転生じゃなくて転送されたみたいだけど、頑張ってみる。 作:甘々胡麻ざらし
ありがとうございます!
「これどっからどう見てもエンプティボトルだよな?」
流斗は保健室のベッドで中身がからのボトルを眺めていた。それは仮面ライダービルドに登場するエンプティボトルであり、倒したスマッシュへこれを向けることにより成分を採取して人間に戻すことが出来るのだ。ナイトローグといい、エンプティボトルといい、まるで仮面ライダービルドの世界観がこの世界に実在しているような感覚になってしまう。
「駄目だぁ。さっぱりわからん!」
ベッドに寝転んだ流斗は腕を組み今日一日をどう過ごすか頭を悩ましていた。今日一日は授業に出席せず安静にとは言われたものの、滅茶苦茶暇なのである。
「仕方ない…。教科書で勉強するか…」
一応真耶に頼んで教科書やノート、あとはゲーム機を取って来てもらっていたので早速教科書を読みながら気になるところにマーカーを引く。一般教科もあるが既に高校を卒業しているので軽く復習だけしておく。昼休みになるとドタドタと足音が聴こえドアが勢いよく開いた。
「うーたん起きたの!?」
「あ、のほほんちゃん。おはよー」
やって来たのは本音でありその手には大量のお菓子が抱えられていた。
「うぇぇぇぇぇん!心配したよぉぉぉぉぉ!」
「心配かけてごめん…」
ガシッと腰に抱きついている本音の頭を流斗は優しく撫でる。
「そうだよ、本音滅茶苦茶心配してたんだから!」
「うんうん。三日間も部屋に一人だったから寂しそうにしてたんだよ!」
「それにしても本当に惜しかったよね」
「代表候補生相手にあそこまで戦うってスゴすぎだよ」
「最後の必殺技も凄かったもんね~」
いつの間にか復活した本音は三人でうんうんと頷いていた。
「でも皆織斑君ばっかり話題にするよね…」
「しかも宇田君の戦い方を卑怯とかズルしたとか言ってるし…」
「ん?どういうことだ?」
「実は…」
本音は申し訳なさそうに口を開いた。どうやら誰が言い出したのか流斗の戦い方が卑怯と言い、それに尾ひれがついて流斗は"卑怯で最低な戦いをしたIS操縦者"と評価されたのだ。
「確かにあの必殺技はエグいけどさぁ」
「でも戦い方は間違ってなかったよね!」
「完全に対セッシーの戦い方だったもんね~」
流斗の評価に対して本音たちは怒りを表すが流斗は別に気にしないよと言う。
「きちんと理解してくれる人が居る。それだけで十分だよ。あ、お菓子もらうねー」
本音からチョコを貰いムシャムシャと食べるそのマイペースぶりに三人は少し呆れるがすぐに笑顔になり一緒にお菓子を食べることにした。談笑したり流斗の持っていたゲームで遊んだりして昼休みを過ごした。途中ゲームで盛り上がったため保険医に注意されたのはこれもまた良い思い出だろう。
◇
「ついに、ついに戻ってきたぁぁぁぁぁ!」
「うるさいぞ」
バシンと千冬に首席簿で叩かれ流斗は頭を押さえた。
「俺病み上がりですよ!?もっと丁寧に!それことボウルに入れた豆腐のように!」
「病み上がりの割りに元気そうじゃないか。なんならもう二、三発お見舞いしてやろうか?」
「おかしい!漢字は一緒なのにこうも意味が違う!というかちっふー先生怖いったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!頭がぁぁぁぁぁぁ!」
「ちっふー先生はやめろ。全く…。さっさと教室に行け。私は職員会議がある」
「はい!」
ドアを開けて入るとクラスメイトが流斗を見るがヒソヒソとこちらの顔をチラチラ見ながら話していた。
「うーたん退院おめでとー!」
「いや、入院してねーよ!」
「ま、まさか生きてたのか!?」
「あれ、相川ちゃんもそっちのノリ?」
「お帰り、グラファイト」
「誰がドラゴナイトハンターZのバグスターだ!というか谷本ちゃんエグゼイド知ってるの!?」
こんな馬鹿なやり取りをしながら話していると流斗は名前を呼ばれ振り替える。そこにはセシリアが申し訳なさそうな顔をしていた。
「先日は申し訳ありませんでした!」
勢いよく頭を下げられ流斗は困惑した顔を浮かべる。
「え、何のこと?」
「いえ、ですから先日の日本やあなたを侮辱したことに対して謝罪を…」
「あーそれね!別に気にしてないよ!というよりクラスの皆には謝ったの?」
「あ、はい。心優しい皆さんは許してくれました」
「それはよかった。悪いことをしたと思ったらごめんなさい。簡単に見えて意外と難しいんだよね…。あ!ところでそっちは体とか機体とか大丈夫だった!?」
「え、ええ…。あなたほど酷くはありませんでしたわ」
「よかったぁ…。本当にごめんね!」
「あれは勝負でしたので謝らなくていいですわよ?」
「そう?まぁ何にせよこれからお互い色々頑張ろうね!」
ニッコリと微笑む流斗の顔にセシリアは息を飲み呟いた。
「お父様…?」
セシリアは今は亡き両親を思い出した。母親は強くて立派だったのに対して、父親はいつも母親の顔を伺ってばかりであった。そんな父親の姿を見て"男は弱い"、それがセシリアの女尊男卑の性格になっていた理由だった。そしてある日両親は列車事故に巻き込まれ還らぬ人となった。セシリアは遺産を守るため必死で努力した。周りは金を毟り取ろうとする汚い大人たち。両親の居ない自分が頼れるものは幼馴染みのメイドと自分の実力だけだった。遺産を奪おうとする大人たちには男も沢山いた。結婚を申し込んでくる者も居たが皆が皆遺産目当てだった。セシリアの男に対する嫌悪感はますます高まってしまったのだ。
しかし流斗は違っていた。彼は純粋に自分を見てくれたのだ。サインを求めそれを満足そうに眺める彼を見てセシリアは嬉しく思った。そしてクラス代表を決める戦いで流斗は自分を調べ尽くし、教師に教えを乞い見事に自分を追い詰めて居た。ミサイルビットのおかげで形成は逆転できたものの、最後の攻撃には驚かされ負けると思ったほどだった。結果は自分の勝利だったが何故か勝ったとは思えなかった。戦略、精神、そして覚悟。その全てにおいて負けたと思ったのだ。試合に勝って勝負に負けたとはまさにこのことだった。
そして自分の愚かさを理解しクラスメイトには許してもらったが流斗に許してもらえるかは怖かった。しかし流斗はむしろ謝罪した自分を褒め、流斗自身も自分の非をを詫びたのだ。そして頑張ろうと言った。その表情は幼い頃自分がうっかり父親の物を壊した時に見せた父親と同じだった。正直に謝ったセシリアを褒め、怪我はなかったかと心配し、手の届くところに置いた自分が悪いと謝り、最後に次はお互い気をつけようと微笑みながら言った父親の顔と…。
「お父様?」
「あ、いえ…。笑顔が少し似ていたもので…。って流斗さん?」
セシリアが目線を下に向けると膝を抱え込み蹲る流斗が居た。
「俺…そんなに老けてるのかよ…」
「どこにショックを受けていますの!?」
せっかくの良い雰囲気をぶち壊した流斗であった。
セッシーのフラグ?を盛大にぶち壊したぜ!