魔法少女リリカルなのは 〜ありがちな転生生活〜 作:妖魔夜行@
side碌斗
どうしてこうなった。
右側には仁王立ちで睨んでくるディアーチェ。
左側には腰に手を当てて「怒ってるよ!」と言った感じで見下ろしてくるレヴィ。
背後には絶対零度の微笑み&眼差しを向けてくるユーリ。
正面にはもう能面と言っていいほどの無表情で俺の目をひたすら見つめてくるシュテル。
その中央で冷や汗を流しながら正座をしている俺。
部屋の隅でガクガクと震えているアラジン。
もう一度言おう。
どうしてこうなった?
◇
説明するには数時間前に遡らないと行けない。
今日は7月25日、俺達小学生にとっては夏休み1日目だ。その現在、小鳥遊家のリビングでは…俺以外が宿題をしていた。
「ロクト、ここの問題が分からないのですが…」
「ん?ああ、そこは教科書のここに…ほら載ってるだろ」
「ありがとうございます」
「コラ、レヴィ。寝るんじゃない、我の肘が当たるではないか」
「だってー…何で夏休み初日から宿題やんないといけないのさー!」
「いやそりゃあ早めに終わらせておいた方が残りの夏休みをなんの心配もなく満喫出来るからだろ」
「というかレヴィは去年宿題やらなくて最終日に私達に手伝わせたじゃありませんか」
「我等はコツコツとやれるからな、別に態々今日終わらせなくてもいいのだぞ?」
「でもレヴィは絶対に1人だとやりませんよね?」
「だから俺達も一緒にやってあげてるんだぞ。普通は感謝してもらいたいくらいだが?」
「ぶぅ〜…でもロクはやってないじゃん!」
「いやもう終わってるし、ほれ」
聖祥の宿題を見せる。その量はシュテル達のと比べて1,5倍程多い。
「早!?」
「聖祥は私立だからそこそこ量が多かったな。ま、貰った日に終わらせたけど」
「ロクトは仕事が早いな」
「レヴィも見習って下さい」
「うぅ…分かったよぉ」
ディアーチェやシュテルに言われて渋々問題集を始めるレヴィ。
…そう言えばさっきからユーリが静かだな。
「………………」ガリガリガリガリガリガリ
すごいスピードで黙々と宿題をやっていた。もう半分は終わったんじゃないか?
「す、凄い勢いだな…」
「ですね…」
「あ、ディアーチェそこ間違ってるぞ」
「何?どこだ?」
「ここ、ここ。そこアじゃなくてイだ」
「む、確かに…」
「ねーロクトー、ここ分かんないよー」
「どれどれ、あぁそこはなー…」
こんな感じでそれぞれ宿題をしていた。
そして何度か休憩を挟みながらも数時間宿題をしているとユーリが夏休みの宿題を全て終わらせた。
「疲れました……」
「おつかれ、丁度昼だし飯にするか。お前らも区切りのいいところで止めとけ」
「はい」
「うむ」
「やったー!お昼だー!」
「話聞いてたかレヴィ?区切りのいいところでって言ったよな?」
「丁度最後までやった所だよ!ほら!」
「…所々空欄があるのが気になるがまぁいいか」
午後からやれば良いだけだしな。
俺は簡単に昼飯を作り、皆の所へ持っていった。
「アラジン、飯だぞ」
『うぅん…はぁーい』
待機状態のアラジンを人型にする。どうやら宿題の邪魔をしないように寝ていたようだ。
「今日はチャーハンなんですね」
「ああ卵がギリギリだったんでな。オムライスにしようか迷ったんだが、そこまで卵の数が無かったからチャーハンにした」
「なら午後から買い物に行くか?我も付き合うぞ」
「む、私も着いていきます。というかディアーチェ達はまだ宿題終わらせていませんよね?」
「ふん!もう半分以上終わっている!後は夜にコツコツやって行けば7月中に終わる計算だ!」
「私もそんな感じですね。レヴィはどのくらいまでやったのですか?」
「え!?えーっと、4割くらいかな?」
「嘘つけ3割も行ってねぇだろ」
「そんな事よりまずはご飯食べようよ〜、僕お腹ぺこぺこだよ〜」
アラジンが目を><こんな風にしながらお腹を抑えている。
「そうだな、食うか。んじゃ手を合わせて」
「「「「「「頂きます!」」」」」」
一斉に食べ始める。アラジンは急いで食いすぎて途中、噎せていた。何やってんだが………。
「「「「「「ごちそうさまでした!」」」」」」
「おう、お粗末さまだ。シュテル、俺が皿洗うから洗い終わった食器を拭いてくれないか?」
「分かりました」
「あと宿題はしなくていいぞディアーチェ。シュテルもな。半分終わってんなら明日から少しずつやっても7月以内に終わると思うし。あ、レヴィはちゃんとやるからな」
「なんで僕だけ!?」
