カオスクロススクールD×H 変人紳士な青龍帝 英雄王とアーサー王に育てられし元ニート物語 作:zeke
「ふ~、痛たかった。なあ、マイシスターよ。何もルークの力を使わなくてもよかったんじゃねえのか?」
あの後、ギガントジャンボパフェをおごらされて財布がすっからかんに成った一誠。
白音に捕まれた腕は別荘に帰宅と同時に解放されて晴れて自由の身と成り先程、血液が順調に循環し始めた。
「兄様、文句があるならアーシアさんの同居させる説得に協力しませんよ」
先程、ギガントジャンボパフェを奢らされていた時、一誠は白音にアーシアの保護という名目でこの世で一番の安全地帯である兵藤家に住まわせようと思っていたので白音に家族の説得に協力を要請したのだ。
無論、白音は内心快くも思わなかったが渋々承諾して今に至る。
この世で一番の安全地帯である兵藤家。
ローランド最強の魔術師と称されたライナ・リュート。剣の名門フェリス家出身フェリス・エリス。あらゆるパラレルワールドの自分と知識を共有する白蘭。英雄王ギルガメッシュ。騎士王アーサー王。元最強の女王グレイフィア・ルキフグス。一誠のペット三匹の龍であるナルガクルガ、イビルジョー、ティガレックス。そして、仙術を修得した黒歌。世界最強にして神に等しき悪魔 兵藤一誠。不幸運スキルがついていると思う万能執事ハヤテ。ハヤテの師匠にして彼女の天皇州アテネ。キュートさが売りの白音。魔王の息子カイゼルーデ・エンペラーナ・ベルゼバブ4世 通称ベル坊。ベル坊の侍女悪魔である剣の腕が強いヒルダ。総勢12名+ペット3匹+赤子1人
彼らの家に殴り込みに行く猛者は、早々いまい。
居るとしたら余程の馬鹿か、もしくは命知らずであろう。
危険度で言うなら無数にいるピラニアやメガロドンの群れの中に血の匂いをプンプンさせて生き残る確率の方が5000万倍以上高い程の隠れ一大勢力。堕天使、天使、悪魔の3大勢力が手を取り合い兵藤家と戦争をして生き残れる確率ほぼゼロのこの隠れ一大勢力を相手にし殴り込みをかける馬鹿は居ないであろう。居たら殉職で二階級特進どころか元帥にまで上り詰めれるだろう。
その位の隠れ勢力の中にアーシアを保護しようというのだ。さわらぬ神に祟り無しではなく、さわらぬ兵藤に祟り無しである。
「お願いだ、可愛い妹よ。お兄ちゃんを困らせないでくれ」
最早口説き文句で白音の耳元で囁き頭を撫でる一誠。
そんな一誠に白音は
「……にゃあ。解りました」
堕ちた。一瞬で堕ちた。
普段は隠している猫耳を出して猫又特有の尻尾を出し一誠の右手に巻きつけ官能的な声をだし潤んだ瞳で一誠を見つめる。普通の人なら萌え死ぬ様な可愛さを醸し出す。
はたから見たらバカップルである。
リビングでそんな事をしていると
「う~ん、此処は何処なのでしょう?」
寝ぼけ眼で寝かされていたソファーから体をあげ眼を擦る金髪シスターのアーシア・アルジェント。
そんなアーシアに一誠は近づくと
「おはよう、シスターアーシア」
「あ、おはようございます一誠さん」
「君は今非常に悪魔にとって拙い立ち位置らしい」
「……はい」
アーシアは一誠の言葉に顔を曇らせる。
改めて自身の立ち位置の危うさに気が付かされ覚悟を決めようとすると
「なんで、面倒臭い事に成りそうだったから主に眷属悪魔から外すよう進言してきた。半分喧嘩別れに成っちまったけどな」
ポリポリと自信の頬をかきながら言う一誠。
そんな一誠の言葉を聞きアーシアは驚きの声をあげる。
「え!?」
