上里友海は勇者である 作:水甲
東郷SIDE
私と友奈ちゃんは乃木園子から聞かされたことを風先輩に伝えた。
「何よそれ……私達の体は……それに友海や牡丹、赤嶺が別世界から来ていて……事情を知っていたっていうの?何よそれ……ただの」
「作り話じゃありません。ありえないことかもしれませんが、本当のことです」
風先輩は戸惑っていた。誰だってこんなことを聞かされれば戸惑うに決まっている。
「あの夏凛ちゃんや樹ちゃんには……」
「……あの二人にはまだ話さないでおくわ。星海は……」
「私の方で聞いてみました。彼女もまた散華については知らされていなかったみたいです」
「そう……あの子のことだから知っていたら止めようとするわね。友奈、悪いんだけど友海、牡丹、赤嶺と改めて話をしてもらっていいかしら?」
「私がですか?」
「あんたなら……きっと大丈夫だから」
先輩はそう言って、その場から去っていった。残った私達は……
「東郷さん……」
「友奈ちゃん、私はまだ調べることがあるから……三人とお話して……」
「う、うん」
友海SIDE
夜、ママが私達の家に訪ねてきた。一体何の用かと思っていると、ママは私達のこと、満開のこと、散華のことを園子おばちゃんから教えてもらったことを話すのであった。
「………」
「……」
「………信じられないけど、彼女が言ったことは本当のことよ。結城友奈」
「それじゃやっぱり赤嶺ちゃんは過去から来て……友海ちゃんたちは未来……それも別世界から……」
「マ……友奈ちゃん、ごめんなさい。騙すつもりは……」
「私達をこの世界に連れてきた邪神に言われたんです。未来のこととか私達のことを話すなって……でも……知っていて黙っていたんですから……これはただの言いわけですよね」
牡丹は俯きながらそう言うと、赤嶺ちゃんはママにあることを聞いてきた。
「例えば貴方が全てを聞かされていたとしたら……バーテックスと戦うことをやめていたかしら」
「それは………私は全部知っていてもきっと勇者をやっていた。勇者になれたからこそみんなと出会えた」
「それが例え体の機能を失うことでも?」
「それでも、みんなのためだって思えたら戦っていられる。それが勇者だから」
ママは決意を秘めた表情でそう告げた。やっぱりママはどんな世界でも優しくって、強い人だよ
「全く貴方は……彼女とよく似ているわね」
「彼女?もしかして友海ちゃんと?確か友海ちゃんと?」
「友海のことじゃなわよ。私が言っているのは……いやこれはいつか話すわ。とりあえず私達のことを、私達の口からみんなに話しましょう」
「うん、そうだね」
「どんなに罵られても……受け止めます」
「赤嶺ちゃん、友海ちゃん、牡丹ちゃん……大丈夫だよ。みんな、責めたりしないから」
きっと大丈夫。それにこれで運命が悲しい方へと行くことは………
「因みに、友海は貴方の。牡丹は東郷の娘よ」
「そうだったの!?」
「赤嶺ちゃん、それ言っちゃう?」
「全部話すんだからこのことも知っておいてもらわないとね」
「さぁて、それはどうかしらね。ここまでは予想通りだけど、これは私にとってはまだ始まりに過ぎない。楽しみね。例外共の足掻きがね」
笑みを浮かべながらそうつぶやくと、何かが叩く音が響いた。やれやれ、またか
「邪魔はさせないわ。とはいえ、彼女たちのおかげであんたには破られるようにしてあるわ」
指を鳴らした瞬間、何かを叩く音が消えるのであった。
「別世界の天の神、女神。あんたらじゃもう無理よ。そういう風にしてあるからね」
私達は改めて部室でみんなに事情を話すことになったのだけど、牡丹ママだけが来ていなかった。
牡丹は後々自分から事情を話すといい、私達はすべてを話した。
「……悲しい運命を変えるために……」
「うん、でもごめんなさい。私達が頑張っていれば……風さんたちが散華にならなかったのに……」
「……………」
風おばちゃんはずっと黙り込んでいた。やっぱり怒ってるよね」
『で、でも友海ちゃんたちが言うように私達の散華は治るんだよね』
「それは本当です。ただどれくらい時間がかかるか……」
「で、でも、希望が見えてきたから大丈夫だよね」
「あんたら……」
風おばちゃんが私達の方へとゆっくり近づき、両腕を上げた。私と牡丹は叩かれると思った。
だけど風おばちゃんは私達のことをギュッと抱きしめた。
「悪かったわね。その邪神とかそういうのに言わないように言われていたから、私達の本当のことを言えなかったんだよね。つらい思いをさせてゴメンね」
「風……さん」
「そ、そんな……謝るのは……」
「これからは何かあったらすぐに言いなさい。あんたらは勇者部なんだから。五箇条を守ってもらうわよ」
「「はい」」
「やれやれ、これで一段落……って言うわけにはいかなそうね」
赤嶺ちゃんがそう告げた瞬間、端末からアラームが鳴り響いた。これって……
「これって……」
「一体何が……」
もしかしてパパが前に言っていた牡丹ママの暴走なの?
とある世界
「………ねぇ、ヒメノ様」
『はい、蕾』
猫みたいなぬいぐるみ、サンチョを依り代にしている守り神ヒメノ。私達は戦いを終えてから一ヶ月がたった。
平穏な日々が続く中、私はある疑問を問いかけた。
「あんまり覚えてないんだけど、私って別世界に言ったことがあるんだよね」
『はい、そこで境界の勇者と女神の勇者と呼ばれる人たちと戦ってました。もちろん私とも』
「そうだったんだ……でも、私がこれから質問すること答えてもらっていいかな?」
『えぇ、いいですよ』
「この子………誰?」
家でのんびりと夕食を作っているとリビングの天井を突き破り、一人の女の子が落ちてきた。
『彼女は天の神ですよ』
「天の神って女の子だったの?」
『えっと、はっきり言うと別世界のですね』
「ふぅ、やれやれ、中々手強いな。おっと、済まなかったね。天井を破って」
少女は指を鳴らした瞬間、壊れた天井が元に戻った。
「これでいいかな?」
「は、はい」
『天の神……貴方はどうしてこの世界に?あまり別世界に干渉するのは……』
「わかってるさ。ただ少し妙な奴が動いていてね……」
『妙なやつ?』
「あぁ、今の貴方みたいに妙なやつがね」
『この姿は妙ではありません!!』
「誰が見ても妙よ」
『いい度胸ですね。守り神の力を……』
「ヒメノ様、落ち着いて、それでえっと、天の神様。その妙なやつって?」
「あぁ、女神が勝手に呼んでいる奴らみたいなものじゃなく、本物の邪神の気配をね。いや、そもそもの発端が、ある二人が姿を消したことから始まったんだ」
『ある二人……彼らですか?』
「いいや、彼らの子供。あなた達も会ったことがあるでしょ」
『彼女たちね。それと邪神の気配が……いや、絡んでいるっていうの?』
「えぇ、そして奴が潜む場所に行ったけど、結界に弾かれてね」
『……それは厄介ね』
「まぁここに飛ばされてきたのは運が良かったかも。もしかしたら手伝ってもらうわよ。守り神の勇者」
「あ、あの私は守り神の勇者じゃなくって、守護の勇者です」
『神を守りし勇者に蕾はなったのよ。天の神』
「それは頼もしいわね。それじゃ一旦女神の勇者のところに行くわ」