魔法少女リリカルなのは 〜ありがちな転生生活〜 作:妖魔夜行@
side碌斗
心地よい風が頬を撫でる。
「ん………」
誰かに頭を撫でられているのか?妙に気持ちいい。
うっすらと目を開けるとそこには、「高町なのは」がいた。
「おはよう小鳥遊くん。気分は大丈夫?」
「ん…ぅん?」
段々と意識が覚醒してくる。後頭部には柔らかい感触があり、頭はなのはが撫でているのかまた瞼を閉じてしまいたくなるような気持ち良さがある。
「ここは…?」
「保健室だよ。小鳥遊くん、神崎くんに殴られて気を失ってたんだよ」
「気を……?」
そうか、それで保健室に……。
いや違う。
頭に残る、酷い違和感。曇りガラスのように思い出せない記憶…。
「《アラジン…説明頼む》」
『《うん。実は…》』
マジかよ…幻術や幻覚対策の8型防御魔法を貫通するとか…どれだけあの幻術は力が強いんだ?
アラジンから俺が気を失っていた間と消された記憶の説明を受けた。なんつーか、流石は転生者ってところか。
「《…じゃあ俺が転生者って事はまだバレてはいないんだな?》」
『《うん。でも御林ちゃんは「かもしれない」程度には疑っているからね》』
「《うーん…誤魔化しきれなくなって来たな》」
「あの…小鳥遊くん?」
「何?高町さん」
「そろそろ…起きれるかな?」
「え?」
なのはにそう言われて俺の体制を見る。後頭部に柔らかい感触、目の前にはなのはの顔、どうやら俺は今、なのはに膝枕をされているらしい。
「うわあぁぁ!!ゴメンなさぁーい!!」
すぐ降りて土下座した。
「ふええええ!?なんで!?頭あげてよ!というか土下座なんかしないでよ!」
「許してくれるの?」
「まず許すも何も怒ってないから!」
許可を貰ったので普通に立ち上がる。弁明しとくが俺は断じてロリコンではないからな。あとMでもない。
「で、高町は俺に聞きたいことがあるんだよな?」
俺は意識を切り替えて高町に話しかける。いつもと話し方が違う事にか、それとも急に雰囲気が変わったからか、はたまた両方か、なのはは驚いているみたいだ。
俺が猫かぶりをやめたのは別にヤケになったからではない。これ以上あの事を隠し通すのは無理だと判断したからだ。恐らくこのまま嘘をついても彼女は俺があの時の少年である証拠を掴むまで付き纏う事だろう。そうするも一緒に住んでいるシュテル達の事もバレかねん。それだけは何としても阻止しなければならない。
「で、どうなんだ?無いのか?あるのか?」
「…あるよ」
戸惑っていた瞳はもう揺れておらず、俺の事をしっかりと見つめていた。
まあ今の俺は前髪が目を隠しているから半分顔見えないんだけどね。
「小鳥遊くん…私ね、ずっと会いたかった人がいたんだ。5歳くらいの頃、私が公園で1人、ブランコに乗って泣いていた時…私を慰めてくれた男の子…」
「……………」
「私ね、その時…凄い辛かったんだ。お父さんが事故にあって、大怪我しちゃって、それで入院して…お母さんはお父さんがいなくて悲しいはずなのに、弱い所を見せずにお父さんの分の仕事まで1人でこなして……お兄ちゃんは、お父さんがいなくなったから、お父さんの代わりに自分が家族を守らなきゃって思ってて、ピリピリしてたし……お姉ちゃんは、お母さんの手伝いや、私の送り迎えを、好きだった剣のお稽古を辞めてこなしていたの……でも、私には何も出来ることが無かった。私は、なのははいらない子なんじゃ無いのかなって、ずっと考えてた…皆は忙しいから、なのはが我儘言うと困らせちゃうもん…だから、できるだけ邪魔にならないように、いつも遅くまで公園にいた。いっつも1人で、寂しくて、辛くて、泣いていた……………でもそこに、
「……………」
「貴方は、私の事を、励ましてくれた。慰めてくれた。抱きしめてくれた……貴方がそうしてくれたお陰で、私は家族に本音を話すことが出来たし、お母さんもお兄ちゃんもお姉ちゃんも私の事を大事に思っていてくれたのが分かった。本当に……ありがとう」
「……あー、その、何だ?どういたしまして?」
「ふふっ、何で疑問形なの?」
「面と向かって礼なんか言われた事ないからだよ…それとな、最後の方は俺のお陰じゃねぇぞ」
