転生じゃなくて転送されたみたいだけど、頑張ってみる。   作:甘々胡麻ざらし

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今回は少し長いです


高・校・再・入

「流石に女子ばかりはキツイよなぁ」

 

IS学園の制服に身を包んだ流斗は入学前に配布された参考書に目を通していた。なぜ彼がIS操縦者を育成するIS学園にいるのかと言うと、結論として彼はISを動かしてしまったのだ。そう、女性にしか動かせないISを。そもそもISとは何か。

 

ISとは10年前、篠ノ之束が宇宙空間での活動を想定し、開発したマルチスーツである。しかし当時の科学者たちはその案を受け入れなかった。何故ならISは女にしか動かせない。それが唯一にして最大の欠点だった。しかしある出来事によってISは瞬く間に注目されたのである。それは束がISを発表してから1ヶ月後、日本を射程距離内とするミサイルの配備されたすべての軍事基地のコンピュータが一斉にハッキングされ、2341発以上のミサイルが日本へ向けて発射されたのだ。その約半数を搭乗者不明のIS「白騎士」が迎撃した上、それを見て「白騎士」を捕獲もしくは撃破しようと各国が送り込んだ大量の戦闘機や戦闘艦などの軍事兵器の大半を無力化した事件。この事件での死者は皆無だった。結果としてISは世界最強の”兵器”として認識され各国のパワーバランスは一気に崩れた。

 

これが女尊男卑になった原因でもある。

 

「まさかローグの言った通りマジでISを動かせるとはな…」

 

そう呟きながらチラリと一番前の席の人物を見る。そこには流斗と同じIS学園の制服を着た少年が居た。彼こそが流斗がISを動かす切っ掛けを作り出した張本人であり、世界初の男性操縦者である。

 

「みなさん揃っていますね。SHRを始めますよ」

 

ガララと扉が開き緑色の髪色をした教師が入ってくる。

 

「みなさん入学おめでとうございます。私は副担任の山田真耶です。これから1年間よろしくお願いします!」

「よろしくお願いします」

 

どうやら挨拶を返したのは流斗だけらしく真耶は涙を浮かべる。

 

「あ、ありがとうございます宇田君…。そ、それでは気を取り直して自己紹介を始めましょう!」

 

一瞬大丈夫かと心配になるがそのまま自己紹介が始まった。流斗は自己紹介する女子たちの顔と名前を覚えながら自分の番がやってきた。

 

「えーっと宇田流斗です。年は皆さんより3つ上の18歳で、全国IS適性検査でISを動かせることがわかりました。半年ぐらい前に事故に遭って記憶がいくつか抜けてますが気軽に話しかけてください」

 

パチパチと拍手が起こりそのまま流斗は席に座った。流斗は自分の次の番号の人物。世界初の男性操縦者である織斑一夏を見ていた。出席番号順なら後ろの席のはずだが何故か自分と一夏の席はかなり離れており流斗は窓際の一番後ろ。一夏は一番前の真ん中の席だった。どうやら一夏は緊張しているのか真耶に呼ばれていることに気づかず、真耶はまた涙目になっていた。流斗が呼ぼうにも席が遠いため気づくまで放置することにした。しばらくして一夏は気づいたのか大きな声で返事した。

 

「あ、あの。今自己紹介していて今「お」で織斑君の番なんだけど自己紹介してくれるかな?ダメかな?」

 

どこの世界に自己紹介を拒否するやつがいるのだ?と流斗思いつつも、一夏は自己紹介を始めた。

 

「お、織斑一夏です」

 

極めて端的な自己紹介。しかし女子たちは彼から情報を引き出そうと眼差しを向ける。観念したのか一夏は息を吸い込み…。

 

「以上です!」

 

ドシーンと吉本もビックリするような息のあったズッコケっぷりに一夏は困惑する。するとドアが開かれ黒いスーツを着た女性が一夏に出席簿を降り下ろした。スパーンと良い音が鳴り一夏は叩いた人物を見る。

 

「げぇ!関羽!?」

 

スパーンと2度目の出席簿を喰らい更に悶絶する。

 

「誰が三国志の英雄だ馬鹿者」

「あ、織斑先生。もう会議はいいのですか?」

「ああ、担任の仕事を押し付けてすまないな」

「いえいえ!」

「さて、諸君。私が君たちの担任の織斑千冬だ。君たちにはこの一年で基礎を叩き込んでもらうつもりだ。わからないところがあればわかるまで指導する。一年間よろしく頼むぞ」

 

女子たちは黄色い歓声をあげる。それもそうだ。何故なら目の前にいるのは世界最強のIS操縦者、織斑千冬なのだ。黄色い歓声を上げたくなるのもわかる。皆口々に千冬に対して想いを叫ぶが千冬は鬱陶しそうに頭を押さえる。

 

「はぁ…。何故私の生徒はこうも馬鹿なのだ?意図的なのか?」

 

その発言は教師としてどうかと思うがクラスメイトからはご褒美なのかもっと危ないことを口走っていた。

 

「で、お前は満足に自己紹介も出来ないのか?」

「いや、千冬姉いだっ!」

「ここでは織斑先生だ。公私をわきまえろ」

「はい…」

 

一連のやり取りに女子たちはヒソヒソと喋り始めた。

 

「ねぇ、織斑君って千冬様の弟?」

「じゃあISを動かせるのってそれが原因?」

「じゃあ二人目は?」

「…似てないね。イケメンじゃないし」

「背は高くて細いのに勿体ないね…」

 

うるせー!知っとるわ!と流斗は心の中で叫ぶ。流斗の顔は自分でも自負している通りおっさん顔なのだ。街中では20代後半に間違えられることもしばしばあった。ちなみにこれは前の世界でもだ。千冬が静かにしろと言うまでこのざわめきっぷりは収まらなかった。


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