新・小さな提督と艦娘日和   作:SAMICO

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高梨湊シリーズ本編(小さな+日和+続日和+新日和)で150話目(日和に設定集があるのでそれを引いて)





東京へ

今日ものどかな青ヶ島泊地。

 

「ふぅ~」

お手洗いから出て来て、執務室へ新しく買い直したオーシャンブルーのカーディガン姿で向かうのは、高梨未来。

その背後から、黒い影が迫る。

「だーれだっぴょ!?」

その黒い影こと『卯月』が、ばっと目隠しをしようとした直後に、『卯月』の視界が真っ暗になる。

「わー!誰だっぴょん!?」

ジタバタしている『卯月』。その背後には、海来が立っていた。

『卯月』が飛び掛かった瞬間、海来はするりと躱し、後ろを取って逆に『卯月』へ、両手で目隠しをしたのだった。

その鮮やかな体捌きは、廊下の曲がり角から一緒に様子を見ていた、残りのへっぽこーずがしかと目にしていたのだ。

優しく解放すると、『卯月』は後ろを振り向いた。

「あれ、ミクちゃん提督。いつの間に?」

「まだまだ、()()()()ですね。ふふっ」

キョトンとしている『卯月』に、口元に手を当てて笑う海来。

「「ミクちゃん提督ごめんなさーい」」

ミクちゃん提督目隠し作戦の立案者『那珂』と、()()()止めた『吹雪』が、廊下の影から出て来ると頭を下げる。

「二人がいるのも知ってました。さて、丁度いい所に来てくれたので、執務室まで来てくださいな?」

『はーい!』

元気良く、海来の後を従いていくへっぽこーず。

 

 

「さて。さっきですが、東京へ出張命令が下りました」

いつものダイニングテーブルに、間宮アイスと紅茶を用意して皆の前に配り終え、海来が座ったところで、話を切り出す。

「出張だっぴょん?お土産買ってきてくれるっぴょん?」

「『卯月』ちゃん、ミクちゃん提督はお仕事なんだから」

「あ、『那珂』ちゃん従いていきたーい!」

お土産を初手から要求する『卯月』を嗜める『吹雪』、それに同行を要求する『那珂』。()()()()である。

「それでですね。東京まで、三人共連れて行こう、と思ってます」

『ばんじゃーい!!』

三人で万歳三唱をする様子を、楽しそうに笑って見ている海来。

「ただし。お偉方と会いに行くので、粗相のないように。もし粗相をした場合は……」

そう言って、表情を消す海来。

無表情になった海来に、さっきの盛り上がりから一転して、シーンと静まり返って唾を飲み込む。

「……一週間おやつ(アイス)抜きです」

『えええええっ!?!?』

三人共涙目になる。

「ちゃんと、大人しく付き添いをしてくれたら、もっと美味しいお菓子を買ってあげますよ?」

『ばんじゃーい!!』

ぱあっと笑顔の花が咲いて、三人で再び万歳三唱をする様子に、再び海来は笑う。

「ところで。どうして、東京に呼ばれたんですか?」

『吹雪』が、不思議そうに首を傾げると海来が答える。

「いやぁ、安藤本部長から召喚命令が出ました。多分、レジェンド(結有さん)御蔵島泊地(第12泊地)艦隊の面々をボコボコにした一件と、伯母(未来)に頼んで、『天龍』さん達をうち(青ヶ島泊地)に引き抜いた一件でしょう?」

苦笑いを浮かべて答える海来。口が裂けても、「()()()()()()()()()()()なんて、絶対言えない。

「レジェンドマジレジェンドだっぴょん」

「うん。本当、レジェンドだね」

「まさにレジェンドだね!」

口々に感想を言い合うへっぽこーず(『卯月』・『吹雪』・『那珂』)

 

