カオスクロススクールD×H 変人紳士な青龍帝 英雄王とアーサー王に育てられし元ニート物語   作:zeke

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第三十変人:蛙とチキンボーイと宣戦布告

リアス・グレモリーの話をドロンしたその日の夜、一誠は夜の散歩をしていた。

 

「星が綺麗だな~」

 

 夜空を見上げ耳にはウォークマンに繋いだスピーカー型のイヤホンが掛けられ、手にはコンビニで購入した炭酸飲料とじゃがりこ。それに封をきり、半分にされたパピコが入ったビニール袋をぶら下げ、さながらちょっと買い物ついでに夜の散歩と言った感じである。

 さらに、口には煙草……では、無くパピコを咥えておりパピコの底を握り中身を押し出しながら容器から出てくるコーヒー味のアイスを堪能している。

 

 丁度交差点に差し掛かり、赤信号なので車が走ってはいないが律儀に待つ。

 反対側の歩道を見ると何か黒い物体が落ちている。反対側の歩道には街灯はあるが電球が切れているのか明かりは灯っておらず暗い。

 

「何だ、あれ?」

 

 不思議に思い青信号に成って横断歩道を渡り反対側の歩道に落ちている黒い物体の傍まで行くと驚いた。

 

「こ、これは!?」

 

 思わず咥えていたパピコを落としそうになるほど驚いた。

 

 緑色の肌。丸い大きな目で、子供の様に小さな体格。黄色い帽子を思わせる頭部に額には☆が描かれている。国民的人気キャラ ケロロ軍曹だ。

 

 可愛いものには目がない一誠。

 

「持ち帰っていいかな?」

 

 ドザエモン状態のケロロ軍曹を助けると言う選択肢を捨てて最早持ち帰りと言う選択肢を取っている。

 落ちている木の棒を拾うと、しゃがんでつんつんとケロロ軍曹を小突く。

 

「お~い、生きてっか~?」

 

 一誠に小突かれピクリとだけ痙攣するかのように体を動かすケロロ軍曹だが、すぐに止まった。

 そして、グウウウウウウと腹の鳴る音が聞こえ、

 

「うぐ!お腹がすいたであります」

 

 一誠は持っていたビニール袋の中身から手を付けていないパピコの片方を取り出し切り口を手で引きちぎり、何時でも食べられるようにすると

 

「食うか?」

 

 ケロロ軍曹に渡す。

 

「良いんでありますか!?」

 

 勢いよく顔を上げ、眼を爛々と輝かせ口からは涎を垂らしながら見てくる軍曹に一誠は、

 

「お、おう」

 

と若干引き気味ながらも頷く。

 一誠の手からパピコをひったくりの様に取るとそのままパピコを我武者羅に食べ始める。

 

「うんまい。うまいであります!!」

 

 涙を流し、口元を汚しながらも感想を述べるケロロ軍曹。

 一誠は、さらにビニール袋から炭酸飲料を取り出すとケロロ軍曹に渡す。

 

「一先ず炭酸飲料あるけど飲むか❓少しは腹が膨れるだろうから、誤魔化せるぞ」

 

「頂くであります!!」

 

 渡された炭酸飲料の蓋を開け、炭酸飲料を一気飲みし始める。

 

「んで、何であんな所でドザエモンに成ってたんだ?」

 

「ペコポン人に話す事は、ないであります!」

 

 強気で話すケロロ軍曹に一誠は、「ほほう!」と呟き眉をピクリと動かす。

 

「そうかそうか。折角教えてくれたら食料を提供しようと思ったのだが……残念だ」

 

 ハアと溜息を吐き、大袈裟に落胆する一誠。視線はケロロ軍曹の足下に落としているもチラチラとケロロ軍曹を見ている。

 

「それじゃあ、俺はこの不要に成ったじゃがりこでも食べながら帰るとしよう」

 

 立ち上がりその場を離れようとすると、そんな一誠の脚をケロロ軍曹が掴んだ。

 

「待つであります!話すであります!!」

 

 背に腹は代えられなかったのかケロロ軍曹がそう言うと、一誠はケロロ軍曹に聞こえない声で「計画通り」と呟き黒い笑みを浮かべる。

 

「ふ~ん。そう、それじゃあ教えて。何であんな所で行き倒れに成ってたの?」

 

 振り返りながらケロロ軍曹に問う一誠の顔は面白い玩具を見つけた子供の如く、飛びっきりの良い笑顔だ。

 

「実は、吾輩宇宙人であります」

 

「ふむふむ」

 

「驚かないでありますか!?」

 

「だって、地球上でそんな形をした生物に見た事が無いからねえ~」

 

「そ、そうでありますな。吾輩、仲間とはぐれたであります」

 

「仲間とはぐれた?」

 

「そうであります。ペコポン侵略に来たのでありますが来る途中で吾輩が乗っていた船が大きな赤いドラゴンにぶつかり船が故障して吾輩は空中に放り出されたであります。気が付けばこの町の山に不時着し、飲まず食わずで何とか山から下りてきたと言う次第であります!」

 

「フム、成程成程」

 

 腕を組み、相槌を打ちながら愛想よくケロロ軍曹の話を聞くと一誠は、

 

「すまぬが俺はこの世界が気に入っておってな。そう易々と支配されるのは、この世界の支配者として我慢ならない。どうしても侵略し支配すると言うのなら……」

 

 右手に白虎の籠手(ビーステッド・ギア)を発動させ、装着するとケロロ軍曹に向けた。

 瞬時、一誠を中心に風が発生し、ケロロ軍曹は一誠の背後に風で作られた頭部だけの白虎を見た。

 大きな牙に獲物を狙う肉食獣の様な鋭い視線にケロロ軍曹は体が硬直した。

 

