さて、今回から2部へと入っていきます。ここからどうなるのか是非ご想像にイメージを膨らませてください。
それにしても、胡散臭い魔術師がいましたが、一体誰なんでしょうね?私、気になります!
【第11章 駆け引き】
この世に楽園があるとするならば、それは人の手が届かない領域になるかもしれない。
謎の領域…花に満ちし一つの楽園のエリア。その周辺には一つ…その領域には似合わない天まで届く勢いで伸びる一つの塔が建っていた。
そのあいている部分から、一人の男がゆっくりと顔を出す。ローブを纏いし男性は杖を持ちながら青空に満ちた風景を眺めていた。
「いやー、今日もまた良い天気良い天気。相も変わらず変わらないものだ」
のんびりとした口調で答える。見る限り魔術師と思われるその風貌の男は、今の雰囲気を楽しんでいた。
「それに、こうものんびりしていると、君はずっと寝ているように見えるけどね?」
「お前さんに言われたくないなー。年中ノンビリその辺をただ面白く眺めてるそっちのはねー?」
男性は後ろを振り返りながら、ハンモックで横になっている一人の男性に声をかける。この風景には似合わない茶色をメインとした陣羽織に帽子を被る老齢の男性の姿が視える。
「ははは、まあそれは仕方ない方だよ。私みたいな平凡な魔術師は辺りを探せばゴロゴロいるほうさ」
「ったく…下界じゃお前さんの異名は最高レベルに近いんだけどねえ?腹の読みあいはそちらさんが上か」
「君の程じゃないさ。それに君のほうがよほど私より凄いんじゃないかな、信濃の奇術師『真田昌幸』君?」
「…お前さんぐらいかのー、わしの事をそう言う風に呼ぶのは?」
帽子を前に上げながら、男性に声をかける人物…そう、その人物こそ"赤"のランサー『真田幸村』の実の父親でもある、戦国きっての食わせ者で当時としては非常に珍しい奇術師として名をはせていた人物。
真田の教えそのものを広め上げ、幸村の成長を日頃から見守っていたのである。
更に、戦国時代においては術と言うのは結構珍しい分類で、呪術はともかくこの中でもかなり異色極まる程珍しい高水準な魔力持ちでもある昌幸。奇想天外の術を多数習得しているのである。
例えば、主君である武田信玄からの依頼で桜を咲かせたり、帽子の中に潜んで移動したり、真田家を期待上げるべく専用舞台を作り上げる…などなど盛りだくさんである。
「それにしても、君がまさか今回の事でちょっと対応してたのが驚いたかな?」
「ほお、それは一体どこの事だい?」
「他の地にある聖杯大戦…私が視た眼とはまた違う大戦らしいじゃないか。そもそも、"赤"のランサー・"黒"のセイバーにバーサーカー…はは、全然違うほうが出ているそうだ。一体「誰」の仕業なんだろうねえ?」
魔術師はくすっと不敵に笑いながら周囲を歩きながらそう呟く。彼が歩くと周辺が花が咲き満ちる、何とも奇妙な事が起きているがそこには何の疑問も持たず。
「さてねえ?まあ、ワシは気の向くまま今の情勢を眺めているだけさ」
「はは、まあ君がそう言うなら私は特に口出しはしないよ。今の状況を楽しめればいいだけさ」
魔術師が先を見る所…先が全く見えない空の風景。だが彼はまるでその先が分かっているかのように見つめていた。
「もしかしたらその聖杯大戦…きっと私の予想を大きく上回る事になるかもしれないな。それに、場合によっては彼を『かの地』に送り込む事も視野に入れてみようかな?」
その呟きは空へと舞い上がりながら、後ろを振り向くと昌幸の姿は消えていた。
「全く…彼もまた心配性だな。彼の思い描いた奇術の先は、果たしてどう導くのか。それに、あの子の妹分もよく見ておかないと」
男はそう言いながら静かに消えていった。そして塔の中には誰一人として人の形をした者はいなくなったと言う…
▽
その頃幸村はシロウ神父と共に教会のほうで話し合っていた。そう、一昨日の件…アキレウスがルーラーを殺害しようとした件についてだったのだ。
お互いそれぞれ佐助とアサシン…セミラミスをそれぞれ仲介役のような感じで置いていた。
