カオスクロススクールD×H 変人紳士な青龍帝 英雄王とアーサー王に育てられし元ニート物語   作:zeke

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月光校庭のエクスカリバー
第三十五変人:カーチェイス


「この戯けが!!」

 

 

 一誠の頭に向かってヒルダが仕込み刀が突き刺す勢いで連続の突きを放つ。

 

 

「おわ、危ね!おい、ヒルダ。お前俺を殺す気か!?」

 

 

 しゃがみ、ヒルダの仕込み刀が目標である一誠の頭に突き刺さることなく勢いを失わずに、一誠の後ろにあった壁に深く突き刺さる。

 刀身は半分以上壁に突き刺さっており、ヒルダが放った突きの凄まじい勢いを物語っている。

 

 

「喧しい!一誠、貴様に坊ちゃまを預けた私がばかだった。貴様!坊ちゃまを結婚式をぶち壊す道具として使いおって!!」

 

 

 そう、彼女ヒルデガルダ 通称ヒルダが一誠に怒り心頭なのは彼女が仕えている魔王の息子であるカイゼルーデ・エンペラーナ・ベルゼバブ4世 通称ベル坊をリアスとライザーの結婚式をぶち壊す為にアランドロンとミルたんの不倫?で出来た子供という設定で結婚式場に連れ込み、ライザーとリアスの結婚式を泥沼化させたのだ。

 

 

 ま あ、♂と♂同士の不倫で子供なんて生まれるはずもないのだが、結婚式に不倫をしたと名乗る人物が例え、ピッチピチのウェディングドレスを着た男性であろうとも子供を、しかも赤ん坊を連れていれば話は別。

 

 

 というか、予想外の出来事に対処できないのが人間として当たり前で悪魔もそれに該当し、結婚式は一時的に泥沼化。

 

 

 結局、リアスとライザーの結婚式はリアスの兄魔王サーゼクス・ルシファーとの契約で一誠VSライザー眷属全員のバトルで一誠が勝利。一誠曰く、準備運動にもなんなかったとの事。

 流石の魔王サーゼクスも上級悪魔で懇意にしているお家以外は勝利しているライザーとその眷属を相手にしては厳しいだろうと覚悟していた。負けて当然だと。

 

 

 だが、蓋を開けてみれば彼は強かった。

 

 

 その場に円を描き、その中から5分間出ないと宣言した。

 それにライザーは激怒した。ライザーは眷属達に命じて一誠に容赦なく攻撃をさせた。連続で。

 

 

 だが、一誠はライザーの眷属悪魔を傷付ける事無く風の固有結界に閉じ込め、無力化させた。

 

 

 そして、時間がたつと描いた円から出てライザーを風の固有結界である【風の監獄】にぶち込み、粉塵爆発による爆殺。聖水によるダメージ。窒息による窒息死を強制的に食らわせ、連続で風の障壁による衝撃波を食らわせると同時に「君は良い道化だったよ」と言葉攻め。

 

 心身共にダメージを食らい、何度も殺されたライザーは現在引きこもりに成った。

 

 

 成ったのだが、結婚式場から帰る最中一誠は記憶改ざんのギアスによって会場内に居た殆どの悪魔の記憶をリアスとライザーの結婚式から魔王の婚約記念パーティーへと記憶を改ざんした為、今、グレモリー家とフェニックス家はリアスとライザーの婚約パーティーから魔王婚約記念パーティーへと早変わり。

 

 

 新婦のリアスを掻っ攫ってめでたしめでたし。

 

 

 で、終わる事もなく。

 めでたしめでたしで問屋がおろさなかった。

 

 

 ベル坊を結婚式場に連れて行った一誠にアランドロン経由でヒルダは知り、怒った。

 烈火のごとく怒りに満ちていた。

 

「ただいま~」

 

 

 そうとはつゆ知らず、のこのこ帰宅した一誠をベル坊ごと部屋に拉致。

 一誠からベル坊を引きはがし、冒頭に戻る。

 

 

 怒り狂うヒルダを見て

 

 

「ハア」

 

 

溜息を吐き、そして

 

 