仕方のない事だ。何せ自分を助ける為にはぐれ悪魔に成ったのだ。驚かずにはいられなかった。
「な、何でですか!?」
「何でって……そりゃあ、俺の信念だから。信念を捨てるなんて事俺には出来ねえし。な~に、心配すんな。ここは比較的安全な安全地帯だからよ。アーシアが危険に晒される事なんて何もねえよ」
比較的ではなく世界一の安全地帯かつ、敵から見たらSSS級の危険地帯と言うのを補足しておこう。喧嘩を売れば最早死ぬか自殺をするかのどちらか。一誠を怒らせれば神様だろうが魔王だろうが身分関係なく死すら生ぬるい、まさにこの世の地獄をフルコースで味わう事に成るのだ。
「え~と、一誠さん。ご自身の心配は?」
「気にすんな。相手が神様だろうが魔王だろうが向かってくるならぶっ飛ばしてやんよ」
一誠の黒歴史を掘り起こすなら過去に天使長ミカエルを聖書でぶん殴り聖書の新しい使い道を編み出し、魔王を土下座させた。そして、堕天使総督であるアザゼルを間接的に痛い目に合わせた。アザゼルの件は自業自得ともいえるのだが。
そんなやんちゃな幼少期を過ごした一誠。ごく普通にある、やんちゃな幼年期を少しやんちゃすぎただけであり、一誠にとって思い出したくない黒歴史と成っている。
まあ、全部結果的に人助けをしたのだが本人曰くキャラじゃ無いとの事で黒歴史扱い。本人はルルーシュみたくクールなキャラを目指しているらしいが、キレるとスザクの様な熱血キャラに変貌するため本人の自覚していない所で日々黒歴史が増えていたりする。
「え、え!?」
「NO,problemって事だからよ。気にすんな」
「え、でも」
「気 に す る な」
「……はい」
アーシアは一誠に強く言われこれ以上何も聞かない事にした。
「まあ、そんなこんなで君にはここで生活して貰う事に成るよ」
「良いんですか?」
「問題ナッシ~ングさ♪」
アーシアと話をしていると一誠が着ている服の袖を突然引っ張られ、一誠がその元凶を見ると猫耳と尻尾を収めた妹の白音が服を引っ張っていた。
「……兄様、問題有りです」
「ん~?何が?」
「服や下着がありません」
「あっ」
「……何も考えてませんでしたね」
あきれた声で話す白音に一誠は
「ごめんなさい」
素直に頭を下げた。
「……アーシアさんは明日私と共に服や下着を買いに行きましょう」
「あ、はい」
「それじゃあ、一先ず白音アーシアの下着をコンビニかどっかで買ってきてやってくれ」
「…はい」
白音はそう言うと一誠から財布を受け取りリビングを出て行った。
「ハ~ア」
大きな欠伸を一つすると一誠は先ほど白音が座っていたソファーに寝転がる。
「え~と~、一誠さん?私はどうしたら良いでしょうか?」
おどおどした様子で尋ねるアーシアに一誠は視線だけを向けると
「あ~、適当にくつろいでて」
それだけ言うと目を閉じた。
そして5秒もしないうちに鼻提灯を出して居眠りをし始める。
「は、はい」
アーシアはそんな一誠を見て言われた通り傍にあった椅子に座って白音が帰ってくるまでくつろぐのだった。
「……兄様。兄様、起きて下さい」
一誠がソファーで寝ていると買い物から帰ってきた白音に体を揺すられて起こされる。
「んあ?白音か……お休み~」
一瞬起きたがまた寝始めようとする一誠。
しかも、起こした白音の手を取るとソファーに引きずり込むように抱き寄せる。無論、これは一誠の無意識にやっている事なので本人は特に気にしない。言うなれば抱き枕を抱いて寝るような感じであり、白音と一緒に寝たいからととか一ミクロも思ってなかったりする。
