魔法少女リリカルなのは 〜ありがちな転生生活〜 作:妖魔夜行@
side咲
「碌斗、その弁当って君が作ったの?」
「ああ。というかシュテル達の分も俺が作ってるぞ」
「へー、料理も出来るんだね碌斗は」
「吹雪だってそれくらい出来るだろ?」
「僕はそんな上手に作れないよ。ねぇ碌斗、その美味しそうな唐揚げ1つ貰ってもいい?」
「ん?ああ別にいいぜ。代わりにそのエビフライくれよ」
「うんいいよ。はい」
「サンキュー……美味いなこのエビフライ」
「この唐揚げも美味しいよ」
いつも私達がお昼を食べている屋上。
目の前でお互いの弁当のおかずを食べ合うロクト君と氷室君、その光景を見せられている私達。
「…ねぇ、氷室君」
「何かな御林さん?」
「貴方昨日、翠屋に着いて電話がかかってきたと思ったら直ぐに翠屋から出て『また明日話そう!』って言ったわよね?」
「うん言ったね」
「何でもうロクト君と仲良くなってるの?」
どーゆー事だゴラァ、と言った感じでロクト君と氷室君を睨む。
「昨日色々あって吹雪の妹を助けたんだよ。それでこいつの引っ越してきた家が隣だったんでな。仲良くなった」
「省きすぎよ!もっとちゃんと説明しなさい!」
説明になってない説明をされてアリサが吠える。まあ気持ちは分からなくもない。
「うーん…吹雪、いいのか?」
「コレばっかりは僕じゃなくて時雨に聞かないと……」
時雨?妹さんの名前かしら?
「なのは、今日翠屋に行ってもいいか?」
「へ?うん、いいと思うけど」
「そんじゃ放課後に翠屋に集合してくれ。そこで話す」
そう言ってロクト君と氷室君はお弁当箱を仕舞うと屋上から出ていった。
……仲がいいわね。そのせいでロクト君に惚れてる子達が嫉妬しているの分かってるのかしら?
後ろではメラメラと嫉妬の炎を上げるなのは達がいた。
side碌斗
「…まぁというわけで皆に集まって貰ったはいいんですけど」
放課後、翠屋には俺、吹雪、時雨ちゃん、咲、なのは、フェイト、アリシア、はやて、アリサ、すずか。まぁここは分かる。
士郎さん、桃子さん、恭弥さん、美由希さん、ユーノ。まぁここまではまだ分かる。
シュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリ、シグナム、ヴィータ、シャマル、リィフ、ザフィーラ。何でいるの?
「おい…何でこんなに多いんだよ」
態々翠屋を休業にしてまで話すことでもないのによ…。
「私とはやてで連絡しといたのよ。どうせ聞くなら皆いた方がいいと思ってね」
「はぁ…それと時雨ちゃん。何で君は俺の腕に抱きついているのかな?」
そう。この時雨ちゃん、学校を出てからずっと俺の右腕に抱きついて離れないのだ。
「僕が碌斗さんの腕を抱きしめたいと思ったからだよ。ダメだったかい?」
「そろそろ離して欲しいかな」
「ちぇっ、まぁ碌斗さんに嫌われたくないから素直に離れるよ」
やっと離れてくれた……。
「(あの子…ずっとロクトくんに抱きついていたの……)」
「(ええなー、羨ましいなぁ……)」
「(ロクトもロクトよ!何抱きつかれてデレデレしてるのよ!)」
「(…帰ったら久しぶりにO☆HA☆NA☆SIしましょうかね)」
「(時雨めぇ…我のロクトに勝手に抱きつきおってぇ…!)」
「(いーなー時雨ちゃん…僕もロクトにくっつきたいー!!)」
「(羨ましいです……妬ましいです……)」
「(…別に羨ましくなんてない!)」
「(あの時雨って奴、ロクトにベタベタしやがって〜…ロクトもロクトだ!腕組まれたくらいでデレデレしやがって…って私は何で怒ってんだ?)」
何か女性陣の視線がすっごい刺さってくるんだけど……怖ぇ……。
「まぁ本題に入るか。時雨ちゃん、話してもいいかな?」
「………うん。いいよ」
「それじゃあ昨日あったことを話すぞ。アレは――」
それから20分程かけて昨日、何があったかを話した。皆は真剣に話を聞いてくれた。なのは達女子は時雨がされかけた事を聞いて顔を覆ったりする事もあり、男性陣、恭弥さんなどは妹と近い年齢の少女を襲った犯人に対して殺意を抑えていた。
「と、まぁ、こんな感じだな……大丈夫か時雨ちゃん」
時雨ちゃんはその時の事を思い出したのか少し体が震えていた。
「…うん、大丈夫だよ。碌斗さんが助けてくれたからね」
そう言って俺の肩に寄りかかる時雨ちゃん。それを見たなのは達の方から何か亀裂が入る音が聞こえた。
「し、時雨ちゃん?さっきから思ってたんだけど少しロクトくんに近すぎるんじゃないかな?」
「何を言ってるのなのはさん?好きな人に甘えるのは普通でしょ?」
「まあそれはそうだけど……って、ええええ!!??」
好きな人?え?どういう事だ?