「シロウ殿…一昨日アキレウス殿がるーらー殿を襲ったと言う事についてですが、何か聞いておりますか?」
「いえ、私は特には伺っていません。強いて言うなら、マスターからの話で動いた…と言うお話なら分かりますが」
座りながら目を見つつ、話し合いをする二人。それはまるで緊迫したかのような状況が続いていた。
幸村自身、こう言う会談における話術はそこまで高くは無い。昌幸の傍らで見様見真似な影響もあって最低限の対応はできている方である。
「ランサー…あなたの気持ちもわかります。ライダーがこういうような真似をするような人物ではないと。こちら側のマスターとの連絡が未だ出来ていないのが不徳のところですが」
「いえ、シロウ殿ですら把握できていないとなると、今後の対応も其達ではどうする事も出来ないと思ったので」
「念の為、そう言うのはアサシンのほうで調べは探っている方です。ランサーは佐助殿のご助力もあって色々と調べて入るそうですが」
「俺様も宛てを探ってはいるんだけど、どうにも手掛かりが少なすぎて困ってるんだよな。そちら側で得た情報で住宅とか調べたけど、モノの殻…どうにも言えないんだけどさ」
佐助も実は密かに行方が知れてない赤側のマスターの調査をしていたのだが、拠点としていた部分やその名残を一からすべて調べたが何もかも消されていたのであった。
空白…と言うのが一番似合う言葉かもしれない。
「我も面倒な事よな。だが今後このような捜索には手を出さぬぞ?」
「まあまあ、何事も情報は大事っていうもんでしょ?」
セミラミスは凄く面倒くさそうな表情をしていた。彼女の使役する鳩は佐助の影分身にも勝らずな動きをしている。まあ、なんか変な情報を色々と持ってくるのだが
例えば「くるっぽー(訳:謎の仮面神父、密かに各地での甘い物を食べ歩きしている/風の噂…月のほうで各地による大乱闘勃発中/セミラミス様、実は恋する乙女です)」等など
「ともあれ…るーらー殿の安全は今後も保証できない可能性があると」
「可能性は十分あります。と言え、佐助殿の話によればその人物はジャンヌ・ダルク…彼女ほどの腕前ならば今後は不覚を取ると思えません。黒側にしばらくいると思われるので、恐らくは大丈夫でしょう」
シロウ神父は特に気にはしていなかった。中立役の腕前がそこまで安心できるものなのか…だがアキレウス程の分類ならば今後どうなるのか分かったものではない。
「さて…話したい事は他にもあると思いますが、時間も限られてます。まだ何かありますか?」
「…ではもう一つだけ。シロウ殿、このランサーが考えている案がございます」
「案、ですか。それは一体?」
「るーらー殿が早くにこの地に降り立った…と言う事、それは即ちまだ優劣の差が完全に決まったわけでもない状態で現界されたと考えております。ならば、この聖杯大戦に何らかの異常が発生していると考えております」
「異常…と来ましたか」
ふむっ…と腕を組むシロウ神父。これまで冷静に対応していた神父が初めて腕を組んだ…恐らく異常という所を頭の中で考えているのか
「そして、願わくば万一の事を考えてるーらー殿との同盟を視野に考えているつもりです。と言え、先のアキレウス殿の件を考えると、不和が生じる可能性があると思い佐助にだけこの事を話しておりましたが」
「…夜中に起きた黒の陣営による仲違いによる行動でしたね。こちらも佐助殿の情報で把握は出来ましたが」
念の為であるが、唯一動けるマスターとしてシロウ神父にも情報を渡している佐助。だが全ての情報を出しているわけではなかった
「そして同盟…と言え、その不足な事態と言う情報が分からなければ、聖杯大戦を一時休戦する理由が掴めませんね。ランサー、何か情報がありますか?」
「まだ完全な情報が掴んでおりませんので、何ともでござる。と言え、それならこの幸村めが召喚された理由がまだ分かり申せぬのです」
「…成程、大聖杯について疑問が御有りと?」
シロウ神父は幸村の悩みを把握した。以前から言っていた大聖杯…冬木聖杯と言うが、正しくはアインツベルンと呼ぶ錬金術と第3魔法を司る所から生み出されたアイテムでもある。