しかし、当の本人である白音は兄である一誠に思いを募らせているわけであり、一誠みたいに気にしない訳でもない。
顔を赤く染まらせ頭から蒸気をだし思考停止と成る。
「にゃあ!」
そんな中、ただ驚きの声を出せただけだった。
「はううう!一誠さんが!!」
アーシアは、と言うと顔を赤くさせ白音と同じく思考停止と成っていた。
そんなリビングの扉が開かれ
「ただいまにゃ~」
白音の実の姉黒歌が帰ってきた。
黒歌はソファー寝ている一誠と顔を赤くさせ思考停止している白音を見ると
「何とも羨ましけしからん光景にゃ!」
驚いて手に持っていた学生鞄を床のフローリングに落とした。
眼を大きく開き、普段隠している猫耳と尻尾を無意識に出して尻尾をピンと逆立てる。
そして、走って一誠の傍まで行くと一誠が抱き寄せている白音を押しのけ一誠に抱きつくようにソファーへとダイブする。
あまりの事に白音はソファーから地面に頭から落ちてたんこぶを作り、一方の押しのけた黒歌は一誠に抱きつき頬をこすりつけて甘えていた。
「にゃあ~♪」
ソファーから姉に押しのけられ頭にたんこぶを作った白音は床から立ち上がるとわなわなと体を震わせていた。
「………」
無言で寝ている一誠に甘えている姉の黒歌に近づき怒りで体を震わせたまま無言で黒歌を睨みつける。
「んにゃ?どうしたのかにゃ白音」
自信を睨みつけてくる妹にやっと気付く黒歌。
アーシアはこの時、白々しいと思った。
「……姉さま、ご自分が何をしたか解らないんですか?」
怒りで声をにじむ白音。そんな白音に尋ねられた黒歌は
「ん~?何かしたかにゃ?」
顔を傾け不思議そうな顔をする。
「………!」
白音の堪忍袋の緒が切れついに姉の黒歌に飛びかかる。
猫の喧嘩のように姉に飛び掛かる白音。黒歌は突然のことに驚き対応に遅れてしまった。
姉妹喧嘩は一誠が寝ているソファーで行われた為、勿の論で一誠も巻き添えをくらってしまう。
白音の拳が一誠の腹にあたり、黒歌に顔を踏みつけられる一誠。
ある人達ならばご褒美として狂喜乱舞するのだろうが一誠にその様な性癖はなく、攻撃を受けたら起きるのが普通。一誠は普通なので飛び起きた。
一誠が目を開けると目の前には妹の白音と黒歌の姉妹喧嘩が勃発中。
アーシアはどうして良いのか解らずあたふたと慌てふためいている。
「はあ~」と長い溜息を一つ吐くとソファーから身体を起こして喧嘩をしている妹の白音と黒歌の仲裁に入る。
「こら!何をしてるんだ!!」
まるで子供を叱りつけるように妹達に叱る一誠。
アーシアはこの時一誠を子供を叱る父親の様なビジョンを見た。
無論、アーシアがそんなビジョンをみるのも無理は無い。一誠は魔王の子であるベル坊の曲がりなりにも父親。父である以上子供を叱りつけるのは親の役目。時折ベル坊を叱りつけているのだ。
一誠の声でビクリと体がビクつく猫姉妹。
「だって!」
「…姉さまが!」
二人そろってお互いを喧嘩の所為にする猫姉妹。
「……」
一誠の怒りのボルテージはあーだこーだと言い合う二人で右肩上がり。
「ええい!二人してそこになおれ!正座だ せ い ざ!!!」
リビングの床を指さしながら言う一誠。鋭く眼光は光り、その眼光は有無を言わさぬ気迫を纏っていた。
そんな一誠の気迫に二人は負けて素直にリビングに正座する二人。
一誠は二人の前にある寝ていたソファーに腰を下ろし口を開いた。
「んで、喧嘩の理由はなんだ?まずは白音から」
「……はい。姉さまが兄様に抱きつかれた私を妬み私をソファーから突き落としたのが原因です」
