転生じゃなくて転送されたみたいだけど、頑張ってみる。 作:甘々胡麻ざらし
グレートクローズドラゴン予約しておいてよかったぁ
鈴からの相談があった翌日。流斗が教室に向かっていると一夏と鈴の姿が見えた。
「一夏!今度のクラス対抗戦であたしが勝ったら1つだけ言うこと聞いてもらうわよ!」
「いいぜ!俺が勝ったらなんで怒ったのか教えてもらうぞ!」
「ふん!精々頑張りなさいよ」
チラリとスマホの時計を確認するともうそろそろ千冬がやって来そうな時間だったので流斗は鈴にクラスに戻るように言った。
「あ、もうそんな時間?ありがと兄貴!じゃあね一夏!首洗って待ってなさいよ!」
鈴が立ち去ると一夏は流斗を睨み付けた。
「おい、どういうことだよ」
「何が?」
「なんで鈴がお前のこと兄貴って呼んでんだよ。鈴は一人っ子だぞ」
「昨日相談聞いたらそう呼ばれるようになったんだよ」
「な、なんで鈴がお前に相談を!?俺には何も言わなかったのに…」
お前のことだからなと言いたくなったがここで喋るのは駄目だと判断し適当に歳上の方が相談しやすいんじゃね?と誤魔化した。
「で、お前の様子を見る限りまだ俺のこと怒ってるのか?」
「当たり前だ!お前がセシリアにしたことは絶対許さない!」
「格好いいねぇ。俺そういう熱い奴は好きだぜ」
「っ!?お前やっと…」
自分の間違いに気づいたのかと一夏は言いかけたが、流斗は一夏の肩を掴んだ。
「まぁそんな言葉は強さを誇示してから言えよな。そろそろ織斑先生が来るぜ。俺は先に行くぞ」
「っ!俺は間違ってない!いつか絶対お前の間違いを正してやる!」
チャオと手を振りながら去っていく流斗の背中を見ながら一夏は叫ぶが流斗は軽く聞き流した。
「…ハザードレベルは1.4か」
一夏の肩を掴んだ手を見ながら流斗は無意識にそう呟いた。そして一瞬右目が赤く光ると流斗は頭がチクリと痛み押さえた。
「俺今なんて言ったんだ?まぁ、いいか」
◇
授業を終えた放課後。トランスチームガンの解析が済んだらしく真耶に呼ばれ学園長室へと向かった。部屋に入ると千冬と十蔵が居り、机の上にはトランスチームガンが置かれていた。
「わざわざ何度も呼び出してすまないな」
「いえいえ。それで解析が終わったんですよね?」
「ああ、そうだ。だが一つ聞きたいことがある。"これをどこで手に入れた?"」
「っ!」
予想していなかった質問に流斗は一瞬千冬からのプレッシャーを感じた。
「この銃を調べたところISとは全く違うメカニズムで出来ていた。そして私はこの銃は一度見たことがある」
「見たことが…?」
「そうだ。半年前ある研究所が襲われた。そこにはISが3機ほど保管されており、その内一機のみコアを奪われ残りのコアは破壊されていた。そしてその襲撃者の映像を切り取った写真がこれだ」
そう言って千冬はポケットから一枚の写真を見せた。そこにはトランスチームガンをカメラに向けている
「このISはまるで蜘蛛のように壁や天井に掴まり、糸を出して研究員たちを拘束していた。そして極めつけがこれだ」
今度は映像を見せるとそこには蜘蛛の怪人がトランスチームガンのスロットにフルボトルを挿してISを破壊した映像だった。
「お前の持っているベルナージュも似た形状をしていたな」
「ち、ちょっと待ってください織斑先生!まさか宇田君を疑っているんですか?」
「あくまで可能性の話だ」
「で、でも宇田君は犯人じゃありません!だって犯人ならその銃を使いこなせますよね?でも宇田君この前ベルナージュをセットしたら失敗したのか苦しんでましたよ!」
「その時だけ失敗したように見せた可能性もあるぞ」
「でも!」
「もういいですよ」
真耶は流斗を必死に弁護しようとしたが流斗に止められた。
「織斑先生が俺を疑うのも無理はありません。全部話します」
「宇田君…」
「確かにこのトランスチームガンは俺のベルナージュから作成されたものではないです。こいつはナイトローグから貰いました」
「ナイトローグ?」
「はい。この蜘蛛の怪z…
「
千冬は亡国の名前が出たことに驚き、十蔵も顔をしかめた。
「間違いなくそう言ってました。そしてナイトローグは俺の恋人が亡国に捕らわれ操られていると言ってました」
「恋人!?え、宇田君記憶喪失でしたよね!?」
「あ、はい。事故で大まかな記憶は消えてますが、恋人との記憶はいくつか残ってました」
「なるほど。お前が強くなろうと焦っていたのは恋人を助けるためだったと」
「その通りです。信じてもらえるか分からなかったので黙ってました…」
「はぁ…。ようやく謎が解けた」
千冬がため息を吐くとトランスチームガンを流斗に向かって放り投げた。慌てて流斗はキャッチするが、何故だと言わんばかりにトランスチームガンと千冬を交互に見た。
「え、あの、なんで返したんですか?」
「お前に聴きたかったのはこの銃についてだけだ。それ以外は知らん」
「信じてくれるんですか?」
「信じるも何も教師が生徒を疑ってどうする?教師とは生徒を信じる者だ」
「じゃあなんで疑ってるような言葉を言ったんですか?」
「それは…ナイトローグからの指示だ」
「は!?ナイトローグ!?」
何故千冬からさっき話したナイトローグの単語が出てくるのかわからなかった。
「実は昨日ナイトローグが私の元を訪ねてきた。そしてトランスチームガンは自分が渡したもので彼は亡国とは無関係だと言ったのだ。そしてこいつをお前に渡して欲しいと頼まれた」
千冬はポケットから三本のボトルを取り出すと机の上に置いた。ボトルにはそれぞれダイヤモンド、ユニコーン、スケボーのデザインが施されていた。
「それにお前からもナイトローグからも私を騙しているような雰囲気は感じられなかった。確信したよ。お前は奴等と無関係だとな」
「織斑先生…。でも良いんですか?IS委員会とかが黙ってなさそうですけど」
「それは大丈夫ですよ。私が報告していませんからね」
十蔵の発言に流斗は何故という顔をする。
「この件を上に話せば間違いなく君は拷問を受けます。下手をすれば男性操縦者という点から人体実験の恐れもありますからね。私も女尊男卑の腐った上の奴等は欠片も信じてませんよ。少なくとも君より信頼度は低いです」
「あ、あはは…。信頼してもらって光栄です…」
「ですから君は安心してください。後ろ楯が無く、恋人も操られている君からすれば不安でいっぱいでしょうが、君は必ず我々が守ります」
「も、もちろん宇田君のことは私も守りますよ!私はあなたの師匠ですから!」
「だそうだ。頑張れよ宇田」
「はい!」
いつか紫を救いだしたとき、彼女にこんなにも良い人たちに出会ったと紹介しよう。そう流斗は思った。