そして海来の知られざる秘密とは……?
再び軍港に集結した。
『雷』には、なけなしの高速修復材を使い、緊急入渠による治療も施した。
「皆さん、準備はいいですか?」
『はーい!』
そう、元気良く返事するのは、
そしてその横には、リアルな深海棲艦の着ぐるみを着た上で、汎用艤装を取り付けている結有。
「これ、めっちゃ暑いんだけど?」
「でしょうねえ」
さらっと流す海来に、新参者の『雷』は、従いて行けない。
「では作戦要旨を説明します。攻撃対象の御蔵島軍港は北側にあります。よって、
その作戦要旨に、結有は頷く。
「提督お一人で大丈夫ですか?」
『吹雪』が心配するが、海来は笑顔を浮かべる。
「きちんと拳銃も携帯していますし、やばかったら逃げて来ますので大丈夫です。まだまだ、へっぽこのお世話にはならないつもりです」
そう冗談めかしていう海来に、『卯月』が膨れっ面でぴょんぴょん飛びながら、
「うーちゃん達、そんなにへっぽこじゃないぴょん!」
と抗議の声を上げるも、『那珂』が
「取り敢えず、もうちょっと戦果上げてからにしようか?」
と宥めると、『卯月』も少し納得して、
「それじゃあ、この任務頑張ったら、アイス二倍にしてくれるっぴょん?」
等と、アイスをねだってくる。
「わかりました。任務に成功して、
『ばんじゃーい!』
海来の言葉に、小躍りをし始める
「こ、ここに助けを求めてよかったのかしら……?」
心配になる『雷』だった。
「
小躍りしているへっぽこーずを尻目に、
「もう、ニックネームが『レジェンド』なんだ。まあいいけど……」
中で苦笑いを浮かべている結有。
「ただ………」
そのあと、結有はそう言って一呼吸措いた。
海来や艦娘達が、不思議そうな顔をしながら結有の方を見る。
「
その言葉に、海来はお腹を抱えて笑い出した。
「あはは、
「おー、さすがレジェンド。すごい自信だっぴょん」
海来の言葉に、『卯月』もお目々キラキラで、その言葉に続く。
「ねえ、レジェンドってそんなに強いの?」
そう不思議そうに、海来に訊く『雷』に、
「そうですねえ。
完全に
「そ、そんなに?」
「いやあの、海来?」
びっくりする『雷』に、苦笑いを浮かべる結有。
「あとは、そうですねえ。モーターボートからル級を回し蹴りで沈めた、とか」
「ええっ!?」
「極め付けは、
『えええええええええええっ!?』
最後の言葉には、へっぽこーずまで驚く。
「れ、レジェンドって化物ぴょん?」
「す、凄過ぎます!」
「すごーい!!」
「まさに、レジェンドの名に恥じないわね」
へっぽこーずと『雷』の言葉に、たまらず訂正をする結有。
「あのね。ル級は事実だけど、駆逐水鬼は『瀕死の』って形容詞を付けてもらわないと!私化物じゃん!」
「でも、レジェンド伝説に相応しいかもぴょん!」
その言葉に気を良くした海来が、更にうんちくを披露する。
「そのレジェンドの両親は、宮戸島で半年間サバイバルして、深海棲艦と戦い続けたらしいです」
「おー、レジェンドの逸話に相応しいっぽいぴょん」
やはり『卯月』が、その話に食い付いている。
完全に、
完全に
――――――
御蔵島の哨戒エリア外で、へっぽこーずと海来と『雷』と別れた
汎用艤装で、哨戒エリアまで立ち入った。
警報が鳴り響き、軍港からは艦娘達が次々出撃してくる。
『扶桑』に『山城』、『衣笠』、『祥鳳』、『飛鷹』、『隼鷹』……
完全な航空特化型だ。
「フハハハハハ、コワカロウ?」
着ぐるみの、ボイスチェンジャー付きのスピーカーで高笑いを上げる結有。