「んにゃ!?私が原因だと言いたいのかにゃ!?私は白音が襲ってきたから迎え撃っただけにゃ!」
「!…姉さまが先に私をソファーから突き落としたのが原因です!」
「んにゃ!?白音が先に暴力を振るうから応戦しただけにゃ!白音が悪いにゃ!!」
再び目の前で喧嘩が勃発しようとする状況で一誠は額に青筋を浮かべていた。
そして、手をパンパンと思いっきり叩くと喧嘩を諌める。
「兎に角!喧嘩の原因は黒歌にあると見た!!黒歌弁論の余地があれば申せ」
「……私は悪くないにゃ!白音が悪いんだにゃ!!」
「……」
黒歌の発言に頭を抱え無言と成る一誠。
そして、ソファーから立ち上がり黒歌の前に立つとしゃがみ込み黒歌を正面から抱き耳元で囁く。
「黒歌、お願いだ。謝ってくれないか?」
一誠は黒歌の耳元で囁いたため当然一誠の息が黒歌の耳に僅かながらかかる。
「ふにゃ~。分かった分かったから耳に息を吹きかけるのはやめてにゃ!」
顔を真っ赤にして言う黒歌。
一誠はクックックと笑いながら言う。
「クック、OK。黒歌の理解が早くてお兄ちゃん助かるよ」
我ながらキザだなと思う一誠。
黒歌は白音の方向を向くと謝罪する。
「ごめんにゃ、白音」
「……いえ、私の方こそすみませんでした」
お互いに謝る妹達を見て一誠はうんうんと頷く。
アーシアはその光景を見て凄いと言葉を漏らし感嘆する。
一誠はソファーから立ち上がると2、3歩歩き妹たちの背後に立つと右手を前方に伸ばす。
一誠の右手をかざした前方にピンク色の扉が現れた。
「んじゃあ、黒歌と白音。帰んぞ。アーシアはちーくとここで待っていてくれ」
「あ、はい」
一誠は扉の取っ手を握りまわすと扉は開かれ一誠は扉の中へと入っていく。
白音と黒歌も立ち上がり一誠の後を追うように扉の中に入っていった。
黒歌と白音が扉の中に入っていくと扉は閉まり消失する。まるで蜃気楼のごとく消えたのだ。
「はひい!人が消えちゃいました!!」
再度驚くアーシア。
暫くすると再びアーシアの前にピンク色の扉が現れ開かれる。
中から一誠が現れアーシアの方を向くと
「あ、アーシア。君はここで暫く過ごして貰うから」
「あ、あの!一誠さん」
「あん?どったの?」
「お願いです。一緒に寝てください!」
アーシアの声を聴き一誠は思考が停止した。
その時、一誠の頬に剣が突きつけられ背後に女性二人が立っていた。
「ほう!ドブ男、女を連れ込み一緒に寝るなど随分なご身分な事だな」
「そうですね。そこらへんどういう心境なのか教えて頂きたいですね」
一誠の頬に剣を突き付けている金髪のゴスロリ服を着た女性と銀髪のメイドから何か解らないが危険な覇気の様なものが溢れ出てアーシアと一誠は彼女らの背後に般若と虎のビジョンを見た。
「あはは、え~と~、ヒルダさん?グレイフィア?」
「「向こうでO HA NA SIしようか(しましょうか)」」
二人は一誠の腕を掴み一誠を引きずるようにリビングを出て隣の和室へと移動する。
一誠を和室に引きずり込むとグレイフィアは扉をきちんと閉めた。
そして
「ぎゃあああああああ!!!ヒルダ!剣は駄目だ。死ぬ死ぬ!!死なないけど死ぬ!!!」
「ええい!死ね!今すぐ死ね。このドブ男!!」
一誠の悲鳴と共に一誠がいる部屋から騒がしい音が聞こえ始め
「待ってくださいヒルダ!」
グレイフィアがヒルダを制止する声が聞こえる。
「グレイフィア!」
一誠のまるで捨て猫が拾われた時の様な声を上げるがグレイフィアの次の一言で絶望する