「すまなかった、ヒルダ。そして、俺はここに誓おう。お前とベル坊を何があっても守ると」

 

 

 ヒルダの怒りを鎮圧するためにヒルダを正面から抱きしめた。

 

 

「!!!」

 

 

 まさか抱きしめられ、告白まがいな宣言をされるとは思っていなかったのでヒルダは顔を真っ赤にし、一誠の顔を見る。

 

 

 そこには、目を瞑りヒルダの背中に手を当て抱きしめる一誠の顔があった。

ヒルダを抱きしめる力は徐々に強くなり、ヒルダは剣を壁から抜く事をやめ

 

 

 スッと目を瞑り顔を上げ、一誠の頬にキスをした。

 

 

「What!?」

 

 

(え、何!?俺、何された!?キスされた。ヒルダにキスを。あのヒルダが、ドSのヒルダが俺にキスをした!?)

 

 

 テンパり、思考が状況整理に追いつけぬ一誠を見ながらヒルダは、

 

 

「フフ。一誠、お前となら坊ちゃまをうまく育てられる気がする」

 

 

 微笑みを一誠に浮かべる。

 

 

「ハア」

 

 翌日の放課後、一誠は教室で机に頬杖をつき溜息を吐いていた。

 

 

「一誠、どうしたんだい?溜息なんか吐いて」

 

 視線だけを声の主が居る前方に向けると枢木スザクとルルーシュが立っていた。

 スザクは、一誠の顔を覗き込むように身を乗り出しておりルルーシュは驚いた少し表情で一誠を見ていた。

 

「ん、ああ。ちとな……お前らじゃあ、役に立ちそうもねえから気にすんな」

 

 目の前にいる策士と鈍感系筋肉脳を横目でちらりと見るも、そのまま視線を窓の外へと戻す。

 

「そんな!?君が話してくれさえすれば何か力に慣れるかもしれないんだ!」

 

「おい、一誠。俺をスザクと一緒にするな」

 

 片方熱血系。もう片方はクールな策士。

 そんなスザクとルルーシュの反応を聞きながら

 

「んじゃあ、お前らに尋ねる。色恋沙汰の相談に乗れるか?」

 

「「……」」

 

 ルルーシュとスザクは黙った。

 だが、ここで思わぬ伏兵が入ってきた。

 

「ほう!童貞坊やも、ついに色恋沙汰に目覚めたか」

 

 緑色の長髪の美少女C.C.が話の中に入ってきたのだ。

 彼女は、ルルーシュの背後から現れるな否や一誠の隣の席の椅子に座る。

 

「……」

 

 C.C.の登場にしくったと内心毒づきながら視線をc.c.に向ける。

 

「ほう、ついに私の美貌に「うるさいぞ魔女」ふ、照れなくてもいいぞ。私の豊満な肉体に目が眩んで肉欲に「おい、ルルーシュ黙らせろ」溺れ…」

 

c.c.の登場で話が滅茶苦茶になり、c.c.をルルーシュに命じて教室から強制退去させる。

 

 一方、一誠に命じられたルルーシュは「何で俺が」と文句を言いながらc.c.の背を押して教室の外まで追いやると、「先に帰ってピザでも食べてろ。ただし、5つまでだ」とクレジットカードをc.c.に渡して帰らせ、教室の扉をぴしゃりと閉める。

 

 そして、再び一誠の前まで来ると、教室に残っていたユーフェミアが話の輪の中に入ってきた。

 

「まあ、面白そうな話をされていますね。一誠、貴方もついに恋に目覚めたのですね」

 

 ワクワクとした表情で話の中に入ってくるユーフェミアを見て、一誠は「まあ、スザクやルルーシュよりかは何倍もマシか」と納得する。

 

「違げえよなあ、ユーフェミア。素っ気無い態度を取っていた(ベル坊を育てる)協力者(ヒルダ)が態度を変えたんだが…どう思う?」

 

「態度を変えた?具体的にはどの様に?」

 

「あ~、う~ん。具体的に接吻…になんのか、あれ?まあ、頬にキスされた」

 

「「……」」

 