 生き物は生まれながらにして感を持って生まれてきている。他者との力量の差を測る感、すなわち直感を持っている。

 戦闘に身を置く武人は民間人に比べてその直感が鋭く、第六感とまで言われたりする。

 ケロロ軍曹もまた軍人。生き残るために自分より強大な敵と遭遇しない様にと感は鋭い方だ。

 だが、目の前の男 兵藤一誠と遭遇してしまった。

 

 感が、第六感が告げていた。

 この者と戦っては成らないと。戦えば負けると敗北すると告げている。

 

「この俺を倒して貰う他あるまい」

 

 覇気を纏った一誠の背中に悪魔の翼と金色の翼が生え、何時でも戦える臨戦態勢と成る。

 突如、ケロロ軍曹に向けた白虎の籠手(ビーステッド・ギア)を下ろし、金色の翼と悪魔の翼をしまい臨戦態勢を解くと脱力した状態で続ける。

 

「だが、俺は争いはあまり好まん。まして、可愛いものが死にゆく運命と成るのは好かん!故に引いてくれると助かるのだが……」

 

 優しい声だった。そして、にこやかな笑顔で提案する。

 

「無論、ただでとは言わん。この俺の支配下に下れば良い。そなたの祖国には、同盟をしたと言う報告をしておけばよかろう。こちらからは、君に永住するだけの土地と食糧を提供しよう。な~に、首輪付き三食+間食つきでの住まいを提供しようと言うのだ。悪い話では無かろう?」

 

 それは最早ペットでは!?というツッコミが喉から出そうになりながらもケロロ軍曹は頷いた。

 

「わ、解ったであります!」

 

 そう悪い話でもなかった。待遇は捕虜として扱われるよりもどちらかと言うならば国賓扱いだ……ペット扱いなのだが。

 しかも上層部には同盟と言う形に持ち越せば、自分より強い目の前の男と戦い敗北した時のリスクと考えればメンツも保てる。

 

「さあ、行こうか!同盟を祝して乾杯だ!!」

 

ケロロ軍曹に手を差し伸べて嬉しそうにする一誠の顔を見てケロロ軍曹は……

 

「はい!行くであります!!」

 

その手を取った。

そして、二人は24時間営業のファミレスへと足を運ぶのだった。

時間は22時近く。

 

そんな夜遅くまで連絡もせずに出歩いた一誠はグレイフィアとセイバーを心配させので説教される事と成り、2時間の説教の間正座をさせられる羽目と成り、脚が死んだ。

しかも、更に一誠を襲う不幸が待っていた。

 

 

別荘に連れて来たケロロ軍曹を見に来た一誠。

別荘の自室に何処でもドアを使用して丁度、何処でもドアを有を無に変える力で何処でもドアを消し終えた時、赤い魔方陣が前方の床に現れた。

見知った赤い魔方陣。

 

「ハア、時間帯的に考えても非常識にも程があるだろ」

 

リアス・グレモリー眷属の魔方陣だ。

パアアアアと赤い魔方陣は更に輝き一人の美女が魔方陣から現れた。

そして、その美女は服をあろう事か一誠の前で脱ぎ始める。

一誠は思わずその光景から背後に向き直り、視線をそらす。

 

「一誠、私を抱きなさい」

 

「断る!!」

 

 突如現れ、服を脱いだ主のリアス・グレモリーの抱けと言う発言に間髪入れずに答える一誠にリアスの顔は険しくなる。

 

「何でなの!?私は、そんなに魅力がないの!?」

 

既に涙目に成るリアスを見て「ハア」と溜息を吐くとすぐ傍の別荘の自室に設置されているベッドから掛け布団を取るとリアスに掛ける。

 

「たわけ!魅力が無いわけでは無い!!()は、それぞれが魅力的だ。優劣など付けられぬ。それぞれに長所短所があるのと同じだ。だがな、俺が抱くとするならば心身ともに支配した女性(ひと)のみだ。その時の、一時の感情で流され抱いたところで後々()を傷付けるだけだからな」

 

 一誠が言い終わると同時にタイミングよく一誠とリアスの間に魔方陣が現れる。

 グレモリー眷属の魔方陣だ。

 そして、その魔方陣から一誠の見知った顔ぶれが現れる。

 

「!!!」

 

 驚きと共に一誠は、冷や汗を流し始める。

 銀色の髪を一つに纏め、同じく銀色の瞳メイド服を着た一誠の従者であるグレイフィアだ。

(やばい!……と思ったがグレイフィアと雰囲気が違う。それに顔も若干違う気がする)

 

 一誠は、現れたメイド服を着た女性をよくよく観察してみればグレイフィアに似ているが全くの別人であることがわかる。

 

「この様な事をして破談に持ち込もうとするのですか?」

 

 グレイフィアに似たメイドは、呆れた声で淡々とリアスに言う。

 それを聞いたリアスは眉を吊り上げ反論し始める。

 

「こうでもしないとお父様もお兄様も私の意見を聞いてくれないでしょう!?」

 

「この様な下賤な者に操を捧げると知れば旦那様もサーゼクス様も悲しまれますよ?」

 

 グレイフィアに似たメイドの声を聞き、ドライグが一誠にだけ聞こえる様に話しかける。

 

 

 

 

『相棒、良いのか?下賤呼ばわりされたぞ?』

 

「ククク」と愉快に笑うドライグに一誠は、目の前の二人に聞こえない様にドライグに答える。

 

《ドライグ。お前、俺と何年一緒に居るんだ?鱗を全部引っぺがされなきゃわからんのか?俺は女にゃ、手を出さない。意思は尊重するから別に俺を何と思おうが構わねえんだよ!!》

 

 一誠は、二人に知られぬままドライグとやり取りをしていると突如、リアスの怒った声を耳にした。

 

「私の貞操は私のものよ!私が認めた者に捧げて何が悪いの!?それに、私の可愛い下僕を下賤呼ばわりする事はやめて頂戴!幾らあなたでも怒るわよ、アリアンナ!」

 

 アリアンナと呼ばれたグレイフィア似のメイド服を着た女性はリアスの服を拾うと掛け布団をのけリアスに上着だけを羽織らせる。

 