「介錯は後です。まずは反論を聞きましょう」
「え!?」
一誠の驚きの声が聞こえる。
それもそうだ。介錯は後と言う事は既に有罪と言う事に他ならない。あったとしても弁論の余地しかなくそれもどこまで効くのか解らない。否、下手をすれば今の状態では無意味だ。
「はあ」
一誠の溜息を最後に暫しの間なにも騒がしい音も聞こえなくなった。
10分、いやもっと時間が掛かったかもしれないし掛からなかったかもしれない。一誠がグレイフィアとヒルダにドナドナされた部屋の扉がゆっくりと開き中から人が一人出てきた。一誠だった。一誠はハアと溜息を一つ吐くとアーシアに向かって「お待たせ」と言いながら手を振る。
「あ、あの~一誠さん?」
「何も言わないで」
アーシアは一誠の雰囲気を感じ取ったのかその後何も言わなかった。
しかし、内心お疲れ様です。とだけ同情の言葉を一誠に向ける。
翌日、兵藤家の別荘で一誠と共に寝たアーシアが眼を覚ますとベッドには一誠が居なかった。
「ほえ?」
寝ぼけ眼で目を擦りながら辺りを見渡すアーシア。だが、周囲に一誠の姿形は無くシーンと家全体が静まり返っている。
「……一誠さん」
やっと頭が働き始めたアーシアに不安が襲う。
一人、自分一人。この家に自分一人。まるで世界に一人ぽつんと残された様な錯覚に陥る。
「一誠さん!」
ベッドから飛び起きるアーシア。
布団が乱れるが気にも留めずアーシアは寝室から出る。寝室は2階にあり、階段を一気に駆け降りて1階に降りると一誠を探す。あらゆる部屋の扉を開け中を確認する。
そして、最後の扉であるリビングの扉の前に行き着いた。ここを開けて居なければ一誠はこの家には居ない事に成る。
居なかったらどうしよう。不安がアーシアの脳裏を過ぎる。
不安を振りほどくかのように頭を左右に振り決心を固めるとアーシアは扉の取っ手に手をかけ扉を開こうとする。
「ぎゃああああああああ!!!」
扉を開こうとした直後、扉の向こうから一誠の悲鳴が聞こえ中からバリバリと電撃のような音が聞こえる。
「一誠さん!?」
驚いたアーシアは扉の取っ手を掴み勢い良く扉を開くと異様な光景を眼にした。
まず一誠が床にうつ伏せで倒れ、プスプスと煙を体から発するとともに焦げ臭い匂いを発生させていた。
そして、一斉の足元付近にピンク色の半開きとなった扉があり、中で何故か裸の赤ん坊が座っていた。
赤ん坊は涙目で若干目元に涙を溜めていたが先ほど泣き止んだのであろうと思われる。
「こへ」
悲鳴か声だか呼吸だか解らない音を発しながら一誠は意識を失った。
アーシアは恐る恐る赤ん坊に近寄ると赤ん坊を抱っこする。
赤ん坊は元気な元気な男の子だった。涙を腕で拭い自身より大きなアーシアを見上げる。
「駄目ですよ、男の子が直ぐに泣いたりては」
「全くだぜ、ベル坊。男がカブト虫位で泣くんじゃねえぞ」
アーシアの背後から声が掛りアーシアがすぐ後ろを振り向くと何時の間にか復活した一誠がいた。まるで最初から何事もなかったかのように体から焦げ臭い匂いもしなければ煙も出ていない。
「え~と~、一誠さん?」
「おう!おはよー、アーシア」
「おはよう御座います。一誠さん。それで、そのー「あ~、心配すんな言いたい事は解る」え~と~」
一誠はアーシアの腕から裸の赤ん坊 ベル坊を抱っこするとピンク色の扉の中に入って行った。
「ギル~、ギル~」
「何だ一誠?」
「ベル坊を暫くお願い。白音と一緒に昨日話したアーシアの生活用品を買いに行くから」
