新・小さな提督と艦娘日和   作:SAMICO

36 / 36
高梨湊シリーズ完結編




Last Dance~光と闇の交わるところ~

『初雪』(DSアサシン)は、鳥島を拠点に動いていた。

そこに向かって艦娘達が近づいて来たのに気づくと同時に、発信機の存在に気づいた。

すぐに発信機を破壊した。しかし、もう遅かった。

 

艦娘達が、すぐそこまで迫っていたのだ。

「チッ……あの時……」

そう。低空飛行で擦れ違った艦載機を、撃ち墜とさなかったのだ。

いつもここ(鳥島)に転移して来た。

即ち、今まで展開して来た靄のゲートは、ここに通じている。

ここを抑えられたら、転移機能は使うことが出来ない。

ショートテレポートも、毎回ここを経由しているのだ。

 

「征け、艦娘共を血祭りに上げろ!」

深海棲艦達は、次々と鳥島を出発して行った……

島からは、次々と深海棲艦達が出撃して来ている。

 

「艦載機隊出撃!」

DSキラー(海来)の号令により、『瑞鶴』は矢を番える。

―――ヒャッホウ!行くぜ!コノヤロウバカヤロウ!

―――翼さん、熱くなりすぎないように。

―――新・一航戦の力を見せ付けるわ。

―――『空の魔王』を、あまり怒らせないでいただこう。

 

敵のヲ級からも、たこ焼き型艦載機が多数出撃して来る。

だが、こちらのほうが速かった。

ジェット機の速度を活かした強襲攻撃を叩き込んで、ヲ級の半分を海の藻屑にすると、擦り抜けた敵艦載機とのドッグファイトに戻る。

それでも擦り抜けた艦載機は、『卯月』と瑞希の対空攻撃で撃ち墜としていく。

「『卯月』!一機も逃すな!」

「うーちゃん!そっち!」

「わかってるぴょん!」

瑞希と茜妖精さんの的確な指示で、次々と敵機を撃ち墜とすのだ。

 

 

アブドーラ(御蔵島)艦隊も、戦場に到着して戦闘を開始する。

「アッラーフ・アクバル(神は偉大なり)!ファイアー!」

横から殴り込まれた形になった深海棲艦達は、一気に不利になって行く。

精強且つ廃(・)課(・)金(・)装備の艦娘達は、既に改(・)二(・)装備となっているのだ。

その強力な艦隊に押し潰される形で、どんどん数を減らして行く。

次々と、無尽蔵に現れて来る深海棲艦に、アブドーラ提督も陣頭に立ちながら命懸けで指揮を執っているのだ。

 

「ふう、敵は沈むわね」

その油断した一瞬だった……

背後から現れた『初雪』(DSアサシン)が、『瑞鶴』の首を狙いグレートソードを振り下ろした。

「死ね!」

「!?」

ガキィン!

瑞希のトマホークが、グレートソードを受け止めたのだ。

「くっ!!!」

「ちっ!深(・)海(・)棲(・)艦(・)の(・)死(・)に(・)損(・)な(・)い(・)が!」

『初雪』(DSアサシン)が更に力を込めると、瑞希はバックステップで下がった。

囲まれる前に、『初雪』(DSアサシン)は一気に後ろに距離を取った。

艦載機は今、こちらに戻って来ている最中である。

―――すぐ戻るわ、待ってて!!

「主砲発射!各艦は私の着弾で修正を!」

そう叫びながら、『大和』が主砲を発射する。

『初雪』(DSアサシン)は、軽快にその砲弾を避ける。

「ふん、遅い」

そこを狙っていた艦娘がいた。『三笠』だった。

「はっはっは、あまいな、発射であ~る!」

トリプル主砲を、すぐに射角修正を行い発射したのだ。

『初雪』(DSアサシン)は、それも躱して行く。

「チッ……だが、この程度」

「『那珂』ちゃんセンター!いっくよー!」

『那珂』は、まだ偵察機を出していなかった。

偵察機を発進させると、偵察データを元に主砲を連射して、魚雷を放つ。

漸く、『初雪』(DSアサシン)が足を取られた。

艤装の魚雷が誘爆して、転倒する。

「ウウッ!!」

「茜さんの無念を食らえ!!」

『吹雪』の連装魚雷の雨霰が襲い掛かる。

「死んでたまるか!!」

『初雪』(DSアサシン)は、すぐに立ち上がると魚雷を躱して、再び艦娘達に襲い掛かる。

「はっは!斬艦刀ぉ!」

結有が、斬艦刀で斬り結ぶ。そのまま、ギリギリと鍔競り合いをしている。

先程より、力が衰え始めている。

そう、奪(・)っ(・)た(・)艤(・)装(・)は(・)修(・)理(・)で(・)き(・)な(・)い(・)のだ。

それでも零距離で、主砲を結有に向けて発射する。

「ぐわぁっ!!」

アクティブクロークが爆風を防ぐが、結有は吹き飛ばされて気を失った。

艤装の機能で、斬艦刀を握り締めたまま浮いている。

「き、貴様ァァァァ!!!」

頭に血が上った瑞希が、トマホークでグレートソードと斬り結ぶと、『初雪』(DSアサシン)は再びバックステップで距離を取った。

そこが罠だった。

 

「第二次航空攻撃隊発艦!」

『瑞鶴』が矢を番えて、帰還した艦載機隊を再び発進させる。

―――ヒャッホウ!塵に過ぎないお前は塵へ帰れ!エエエエエエイメエエエエエエン!!!!