ルルーシュとスザクは黙り、お互いに眼を合わせた。

ユーフェミアは口に手をやり、まあ!と驚いた表情。

 

 そして、 

 

「それは、ずばり恋ですね!」

 

と言うが、一誠は首を傾げる。

 

「ん~?そうなるかな~?」

 

 この世界最強であろう男、兵藤一誠。

 実は、自分の事があんまり解らなかったりする。

 

 その時の状況を第三者目線で客観的に判断して物事を進めたりする癖がある。

 まあ、その影響で墓穴を掘ってしまうこともあるのだが……

 

「はい!ずばり恋です」

 

 ユーフェミアは一誠に顔を覗き込むように近づける。

 お互いの顔の距離が2,3CMかと思うぐらいの距離。

 

「顔が近けえよ、馬鹿野郎!」

 

 椅子から転げ落ちて頭を地面にぶつけた。

 

 

「おい、兵藤。校門の所でえらい美人さんがお前を待っておるぞ」

 

 教室の扉から顔をひょっこりと見せる眼鏡をかけ常にコートを羽織っている、一見中年サラリーマンの風貌をしたクラスメイトの青年 材木座。

 

「あ゛あ?美人?」

 

「ああ、黒髪の美人だ。某のストライクゾーンである」

 

 一体誰だよと呟いた時、学生服のポケットの中のマナーモードにしていた携帯電話が振動した。

 表示にはレイと表示されており、着信を知らせていた。

 

「ああ、俺だ」

 

『すみません、社長。問題が発生しました』

 

「お前か。校門にいる美人ってのは」

 

『び、美人って、あ、いえ、それどころではなくて……すみませんが社長、会社まで一緒に来ていただけますか?社長ではないとどうしても解決できない案件が発生しまして』

 

「…解った。今行く」

 

一誠はそう言うと椅子から立ち上がり、机の横にかけているリュックに荷物を入れると、ユーフェミアやルルーシュ、スザクの方を見て、

 

「悪い、急用ができた。先に帰るわ。小猫や黒歌が来たら先帰ったって言っといてくれ」

 

と言伝を頼み、教室から出ていく。

 

 廊下をわたり、階段を下りて下駄箱で靴を履きかえ校舎から出ると、校門ににけつにシートを改造されたスーパースポーツバイクKTM 1190 RC8 Rが駐車されており、その横には赤のライダースーツに身を包んだレイがヘルメットを脇に抱えて待っていた。

 

レイは一誠の方に気が付くと、バイクの操縦桿にかかっているもう一つのヘルメットを外し、一誠の方に投げる。

 

「んで、どうしたんだ?」

 

投げられたヘルメットを受け取りながらレイに尋ねる。

 

「実は社長に依頼がありまして」

 

「あん?俺に依頼?俺って依頼は受けねえぞ。ドーナシークに任せたら?」

 

「AUOの中で一番強い人物に警護を任せたいと」

 

「最悪断っちまえば…」

 

「相手が相手ですので如何にも断れないのですよ。取り敢えず依頼人に会っていただけませんか?」

 

 そこまで聞き、一つ溜息を吐くと「解った」と了承した。

 

「では、乗って下さい」

 

 レイはヘルメットをかぶるとスーパースポーツバイクKTM 1190 RC8 Rに跨り、一誠もその後に続いてバイクに跨った。

 一誠がレイの腰を抱くようにバイクに乗るとレイはバイクを発進させる。

 

 一誠を会社に連れていく終始、ヘルメットの下で顔が終始赤く染まっていた。

 

レイに連れてこられて、警備会社AUOの雑居ビル、その中の応接室に案内されると二人の男がいた。

 一誠は、その相手を見て驚いた。

腹が出るほどの脂肪体質ではなく、むしろ筋肉質では無いものの、一般人よりは筋肉があり隙を見せない風貌。

 身にまとう警察服により相手が警察官だというのがわかる。

 しかも、ベテランの警察官。

 髪は若干白髪も交じっているが、黒髪で左眉に銃痕によって出来た傷がある。顔は強面ではあるものの、強面系の女性なら黄色い悲鳴を上げそうな顔立ち。

 