その様子を終始、背を向け見ない様にしていた一誠に声が掛かる。

 

「すみませんが、こちらを向いて頂けないでしょうか?」

 

「リアス・グレモリーは、きちんと服を着たのか?」

 

「はい」

 

「そうか」

 

 一誠は、体を180°転身させ、リアス・グレモリーの方に体を向け最後に視線を向けると、服を着たリアス・グレモリーの姿が視線に映った。

 そして、視線をアリアンナと呼ばれるグレイフィア似のメイド服を着た女性へと視線を移すと、アリアンナは自己紹介をし始める。

 

「始めまして。私は、グレモリー家に仕えるアリアンナと申します。以後お見知りおきを」

 

自己紹介をするアリアンナに終始まじまじと見つめる。

 

(いや~、しかし、良く似てるな~。グレイフィアに似ているから最初魔方陣から出てきた時、マジでビビった~。心臓に悪いぜアリアンナさんよぉ)

 

 アリアンナをまじまじと見ていると、その視線にアリアンナが気付いたのか一誠に問う。

 

「何か?」

 

首をかしげ、不思議そうに一誠を見るアリアンナに一誠は答える。

 

「あ~、いや~、身内にあまりにも似てたもんだからびっくりしちゃってよぉ。気を害したなら謝る。すまない」

 

 奇麗にお辞儀する一誠に戸惑うアリアンナ。

 別に彼女は気分を害してたわけでは無く、ただ一誠が自分を何故まじまじと見るのか不思議だっただけなのだ。

 故に謝られる様に気分を害していたわけでは無く、逆に奇麗にお辞儀までされて謝られるとこちらも悪かったような感覚に成ってしまう。

 

「あ、いえ。特に気分を害していたわけではありませんので、お気に為さらないでください。というか、逆にそんなに謝られるとこちらの居心地が悪くなると言いますか……とにかく!頭を上げて下さい!!」

 

 アリアンナに言われてやっと頭を上げる一誠にアリアンナはペースを乱される。

 

「そうですか。いや~、本当に似ているんで何なら今度紹介しましょうか?」

 

「そうですね。そこまで似ているのでしたら気に成りますので宜しければ今度、お会いさせて頂きたいですね~」

 

「そうですか。あ、今度お互いに時間が空きましたら紹介しますので」

 

 そう言いながら一誠はポケットからスマートフォンとメモ用紙とボールペンを取りだすと、スマートフォンを操作し、自分の電話番号とメールアドレスをメモ用紙に書くとメモ用紙をちぎり、アリアンナに渡す。

 

「これ、俺の携帯のメールアドレスと電話番号ですのでご都合が宜しい時が解りましたら連絡ください。お互いにそれぞれ都合と言うものもあるでしょうからお互いの空いた時間にでもお茶でも飲みながらどうですか?俺、結構お茶がおいしくて、お茶に合うケーキを出す店を知ってるんで」

 

「それは、両方とも興味がわきますね~。私も一応メイドですので、美味しいお茶の淹れ方やそれに合うケーキも作ったりしているので。それに、私に似た人とも是非会ってみたくなりました」

 

「ほう!貴女もケーキを作ってらっしゃるのですか?俺の、貴女に似た身内もケーキとかお菓子を作るのが凄く上手で、小さい頃から俺に作ってくれたんですよ~。まあ、そのケーキとかお菓子が絶品で味に五月蠅くなりまして、町で俺を唸らせる絶品グルメとか隠れスポットとかを最近見つけるのに嵌っているんですよ~。今度、紹介する店は俺が自信を持って紹介する店なので、まあ楽しみにしていて下さい」

 

「フフ、それは楽しみにしておくとしましょう」

 

 リアスをそっちのけで二人で話に華を咲かせる一誠を見てリアスは、半眼で口をヘの字に曲げ一誠の頬をつねる。

 

「随分とアリアンナと仲が良さそうじゃない!アリアンナはお兄様、つまり魔王様の妻なのよ?」

 

 リアスの言葉を聞き、一誠は目を丸くするとカラカラと笑い出し、

 

「ハハハ、そうか!魔王様の奥さんか。そりゃあ、失敬。まあ、こんな別嬪さんを嫁にもらえば魔王様もさぞ幸せだろう」

 

 何の恥じらいも無く、ただ率直に思ったことを口に出していた。

 

「フフ、ありがとうございます」

 

 アリアンナもまた満更嬉しそうにする為、蚊帳の外に成ったリアスは不機嫌に成りながらアリアンナに問う。

 

「アリアンナ、あなたが此処に来たのは貴女の意志?家の総意?……それとも、お兄様のご意思かしら?」

 

 アリアンナはゴホンと咳払いをすると先程一誠と話していた楽しそうな顔とは別に、キリッとした顔に成りながら答える。

 

「全部です」

 

 その答えを聞きリアスは嘆息しながら言う。

 

「…そう、そういう事よね。アリアンナ、私の根城へ行きましょう。話はそこで聞くわ。朱乃も同伴で構わないわよね?」

 

「私は別に構いません。上級悪魔たるもの眷属を率いるものですから」

 

 リアスはアリアンナから一誠に視線を移すと一誠のもとに歩み寄り、頬にキスをした。

 

「押しかけてしまってごめんなさい。今日はこれで許して頂戴」

 

 それだけ言うとリアス・グレモリーは魔法陣でアリアンナより先に転移する。

 その後に続こうとアリアンナが魔法陣で移動しようした時、一誠がアリアンナを呼び止めた。

 

「あの、アリアンナさん!」

 

 背後を振り返り、一誠の顔を見ると尋ねる。

 

「まだ何か?」

 

「……俺が言う事では無いとは思うのだが、リアス・グレモリーのケアを頼む。それと、後々で良いので常識的に今の時間帯に人の家に押しかけるのはどうかと思うので常識指導を頼む。流石に常識が欠けたままでは、後々彼女が後悔する事に成ろうからな」