「え?」
「お前が家族に本音を話すことが出来たのはお前が家族と話す勇気を出したからだ。俺はお前の悩みを少し解消しただけだ」
「…素直になってもいいと思うの」
「俺は超素直だよ。うん」
「ふふっ、あはははは!」
「ぷっ、ハハハハ!」
俺達は何が面白いのか、2人で笑いあった。
暫く笑いあって落ち着いた頃、なのはが俺に話しかけてきた。
「ねぇ、小鳥遊くん。名前で呼んでもいい?」
「あ?まぁ、別にいいけど」
「ホント?じゃあ早速呼んでみようかな…コホンッ………ロクトくん」
「ッ!?……何だ高町?」
「むぅー、私は名前で言ったんだから碌斗くんもなのはって呼んでよー」
「気が向いたらな」
「むぅー…絶対呼ばせるもん」
一瞬、コイツに名前を呼ばれた時、ドキッとしちまった。
可愛らしい、華のような笑顔に、不覚にも、ときめいてしまった。
「さて、これからどうするか」
「?教室に戻らないの?」
なのはが首を傾げて聞いてくる。時計を見ると時刻は11時を過ぎていた。なのはの話によると俺が寝ている間に先生が事情を聞きに来たらしいが、なのはが俺が目を覚ましたら先生のところへ連れていくと言ったところ、すんなり聞き入れてくれたらしい。
因みに神崎は先生にこってりと絞られているらしい。後で聞いた話だが先生は昔レスリングのアマチュアチャンピオンだったとか…。
「戻ってもどうせ自習だろうし、クラスのヤツらに色々聞かれるのがオチだ。そんな面倒臭い事になるならここで昼休みになるまでのんびりしてた方がいいだろ?」
「いいのかなぁ?」
「高町、こういうのは深く考えたら負けだ」
にしても何するか…昼休みになるまであと1時間はあるぞ。
「うーん、じゃあロクトくん。お話しよ!」
「断る!」
「何でなの!?」
「誰が好き好んで自分からO☆HA☆NA☆SIを喰らいに行くか!」
「うん?何か発音がおかしくない?」
どうやらなのはが言っていたお話は普通にお話だったらしく、俺が想像していたO☆HA☆NA☆SIとは違ったようだ。
「ねぇねぇロクトくん、今度うちに来ない?私のお父さんとお母さんが開いているお店があるんだけどお料理もスイーツもとっても美味しいんだよ」
「翠屋だろ?知ってるよ」
「えぇーー!?何で知ってるの!?」
「何でって言っても…俺、翠屋の常連だし。ついでに言うと士郎さんや桃子さんとも仲良くさせて貰ってるし、恭弥さんや美由希さんには偶に剣の稽古をつけてもらった事もあるからな?」
「そ、そんな…因みにどれくらいから通ってたの?」
「ざっと3年だな。小二くらいの頃からだ」
「しょ、小二…なのに家族で私だけ知らなかった…」
「まぁ俺も高町を見た時は驚いたけどな。まさか高町が士郎さん達が言ってた子供だとは思わなかったし」
本当は知ってたけどな。
なのはとの話題は尽きず、気づけば30分近く話していた。ひとしきり喋ると、なのはは何やら言いづらそうに口を開いたり閉めたりしていた。
「どうかしたか?」
「……あの、ロクトくんってさ…魔法とか、信じる?」
これは…御林の言葉を聞いて俺が魔導師かどうか疑っているみたいだな。
「魔法、ね。ゲームやマンガでよく聞く言葉だな」
「うん。それって実際にあると思う?」
「…………」
さて、これは何と答えるのが正解だろうか。下手に答えると最悪、管理局に連れていかれるかもしれない。
「そうだな…あるんじゃないか?世界は広いしな」
「そ、そう?」
「ああ、だって日本だって呪いや、占星術とかがあったんだぞ?だったら魔法があっても不思議ではないだろ。ま、俺は魔法使いなんか見た事ないけどな」
「そ、そうなんだ〜」
…おいおいなのはさんや、その反応は「え?もしかしてお前魔法使いなの?」って聞かれてもおかしくない反応だぞ。
「おっ、そろそろチャイムなるな。行くか」
「えっ?あっ、本当だ」
俺が立ち上がるとなのはも立ち上がり、俺達は保健室をでる。
さーて、なのはの問題はクリアしたが次の問題ははやてだな……図書館の事はバラしてもいいが、御林に俺が転生者だと言うことはバレてはならない……さて、どうするか…。