「警察?」

 

 驚く一誠を横に、一誠の隣にいたレイが淡々と説明をする。

 

「こちら、今回の依頼人である警察庁長官 西島秀忠様でございます」

 

レイの紹介を聞き、依頼人にあいさつを交わす。

 

「初めましてAUO社長の兵藤一誠です」

 

一誠に差し出された手を握り、握手に応じながら自己紹介をする。

 

「こちらこそ初めまして。警察庁長官西島と申します」

 

「あ、どうぞおかけ下さい。それで、ご用件というのは、私に依頼を希望されていらっしゃるというのを部下の者から聞いておりますが」

 

「はい。護衛を依頼したいのですよ」

 

「護衛、ですか?ですが、私は失礼を存じて申し上げますが生憎依頼を受け付けてはおりません。それに、警察庁長官ともなれば色々とパイプをお持ちだと思います。むしろ、そちらに頼むほうが貴方も安心なさるのではないでしょうか?それが何故、弊社なのでしょうか?無論、お選びいただいた事は心より嬉しく思いますが……」

 

 警察庁長官の西島は、「実は」と言いながら内胸ポケットから一つの手紙を取り出し一誠に渡す。

 

「実は、私宛にご覧の通り脅迫状が届いたのです。私もこの職に就いているため、どうしても恨み辛みを買ってしまいます。私の娘を襲うと。今現在犯人が特定できてない為、犯人特定に全力を挙げさせているのですが犯人がいかなる人物か解っていない為、あらゆる可能性を疑い捜査しています。その中にもしかしたら身内が、という可能性も拭えない為、パイプもあてにできないのです」

 

「パイプをあてに出来ない、と言うのはつまり……」

 

「はい。お察しの通りパイプの中にもしかしたら私が気付かずに恨みを買っていた者がいるかもしれないと言う可能性があっての事で」

 

「解りました。……この依頼、引き受けましょう」

 

ハアと溜息を一つ吐くとこの依頼(ミッション)長丁場になりそうだと呟いた

 

「本当ですか!?」

 

「はい。本来なら引き受けない事が前提なので弊社の記録に残せないので本来の報酬と別の形と成る事もあり得ますのでご了承ください。それでも構いませんのでしたらお引き受けさせて頂きますが……如何なさいますか?」

 

「お願いします!」

 

「それでは、依頼の日程の方は明日…いや、明後日からで宜しいですか?」

 

「出来れば今日からでもお願いしたいのですが」

 

「すみません。こちらも色々と対策を考えておかねばなりません。相手が一人であった場合は良いのですが、複数のグループでの犯行だった場合、下手な装備では依頼は完遂出来ない事があるかもしれません。最悪のケースとして、ね」

 

 一誠の言葉の意味に警察庁長官の西島は、長年の警察としての感ですぐに察した。

 最悪のケース、つまりそれは、護衛対象の死亡によって事件が幕を下ろすケースに他ならない。

 

「わ、解りました。それでは、明後日からご依頼をお願いします」

 

「OK.解りました。あなたの了承を得られてよかったです。西島さん、これまで護衛をしてきた為全力を注げなかったでしょうが、これからあなたは犯人の特定に全力を注いでください。こちらは見事依頼を完遂して見せましょう」

 

「お願いします」

 

「任務中、下手をすれば銃撃戦になるかも知れませんが構いませんか?」

 

「え!?」

 

「一人二人、まあ5人ぐらいの相手であるなら一気に来られようとも私なら対処ができる。しかし、十人ぐらいのプロを相手にしながら護衛任務につかなければいけなくなると、流石に厳しい。任務中での銃の使用許可をお願いしたい。貴方ならそれが出来るのでは?」

 

「……確かに」

 

「こちらも銃の使用をしない事を願うばかりだが、脅迫状がただの狂言であれば良いのだが狂言でない場合。犯人が殺し屋のプロを雇う可能性がある。それも複数。一番最悪なケースがテロリストと手を組むことだ。そこで、銃の使用許可と使用に関しての処罰の揉み消し、これを報酬とは別にお願いしたい。これが受け入られなければこの依頼はやめさせて貰う。無論、その見返りとして犯人逮捕の協力に協力しよう」