 

「ご迷惑をお掛けしてすみません」

 

 アリアンナはお辞儀をして一誠に謝る。

 

「構わぬ。まあ、彼女にも思う所があったのであろう」

 

 リアス・グレモリーとの先程のやり取りを思い出しながら一誠は答える。

 

「それでは、失礼します」

 

 アリアンナはそれだけ言うと魔方陣を展開して一誠の前から転移した。

 

「……ハア。何か厄介事が起こりそうだな」

 

 誰も居なくなった別荘の自分の部屋を見ながら頭をかきながら呟く一誠。

 

 因みに、ケロロ軍曹は別荘のリビングに設置されているソファーで寝ていた。

 

 

翌日の放課後。

 睡眠不足で目の下に隈ができ、フラフラの状態でオカルト研究部の部室に向かっていた。

 

「あ~、眠い」

 

 一誠が昨日、ケロロ軍曹の寝顔を見た後、本家に戻ったのだがベル坊の夜泣きで一晩中電撃を浴びせられ一睡も出来ずに朝を迎えた。 

 何分、一睡もしていないので授業の内容は理解できずノートを記入するだけと言う結果に成ってしまうほど頭が働いていなかった。

 なので、昨日の件をリアスに問う前に部室に少しでも早くに到着して仮眠でもしようと考えていたのだ。

 部室の扉を開くと誰もいなかった。

 

「お、ラッキー。誰も居ねえ仮眠できるぜ」

 

 部室の奥の部屋に設置されている予備のソファーに寝転がると一誠は瞼を閉じる。

 瞬時、今までの苦労がどっと溢れ出て来たかのように強烈な睡魔に襲われた。

 

「暑い!糞がっ!!!」

 仮眠どころかガッツリ爆睡をしていた一誠だが、突然部屋の温度が急上昇しあまりにも暑いので眼が覚めた。

 オカルト研究部の部室の奥から出てくるなり部屋を見渡すが、その眼は寝起きで充血しており寝不足で不機嫌極まりなかった。

 

 

 部屋の中を見渡すとリアス・グレモリーがソファーに座り、グレイフィア似のメイドアリアンナと姫島朱乃がリアス・グレモリーのそばで待機。木場と妹の白音が丁度部屋に入って来ている状態だ。

 そして、リアス・グレモリーの向かい側に魔法陣から炎と共に人が出て来ている途中だ。

 炎は飛び散り、一誠の私物である漫画やラノベを燃やしているが一誠は気付かずにいた。

 

「………手前が原因か!人が折角気持ちよく寝てたのに」

 

 わなわなと体を震わせ俯く一誠。

 

「暑いんだよ、ボケェェェェェェェ!!!」

 

 だが次の瞬間、充血した目で炎の中から出てくる人物を睨み付けると一誠は、弱芭蕉扇を創るとひと扇ぎして吹き飛ばす。

 炎の中から出てくる人物は突然の不意打ちに対処できずにオカルト研究部の部室に設置されている窓を頭から突き破り、強制的に部室の外に移動させられた。

 ここまでに掛かった時間は5秒ほど。

 炎の中から出て来た人物が男だったと確認すると

 

「男の分際で俺を俺を起こした……殺す!」

 

 一誠の怒りの不機嫌ボルテージはMAXとなっていた。

 炎の中から出てきた人物を吹き飛ばした影響で割れた窓に立ち、悪魔の翼を広げて飛び立とうとする。

 

 ここで一誠が激怒した原因を説明すると一誠は、性別上♂。

 性欲は無いとまではいかないが、普通の男子高校生に比べると小学男子生徒並み。

 無論、性癖はノーマルなので男に抱き付かれたりする事が良い!という訳では無い。

 というか、逆に男に抱き付かれたくは無い。というのが本人の主張。

 誰でも寝不足での寝起きは良くは無いだろう。

 一誠も寝起きは良くない方だ。一誠を起こす時も決まって黒歌やグレイフィア、白音と女子であり、兄の白蘭が起こしに来た時には血祭りに会ったほど。

 本人曰く、男に起こされたくは無いと言うのだ。

 そんな寝不足で不機嫌極まりない一誠が男に起こされたと成れば、相手の血祭りは確定事項。

 最悪死亡。良くて6割殺し程度だ。

 なお、ベル坊や小さい子が一誠を起こした時は、しゃあないな~ですむのだ。

 

 

 

 

 

 悪魔の翼を広げて吹き飛ばした相手に追撃で血祭りにしようとする一誠を見てリアス・グレモリーは冷や汗を流しながら木場に命令する。

 

「祐斗!一誠を止めて!!拘束しても構わないわ!!!」

 

 騎士(ナイト)の力を全力で使い、一誠を背後から羽交い絞めにして拘束する木場。

 だが、一誠の不機嫌ボルテージは木場に抱き付かれた事で更に高くなり、臨界点を突破しようとしていた。

 

「離せ!確実にあいつを仕留めるから大丈夫だ!!何なら顔を見られないように大人しくかつ、確実に仕留める!!」

 

「仕留めちゃ駄目だよ、一誠君!!!」

 

「五月蠅え!!」

 

 一誠が前のめりに成ると一誠を羽交い絞めしていた木場は浮遊感と共に前方へと転がり落ちそうになる。

 一誠は木場の後ろ襟を掴み部室に放り込む。

 

 そして、窓から悪魔の翼を広げて再度飛び立ち、炎の中から出て来た自分の安眠を妨害した人物に鉄槌を下さんと言わんばかりに仕留めようとする一誠を背後から抱きしめる者がいた。

 

「………兄様、落ち着いて下さい」

 

 妹の白音だ。白音に抱きしめられ、怒りの不機嫌ボルテージが急速にクールダウンしつつあった。

 

「ああ、すまない。寝不足でかつ、野郎に起こされたとあって怒りで我を失っていた」

 

