上里友海は勇者である 作:水甲
牡丹SIDE
友奈おばさまは倒れたお母様を抱き上げた。
「………戦いは終らない…私達の生き地獄は終らないの…たとえ、他の人が勇者になったとしても……私達の地獄は終わらない」
「地獄じゃないよ。だって東郷さんと一緒だもん!」
「お母様、大丈夫です。地獄を終わらせてくれる人がいますから……」
「牡丹ちゃんの言うとおりだよ。それにどんなにか辛くても東郷さんは私が守る」
「……大切な気持ちや思いを忘れてしまうんだよ!大丈夫な訳ないよ!皆の事だって忘れてしまう…それを仕方がないなんて割り切れない!!一番大切なものを無くしてしまうくらいなら…」
「忘れないよ」
「どうしてそう言えるの?」
「私がそう思っているから!メッチャクチャ強く思っているから」
そう思いが強ければ、何にも負けたりしない。私は先生やおじさまたちからそう教わってきた。
「私達も…きっと…そう思ってた……今は…ただ…悲しかったという事しか覚えてない…自分の涙の意味がわからないの……」
お母様は泣きながらそういう中、友奈おばさまは強く抱きしめた。
「嫌だよ!!怖いよ!!きっと友奈ちゃんも私の事忘れてしまう!!だから!!」
「忘れない」
「嘘…」
「嘘じゃない!」
「うそ…」
「嘘じゃない!!」
「ほんと?」
「うん。私はずっと一緒にいる。そうすれば忘れない。」
「信じてください。どんな事があっても……たとえ忘れてしまっても……私達は思い出しますから……」
「牡丹ちゃん」
私も友奈おばさまと一緒にお母様を抱きしめるのであった。つらい思いをしながらもお母様は私のことを大切にしてくれた。だからこうして助けることもできたんだ。
これで一件落着かと思った瞬間、私達の目の前に巨大な炎の塊が現れた。あれは……
「バーテックス……」
「牡丹ちゃん、まだ動ける?」
「はい、アレを止めないと……」
私達三人は急いで炎の塊を追っていくが、友奈おばさまは力尽きてしまった。助けに行きたいけど今行ったら……
「きっと戻ってきます。信じましょう!!お母様」
「うん」
私達は太陽の前に出て、進行を食い止めるが私達の力じゃ……
そんな時3つの花びらが現れた。
「ごめん!大事な時に!!」
「風先輩…私…」
「お帰り…東郷。行くよ!!押し返す!!」
「感動している場合じゃないわよ!!気合い入れなさい!」
「分かってるわよ!赤嶺!」
風おばさま、樹おばさま、赤嶺さんが駆けつけてくれた。だけどまだ止めきれていない……どうすれば……
「そこかーー!」
「夏凜!!」
遅れてやってきた夏凛おばさまも助けに来てくれた。だけど見る限り身体機能が失っていて、もう戦うのは……
「全く無茶する子ね……勇者部全員!!ファイトォォォォォォォ―――――!!」
風おばさまの掛け声とともに太陽の動きが止まった。
「うおおおおおおおお!!」
下の方から友奈おばさまの声が聞こえてきた。もしかして突っ込む気なの?でも……
「絶好のタイミングで登場!!爆裂!!勇者パァァァァァンチ!!満開!!バージョン!!」
友海の声が聞こえた瞬間、まばゆい閃光が樹海を包み込むのであった。
友海SIDE
気がつくとママと二人で灰色の世界に来ていた。
「ここは……」
「友海ちゃん、気がついたの?」
「ママ……」
「私達、どこに飛ばされたんだろうね……」
「これって……」
もしかして前にパパに聞かされた世界。あの世界のママはこの世界で一人ぼっちだったらしい。
私達の世界ではママはあの世界に飛ばされて、パパと再会したらしいけど……
「私達、元の場所に戻れないのかな?」
「そんな事ないよ……きっと戻れるはずだから……ママのことを大好きな人たちが待ってる限り……」
そうだよね。きっと来てくれるはずだよね。
私は静かに祈った瞬間、どこからともなく声が聞こえてきた。この声は……
「東郷さん?」
「牡丹……」
そして私達の前に青いカラスが現れ、声が聞こえてくるところまで案内してくれた。
「あのカラス……まさかね?」
雰囲気が若葉おばちゃんににている気がしたけど、気のせいかな?
「ん?おはよう……牡丹」
目を覚まし、最初に目に入った牡丹にそういった瞬間、牡丹は私に抱きついてきた。
「良かった……友海が目を覚ましてくれて……」
「全く、心配かけて……あなた達二人の満開はあの子達より軽いものだと思ったのに……」
そうなの?赤嶺ちゃんいわく、後遺症はちょっとつらい筋肉痛になるだけらしいけど、私だけは眠ったままになってしまったらしい。これってやっぱり……
「さぁて、私はみんなに行ってくるわ。あの子も目が覚めただろうしね」
「友海、大丈夫?何か変なところない?」
「大丈夫だよ。ただ……」
あの世界に行ったことは言わない方がいいよね。今は心配かけたくないし……
「ただいま。牡丹」
「おかえり、友海」
こうして私達の戦いは終わりを告げるのであった。ただあと数カ月後に待っているあの出来事を忘れたままだったけど……
『彼女は例外になったわね。そして大赦の人間も大半が私に従うようになった……あとは始めるだけね』
邪神は邪悪な笑みを浮かべていた。すると上の方から激しい音が鳴り響いた。
『また来たみたいね。だけど……』
邪神は上へと向かうと一枚の障壁の向こうに、見覚えのある人物たちが立っていた。
『お前が邪神か……この結界をどうにかしてもらえないかな?』
『ふふ、無理ね。ありとあらゆる世界の天の神よりも力が上がっている貴方でも、そこにいる魔王の力を使う彼女でもね』
「この人が……邪神……」
『えぇそうよ。そしてあなた達はもう間に合わない。なぜなら……私の計画は最終段階に入るわ』
『それはどうでしょうね?』
銀髪の少女……女神エリスが邪神をにらみながらそう告げると、邪神は呆れた顔をしていた。
『無理よ。あなたが信じる女神の勇者も、天の神が信じる境界の勇者も、この結界を破ることはできない。あなた達、天の神、女神二人には破られないように作っているからね』
『ほう……』
『指を加えて見ていなさい。この世界を私のものにしたら、あなた達を滅ぼしてあげるわ』
『宣戦布告とやらか。ならば言わせてもらう。お前が言う例外の力を舐めるなよ!!!』
『楽しみにしているわ。あんたらの足掻きというものをね』
次回から勇者の章に突入します。