「ぶぇっくし!!」

「なんだ?レジェンド、風邪か?」

沖合で釣り竿を垂らしているのは、くしゃみをしたレジェンド結有と『天龍』。

周囲で、『雷電』姉妹が仲良くじゃれ合っている。

()()哨戒中なのだが、今日は敵が現れないので、()()()持って来た釣り竿で魚を釣っている。

汎用艤装の収納機能のお陰で、組み立て式釣り竿も収納できるのだ。

「誰か、私の噂をしてるんじゃないかな?多分へっぽこーず辺りかな?」

「違いないや!」

ハハハと笑う『天龍』。心の傷も、大分癒えて来た。

夕雲医師の心理療法で、嫌な記憶を薄れさせ、こうやって()()()()()()()()哨戒に出かけては、

結有と楽しく過ごすことで、治療を行っている最中なのだ。

 

 

「流石に、深海棲艦の着ぐるみはやり過ぎました。恵奈ちゃん…もとい。大村大尉に手伝ってもらって、ボイスチェンジャーやら色々つけたんですけどねえ」

「誰に使う気だったぴょん?」

頬を掻きながら、苦笑いを浮かべる海来に、『卯月』が首を傾げ海来を見つめると、海来はそっと目を逸らす。

「ひどい!うーちゃん夜中トイレにいけなくなるぴょん!」

涙目で抗議をする『卯月』に、

「昨日も、柳川淳一さんとエナツキコラボの都市伝説回をMeTubeで見たら、怖くなっちゃって『那珂』ちゃんが、夜中トイレに一緒に従いて行ってあげたじゃない?」

「うー!暴露しなくてもいいぴょん!!」

『那珂』が暴露すると、ぽかぽかと『那珂』の肩を叩く『卯月』に、『吹雪』や海来もフフッと笑う。

「確かに、昨日のエナツキの都市伝説コラボはちょっと怖かったですね」

自身も夜中トイレに行った時に、少し怖かったなあと思ったりすると、

「でも、朝方『フッフッフ』…って声が隣の部屋から……」

『ひっ……』

朝一番早起きの『吹雪』が聞いた声に、『那珂』と『卯月』の顔がさあっと青くなる。

「隣の部屋って、レジェンド(結有さん)の部屋じゃないですか?」

『あっ……』

海来の指摘に、三人共それを思い出す。

「多分、朝の腹筋じゃないですか?」

結有は早朝に起きると、すぐに筋トレを始めるのだ。

三十路過ぎても、元気いっぱいのレジェンド(結有)。まさに、幽霊の正体見たり枯れ尾花、である。

 

翌朝。

迎えの船がやって来ると、海来は白い軍服姿で出て来る。

艦娘達にとっては、『吹雪』以外は初めて見る、白い軍服姿である。

「わぁ、かっこいいぴょん」

「なんか凛々しくて可愛い感じ!」

『卯月』と『那珂』が、目をキラキラさせている。

「それでは、『吹雪』以下三名。提督の護衛を務めさせていただきます」

ビシッと敬礼すると、『卯月』と『那珂』もビシッと敬礼をする。

「では、行きましょう。各務原中佐、お留守番部隊をお願いします」

「了解しました」

結有も、敬礼して見送る。

扉を開けると、海軍の少尉が庁舎まで出迎えにやって来ている。

「高梨少佐ですね、お迎えに上がりました」

「ご苦労さまです。さあ、行きましょう」

少尉の敬礼に答礼すると、少尉は脇に控え、海来を先頭に船まで歩いていく。

船には何名か乗組員が乗っており、船室に案内される。

 

全員が乗り込むと、船が出港する。

『天龍』達の見送りで、海来達は東京に向かうのだった。

 

東京に到着した海来は、早速艦娘本部の本部長室に出頭した。

へっぽこーずは、艦娘本部の控室で待たされている。

「失礼します、高梨海来少佐入ります」

「入り給え」

 

