
唯一、千里だけが私服を着ている。彼女が、家で皆の帰りを迎える役目なのだ。
「それじゃあ、早速軍港に案内するよ」
その結有の言葉で、全員借りて来たワゴンに乗り込み、軍港まで移動する。
軍港に降りると、海来と英太郎と紀子が迎えに出ていた。
車を降りると三人の前に並んで、千里以外は敬礼を、市民である千里は、深々と頭を下げる。
それに
「ようこそ、青ヶ島へ。それでは、正式な配属命令を発令します。
村井杏奈中佐、貴官を副参謀長・主計官に任じます」
「はっ、謹んでお受けします」
「各務原結雪少佐、貴官を泊地防御隊副隊長に任じます」
「はいっ!」
「夕立大尉、貴官を泊地防御隊員に任じます」
「ぽいっ!」
「各務原瑞希特任軍曹、貴官を艦娘指導員に任じます。
「了解した。
それぞれが、敬礼で辞令に応える。
「さて、千里姉さん。私の名前で、軍港入構許可を出します。いつでも、顔を見せに来てくださいね」
「ありがとうね、海来ちゃん」
演習を終えて、艦娘達もやって来る。
「おー、人がいっぱい増えたぴょん!うーちゃんは『卯月』だぴょん」
賑やかになりそうな気配に、『卯月』は顔が緩む。
「あーっ!
「うん、今は
「艦娘学校では
「あはは、これからよろしくね」
苦笑いしながら、握手に応じる
「私は『三笠』である、よろしく頼む!」
「『大和』と申します……」
「『瑞鶴』よ、寮長をやっているわ」
「『那珂』ちゃんだよー!」
英太郎の傍に、千里がやって来る。
「英太郎先輩、変わりましたね?」
そう声を掛けたのは、千里である。
「お互いな。
この二人は士官学校の先輩後輩で、旧知の仲なのだ。
お互い酷い親を持った、ということで意気投合し、付き合う手前まで行ったが、
結局それ以上の進展はなく、結有に掻っ攫われてしまったのだ。
「ふふっ、今は幸せですよ。今は
「まあ、お手柔らかに頼むよ」
苦笑いを浮かべる英太郎。
「あー、千里姉さん?もしかして
その会話を、耳聡く聞いていた海来が問うと、千里がコクリと頷く。
「そうだったのか。私は、てっきりそういった感情はない、と思っていたよ」
「
「まあ、30まで童貞貫く人ですから、そういう人なんです。でも
「お、おい……」
「紀子も結婚おめでとうね、千里から聞いたよ?」
「あ、ありがとうございます」
「真由ちゃんから聞いたけど、三人で
その言葉に、結有も乗っかる。
「おー、やったん?ラブラブそうで何より。産休申請、いつでも受けるよ?」
と言う言葉に、耳まで真っ赤になる紀子。
「あの……あの小悪魔め……」
呟いた時に大きな声で、「艦娘整れぇつ!」と言う声が響く。
埠頭で整列している艦娘達の前に、手を後ろに組んだ瑞希が立った。
「いいか、貴様等。本官は本日より、貴様等『へっぽこーず』の指導員となった、各務原瑞希軍曹である」
『はい!』
「まず頭に叩き込んでおけ。本官の訓練は、
『は、はい!』
「本官の責務は、貴様等を
『は、はい!』
「返事が悪い!返事は『はい!』だ!もう一度!」
『はい!』
「うむ。
『はい!』
「よろしい、では早速訓練を始める!」
「えー、今演習終わったばっかりなのに……」
文句を言う『那珂』を、瑞希は見逃さない。みるみるうちに、瑞希は不快な顔になる。
「貴様が『那珂』か?、言った筈だ。本官は各務原中佐ほど甘くはない。指導員、即ち教官の言うことは絶対だ。右を向けと言ったら右を向け!左を向けと言ったら左を向け、空を飛べと言ったら空を飛べ!」