「お前はさっさとやっておかないといつまで経っても手をつけないからだ。ユーリ、ディアーチェ。2人で教えといてくれ」
「うむ、任せろ」
「分かりました。さあレヴィ、計算ドリルを出してください。厄介な物から終わらせていきますからね!」
「ひぃ〜ん!」
ユーリとディアーチェに早速宿題をやらされているレヴィ。俺とシュテルは皿洗いをしながらそれを見ていた。
アラジン?ゲームしてるよ。
因みに俺達は食事から30分後に歯磨きをする事になっている。そっちの方がいいとか何とかテレビでやっていたからだ。
俺が皿洗いを終え、後はシュテルが拭くだけになると、電話がかかってきた。
「お父様とお母様ですかね?」
「珍しいな。夏休みだからまた帰ってくるのか?アラジン、電話出てくれ。俺食器片付けてるから手が離せん」
「はーい」
俺が頼むとアラジンはとたとたと足音を立てて電話へ向かっていく。
「はい、もしもし小鳥遊でーす…え?えっと違うよ?碌斗くん?碌斗くんに代わればいいの?うん、分かったよ。碌斗くん電話ー!」
「誰からだ?」
「なのはちゃんからだよー」
「なのは?」
「なのはだと?」
「なのは?って誰だっけ?」
「シュテルのオリジナルですよ」
なのは?何でまた…と言うかシュテル、無表情で見つめてこないで、怖い。
「なんなんだ一体…悪いシュテル、あと頼んでもいいか?」
「ええ、構いません」
「サンキュ……もしもし、電話代わったぞ」
『あーもしもし?なのはちゃんやけどー!明日一緒にでかけ―ブチッ!ツー、ツー、ツー』
「おいアラジン。詐欺電話だったぞ」
「ええ?本当?」
「ああ」
かけてきたのは「なのは」じゃなくて「なのは」の名前を使うタヌキだったからな。
するとまた電話がかかってくる。
仕方なく受話器を取る。
『誰がタヌキや!!』
「お前だよ」
何で考えていた事が分かるんだよ。エスパーかよ。
「それで、何の用だタヌキ。まさか、なのはの名前を語ってイタズラ電話をしたかったのか?」
『アレはちょっとした遊び心やよー。というか電話かけたのはなのはちゃんやで、ここにおるもん。って誰がタヌキや!』
『にゃはは…ゴメンねロクトくん。はやてちゃんに私が電話かけてって言われたから…』
「いやまあ別にいいが…で、何の用なんだ?タヌキ」
『いい加減タヌキやめーや!』
「はいはい、でなんだ、つまんない事なら切るぞ
『何や名前に違和感あるけどまあええわ…実は私ら明後日から三日間アリサちゃん家の別荘にお泊まりする事になったんやけど、良かったらロクトくんも「断る。じゃあな」どうって待ってや!』
はやての話の途中で受話器を置こうとするとはやてが受話器越しにギャーギャー騒いでいる。仕方ないので電話に戻る。
「あのなぁ…女子の中に男子1人なんか嫌に決まってんだろ。それこそあの馬鹿でも誘えよ」
『絶対嫌や。それと男は別にロクトくんだけやあらへんで。高町家の皆さんととザフィーラも一緒やからな』
「……一体何人行くんだ?」
『え〜と、なのはちゃん家と咲ちゃん家な家族全員とペット1人、すずかちゃん家からすずかちゃんとお姉さん。フェイトちゃん家はフェイトちゃん、アリシアちゃん、2人のお母さんとお手伝いさん、それとペット1人。アリサちゃん家はアリサちゃんとお手伝いさんが来て、私ん家は家族全員参加や!』
「………多すぎじゃね?」
高町家はユーノも入れて6人、御林家は確か咲含めて3人、月村家は2人、テスタロッサ家はアルフ含めて5人、八神家はザフィーラ入れて6人。アリサは自分の家の別荘に行くんだから1人でも不思議ではないが……計23人だぞ…多すぎだろ。
「おいおい、いくら何でも多すぎだろ。そこに俺まで加わったら迷惑になるだろ」
『その心配は無いわよ、明日行く別荘は家が所有している中でもかなり大っきい物だから。20人くらい余裕よ。まだ全然部屋が余るわ』
「アリサ…お前もいたのか…てかいつの間に代わったんだよ……あと忘れてると思うが、家には家族が5人いるんだ。アイツらを置いて俺だけ泊まりになんかいけねぇよ」
『ならその家族も連れて来ればいいじゃない。さっきも言ったけど部屋ならまだまだ余ってるんだから』
「……さいですか。因みに断るのは?」
『却下。断ったら今からアンタの家に皆で乗り込みに行くわよ』
「いや家分かんねぇだろ。誰にも教えてないんだぞ」
『忘れたの?私の家は結構お金持ちなのよ。それに有能な執事もいるの。時間とお金をかければ貴方の家なんかすぐ分かるわ』
「………」
これは本当に断ったら乗り込んで来るな……いや。まだだ!まだ終わっておらんぞ!