 

「色々、考えてらっしゃるんですね」

 

「無論だ。常に最悪のケースを想定するべきだからな。それで、了承願えますか?」

 

「わ、解りました」

 

「OK.私も護衛に全力を出しましょう。犯人をふん捕まえて首に首輪とリードをつけて、手足を縄で縛ったうえでラッピングしてから引き渡そう」

 

「あ、いえ、何もそこまでしていただかなくても……」

 

「ふむ、女装込みのほうがよかったかな?ならば、女装させた後に…」

 

「いいえ!そういう意味ではなくてですね!普 通 に 警察署の方に持っていただきたいと」

 

「そうか。それでは女装も?」

 

「無しで」

 

「ラッピングも?」

 

「無 し で」

 

「首輪+リード付も?」

 

「無 し で !」

 

「手錠も?」

 

「無し……あ、いえ!手錠はありで!縄で縛って頂いてもOKですから」

 

「フム、それでは亀甲縛りで捕縛した後に警察署に正面から送り届けよう」

 

 一誠の説明を聞きながら警察庁長官の西島は、この人は一体何をしたいのだろう?と思った。

 一誠が口に出した事は殆ど犯人が社会的に死ぬ。

 まず、首輪+リード+手足を縛られたうえで女装させられた犯人…羞恥で死ぬだろう。自殺もの。世間に流通した暁には東京タワーから飛び降りるぐらいの仕打ちだ。

 次に、亀甲縛りでの捕縛からの警察署の正面からの送り届け。しいて言うなら男嫌いの男性がキャバクラに連れていかれるはずだったのが、急にゲイバーに連れていかれ掘られそうになる。そんな処だろう。

 

「いいえ、もうこちらで回収しますから」

 

 こいつに依頼して本当に大丈夫か?と早くも不安を覚える警察庁長官の西島。

 早くも一誠に依頼をした事に後悔をし始めた。

 

 

 

     ★          ☆              ★

 

 依頼を受けてから二日目、一誠は護衛対象の警察庁長官の西島の娘、西島渚に会うため彼女の通う学校へ。

 校門で西島の部下と共に待つこと数分……

 

「あ、お嬢様が来ました」

 

 部下に言われ視線を彼の言う方向に向けると……

 

「……なんじゃ、ありゃ!?」

 

 そこには、赤い特攻服に身を包んだ黒髪ツインテール、碧眼。

 某アニメゲームの赤い悪魔がそこには居た。

 その手には木刀と鞄を持っている。

 

 護衛対象の後ろには同じく赤い特攻服を身に包んだ美人のお嬢様方が彼女の後を金魚の糞の如くぞろぞろとついて回る。その人数は20~30人はいると思われる。

 

「あの中央にいるのが貴方にお願いする護衛対象である渚お嬢様です。女暴走族薔薇女王(ローゼンマリア)のリーダーをしております」

 

 一誠は西島の部下の説明を聞くと「……」と、無言で天を仰ぎ見た。

 そして、

 

「阿保かああああ!!!それじゃあ、何人の被疑者が浮かび上がると思ってんだボケえええええ!!!ってか、何で警察庁長官の娘が暴走族やってんだよ!親父止めろよ!引っ叩いてでも止めるべきだろうがっ!!ああ゛っ!?子育てなめてんのか、あいつはよぉ!ちょっとここは任せた。あの西島(バカ)をどついて来る!」

 

 そう言ってその場を離れようとする一誠の腕をがっしりと掴みその場から離そうとしない。

 

「あ゛あ゛?何故俺の行く手を阻もうとする?この我が内に眠る怒り、あの阿保をどつき清算してくれるわ!」

 

「ちょ、ちょっと!それは後で幾らでもやって貰ってくれて構いませんから、今はお嬢様の護衛をお願いしますよ」

 

 西島の部下は、「すみません。長官」と心の中で謝りながら必死に一誠を食い止める。

 

「…解った。それでは護衛任務につくとしよう」

 