「この深海棲艦……見たこと無い。新型!?」
「新型なら、戦果は充分。当分の間は食事も摂れるわ」
等と、『山城』と『扶桑』が会話をしているのも、集音器で耳に入る。
(悪いけど、ちょっとの間オネンネしてもらうよ)
「とにかく沈めましょう!」
そう言うと、航空機が全艦から順次発艦する。
そして降り注ぐ、爆撃や魚雷。
「ヒャッホウ!」
ボイスチェンジャーで歪んだ声ながら、楽しそうに爆撃を超高速で滑って躱して行く。
魚雷も、軌道を読んで巧みに躱して行く。
元々は、あの
「コッチカラオカエシダ!」
ウエポンコンテナを開くと、ニョキッと出てきた両肩部対空5.56ミリガトリングガンが火を噴く。
汎用艤装の耐衝撃機構で、かなり衝撃は吸収されるが、砲撃しながら後ろに下がっていくくらいの反動である。
全ての弾薬はHEIAP弾で、当たった弾薬は炸裂して燃え上がり、それが隣の機にぶつかりと、
上空では、花火がボンボン上がり始めていた。
「これなら!!」
「どうかしら!」
『山城』と『扶桑』が主砲を向けると、結有は対空砲火を止め、敢えて砲弾をギリギリのところで避けて、逆に山城の懐へ飛び込む。
「かはっ!!」
「スコシオネンネシテナ」
『山城』の鳩尾にボディブローを叩き込むと、彼女の目はグルンと廻り、意識を失う。
「よくも『山城』を!!」
『オマエモ、スコシネテナ」
「ごふっ!!」
続いて、『扶桑』にも膝を蹴り込む。練度の低い彼女達には、まだまだ
数分後、水面にプカプカ浮いて気を失っている、彼女達の姿があった。
そこに佇む、爆風でぼろぼろになった深海棲艦の着ぐるみ。
首のところから取り外すと、
「いやあ、涼しい…」
と、汗びっしょりの結有がイヤーマフを外すと、
「彼奴等、上手くやってるかな……?海来は、まああの子は大丈夫でしょ」
そう言いながら汎用艤装を走らせ、艦娘達との合流ポイントに向かうのであった。
その頃、へっぽこーずと愉快な仲間達は、『雷』の案内で庁舎の方に接近していた。
既に警報は鳴っている。
軍港へ庁舎の裏から接近すると、軍港の様子を眺める。
軍港には、二人の士官が立っていた。
「では三人は、『雷』の案内で、地下営倉とやらに忍び込んで、『天龍』と『電』を救出して、先に帰っててください」
『了解』
そう言うと、『雷』の案内で、へっぽこーずは庁舎に窓から侵入して、地下営倉に向かって歩いて行くのだった。
地下営倉では、ボロボロの服を身に纏った『天龍』と『電』が、身を寄せ合いながら泣いていた。
そして、『天龍』が先に気付いた。
「『雷』……コイツ等は……?」
「助けを呼んできたわ。すぐに脱出しましょう」
『雷』がそう言うと、『吹雪』が海来の、いつも持ってるIDカードを、牢屋のカードリーダーにタッチする。
すると扉が開き、へっぽこーずが中に入り、持っていたバスタオルを二人に掛ける。
「大丈夫っぴょん。悪い司令官は、レジェンドとミクちゃん提督が捕まえてくれるぴょん」
「私達は第13泊地艦隊です。あなた達を助けに来ました!」
『吹雪』の言葉に安心したのか、緊張の糸が切れた『天龍』と『電』は、意識を失った。
「背負って泊地に戻りましょう。戻り次第、すぐに夕雲先生の往診をお願いしますね?」
へっぽこーずのリーダー役に納まった『吹雪』が、テキパキと指示を出す。
『卯月』と『那珂』が、それぞれ『電』と『天龍』を背負って、
御蔵島南部の、結有との合流ポイントに急ぐのだった。
へっぽこーずと『雷』が、二人の艦娘を救助して、森の中に走って行ったのを確認すると、海来は敢えて自分から、井川と佐村の前に姿を現した。