―――翼さん、どこの神父ですか!?

―――茜さんの仇よ。

―――よろしい、徹底的に教育してくれよう。

 

航空機を確認した瑞希は、トマホークを投げ捨てバックを取って、『初雪』(DSアサシン)を羽交い締めにした。

「私と一緒に死んでもらおう!」

「うわぁぁぁっ!!!」

 

ズガァァァン!

瑞希は、爆撃で結有のところまで吹き飛ばされる。

そして、その爆撃が『初雪』(DSアサシン)の艤装をスパークさせる。

バチバチッ……ザボンッ

艤装が外れて海面に浮かび、DSアサシンの姿に戻った。そう、強(・)制(・)解(・)体(・)されたのだ。

『卯月』が突っ込んで、壊れ掛けた艤装を奪い返すと、そこに茜妖精さんが飛び込んだ。

「甦れ!!!蘇るぴょん!!!『初雪』!!!!」

その言葉に、海来ははっと気づいた。

「こ(・)の(・)世(・)界(・)は(・)、想(・)い(・)が(・)力(・)に(・)な(・)る(・)ん(・)で(・)す(・)!!」

「叫べ!祈れ!!」

立ち上がった瑞希が、それに続く。

「茜さぁぁぁぁぁん!!!!」

『吹雪』が必死に叫ぶ。

「蘇るのだ!『初雪!』」

『三笠』も必死に叫ぶ。

「帰って来てください!」

『大和』が続く。

そして、アブドーラ艦隊の艦娘達の、

「帰って来てぇぇぇぇぇ!!」

と言う叫びに、初雪の艤装が光り輝いた。

「『初雪』ぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」

アブドーラの声と共に、艤装の光が人の形に収束して……

 

『初雪』(茜)は、その姿を取り戻した。

「よくも、人の首をはねてくれたわね?」

DSアサシンの、クロスに切り裂かれた傷跡の中心に狙いを向けると、主砲を撃ち込んだ。

海面を、転がるように吹き飛ばされるDSアサシン。

「キ、キサマァァァァァ」

すぐに立ち上がり、『卯月』ごと『初雪』を横薙ぎに切り裂こうと、大きなグレートソードを振り回す。

ガキィン!

ボロボロの瑞希が、斬艦刀を持ってそれを受け止めていた。

「言った筈だ。大(・)事(・)な(・)娘(・)達(・)に(・)は(・)指(・)一(・)本(・)触(・)れ(・)さ(・)せ(・)な(・)い(・)と」

そのまま横蹴りを入れる。

再び、DSアサシンは吹き飛ばされた。

空を見上げると、航空機の大群が襲い掛かって来る。

爆撃と機関砲の雨霰を喰らい続ける。瑞希は二人を抱き抱えると、一気に時計回りで本陣まで二人を連れて行く。

「ウワアアアアアアアアアアア!!!!!」

絶叫と共に、体中にヒビが入って行く。

そして、強(・)力(・)な(・)再(・)生(・)能(・)力(・)により再生して行く……

「駄目なの!?」

『那珂』の叫びに、『瑞鶴』もぐっと歯を噛みしめる。

「ムダダ、ムネンノチカラガアルカギリ……ワタシハエイエンダ」

 

その直後だった。

―――頑張れ!!艦娘!!

―――俺達の代わりに!!!

―――皆の無念と悔しさを晴らしてくれぇぇぇ!!!

 

その声に、皆戸惑っていると、恵奈から皆に通信が入る。

『聞こえますか!?今、エナツキ軍団(レギオン)が全国に散って、皆の想いを集めています!御蔵島の第13泊地跡地(光と闇の交わる場所)に、彼女(メルフィ)を配置してます!これで、日本中と皆さんの心はゼロ距離になります!!!』

空に大きな穴が空いて、街中に集まってる皆の姿が見える。

そして、その叫び声も光のように艦娘達に降り注いで行く。

艦娘達の艤装が光り輝いて行く……

その光は、艦娘達に改二艤装を齎していた。

「全艦反撃開始!」

 

 

「ウワアアアアアアアアア!!!」

全員の集中砲火だった。

アブドーラ艦隊も加わって、情け容赦無く砲撃爆撃雷撃を撃ち込み始める。

最早こうなっては、DSアサシンもた(・)だ(・)の(・)良(・)い(・)的(・)である。

強力な再生能力がある分、よ(・)り(・)苦(・)し(・)ん(・)で(・)沈んで行った……

 

 