 そう言い残すとさっそうと護衛対象の渚のほうに歩いていく。

 

 そして、渚の前に立つと軽く挨拶をする。

 

「初めまして、西島渚お嬢様。これからあなたの護衛を務めさせていただきます兵藤一誠と申します。お見知りおきを」

 

 恭しく頭を垂れながらの挨拶をする一誠を見た、渚の後ろにいた取り巻きの一人が渚に尋ねた。

 

「リーダー、誰ですかこいつ?」

 

「さあな。私が狙われていると親父が言っていたが、その護衛役だろうよ」

 

 そう言って視線を一誠の方に向けると

 

「ねえ、兵藤君?わたしは、わたしより弱いやつに用は無いの」

 

(へえ~。暴走族でもお嬢様キャラを貫くのか)と内心思いながら一誠は渚の話を聞く。

 

「つまり…力を示せと?」

 

「ええ、そうよ」

 

「生憎自分……いいえ、私は女性には手を上げない主義でして」

 

「そう!」

 

 話が言い終わらぬうちに渚は持っていた木刀を一誠の体にめがけて叩き込む。

 普通の人間なら確実にあばら骨の2,3本は木っ端みじんに砕かれ、気絶するような斬撃。

 しかし、毎日規格外の家族に修行という名の弄りや半殺しを受けている一誠から見れば、何の問題もない。

 

 いや、寧ろ―――

 

「ほい。女性がこんなの持ってちゃあ危ないですよ」

 

 目隠しをしてもよけれる攻撃だ。

 

 一瞬にして持っていた木刀を取り上げられた渚は眼を丸くする。

 

「これで、力を認めてくれますか?」

 

「ああ、そうだな。相手が一人の時は、な(・・・・・・・・・・)

 

 そう言って渚は右手を上げる。

 すると、特攻服を着た取り巻きのお嬢様方が一誠を取り囲むようにずらりと並ぶ。

 全員、バイクのチェーンや木刀、鉄パイプなんかを持っており、一誠を殺す気満々。

 

 お嬢様方に取り囲まれた一誠は、向けられた程よい殺気に頬を緩めてします。

 やれやれ。箱入り娘のお嬢様かと思いきや、その本性はとんだじゃじゃ馬かと内心苦笑する。

 

「やれ!」

 

 渚の号令ひとつで一誠を取り囲んでいた取り巻き達が一斉に襲い掛かる。

 ある者はバイクのチェーンで一誠を攻撃し、ある者は木刀で殴りかかる。またある者は鉄パイプでフルスイングして一誠に攻撃する。

 

「成程。あなたのお父さんよりは、少しは頭が回るようですね」

 

 向けられたバイクのチェーンを渚から取り上げた木刀で絡ませると勢いよく引っ張り、バイクのチェーンを持つ女性をたぐり寄せると手を軽くひねり女性からバイクのチェーンを取り上げ、鉄パイプを持つ女性から片っ端から鉄パイプを取り上げたバイクのチェーンで絡み取り没収。

 もう一つの手で木刀を振るい、襲い掛かってくる木刀を片っ端から武器破壊を目的に持っている木刀でへし折る。

 途中、木刀がへし折れるという事態が発生したも取り巻きから取り上げた鉄パイプで得物を変えたため終始壊れることなく無事に取り巻きから得物を没収。もしくは、武器破壊を終えた。

 

「んで、如何ですかな?お嬢様。私めの力は?」

 

「まあまあね」

 

「それでは、参りましょうか」

 

 校門で待機させていたマセラティ・クアトロポルテに渚を乗り込ませると自身も乗り込み、運転席に乗っていた部下に出せと命令する。

 

 すると、マセラティ・クアトロポルテは、静かに動き出し渚の家を目的地に走り出す。

 渚は、見慣れた窓ガラスから見える歩道を見ながら外の景色を眺める。

 歩道のわきに植えられた街路樹。

 柴犬を散歩させる男性飼い主と、嬉しそうに鼻を動かしながら匂いをかぐ柴犬。

 談笑しながら下校する小学生。

 