「ど、どうやって空飛ぶの!?」
『那珂』の言葉に、瑞希は更に続ける。
「飛べと言っている!まだ分かっていないな。本官は、お前達を
『はいっ!』
「よろしい、では
『えええっ!?』
「当然だろう!貴様等は連帯責任だ。腕立て伏せ用意!」
瑞希が、真っ先に腕立て伏せの用意を始めると、皆も『那珂』を恨みがましく見ながら、腕立て伏せの用意をする。
「いちっ!にっ!さんっ!」
ペナルティの腕立て伏せが終わると、全員立ち上がり気を付けの姿勢になる。
「では演習を行う。貴様等の練度確認だ。夕立、付き合ってくれ」
「ぽいっ!」
早速海に出る瑞希。
早速艦娘達は、駆逐水鬼改二化した瑞希と、ペイント弾で模擬戦闘を始めている。
弱体化したとはいえ、
夕立が指揮する、AI付き模擬艦載機達も、容赦無くペイント弾の雨を降らせる。
「きゃん!」
「ぴょん!」
「顔はやめて―!」
「ひゃん!」
「ちょっ!」
「ぐは!」
それぞれペイント弾を食らう『吹雪』、『卯月』、『那珂』、『大和』、『瑞鶴』、『三笠』。
再び埠頭に並んで、演習の評価が始まる。
「実に情けない、まだまだだな。『吹雪』は魚雷を撃つ時に、上体がふらついている。鍛錬不足の証拠だ!発射タイミングもまだ甘い、もっと引き付けて撃て!」
「はいっ!」
『吹雪』は、元気良くその指摘に応える。
「『卯月』は、対空射撃の時にもう少しモーションを省略しろ。それでは撃ち墜とせないぞ、防空をもっと意識して行動しろ!お前のミスが惨事に繋がる!」
「ぴょんっ!!」
『卯月』も素直に聞いている。
「ぴょん?まあいい、気合の入った返事だから良しとする。できれば、次から返事は「はい」だ」
「はいっ!」
「よろしい、次に『那珂』は水雷戦隊の要だ、周りをよく見て空気を読め!」
「『那珂』ちゃんKYじゃないもん!」
「そこがKYなんだ。もっと空気を読め、周りを見ろ!ライトクルーザーなりの戦い方をしろ!」
「ふぁーい」
「何だその返事は!?もう一度しか言わない、空気を読め!」
「は、はいっ!」
「返事が悪い!もう一度!」
「はいっ!」
「では、
「ぽいっ!」
『那珂』ちゃんは、
それで済むならいいが、また全員腕立て伏せである。『那珂』ちゃんは、
腕立て伏せが終わると、再び全員、気を付けの姿勢に戻る。
「『大和』は、もっと観測結果を信用しろ。でかい砲弾も、当たらなければ
「はい!」
厳しい指摘に、一番練度の低い『大和』も真面目に聞く。
「『瑞鶴』は、爆撃に傾注し過ぎだ。もう少し
「了解!」
両肩に乗っている、四人の隊長妖精さんと共に頷く。
「『三笠』は、どのレンジからでも主砲を撃てることを意識しろ!時には
「わ、わかったのだ」
瑞希の鋭い指摘に、流石に『三笠』も素直に従う。
瑞希からは、百戦錬磨の
「よろしい、本日の演習を終了とする。敬礼っ!」
『ありがとうございましたっ!!』
と言う言葉と共に敬礼する艦娘達に、瑞希も笑みを浮かべて答礼する。
「よし、皆で海来提督にアイスを貰いに行こう」
今までよりも、物凄く柔らかくなった口調で言うと、艦娘達も笑顔になる。
『はーい!!』
それを見ながら結有は、
「そろそろ
等と言うと、海来はふっと笑う。
「貴女は、瑞希と第3隊を率いてもらいます。まだ
「たはー、斬艦刀にはまだまだ世話になりそうだね?」
笑いながら言う結有に、
そしてやって来た瑞希率いる艦娘達と、皆でおやつを食べるのだ。
訓練が終わった瑞希は、
Tips《優しさ》
瑞希「失礼な、私は
結有「