背後から抱きしめる妹の白音の頭を撫でると謝罪する。

 

「すまなかった。俺は、寝起きは不機嫌な方でな。昨日、色々あって睡眠不足なのだ」

 

 一誠の謝罪を聞き、自分たちに心当たりのあるリアスとアリアンナは何も言わない。

 本当は、ベル坊の夜泣きで寝不足である事を同じ家に住む妹の白音も何も言わず、リアスと一誠とのやり取りの後、リアスから大まかな事を聞いた姫島朱乃も昨日の事なんだろうな~と理解できているので何も言わない。

 

「一誠君、少しは手加減してよ~」

 

 勘違いも本当の理由も知らない木場はそれだけ言うと学生服を振るいながら立ち上がる。

 

「むしゃくしゃしてやった。反省も後悔もしていない!!」

 

 平然とかつ、威風堂々とした反省していない宣言に皆、あっけにとられた。

 

 ★             ☆           ★

 

 あの後、一誠に学校の裏山まで吹き飛ばされた一誠を不機嫌にさせた張本人、ホスト風の金髪の男が炎の羽を羽ばたかせながら割れた窓から入ってきた。

男は自分が割った窓から入ってくるなり部屋を見渡すとリアス・グレモリーをとらえ口元をにやけさせる。

 

「ふう、人間界は久しぶりだ」

 

 赤いスーツを着崩しているがネクタイはしておらず、胸をあけポケットに手を突っ込み格好つけている。

 

「愛しのリアス。会いに来たぜ」

 

 先程何もなかったかのような振る舞いに一誠以外のリアス眷属は思った。

――こいつ、意外と大物に成るかもしれないと

 

「……お前、スーツの着方も知らねえのか?ネクタイもしてなさそうだし、悪魔ってのは案

外常識知らずが多いのか??」

 

 自分が吹き飛ばした男の前に立つと一誠は首を傾げながら問う。

 

「誰だ、お前?」

 

 男は不機嫌な口調で一誠に尋ねる。

 

「彼は兵藤一誠。私の眷属で兵士(ポーン)よ」

 

 リアスが一誠の代わりに答えるが、一誠はその答えに激しく反応した。

 

「おい!何時、俺がお前を主として認めたんだ!?勝手に下僕にも従者にもするんじゃねえ!!」

 

「今は我慢して頂戴!!」

 

「んで、こいつ誰よ?」

 

一誠の問いかけに男は驚いた。

 

「……おい、リアス。俺の事を下僕に話してないのか?つーか、俺を知らない奴がいるのか?転生者?それにしたってよ」

 

「話す必要が無いから話してないだけよ」

 

「あらら、相変わらず手厳しいねぇ。ハハハ……」

 

 男は眼を引き攣らせながら苦笑いをする。

 そこへ、一誠が追撃を掛ける。

 

「本当、常識が成ってないな~。おたく、人にものを尋ねる時は、まず自分からってママに教わらなかったのか?それに、お前何したんだ?世界が自分中心に回ってると思ってんならお前は阿呆だな。自分が何も功績残してもいないのに自分が全員に認知されていると思ったなら滑稽だわ」

 

「な!?貴様!」

 

 一誠のマシンガントーク&正論説教を言われ激怒する男。

 そこへアリアンナが介入する。

 

「兵藤一誠様」

 

「あん?」

 

「この方はライザー・フェニックス様。純潔の上級悪魔であり、古い家柄を持つご三男であらせられます」

 

 アリアンナの紹介を聞いた一誠は

「なんだ。家か、親の七光りか。つまらん」

と、ばっさり言い捨て嘆息すると興味の無い素振りを見せる。

 

「そして、グレモリー家次期当主の婿殿。リアスお嬢様のご婚約者でもあらせられます」

 

 アリアンナの紹介を聞き、一誠はリアスとアリアンナの肩を叩くと、

「あ、どんまい。グレモリー家は終わったわ。うん」

と言いながらライザーを指さして続ける。

 

「だって、こんなんが次期当主だぜ?改心すれば良いけど、改心しなさそうだからな~。親の顔が見てみたいわ。俺がこいつの親だったらここまで放置はしない。こいつを張り倒して無理やりにでも常識をスパルタ方式で叩き込むわ~。放任主義もここまで来れば考え物だな」

 

 その言葉に子供を持つアリアンナは頷き、

「確かに、そうですね」

と、一誠の言葉に賛同する。

 

一誠はそんなアリアンナに視線を向け、一つの諺を言う。

 

「日本にはな、人のふり見てわがふり治せと言う諺がある。あれは、典型的な駄目な例だからあんたも子持ちなら、子供がああ言う輩に成らない様に気を付けないと駄目だぞ」

「そうですね。ミリキャスをしっかりと教育させないと」

 

一誠の言葉を聞き、自分の子供ミリキャスの教育方針を考えているアリアンナの横でリアスが頷く。

 

「そうね」

 

横で頷くリアスにアリアンナが反応した。

 

「何を言ってるのリアス?貴女も今度冥界に帰ったら常識を身に着けるわよ」

飛び火した!?と驚くリアスをほっといて、一誠がアリアンナに問う。

 

「んで、何でこいつ、ここに居るの?」

 

「それは「いい加減にして頂戴!ライザー」」

 

 突如、リアスの怒鳴り声に遮られ視線をアリアンナからリアスに移すと、そこには鋭い視線をライザーに向けて睨んでいるリアスの姿があった。

 

「ライザー!以前にも言った通り私はあなたと結婚なんてしないわ!」

 

「君の所のお家事情は切羽詰まっていると思うのだが?それに、君も純血悪魔の血を途絶え

させるる訳にもいかんだろう?」

 

「私は家を潰させないし婿養子だって迎え入れるつもりよ」

 

 リアスの言葉を聞いたライザーは満面の笑みを浮かべる。

 

「おお、流石リアス。それじゃあ、さっそく俺と―――」

 

「でも、あなたとは結婚しないわ。私は私が良いと思った人と結婚するの。古い家柄の悪魔にだってそれぐらいの権利はあるはずよ!」

 

ライザーの言葉を遮りリアスがはっきりと言うとライザーの顔は険しくなった。

目元が細くなり舌打ちをする。

 

「……俺もな、フェニックスの看板を背負ってんだよ!この名前に泥を掛けられるわけにもいかないんだよ!!」

 

マジで!?その形で看板背負っているのか!?しかも、自分から看板に泥掛けてるじゃん!!