 そんな景色を眺め、やがて視線を護衛してくれるボディーガードへと向ける。

 腕を組み、じっとサイドミラーとバックミラーだけを見る自身と同じぐらいの年齢の高校生。

 気温は寒くは無く、25℃以上はあろうというのに黒いロングコートを羽織っている彼。

 黒いロングコートはきっちりと前まで締めており暑くないのかと疑問を持たせるような恰好をしている一誠に一瞬息をのむが、話しかける。

 

「ねえ、兵藤君。私は誰に狙われているのかしら?」

 

 一誠はバックミラーとサイドミラーを見たまま閉じていた口を開いた。

 

「さあ?目下検討も尽きませんよ。ただ、貴女を守れと依頼された。だからお守りするだけですよ、私は。餅は餅屋ってね。そこらへんの捜索は、警察にお任せするのがセオリーですよ」

 

 後続車をバックミラーで見ながらの答えに渚は溜息を吐いた。

 

「はあ、面倒臭いわね」

 

「すまないね。でも、死ぬよりはマシだろ?」

 

「ええ」

 

「……」

 

 後続車がウィンカーを出し、一緒に並走するのを見ると一誠は初めて首は動かさず視線を窓から見える並走する車へと向けた。

 窓ガラスは黒いシールが張られ、外からは中の様子が見えない状態の車。

 明らかな違反車である。

 並走する車の窓ガラスが下げられると中から赤い覆面をした人物が一誠と渚が乗るマセラティ・クアトロポルテに銃口を向ける。

 

 そして、

 

 ガガガガガガと弾が一誠と渚が乗るマセラティ・クアトロポルテを襲う。

 弾丸の嵐は、窓ガラスに当たるがビシビシと窓ガラスに傷をつけるだけで貫通することはなかった。

 

「ヒイイイイイイイ!!!」

 

 マセラティ・クアトロポルテ内では渚が悲鳴を上げ、運転手は驚いた拍子で蛇行運転を始めていた。

 

「焦んな、ボケッ!アクセル全開で走行しろ!」

 

 運転席の後ろに座っていた一誠は、運転席のシートを後ろから蹴りこむと運転手を叱責する。

 すると、運転手は気を落ち着かせアクセルを踏み込み一誠と渚をマセラティ・クアトロポルテは、並走する車を時速120kmで追い抜いた。

 弾丸を浴びせ、並走していた車もマセラティ・クアトロポルテに追い抜かれた為か距離を詰めようとスピードを出す。

 

「お嬢様、安心しろよ。この車は防弾性抜群の車だからよ隅から隅まで防弾性だぜ、もちろんタイヤも防弾性だ」

 

 ニッと渚に笑みを浮かべる一誠だが、渚は不安に駆られていた。

 

「何なのよ、もお!こんな状況で安心できるわけないじゃない!」

 

「尤もな意見だぜお嬢様!良かったぜ、こんなクソッたれな状況でパニックってるかと思いきやまだ頭が働くようで安心したぜ!文句は街中で短機関銃(サブマシンガン)をぶっ放す、頭のいかれたあいつらに言ってくれ」

 

「あんたに言わなきゃこっちはやってらんないわよ!」

 

「クソがっ!とんだとばっちりを食らっちまったぜ」

 

既に時速は200kmを超えて走行するマセラティ・クアトロポルテだが、マセラティ・クアトロポルテに銃弾の嵐を浴びせた車は並走しようとしていた。

 

「おい!次の信号を左だ!急ブレーキをかけろ!そして、交差点を曲がってコンビニの前で運転手交代だ」

 

 そう言って部下に指示すると一誠はシートベルトをはずし、黒いロングコートの前を開けると黒いロングコートの内側のポケットからライターと中に液体が入り、瓶の口には布がつまれた瓶を取り出した。

 窓ガラスから追いつこうとしてくる車を見ると窓を開け、ライターで布に火をつけた。

 

「おら!俺からのプレゼントだ!ありがたく受取んな!」

 

 瓶を窓から追いつこうとする車に向けて放り込む。

 放物線を描きながら瓶は相手に車のフロントガラスにぶち当たり、中の液体を飛び散らすと相手の車は火に包まれた。

 