時雨ちゃんの方を見ると時雨ちゃんは俺の目を見つめながら話しかけてきた。
「碌斗さん、僕は貴方のことが好きになっちゃったんだよ。昨日、僕の危機に助けに来てくれて、僕の代わりに怒ってくれた碌斗さんに惚れちゃったんだよ」
目を逸らさずにジッと見つめながら想いを話す時雨ちゃん。
「………えっと、多分それは一種の迷いというか吊り橋効果に似た何かのせいで起こった勘違い「なんかじゃないよ。逆にあんなかっこいい事をされて好きにならない女の子はいないよ」ええ…」
『確かにアレは本当にドラマみたいだったからねぇ。時雨ちゃんが碌斗くんを好きになっても納得するよ』
「そういうわけさ。碌斗さん、僕は貴方の恋人になりたいんだけど。どうかな?」
「ええっと…悪いが今は恋愛とかする気持ちは無いんだ。ごめんな、時雨ちゃんの気持ちには答えられない」
「……そうだよね。確かに僕らはまだ小学生だもんね」
「そう。まだ小学生なんだ。だからさ、これも気の迷いな「じゃあ大人になったらいいんだよね?」…えー?」
「今はまだ、じゃあ中学生、高校生、大人になったら恋愛をする気持ちになるよね?なら僕はその時まで待つよ。その時になるまで碌斗さんの事を振り向かせてみるよ」
ニコリと微笑む時雨ちゃん。はぁ…仕方ないな。
「………まぁ、その時になるまで分からないからな」
「そうだね。まぁライバルはいないみたいだから僕は気長に待つよ」
ビキッ!
ん?また変な音がしたぞおい。
「ら、ライバルが、いないだと?」
「時雨……余り調子に乗らないで下さい」
「僕達だってロクトの事が好きなんだからね!!」
「私達は2年前からこの気持ちを抱えていたんです!!パッと出てきた貴方よりも長くロクトの事を想ってたんですから!!」
ディアーチェ、シュテル、レヴィ、ユーリが席を立って時雨ちゃんを睨みながら言う。
えっと…時雨ちゃんに告白されたと思ったらシュテル達も俺の事を好きだったと?