と呟き驚く一誠だが、ライザーは続ける。

 

「こんな狭くてぼろい人間の建物なんざ来たくなかった。というか、俺は人間界があまり好きじゃない。この世界の炎と風は汚い。炎と風を操る悪魔としては耐え難いんだよ!!」

 

 じゃあ、来るなよ。呼んでもいないのに何故に来た?と呟く一誠だが、次の瞬間その呟きはライザーの行いで、ライザーへの怒りで黙る事に成る。

 

 ライザーの周囲に炎が走り、室内に火の粉が回った。

 

「俺は君の下僕を全て燃やし尽くしてでも君を冥界に連れて帰るぞ」

ライザーから放たれる敵意と殺意がグレモリー眷属を襲う。

 ライザーは炎を体に纏い始め室内は熱気に包まれた。

 

 

ライザーのセリフを聞き、行いを見た一誠は自問自答をする。

 

こいつは今、何て言った?

下僕を全て燃やし尽くす?

誰を?誰のモノを燃やし尽くすとほざいた?

―――俺のモノを!

 

 だが、ライザーの殺意と敵意は次の瞬間に塗りつぶされる。

 自問自答の果てに眼を見開き、SEEDを発動すると一誠は右手に白虎の籠手(ビーステッド・ギア)を発動させる。

 そして、オカルト研究部の部室に居る一誠を中心に膨大な風が吹いた。まるで一誠を中心に集まって来たかのように割れた窓からも風が浸入し、気が付けば一誠は風を全身に纏っていた。

 

【 beastbeastbeastbeastbeastbeastbeastbeast】

 

 体に風を纏い、白虎の籠手(ビーステッド・ギア)を装着した右手でライザーの喉ぼとけを閉めながらSEEDによって黄色と成った瞳でライザーを見ながら問う。

 

「誰の許しを得て俺のモノに手を出そうとしている?」

 

ぞっとするほどの冷たい声音。

全身の皮膚が瞬時、鳥肌に成るような低い低い声音だ。

一誠以外のその場にいる全員が恐怖で金縛りに会ったように全身が動かない。指先ひとつ動かせない。

その間にもライザーの喉ぼとけを絞める一誠の指に力が入る。

 

「そんなに死に急ぐなら俺がとっとと引導を渡してやろう」

そう呟くと一誠に纏わりついていた風は急速に一誠の右手に装着する白虎の籠手(ビーステッド・ギア)に集まり始め何かが起ころうとしている事が全員解った。

 

「お待ちください!それ以上なさると言うのなら私も介入させて頂きます!!」

 

 やっと体が動くようになったアリアンナが介入を試みる。

 だが、それも動じずに一誠は宣言する。

 

「別に構わんぞ?介入したくばすれば良い。あんたは、何も俺の逆鱗に触れるような事はしていないから傷をつけずに生かすが、こいつは駄目だ。確実に殺す」

 

 アリアンナの誤算。

 それは、一誠が悪魔社会を知らない事とアリアンナの実力が一誠に劣っている事。そして、一誠の機嫌と今の状態がすこぶる悪い事。睡眠不足で普段より確実に短気なのだ。

 

 リアスとライザーとのやり取りならアリアンナが介入すれば収集はつくだろうが、一誠とライザーとのやり取りだ。

 否、やり取りにすら成っていない。

 

 そんな現状にアリアンナは冷や汗を流し始める。

 全然、動じない!?それよりも兵藤一誠様の方が実力が上!?

 

 戦闘に成って相手を生かして捕縛すると言うのはかなり難しい事だ。

 だが、一誠は堂々と宣言した。アリアンナは、傷をつけずに生かすが、ライザーは確実に殺すと。

 この言葉が意味する事はライザーとアリアンナ、二人同時に相手にしても確実にライザーは殺し、アリアンナは無傷で返すと言う一誠の勝利宣言だ。

 

「この世は俺の支配下だ。そこに生きるもの全てが俺のモノ。神であろうと魔王であろうと何人たりとも俺のモノに手を出す事は許さん!これは絶対だ!!守れぬと言うなら遺伝子、否、魂レベルまで守れないと言う事がどういう結果につながるか恐怖で切り刻み来世まで覚える様にして消えて貰うのみだ(・・・・・・・・)

 

ライザーを睨みつけ、喉ぼとけを絞めたまま声高らかに宣言する。

そして、一誠がライザーに攻撃しようとしたその時、白音が動いた。

 

「……やめてあげて下さい、兄様!!」

 

 今も硬直状態だが、かろうじて口が動くと一誠に向かって懇願する。

 

 一誠はライザーの喉ぼとけを絞めたまま攻撃をしようとする手を止め、視線を白音の方に向けると問う。

 

「良いのか?これは、お前を焼き殺そうとしたのだ。お前が望むならこいつをすぐにでも殺すぞ?何なら死にたいと懇願させる事が出来るが……」

 

「……はい。私は兄様に守って貰いましたので、何とも思ってません。ですから、その人を放してあげて下さい」

 

 白音の答えを聞き、一誠は「そうか」と呟くとライザーの喉ぼとけから指を外し、籠手をしまうとライザーを開放する。

 

「運が良くて良かったなあ、小僧。もしあの時、妹が懇願していなかったら貴様は確実にこの世から存在が消えていた。……次からは相手を見てものを申せよ。小僧」

 

 フンと鼻を鳴らし、ソファーに座る一誠。

 それを見て、暫し恐怖で動けなかったライザーが恐怖が解けて激怒した。

 

「ふざけるなよ、小僧おおおおおお!!!」

 

 上級悪魔としてプライドがライザーを駆り立てる。

 下級悪魔如きに上級悪魔が屈しては成らないと。

 ライザーの炎が背中に集まり、翼のような形と成ると一誠に攻撃しようとする。

 しかし、それを止める者がいた。――アリアンナだ。

 

 一誠に攻撃しようとしたライザーを見てアリアンナは危機を覚えた。

 いけない!あの方に攻撃をすれば今度こそ確実にライザー様は消されてしまう!!