戦いは終わった。

「行っちゃうぴょん?」

「そうね、復讐は終わったから……アブドーラ(第十二)艦隊に戻るわ。その後は、解(・)体(・)を(・)志(・)願(・)す(・)る(・)」

「そっか、元気でぴょん」

『初雪』(茜)はそう言うと、アブドーラ(御蔵島)艦隊へと合流して行った。

『卯月』は、少し寂しさを覚えるも笑顔で手を振った。

 

「さあ、帰りましょう」

海来の号令で次々と帰還して行く。汎用艤装は強制解体して、結有を瑞希が背負って行く……

途中、海来は瑞希に耳打ちして、こっそり引き返して……

 

 

DSアサシンは、海に浮かんで来ていた。

「マダダ、マダオワラ……」

それを見下ろしていたのは、DSキラー(海来)だった。

「まだ眠らないなら、永(・)遠(・)の(・)眠(・)り(・)をあげる……」

「キサマアアアアアア!!」

激高したDSアサシンが、巨大なソードを取り出すと、DSキラー(海来)は結有から預かっていた斬艦刀を腰から抜き放った。

巨大な刀身がキラキラと輝いている。

ガキンッガキンッ!!

何度も斬り結び、剣戟を繰り広げる黄昏(たそがれ)の海。

そして、太陽が沈み切る直前だった。

「シズメェェェェ!!!」

「沈むのは、お前だぁぁぁぁぁ!!!!」

グレートソードを振り上げたDSアサシンの胴体を、斬艦刀が切り裂いた。

「サイセイ………デキナイ、ヤハリ、ザンカントウハ……」

真っ二つになったDSアサシン、そのままサラサラと砂になって行く。

「この斬艦刀は、人々の“想い”が集まった結(・)晶(・)。漸く私も『人間』になることが出来たようですね。さようなら……今度こそ……おやすみなさい…『姉さん』」

高梨海来は、D(・)S(・)ア(・)サ(・)シ(・)ン(・)が(・)消(・)滅(・)す(・)る(・)まで、ずっと見下ろしていた。

 

 

 

 

その後、甦った『初雪』こと茜は退役して、家族の元に戻った。

「もう戦いたくない」という意思を、アブドーラが尊重したのだ。

人々の想いが齎した奇跡。

 

 

だが、まだ戦いは終わってはいない。

これからも戦いは続く。これから先何年、何十年と続くだろう。

だが、DSアサシンの脅威が消えた今、海来達には小休止が訪れる。

 

そう、艦娘伝説(サーガ)は終わらない。

 

――――――――――――――――――

 

それから数年が経った。

 

高梨未来達は、今も青ヶ島で戦い続けている。

春陽達も青ヶ島にやって来て、賑やかに楽しく暮らしている。

子沢山で、上から桜ちゃんに、海渉(かいと)君、紅葉ちゃんに氷聖(ひさと)君。

二男二女の大家族である。春(・)夏(・)秋(・)冬(・)大集合である。

冬夜は、青ヶ島診療所で研修医として勤務を始めた。

春陽は、スーパーあおがしまでアルバイトの日々である。千里はスーパーあおがしまの店長を任されるようになった。

海来と英太郎の間にも子供が生まれた。

今は五歳の女の子。

名前は英海(えみ)と名付けた。

彼女が大人になる頃には、戦争が終わっているだろう。

そう信じて、大人達は今も戦い続けている。

自(・)分(・)達(・)の(・)過(・)ち(・)の(・)後(・)始(・)末(・)を(・)付(・)け(・)る(・)為(・)に(・)。

 

 

戦争は

 

 

片付けまでが戦争なのである。

人間の後片付けはこれからも続いて行く、いつか地球の意思(霊子の根源)が人を赦すその日まで。

 

 

――――――――――――――――

これは、そんな数多に渡る膨大な並行宇宙の中の、たった幾つかの世界の物語。

そして、聖永の時の中の刹那の物語である。




ここまで読んでいただいた方は今までのお付き合いありがとうございました。

なんか打ち切りエンドっぽい感じですが
最初からDSアサシンとの決着を終着点に考えていましたので、
高梨湊シリーズこれにて完結とさせていただきます。

海来ちゃんたちのこの先は?
紀子と春陽たちとチビちゃんたちの今後は?
英海ちゃんが大人になった世界は?
戦争の行方は?

色々ありますが、エンドレスになってしまうので、ここにて終幕とさせていただきます。
此処から先は皆さんのご想像におまかせします。
もし、続編・スピンオフを書きたいという奇特な方がいらっしゃいましたらそれはそれで嬉しいです。

次回の高菜ニーサンの作品をご期待下さい!
(大したもん書けんかもしれませんが)

いやあ
本編182話 スピンオフ45話 エッチな裏日和2話 合計229話
2016年5月11日~2018年6月16日
短いようで長かったなあ。1年ちょい休止期間もあって実質1年。

今後は、もうちょっとおちゃらけた新シリーズを作っていきたいなあと思います。
ではではそんな感じで
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。