設置場所が日本の冬木市でもあり、そういう意味では日本側の英霊が召喚されたら知名度補正で圧倒的有利を生んでしまう可能性が非常に高いため、その手のサーヴァント召喚は出来ないほう施されている。
だが、真田幸村・伊達政宗・片倉小十郎と3人の日本英霊が召喚され、更に幸村の宝具で猿飛佐助すら召喚すると言う極めて異例な事態…明らかにこの時点でおかしいと言う事でもある。
「其、聖杯の知識故である程度の事は分かり申すが、それでも全てではございませぬ。佐助や他の方々のお力添えもあって、大体のところも分かり始めてきたので」
「そうですね…佐助殿の頭の回転力は驚いてますね。流石は日本の忍と言うところでしょうか?」
「おいおいよしてくれよ代理人さんよ?俺様達忍って言うのは主の命に従うのも当然だが、期待に応えるために色々と思慮深くならないと大変なもんよー?」
戦国時代における忍の情報力と言うのは、非常に高い方でもある。現代における電子情報も確かに便利であるが、それが全てではないほうだ。万が一連絡取りづらい環境下にあった場合、そう言うのは確実に持っていけるほうに分がある。
そういう意味では、佐助のような忍が情報源の源でもある。
幸村も大体のところは佐助の情報を宛にしているので、パソコンやインターネットと言う分類は一切手をつけてないほうだ。
「…事情は分かりました。となると、今後の課題点としては2つ。「赤のマスターの情報・大聖杯における異変調査」…こちらを対応する事にしましょう。と言え、休戦は現状無理なので悪しからず」
「それに、其方が得てきた情報通りならば我々は次の準備に取り掛かる必要もある。"黒"のセイバーが動けないのならば、不和が生じている黒の陣営に仕掛ける必要もあるのでの?」
セミラミスの言うとおり、黒の陣営が動けない状態であるならば、真っ先に動けるこちら側に分があると言う。
そしてその移動系統や戦闘準備も調整さえ整えればいつでも出来ると言う。
「承知致した。課題あれどこの幸村…次なる戦場に向けて支度させていただき申す」
「ええ、ランサー。あなたの戦働きを期待しています。佐助殿、ランサーをお願いします」
「はいはい、言われるまでも無いってね。その分給料アップ頼むよー?」
会談が終わりを告げ、幸村とシロウ神父は立ち上がり、幸村は一度教会から立ち去って行った。佐助はそのまま幸村の元に同行することにした。
「…佐助、この後でも構わぬ。一つそなたに頼みたい事がある」
「お、仕事の依頼ってか?俺様は別に構わないけどな。今後自由に動けるってところも限られてくるだろうし」
二人は無言のまま出城がある所にたどり着き、そこで幸村から発したのは一つの仕事依頼であった。
「うむ、それは…」
「やれマスター、良くそのような話題を振りかけたものだな?」
「おや、流石に分かっていましたか。と言え、嘘偽りなく言ったまでですが」
幸村と佐助がいなくなってしばらく経った教会。会談を終えた後にも関わらずシロウ神父は疲れた様子を出していなかった。
服の埃を取り払いながら、シロウ神父は話し始める。
「佐助殿も確かにそうですが、幸村殿は信義に厚い方…言葉の発し方で嘘を言ってしまっては元の子もありません。別に詐欺と言う事でもありません」
「くくっ…お主らしい言葉よな。だが一手でも間違えればあの忍が確実に目をつけてくると思ったがの」
「最悪それでも構いません。佐助殿の手腕を考えれば疑われてもおかしくありません」
あの会談、佐助はじっとシロウ神父を見ていた。嘘偽りがないのかの表情に言葉の発音…などなどをずっと探っていたのである。
だがそれすらも乗り越えたと言う…とてもではないが尋常ではない。
忍の観察力は下手な裁判官よりも鋭い方である。いや嘘を回避する事はほぼ不可能に近い。
「…話はここまでにします。アサシン、明日までに起動準備を済ませましょう」
「ようやくか。ならば手筈通りこちらも調整段階に入るとしよう」
そう言いセミラミスは霊体化しこの場を去って行った。シロウ神父は主への祈りを始めていた。