「ふっ、王に頼み込むとは、とんだ戯けよな」
「ん~、でも、ベルもギルと一緒にいると楽しそうだよー」
「良かろう。しかしだな、一誠。子は親といる時が、一緒の方が一番良いのだ。出来るだけ早く帰って来てやるが良い」
「了解」
等とピンク色の扉の向こうから声が聞こえ、声が止んで暫くすると一誠がピンク色の扉から白音と一緒に出て来た。
「んじゃあ、行こうか」
一誠は白音とアーシアと共にショッピングモールへと向かうのだった。
「ん~、買いすぎじゃね?」
ショッピングモールでアーシアの下着やら服やらを購入した一誠達。無論、アーシアの下着を選ぶ時は白音に任せて一誠は店の外で待機。まあ、女子というのは何だかんだで男と違ってお洒落をするもの。必需品も多くなり、お金も男と違ってかなり掛る。無論、お金は一誠持ち。兵藤家の経済力で下手をすればショッピングモールごと買えるので昨日白音にギガントジャンボパフェなる物を奢らされて財布がすっからかんに成っていたとしても超便利、カードでお金を引き出せる魔法のボックスをすればお財布の中身もすぐ回復するのでアーシアの服の代金を一誠が全部負担しても問題ない。問題ないのだが、荷物の量。荷物の量が問題なのだ。
母親の荷物持ちや彼女の荷物を持たされた事がある人なら解るかもしれないが、女と云うのは金を湯水のごとく使う。まあ、ここら辺は兵藤家の財力で問題無いのだが買った荷物を持って帰る時の量が大抵半端ない位凄い量と成る。一誠が両手に買い物袋をそれぞれ6つ持ち、肩には一誠の身の丈を3回り以上も大きなリュックサックを背負っており、某社が毎週水曜日に出すサンデーに掲載されている漫画 史上最強の弟子 〇ンイチを連想させる。
一誠達は一誠が堕天使レイナーレによって殺された公園に入ると公園内の噴水近くのベンチに一誠は荷物を全部おろし、背伸びをしながら言う。
「……兄様、女の子は必需品が多いんです」
そんな事を呟く白音は何も持っておらずケロッとしている。まあ、それもそうだ。今まで何も荷物を持っていなかったのだからこれで疲れるはずがない。
「すみません」
当の本人であるアーシアは申し訳なさそうに頭を下げる。
「……ふふ、私は今とても幸せです」
アーシアはそう呟き幸せそうに微笑む。だが、その眼から一筋の涙が流れた。
そして、彼女から語られた「聖女」と祭られ「魔女」と呼ばれるようになった一人の少女の物語を一誠と白音は聞く事と成った。
欧州のとある地方で生まれた少女はすぐに両親から捨てられ教会兼孤児院のシスターと他の孤児と共に育てられた。八つの頃少女の身に不思議な力が宿り、偶然負傷した子犬の怪我をその力で治療した所をカトリック教会の関係者に見られ少女の人生は大きく変わった。
カトリック教会の本部に連れていかれた少女は「聖女」として担ぎ出された。
来る日も来る日も少女は教会を訪れる怪我人や病人をその不思議な力で治療した。
友達など居なかったが教会の人達に良くして貰い寂しいとは思わなかった。
ある時、教会の前に一人の男性が倒れていた。
その男は異形の者だった。背中に蝙蝠のような黒い羽根を生やしていたのだ。
されど心優しい少女は怪我をしているのなら治さなくちゃいけない。
少女の優しさが悪魔を治療させた。
しかし、その様子を見た教会の関係者が内部に報告。
内部の司祭はその事実に驚愕した。
「悪魔を治療するだと!」
「ありえない!」
「治療の力は神の加護を受けた者にしか効果を及ぼせない筈だ!」
治癒の力を持つ者は世界各地に居た。