本部長室に敬礼して入ると、執務机にいる艦娘本部長安藤龍大将、それに艦娘本部長補佐官の不知火准将が脇に控えている。

不知火が答礼すると、海来は扉を閉め、執務机の前まで足を進める。

「久しぶりだ。御蔵島の一件は、手数を掛けたな」

「いえ、とんでもありません」

そこまで言うと、不知火がふっと笑みを浮かべる。

「余人は居ません、いつもどおりで結構です」

その言葉に、海来もふっと笑みを浮かべる。

統合幕僚監部副長(高梨未来大将)から連絡が来た時は、何をやらかしたんだ、と思ったぞ?」

「いやあ、あそこまでする(命まで奪う)気はなかったんですが、流石に()()()()()に掛ける情けはありませんよ」

その安藤の言葉に、苦笑いを浮かべる。

あの御蔵島の一件で連絡をした、伯母である高梨未来は、現在統合幕僚監部副長になっている。

統合幕僚長は、元帥の定年撤廃のお陰で、()()()居座っている山本八十六元帥である。

80過ぎても、元気なご老人である。

「まあ、いくらお前が()()()()()だったとしても、あまり無茶はしないでくれ。これは『伯父』としての忠告だ」

「はい、ご心配おかけしてすみません」

海来も、少し申し訳なさそうに頭を下げる。

「しかし、練度が低いとはいえ、各務原中佐は相変わらずの無双っぷりだな?」

「はい、皆からレジェンドと呼ばれてます」

その言葉に、不知火が「ぶっ」と吹き出してしまう。

「レジェンドとは……士官学校から何も変わっていないな?」

吹き出した不知火が、少し顔を赤らめながら真顔に戻るのをちらっと見ると、龍は懐かしそうに話し出す。

「私は、結有くんの士官学校在学時の校長でね。男子候補生に襲われたら鎮圧する。運動抜群、ファンクラブはできるわ、()()は作るわ、話題には事欠かなかったな」

「はい、結有さんから聞いてます。あの運動神経のカタマリの恵奈さんを、鬼ごっこで瞬殺する動画も見てましたし」

「うむ。流石に彼女(艦娘)達には、『深海棲艦の着ぐるみを着た士官にボコボコにされた』とは言えないからな。()()()()()()()()()()()だ。だが新しい司令官の下、もう二度と負けない。と日夜訓練している、と聞いている」

「それならそれで、良いきっかけでしたね」

龍が齎した報告に、海来も笑みを浮かべて答える。

 

「さて。艦隊司令官になって少し経つが、どうかね?」

「いやあ、まだまだですね。まずは艦娘の練度を上げるのが急務ですね」

「うむ。以前のように、深海棲艦は大挙して日本に攻め込んでいる訳ではなく、世界中に攻撃を仕掛けているせいか、まだ現在の練度で防げているのが救いだな。米軍のナスタージ少将とも連携を取って、事に当たっている」

「はい」

「救出した艦娘達はどうしている?」

「はい。夕雲先生のおかげで、何とか哨戒に出られるようになりました」

「それは良かった。ところで本題だが…入り給え」

隣室に龍が声を掛けると、ノック音がしてメガネを掛けたポニーテールの少女が、中に入って来る。

階級章は二等兵だが、彼女のことを海来はよく知っていた。

「の……のりちゃん!?」

「うむ。本日より()()()()()、君の所に送ることになった」

「本日より、高梨少佐のお世話をすることになりました、高天原紀子二等兵です!よろしくね」

紀子がウィンクして敬礼すると、海来も答礼する。

「用件は以上である。折角だから、たまには高梨邸に泊まりに来なさい。と、未来くんからの伝言だ」

「そうですね。ホテルどうしよう、と思ってましたし、お言葉に甘えますね?」

 

二人して本部長室を辞すると、二人で控室に向かう途中、海来は申し訳なさそうに、

「ごめんね。この前誕生日で貰ったブラ、破れちゃった……」

「うん、未来さんから聞いてる。大変だったね……」

未来は、紀子には井川中佐に襲われて「()退()()()()()()」とだけ、伝えているのだ。

もちろん、親友である紀子も、智紀から海来の正体(DSキラーだったの)は聞かされているものの、

流石に()()()等とは、未来も紀子には伝えていない。

「あーあ、お気に入りだったんだけどなぁ。カーディガンも」

「ぼやかないぼやかない。また今度プレゼントしてあげる。ところで、海来ちゃんのところの艦娘って、どんな子達?」

「んー、一緒に連れて来たよ。まだへっぽこぴーだけどね?」

そう言いながら控室の扉を開けると、へっぽこーずは……

 

『あっ』

大いにだらけていた。

「うん、へっぽこぴーだわ」

紀子は、ぼそっと呟いた。

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