 下手をすれば全員!

 

「お待ちください、ライザー様!!それ以上やるのでしたら私も黙っておりません。サーゼクス様の為にも遠慮などしないつもりです」

 

 ライザーに向けて迫力のある言葉を発し、ライザーは表情をこわばらせるが一誠は眠くなりソファーに座ったまま言う。

 

「こんな形ですまんが、俺は先程1%もの実力すら出していないぞ」

 

 その言葉にアリアンナは恐怖した。

 この人は先程、全力どころか実力の半分も出していなかった!?

 

 桁違いの実力に驚かざるを得なかった。

 

 ライザーはアリアンナの言葉を聞くと頭を横に振りやれやれと言った意思表示を示す。

 

「……最強の女王(クイーン)と称されるあなたにそんな事を言われたら、俺もさすがに怖いよ。バケモノ揃いと評判のサーゼクス様の眷属とは絶対に相対したくないからな」

 

 女性を化け物とか言うなんて最低だな~とソファーに座っている一誠が呟く。

 

 アリアンナはライザーの戦意が無くなったのを確認するとライザーとリアスに向けて言う。

「お嬢様とライザー様が話し合いでの決着を着かない事は旦那様もサーゼクス様もフェニックス家の方々も重々承知でした。これで決着がつかない場合、お嬢様はライザーと非公式でのレーティングゲームにて決着をつけるのは如何でしょうか?と言うのが両家での結論です。お嬢様、如何なされますか?」

 

 リアスはアリアンナの言葉に驚きを見せる。

 

「そう……お父様方は私が拒否した時の事も考えて最終的にゲームで決めようと言うハラなのね?……いいわ。ゲームで決着をつけましょう、ライザー」

 

キッと睨みつけるリアスにライザーは笑みを浮かべる。

 

「いいだろう、リアス。そちらが勝てば好きにすれば良い。こちらが勝てば俺と即結婚をしてもらう」

 

 睨み合う両者を横目で見つつ一誠はソファーから立ち上がるとポケットから予定帳を取りだすと問う。

 

「んで?そのレーティングゲームとやらはいつやるのよ」

 

「――10日後だ」

 

 ライザーの答えを聞き、指で今日の日付から10日後を調べるとそこには、北海道ホタテバイトと予定が記入されていた。

 

「なあ、時間ずらす事出来ねえか?」

 

予定帳を見てライザーに問うがライザーは、

「駄目だ」

かたくなにそれを拒否。

 

溜息を一つ吐くと一誠はリアスに向かって言う。

 

「すまねえが予約が入ってっからレーティングゲームに参加できないわ」

「うん、ファイトー」

 

やる気のない声での応援をする一誠にリアスは驚く。

 

「なっ!?あなた、その予定何とかならないの!?」

 

「無理。この前悪魔の仕事の時に依頼人から依頼されてるし、依頼人は今携帯の電波の届かない海の上だから無理。キャンセル不可の依頼だから無理だわ。うん、頑張れ~」

 

 一誠とリアスのやり取りを見ていたライザーは、にやりと意地の悪い笑みを浮かべる。

 

「そこの小僧」

 

「あん?何だ?」

 

「俺と当たらなくて運が良かったな!当たっていれば灰も残さずにお前を焼き尽くしていたぞ」

 

「あ~、そりゃあ、めでたいめでたい。ラッキー、ラッキー」

 

「な、貴様!?」

 

 一誠の馬鹿にしたような声に激怒したのかライザーは再び一誠に攻撃しようとするが一誠は再びソファーに座る。

 ふあああと大きな欠伸をした後、リアスに言う。

 

「まあ、頑張れやリアス先輩。俺も北海道からエールを送っとくから気張れや。まあ、もしもの時は手を貸してやるから、泥船に乗ったつもりでいろや。ハハハハ」

 

面白そうに笑う一誠にリアスは激怒する。

 

「貴方ねえ!それだと、私は安心して良いの!?それとも、ライザーと結婚しなくちゃいけないと腹を決めなきゃいけないの!?」

 

「どっちだろうな~」

 

一誠は不穏な笑みを浮かべると、リアスとそれ以上の会話をしなくなった。

その様子を見たアリアンナは咳払いを一つするとライザーとリアスに向かって問う。

 

「お二人の意志は私、アリアンナが確認させていただきました。ご両家の立会人として、私がこのゲームの指揮を宜しいですね?」

 

「ああ」

 

「ええ」

 

 アリアンナの問いにライザーとリアスは二つ返事で了承する。

 そして、ライザーは部室を見渡すとリアスに尋ねる。

 

「リアス。君の眷属はこれで全部か?」

 

 その言葉に片眉をあげてリアスは反応する。

 

「だとしたらどうなの?」

 

 その言葉を聞き、ライザーはクククと可笑しそうに笑う。

 

「これじゃあ、俺の可愛い下僕に対抗できないんじゃないかな?そこの小僧も出ないみたいだし、対抗できるとしたら君の女王《雷の巫女》位じゃないのか?」

 

 ライザーが、ぱちんと指を鳴らすと部屋の魔方陣が光りだし、魔方陣から15名の女性が出てきた。

 そして、その中の女の子と濃厚なディープキスをし始める。

 

「んっ…あふっ…」

 