「まてアリサ。流石に俺だけの意見で決めるわけにはいかん。家族にも相談しないとダメだ」
『むぅ…確かにそうね。じゃあ決まったら電話しなさい』
「いやお前らの電話番号わかんねぇよ。というか逆に何で俺の家の電話番号知ってんだよ」
『何言ってんの?この前連絡網配られたじゃない』
そうだった…確かに貰ったな。
『じゃあ俺は誰の家に電話をかければいいんだ?なのはの家でいいわよ。私達今なのはの家にいるし』
「了解……じゃ決まったら電話する」
『ちゃんと電話しなさいよね!』
アリサがそう言うと電話が切れた。
はぁ…あいつらに一体どう説明するか……。
「何の電話だったのー?」
「ああ、はやて達に明後日、アリサの家が所有している別荘に泊まりに来ないかって誘われたんだ」
「はやてだと…?ロクト、お主いつから小鴉を名前で呼ぶ様な間柄になったのだ?」
「それに今アリサって…それって僕達は聞いたことない名前だったよ…?」
「先程は私のオリジナルの事を呼び捨てで呼んでいましたね……」
「ロクト…どういうことか……」
「「「「説明して(よ)貰いましょうか(貰おうか)」」」」
◇
そして現在に戻る、と。
「えっとですね…皆さん?」
「…何ですか?」
背後からユーリが応える声が聞こえる。声音は平坦としているのだがそれが余計怖い。
「俺がアイツらを名前で呼ぶのは山より高く、海よりも深い事情があるんですよ」
「ふぅーん、で?」
左から珍しくキレているレヴィの声が聞こえる。因みに俺はシュテルから(何故か)目を逸らせないので左右も後ろも見れない。
「だから理由を聞いて欲しいなぁーと思いましてね?」
「ほう、理由か」
右から威圧するようなディアーチェの声が聞こえる。
「はい、なのでその…お話をさせて貰えませんかね?」
「…分かりました。なら私がロクトにミッチリとO☆HA☆NA☆SIをして上げます」
俺の目をじっと見つめながらシュテルが死刑宣告をする。
「いえ、お話を」
「O☆HA☆NA☆SIだな。我も勿論やるぞ」
「僕もやるよ。ロクトにO☆HA☆NA☆SIしたいもん」
「そうですね。ここは仲良く4人でO☆HA☆NA☆SIをしましょうか」
ディアーチェ、レヴィ、ユーリもシュテルに続いて死刑宣告をしてくる。
有無を言わさぬ4人の威圧に俺は悟った……「あ、死んだな」と。
「《アラジン……》」
「…《な、なんだい?ろろ碌斗くん》」ビクビク
アラジンもすっかり怯えきっている。
そんなアラジンに俺は遺言を頼む。
「《冷蔵庫にあるおはぎ…俺の分まで食べといてくれ……誰も食わないのは、勿体ないからな……じゃあな……》」
「《ろ、ロクトくぅーーん!!!》」
俺はアラジンと念話を切る。シュテルに襟を掴まれて引きづられながら念話をしていたのだ。
「さて、始めますか」
「何か遺言があればきくぞ」
「聞くだけだけどね」
「さ、言いたいことがあるなら言ってください」
「……遺言は、言ってきた」
男は2度、同じ言葉を言わねぇ…!
「そうですか…では」
「「「「始めましょう(るか)(よう)」」」」
「イェア゙ア゙ア゙ア゙!!!!!」