「誰だ!?」
護衛役の佐村大尉が銃を向けると、
「青ヶ島泊地艦隊の司令官、高梨海来少佐です。あなた達の悪事は、全て『雷』から聞きました。大人しく逮捕されてください」
「小娘に指図される謂れはないわ!やれ!」
井川中佐の号令に、佐村大尉が銃を発射する。
「ぐうっ!!!」
銃弾は海来の右肩に当たり、右肩を抑えて膝を付いた。
その時、抜こうとしていた銃も、近くに転がってしまった。
「15歳で特任された小娘が生意気に……」
佐村大尉に羽交い締めにされたところで、井川中佐がカーディガンごとワイシャツをビリっと破く。
「母さんに買ってもらったカーディガン………」
そして、顕になった黄色いかわいいブラをも引きちぎると、可愛い小ぶりの胸が顕になる。
「紀子ちゃんに誕生日プレゼントでもらったブラ……」
「まだ、お前、男を知らないだろう?女にしてやるよ!」
いやらしい笑みを浮かべた井川中佐に、ぐっと目を閉じて……
目を開くと、
「薄汚い人間共が……汚い手で触るな!」
羽交い締めにしていた、佐村大尉の股間を後ろ足で蹴り上げた。
「うぐうっ!!!」
物凄い勢いで蹴り上げられた股間の激痛で、羽交い締めが解け、佐村大尉は泡を噴いて気を失ってしまった。
「貴様!」
井川中佐が、銃を抜き放ち発射するも
その逸れた銃弾は、佐村大尉の胸に当たり、佐村大尉は数度身体が痙攣して動かなくなった。
「貴様、深海棲艦だったのか!?まあいい。お前を殺せば、俺も次は大佐だ!」
「残念だけど、准将になるかもね。
「貴様ぁぁぁぁ!!!」
「自分の罪を数えながら地獄に堕ちろぉ!!!」
再び銃を向けるよりも、デスサイズを現出させ、カッと目を見開いたDSキラーの方が速かった。
ザンっと首を刈り取ると、井川中佐の体はそのまま前のめりで倒れた。
返り血を浴びながら、デスサイズを収納して、
「ふぅ………」
と、一息吐いて黒い瞳に戻った海来は、すぐに携帯電話を取り出した。
「もしもし、未来伯母さんですか?ちょっと裏から手を回してもらいたいことが……」
数日後。井川中佐と佐村大尉は、深海棲艦の襲撃を受け、第一隊は全員気絶し、戻って来た頃には、
二人共殺されていた、ということで二階級特進し、それぞれ准将/中佐への昇進が発表された。
しかし、その後の第12泊地艦隊第一隊の証言によって、井川の悪事が明るみに出て、その昇進が取り消されたのだ。
彼等は生前に遡り、不名誉除隊処分となった。
そして、
保護した『天龍』と『電』それに『雷』は、
それから数日後……
「しかし、
「そうですね」
「ミクちゃん提督も無事で良かったね!」
そんな会話をしながら、今日の訓練のおやつを頬張るへっぽこーず。
『天龍』と『電』と『雷』は、
「彼奴等も自業自得だぜ。俺達をひどい目に遭わせて、『龍田』を殺しやがったし」
「なのです」
「そうね。救ってくれたミクちゃん提督達には感謝しっぱなしよ。危うく彼奴等の道連れになるところだったもの」
やはりおやつのアイスを食べながら、そう語る。
『天龍』達の心の傷は軽いものではなかったが、診療所の夕雲医師や看護師の巻雲、更に研修医になったばかりの美里が往診に来てくれて、ケアをしてくれている。
海来や結有、それにへっぽこーずも優しく接してくれて、ちょっとずつ立ち直った彼女達も、軍務に復帰できるまでに落ち着いていた。
「さあ、おやつが終わったら訓練ですよ!へっぽこーずも、第2隊に負けないように頑張りましょうね?」
『はーい!!』
へっぽこーずの元気のいい声が、庁舎に響き渡る。