しかし、悪魔を治療する力は規格外だった。治癒の力は悪魔と堕天使には効果が無いと言うのが教会内の常識だった。
神の加護を受けない悪魔と堕天使を治療できる力。しかし、その力を持つ少女は「聖女」とは反対に「魔女」と呼ばれ恐れられ掌を返されるかのようにカトリックから捨てられた。
行き場の無くなった少女は極東にある「はぐれ悪魔祓い」の組織。
間違っても少女は神への祈りと感謝を忘れた事は無かった。
しかし、神は少女を見捨てた。
少女が一番ショックだったのが教会で自分を庇ってくれる人が一人も居なかった事だ。
アーシアが話終りシーンと静まり返る現状。
一誠と白音はアーシアが話した少女がアーシア自身だと言う事に気が付く。
「っ!!!ああ、暑いから飲み物買って来る!!」
一誠は気まずく成ったのか乱暴に吐き捨てるように言うとその場から逃げるように走って居なくなった。
ここで一誠がキレなかったのは教会側にとって不幸中の幸いかもしれない。キレれば確実に神だろうが魔王だろうが後悔する事に成るのだ。下手をしたら神話体系ごと蹂躙され一日で消滅する事もあり得る。一誠はそれだけの力を持っているのだ。
「……へたれ」
途中、妹の容赦のない言葉が一誠の胸に突き刺さり一誠の眼から汗が勝手にあふれ出た。
「見つけたわよ、アーシア!」
一誠が居なくなった公園の噴水の近くで休んで居た白音とアーシアの頭上から声がし、アーシアと白音は直ぐに頭上を見上げると黒い一対の羽根を広げた一誠を殺した張本人女堕天使レイナーレが空中に居た。
「見つけたんすか、レイナーレ様」
否、レイナーレだけでは無く複数の堕天使に白音とアーシアは囲まれていた。
「ええ、ミッテルト。どうやら悪魔と一緒の様だけれども問題ないわ」
レイナーレに声をかけたミッテルトと言われた堕天使もまた一対の黒い羽根を広げ空中に浮いておりツインテールの金髪に青い瞳のツリ目の少女で、ゴスロリ風の衣装を身にまとっている。
ミッテルトは白音の方を見ると「ゲッ!」と呟き心底嫌そうな顔をする。
「まじで~、悪魔と一緒とか最悪~」
「レイナーレ様、そろそろお時間です」
胸元が大きく開いた黒のボディコンスーツを身に纏った女堕天使が自身の腕時計をレイナーレに見せながら言う。
「ええ、そうね。ありがとうカラワーナ」
レイナーレは黒い翼を羽ばたかせながらアーシアの前に舞い降りる。
「…アーシアさん、さがって下さい」
白音がアーシアの前に手を出しながらアーシアの前に立ちアーシアをさがらせる。
(拙いですね。堕天使が三人。一人だと倒せそうですがアーシアさんを守りながらだとかなりキツイかも)
かなりまずい状況に追い込まれた事に冷や汗を流す。
「アーシア、戻ってきなさい。あなたの力がどうしても必要なのよ」
一歩前に出ながら説得をするレイナーレ。
「……」
(それで、一誠さんや白音さんに迷惑が掛らないなら…)
そう思い一歩前に出ようとするアーシアに白音がきっぱりと言う。
「……あの堕天使の目的はアーシアさんの神器です。アーシアさんはあそこに戻りたいのですか?」
白音の声でアーシアは昨日の事を思い出してしまう。殺された男性が逆磔にされた哀れな亡骸を。
「…もう、人を殺す所に帰るのは嫌です」
「アーシア!」
「ならば力ずくで持って帰らねば成るまいて。なあ、レイナーレ様」
レイナーレの声を遮っての男の声。白音は背後を振り向くと男の堕天使が光の槍を持っていた。槍の剣先は白音の首を向いており、何時でも白音を刺せる距離だった。
(しまった!)