 官能的な喘ぎ声をだしライザーをキスする女の子から視線はライザーがキスをし始めた瞬間から瞼を閉じてシャットアウトし、親指とひとさし指で瞼を抑え呆れ顔をする一誠。

 

 そして、視線をアリアンナに向けると尋ねる。

 

「なあ、本当にこんなんが次期グレモリー家当主だが良いのか?これを当主にした時点で破滅か滅亡よくて衰退の運命をたどりそうなんだが……こんな年中発情中のチキンボーイに任せるのはどうかと思うぞ。うん、マジで」

 

 その言葉にライザーは憤怒の表情へと変貌する。

 

「チキンボーイ!?この下級悪魔がぁぁぁぁ!!!上級悪魔に対して態度が成ってねえぞ!リアス、下僕の教育はどうなってんだ!?」

 

 ライザーの発言に一誠は猛烈に反応する。

 

「このチキンボーイ、頭そのものが悪かったのか!?俺はリアス・グレモリーの下僕でも従者でも無いと先程から言っているのに!!!」

 

 ライザーに尋ねられたリアスは、一誠のライザーに対するチキンボーイ発言がツボに入ったのか、姫島朱乃と共に大笑いしており、一誠の妹 白音も先程まで堪えてがリアスの笑いにつられて一緒に笑い、木場祐斗も声に出してはいないが、肩が揺れている為必死に笑いをこらえている事が一目でわかる。

 

 普段はクールビューティーなアリアンナもこの時ばかりは必死に笑いを噛み殺す事に専念していた。

 

「ミラ。やれ」

 

 ライザーが命令を下すとミラと呼ばれた小柄で童顔な女の子は長い棍を取りだしクルクルと回すと一誠へと向ける。

 そして、その様子を見た一誠は、悪戯っ子の様な邪悪な笑みを浮かべる。

 

 ミラと呼ばれた女の子が一誠へと腹に棍で突きを行おうと攻撃を仕掛ける。寸分たがわず棍は、一誠の腹の急所、水月に入った。

 

 決まった!

 

 そう思った瞬間、一誠から声が掛かる。

 

「おいおい、逆プロポーズか?参ったな、こりゃあ。ハハハハ、ライザー君、人望が無さすぎるぜ。下僕に見放されるたあ日頃の行いが悪いせいだな。うん、愛想尽かされてもしゃあないわな~」

 

 ニヤニヤと意地の悪い笑みをミラに向ける一誠。

 

 声を掛けられてミラは理解した。自分の持っていた棍がいつの間にか棍と同じ太さの花束に代わっていたのだ。自分の気付かない間にすり替えられていた!

 自身の置かれている状況に気が付くとミラは赤面し眼を回してその場でフリーズする。

 

 ライザーの女性悪魔眷属達は、ミラの行動に驚きを隠せなかった。

 ミラがプロポーズした!?

 ミラと言うこの女性悪魔は、ライザーの眷属の中でも一番弱い。

 それに、眷属悪魔で一番の奥手である。あのミラが全員の目の前でプロポーズしたのだ。

 しかも、状況に今更気が付いたのか赤面し眼を回してフリーズしている。

 このままミラの恋を応援してあげようとライザーの眷属悪魔全員が思うのだった。

 

一方、ミラの持っている棍を【有を無に変える力】で無に帰し、【無から有を創る力】で花束を創ってミラを逆プロポーズさせた一誠。

 

「すまんすまん。ち~くとからかい過ぎた。すまんな」

 

 そう言うとソファーから立ち上がり、赤面し眼を回しながらフリーズ中のミラをお姫様抱っこで抱き上げると優しくソファーへと運ぶ。

 

 そして、視線をライザーの方へ向けるとフッと鼻で笑いウィンクをしながら言う。

 

「だが、まあ、俺もお人好しでないのでな。来ると解っている攻撃をわざわざ受けてやることはせぬぞ。それに、これ以上やると言うのなら……チキンボーイ。己が命をかけよ。俺は女子供には手を出さぬ主義だが、逆に男には厳しいぞ。女の涙を流しての嘆願には耳を傾けるが男の泣き言には耳を傾けたくない。と言うかだな、男の泣き言を聞くと逆に苛々するのでな」

 

 その場の空気が一変した。

自軍は有利なはずなのに、15対1で人数的には圧倒的に有利なはずなのに目の前の男は、その状況を解っているだろうに誰一人動けない事にライザーは恐怖した。

 先程の燃え狂う炎の様な動のタイプでは無く、今は静の物静かなタイプだが先程と同じく一歩も動けない。

 

 突如、介入者によって一誠は視線をライザーから介入者へと移す。

 

「兵藤一誠様、お待ちください!それ以上やるのでしたら「おいおい、俺はまだ何もしてはおらんぞ?降りかかる火の粉を払いのけただけで、アリアンナさんは俺にただ黙ってやられていろと言うのか?」それは……」

 

 一誠は困惑するアリアンナを見て肩をすくめながら言う。

 

「まあ、俺も少しばかり悪戯が過ぎたようだな」

 

 そう言うとソファーに座らせたミラの前まで行き、ミラと同じ視線に成る様に正座をするとミラに謝った。

 

「すまなかったな。少しばかり悪戯が過ぎたようだ。だが、そなたは棍よりも花束を持っていた方が似合うぞ」

 

「え、あ、ありがとう」

 

 困惑しながら答えるミラを見ながら一誠は立ち上がり、ミラに手を差し伸べる。

 

「立てるか?」

 

「ええ」

 

 ミラは、一誠の手を借りながらソファーから立ち上がるとライザーの眷属悪魔達がいる許へと歩いていく。

 ミラが来るのを確認するとライザーはリアスに一言。

 

「リアス、次はゲームで会おう」

 

それだけ言うと下僕の女の子達と共に魔方陣の光の中へと消えて行った。

 




一誠、レーティングゲームに参加せず。

後々、ライザーは一誠によって色々死ぬ予定です(仮)。
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