「あんた一体何投げてんの!?」

 

「ん?何って、火炎瓶」

 

「阿保かあああああああ!なに、平然と火炎瓶投げてんのよ!」

 

「え?車を引きはがすにはこれが一番手っ取り早いし……」

 

「ああ、もう!頭が痛くなるわ」

 

「そりゃあ、あいつ等静かな街中で銃をぶっ放す脳ミソいかれた奴等だからな。常識なんて通じねえよ。今は、常識なんざ捨てちまえ」

 

 一誠が窓から火炎瓶を投げたおかげで相手の車の運転手は驚いてハンドルをきったのか歩道の街路樹に頭から突っ込んで事故を起こしていた。

 ガラスは割れ、車の中から覆面をした人物たちが出てくるのをバックミラーで確認すると懐から携帯電話を取り出し依頼主である渚の父親 警察庁長官 西島に電話を掛ける。

 

『ああ、俺だ。街中で銃をぶっ放す頭のいかれた馬鹿共を事故を起こさせて足止めした。GPS起動させるから鹵獲してくれ』

 

 そういって一方的に通話をきるとGPSを起動させた。

 マセラティ・クアトロポルテは、交差点100m手前で急ブレーキをかけ、ドリフトをしながら交差点を左折すると50mほど走った所のコンビニで停止し、すぐさま運転手を交代させた。

運転手が一誠、後部座席に渚と一誠の部下という座席配置になると、一誠はシートベルトをし部下もシートベルトをしたのを確認すると

 

「舌を噛むなよ、運転が荒くなるがそこは割り切ってくれよ。なに、事故は起こさねえぜ。とんだカーチェイスになっちまいそうだが、なっ!」

 

 アクセルを思いっきり踏み切りっての発車.

スピードを測定するメーターは一気に60kmを表示した。

 

「チッ!やっぱり奴ら、仲間がいやがったか」

 

 バックミラーを見て毒づきながら車の運転をする一誠。

 片手で車を運転しながらもう片方の手は懐を探る。

 

 そして、250mlのペットボトルの大きさの瓶を取り出すと、運転席のウィンドガラスを開けた。

 

 徐々にせまりくる黒い不審な車。

 その車のウィンドガラスが不意に開かれ銃口をのぞかせる。

 

 それをサイドミラーで確認するとその車にめがけてゴミを投げつけるかのように瓶を投げつけた。

 

 瓶は不審車にぶつかると爆発を起こし炎を上げる。

 

「ちょっと!今度は何投げつけたのよっ!!」

 

「あ?何って学校で理科研究部の奴らと一緒に作ったニトログリセリン。作ったのは良いけど処理に困ってたんだよ」

 

「ちょっと!なに平然と爆薬を相手に投げつけてるのよ!!」

 

「阿保かっ!相手はこちらを殺しに来てるんだぞ!殺さなきゃ殺される。それに大丈夫だ。見た目ほど大した威力じゃねえよ……多分」

 

 最後のほうは自信が無くなって小さな声で呟く一誠。

 車はさらに速度を上げ時速100kmに成ろうとしていた。

 

「ハア、もうどうでも良いや」

 

 溜息を吐く渚に一誠はカラカラと笑いながら答える。

 

「カカカ、人間諦めが肝心だぜ、お嬢様!底なし沼に片足を突っ込んじまったんならズルズルと沼の底に沈むだけよ。諦めな。まあ、諦めちゃダメな時もあるけどなっ!!」

 

 急ハンドルと急ブレーキにより、ドリフトをしながら進路を高速道路のインターチェンジに切り替えた。

 

「ちょっと!何処に行こうっていうのよ!」

 

「あ?なに、脳みそ逝かれた奴等と決着つけるだけよ!西島に連絡しといてくれ!GPSを追って警察車両を寄越せってな」

 

 そう言ってはるか後ろからマセラティ・クアトロポルテを追ってついて来る不審車をサイドミラーで確認すると高速道路の料金所で料金を払い、高速道路を爆走する。

 時速210kmの速度で直進距離を駆け抜ける。

 

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