白音は硬直する。人質となった現状に歯がゆさを覚える。
「さあ、行きましょうアーシア」
レイナーレはそう言うとアーシアを抱き黒い堕天使の翼を広げる。
空中で待機していたカラワーナとミッテルトはもう居ない。おそらく先に帰ったのだろう。
今現状居るのは白音に光の槍を突き付けている男堕天使ドーナシークとアーシアを抱きかかえている女堕天使レイナーレ。翼を広げアーシアを連れて行こうとするレイナーレ。
「アーシア!!」
そこへ一誠が帰ってきた。
「一誠さん!?」
一誠の姿を見て声を上げるアーシア。
その表情は驚きとも喜びとも捉える事の出来る表情だった。
「へえ、まだ悪魔に転生してしぶとく生きていたんだ~最悪」
「……レイナーレ」
一誠はレイナーレの言葉に違和感を覚えた。まるで役者がかった声。否、普通に聞いていれば勘違いだと思うような声だが一誠の直感に何かが違うと語りかけている。
「あ!貴様!!」
ドーナシークは一誠の方を見ると憤怒の表情となる。白音に突き付けていた光の槍を一誠に向け投げようとするが、レイナーレがそれを制止する。
「止めなさいドーナシーク。それよりも計画を無事に遂行しなければ成らないわ」
レイナーレに言われドーナシークは槍をしまうと黒い翼をはばたかせる。
レイナーレもアーシアを抱いたまま黒い翼を羽ばたかせ空中に浮上すると一誠に向けて言う。
「止めたければ山奥にある廃教会に来なさい!悪魔祓いと私の部下たちが全員で相手に成ってあげるわ!」
レイナーレはそう言うと黒い翼を羽ばたかせ黒い羽根を落としながら空高く飛んで消えて行った。
「………誘っているのか。否、もしかして……」
(計画とやらをぶち壊して欲しいのか?)
そう考えるならばレイナーレの行動に説明がつく。自身がいる居場所を伝える無駄な行動。自信過剰とも捉える事も出来る行動だが、それでもリスクと成る行動は普通避けるだろう。
しかし、レイナーレはリスクを避けずに自身の居る場所を目的地を教えた。
「ブラフか。それともSOSか解んねえが、
一誠はそう言うとポケットから携帯電話を取り出すととある所に電話を掛ける。
『はい、もしもし』
『古市、アランドロンを貸せ』
低くくぐもった声で言う一誠に古市はただ事では無いと長年の経験から感じ取り
『了解』
とだけ返す。
『俺の家に寄越せ』
それだけ言うと一誠は通話を一方的に切った。
「上等だぜクソッタレ!」
一誠の大きな声が公園内に反響する。
「……兄様。すいません」
普段隠している猫耳をしおらせて申し訳なさそうに謝る白音に一誠は
「まあ、多対一なんて経験なかったんだからしゃあないけど……でも、罰だ」
「……はい」
「アーシアの荷物を持って先に帰ってろ」
「…兄様は…」
「俺はやられたんだからやり返さなきゃな」
一誠はそう言うと無から有を創る力で何処でもドアを創ると取っ手を回し扉を開けて中に入る。白音もベンチに置いていたアーシアの荷物を持つと一誠の後を追うように何処でもドアの中に入っていった。白音が入り終わると何処でもドアの扉が閉まり、ピンク色の扉は消えて行った。