「(幸村殿が疑似サーヴァントを呼べるほどの宝具があるならば…大聖杯を経由して戦力の調整もあるいは)」
時間は夕方となり、昨日の話題のタネとなっていたミレニア城塞。その豪勢な一室に未だ眠っている伊達政宗の姿が見られる。
傍らには正座をしている片倉小十郎と、そのマスターであるカウレスの姿があった。カウレスは胡坐をかきながらその様子を見ていた。
「政宗様、これよりこの小十郎出陣のほうに入ります。不在中はトゥール達が対応いたします故」
小十郎は意識が戻らない政宗に報告をし、立ち上がり一礼をしながら退出する。カウレスも後に続きながら離れる。
「報告もしっかりする…ほんとまあ、ウチのバーサーカーは礼儀正しいと言うか。姉ちゃんも確かにしっかりしてるけど」
「当たり前だ。家臣として忠節をつくすまでだ。カウレス、てめえも今後の為と思ってしっかり学んでおけ。人間関係って言うのはこう言う事もしっかりしておく事だ」
歩きながら移動する二人。どうやらこれからすぐ移動とのことである。なんでも、ここしばらくルーマニア周辺を騒がせている殺人事件が勃発しているとのこと。
恐らくであるが、それは未だ合流出来てない"黒"のアサシンの仕業ではないかと考えている。どうやら魔力の痕跡やらが若干残されていたので、その説が強いとされている。
「ったく、"黒"の足並みが揃ってねえこの状況下で襲われれば最悪の事態だな…これが終わったら直ぐにでも軍議を開く必要があるな」
「軍議か…確かに、セイバーの離脱にゴルドのおっさんは実質脱落者扱い。ライダーにセレニケはあの通りだし、どうにもな感じか」
カウレスもどうやら少し"黒"の動きがよくない事が痛いほどわかっていた模様。魔術師らしい部分が多いこの陣営でまともに動けているのは"黒"のアーチャーとランサー、バーサーカーしかいない。他はほとんど自由活動が多すぎる。
政宗が動けないこの状態で"赤"が本格的に襲いにかかれば壊滅の騒ぎに済まされない。下手をすれば一夜で壊滅する事も少なからずあるほうだ。
ましてやこの聖杯大戦、一流のサーヴァントによる大集結だ。何が起こるか分からないのが戦場と言うものだ。
「危惧の部分は幾つかあるが…それはこれを終えた後にする。行くぞカウレス、ケイローン殿とフィオレ嬢ちゃんが先に待っている筈だ」
「分かってる。俺も少しでも姉ちゃんのサポートに徹しないとな」
そのまま目的地へと歩き始める二人。その中で小十郎は過去の戦の事を振り返っていた
「(今の状況…まるで当時の関ヶ原に似ている。東軍に西軍とどちらも一枚岩ではなかった、不和の連鎖が続く事もしばしばあったほうだ。どうやらこの聖杯大戦…下手をすれば第2の関ヶ原の戦になりかねえ)」
当時、戦国時代における日の元を中心に起こった大戦『関ヶ原の戦い』を思い出す小十郎。東軍として参加した奥州伊達軍であったが、その東軍内で問題点が幾つかあったほうだ。
だが寧ろ敵対勢力であった西軍のほうが寧ろ問題点の数多くのあり様。大将である石田三成の采配無さの影響もあったが、勝手な判断等もあり対応の遅れに連携が取れず、裏切りが相次ぐ形になってしまった。
それはまるで、今回の聖杯大戦とまるっきり似ている方であった。赤と黒…どちらも対して変わらないほうだ。
「(…あり得ねえ事じゃねえ、俺が抱えてる最悪の訪れだけは避けたいところだ。だが、もし何があっても政宗様だけは何があっても守り通さなければならない)」
小十郎は決意を抱きながら、目の前の戦いの舞台に足を踏み入れることにした。
果たしてこの戦いが、小十郎が警戒している最大の恐れとなる第2次関ヶ原の戦いになるのか否か…それは大戦に参加している者しか分からない答えであった。
--to be continued--
聖杯大戦って、私なりに思ったんですが、戦国時代筆頭ならば関ヶ原の戦いに何か似てるような気がするんですよね。作中でも語ってる要素がふんだんにあると思いますが
そんな中で駆け引きというのは非常に大事になりますよね
感想に評価とお待ちしております