「……頭痛くなってきた」
「さあロクト!」
「誰を選ぶのか」
「今すぐ!」
「決めてください!」
それから1時間、俺はシュテル達を落ち着かせるのに時間を使った。
side吹雪
「はぁ…」
「おつかれ、何か大変な事になったね」
夜、僕は碌斗と一緒にコーヒーを飲みながらベランダで話していた。
「他人事みたいにいいやがって……お前の妹だろ、なんとかしろよ」
「無理無理、時雨はああなったら止まらないからね。良かったじゃないかマテリアル娘の皆も碌斗の事が好きだったみたいだし。このまま原作キャラハーレム作っちゃえば?」
「バカ言うな。……と言うか吹雪って押しキャラみたいのはいないのか?」
「僕の押しキャラかい?僕はvividのコロナちゃんだったからね。あと何年も先さ」
「ふーん。そう言えば吹雪は何で転生したんだ?」
「ああ、それはね…」
僕は転生する前は20歳の大学生だった。
前世ではこの顔が気に入らないと言われ、小学生の頃から虐められていた。中学、高校でも虐められ、殴られたり金を取られたりは日常茶飯事だった。
そして県外の大学に入ってやっと解放されたと思った矢先に神様のミスで死んでしまった…というわけさ。
この話を碌斗は黙って聞いてくれた。そして僕が話し終わると今度は自分の事を話してくれた。
「そっか…碌斗も大変だったんだね」
「まぁな」
「………ねぇ碌斗。碌斗は管理局に入らないのかい?」
「管理局、ね……吹雪は入るのか?」
「僕は入ろうと思ってるよ。コロナちゃんと会う時に何かきっかけがなくちゃいけないからね」
「…なあ吹雪」
「なんだい?」
「これは咲から聞いた話なんだが…時空管理局は何処か黒い部分があるらしいんだ」
「黒い部分…?」
「ああ。原作であった最高評議会のような裏の顔があるらしい。まぁ、そんな事は原作知識を持つ俺ら転生者と上層部の僅かしか知らない事だ。で、咲は原作知識より深く管理局の事を探ってみたらしいんだ」
僕は黙って碌斗の話を聞く。
「そしたら見事に、原作以上に真っ黒だったんだと。正義を免罪符として管理世界、管理外世界どちらにも違法行為を行う研究所がうんさかあるらしい。ま、流石に危なくなったからこれ以上調べるのはやめたって言ってたけどな」
碌斗は僕の目を見つめて再び問いかけてきた。
「この話を聞いて、吹雪は管理局に入ろうと思うか?」
「………僕は…」
「まあ焦って決める事でもないけどな。俺達はまだ時空管理局の奴ら…なのは達とは知り合いだが、本部のクロノみたいな奴らに見つかっていない。このまま地球で平穏にすごすのもいいと思う。俺はそれを目標にしていたしな…」
「…じゃあ碌斗は入らないんだね?」
「…管理局の連中に俺の事が完璧にバレるまでは入らないつもりだ。それにこっちにはシュテル達もいる。俺が入ると言えばアイツらも絶対に着いてくる。考えてみろ…原作でもあった通り次元航行部隊、通称海の奴らは有能な奴らをドンドン引き込んでいた。そのせいで地上の部隊のリーダー、レジアスが悪に染まったんだ。なのは達だけでそうなったのにアイツら以上の実力を持つ俺達転生者や同等の実力のシュテル達が一斉に入局したらどうなる?」
「…原作より酷いことになるかもね」
「そうだ、だから俺は入らない。でも俺は別に吹雪が入るのを止めたりなんかしないぜ?お前の好きにしたらいい」
そう言うと碌斗はベランダから出ていった。残された僕は暫く夜空を見上げていた。
side碌斗
あー…柄にもなく喋りすぎたな。
先程吹雪に話した事を少し後悔した。この世界はアニメではない。怪我をすれば血も流れるし、死ぬことだってある。俺達転生者は形は違えども既に死を体験している。転生という不思議な体験もして、特典という特別な力も貰った。
だが俺達は人間だ。死ぬ時はあっさりと死ぬ。死を1度体験して、力を持っていても人間は簡単に死んでしまう。
俺は死にたくない。だから今まで原作との関わりを避けて、いざとなったら自分だけでも生きれる様に鍛えてきた。
なのに、俺はシュテル達と出会った。なのは達と知り合った。自分以外の転生者を知った。
守るべき大切な存在が出来てしまったのだ。
「………俺一人の命じゃ無くなったからなぁ」
あいつらが俺に対して好意を持っているのは薄々勘づいていた。だがそれは一時の気の迷い、時が経てば忘れるだろう。そう考えていた。
だが今日聞いたアイツらの気持ち。アレは何があっても揺るがない想いだった。
「俺が死んだら…あいつらを守るものが無くなるからな……悪いな吹雪。俺は管理局に今はまだ入らない」
「さて、と。飯食うか」
俺は吹雪達も呼んで一緒に食事をする事にした。
その時のシュテル達と時雨ちゃんの険悪な雰囲気は二度と忘れないだろう。