転生じゃなくて転送されたみたいだけど、頑張ってみる。 作:甘々胡麻ざらし
サブタイトルが浮かびませんでした…
クラウドトレイターからの襲撃から数日経過し、流斗は放課後に整備室へとやって来ていた。理由はベルナージュの強化のためだ。流斗はクラウドトレイターとの戦いの反省を生かして新たに武器を作ることにしたが、自分では専門的なことは分からないため、簪に相談しようと来ていたのだ。ちなみにツインブレスも簪や本音たちの協力の元で造り上げていた。
「という訳で忙しいところ無理を言って悪いが出来そうかな?」
流斗は自分が描いた設計図を見せながら簪に話す。一方設計図を見た簪はキラキラと目を輝かせ食いついていた。
「2モード変形の武器…。確かにあまり見たことがないね。ウィザーソードガンやカブトクナイガンみたいな感じ?」
「いや、モードはドリルと銃にしたいんだ」
「どうしてドリル?」
「剣だと一撃一撃当てる必要があるだろ?でもドリルなら貫通力高いし、SEや装甲を削るのも充分だと思ってさ」
「なるほど。うん、このくらいなら造れるよ。ツインブレスのデータを応用して組み上げればいいから流斗でも造れる」
「OK。いつも悪いね」
「ううん。こっちだって手伝ってもらってるもん」
そう言って簪と流斗はハンガーに掛けられたISを見る。そこには銀色のISが鎮座していた。
「もうすぐ完成するな」
「うん。流斗のトランスチームシステムのおかげだよ」
目の前に鎮座しているのは簪の専用機"打鉄弐式"である。しかしこの機体はまだ完成していないのだ。理由は打鉄弐式の製作をしていた倉持技研が一夏の白式を造るためにこの機体の製作を放棄したのだ。そのことに怒りを感じた簪は機体とコアを引き取り自分一人で組み上げようとしていたが、流斗に説得され本音たちと一緒に造ることにしたのだ。
「いや~簪を説得するのは骨が折れたよ…。頑なに一人で造るの一点張りだったし」
「ご、ごめんね…」
「あのときも言ったけど簪は簪はなんだからお姉さんの後を追わなくてもいいんだよ。自分らしく生きればそれで勝ちだしな」
「うん!」
そう、簪には姉がいるのだ。その姉は簪よりも優秀だったらしくいつも比べられていたそうだ。そして噂によると自分の専用機も一人で組み上げたらしく、簪は姉に追い付くために自分も一人で組み上げようとしていた。そこで流斗が言ったのは"簪は簪なんだから別に誰かになろうとしなくても良い。自分らしく生きれば良いし、助けが欲しいなら素直に言えば良い"と言ったのだ。最初こそその言葉を拒んだが、流斗のアイテム製作を手伝っていると自分の専用機にも使えるシステムを見つけだし、結果として自分の専用機を手伝ってほしいと素直になれたのだ。
「俺もこいつに乗ってる簪を見るのが楽しみだよ」
そう言って流斗が右手で打鉄弐式に触れると一瞬だけ流斗の右目が光り、そして打鉄弐式のデータが目まぐるしく変わり始め、ピタリと止まった。
「流斗、見て!」
「どうしたんだ?」
簪が流斗に打鉄弐式のモニターを見せるが、まだ基礎知識しかない流斗には何のことだかさっぱりだった。
「うん、わからん!」
「えぇー…。あのね、マルチロックオン・システムが完成してるの!」
「何だって!?」
「流斗が何かしたんじゃないの?」
「いや、全く。でもこれで打鉄弐式が完成したってことだよな?」
「うん。後は実際動かしてみるだけ」
「俺、来週アリーナ借りてるからやってみようぜ」
「うん!」
「じゃあ今日は解散ってことで。ドリルクラッシャーも今度でいいしな」
「了解」
しかしそのときはまだ二人とも気づいていなかった。マルチロックオン・システム以外にもうひとつシステムが組み込まれていたことを…。
◇
「"向こうの"俺からのささやかなプレゼントだ。存分に使ってくれよ」
流斗の中に潜むエボルトはそう呟き、赤い地面に寝そべった。