上里友海は勇者である 作:水甲
友海SIDE
ママたちが牡丹ママのことを忘れてしまっている。私と牡丹はこの原因については聞かされていたけど、赤嶺ちゃん曰く何かしらの変化があるかもしれないということで、みんなに話さず、私達三人で牡丹ママのことを探していた。
「やっぱりいないね」
「うん、でもこれでわかった。やっぱりお母様は……」
「壁の外にいるって言うことね。話に聞いていたけど責任を感じすぎよ。東郷ちゃんは……」
思い当たる場所を探し続けたけど、やっぱりどこにも牡丹ママはいない。だとしたらやっぱり……
「壁の外に……」
「私達だけでやるしかないのだろうけど……ここは……」
「そうね。あの子達もそろそろ今の日常が歪だって言うことに気がついているはず」
だとしたら私達が伝えるよりも、ママたちが自分たちで気が付き、答えにたどり着くしか無い。
「それだったら入り口で待っていよう」
私がそう提案し、二人は頷いてくれた。
壁の上にたどり着き、私達はママたちが来るのを待っていた。ここにいればきっとママたちが来てくれるはず。
そう思っていると壁の外から一匹の犬が現れた。
「ユミ、まだいたんだね」
犬はみるみるうちに姿を変え、蒼くんに変わった。あの戦い以来だけど元気そうでよかった。
「あら、友海にぞっこんなワンコじゃない」
「犬呼ばわりするな。お前たちは何をしているんだ?」
「蒼くん、私達は待ってるんだよ。ママたちが来るのを……」
「ということは異変に気がついているのか」
「異変ですか?」
異変って、やっぱり壁の外の炎が強まっていることだよね。それを弱めるために牡丹ママは生贄に……
「壁の外の炎が突然強まったことに気がついてるんだろ?天の神に聞いたら、どうにも何かしらが力を加えたみたいなんだ」
「「んん?」」
「聞いた話と違うわね」
「聞いた話?」
私と牡丹は蒼くんに壁の外の炎が強まった理由を話した。牡丹ママがあの戦いで壁に穴を空けたことが原因で強まったということを……でも蒼くんは不思議そうな顔をしていた。
「いや、そういうわけじゃない。確かに穴を空けたのはまずいことだろうけど……天の神はそんなこと言っていない」
だとしたら原因は蒼くんが言っていた何かしらの力が関わっているということになる。だとしてもその何かしらって?
「今回の炎の件もそうだし、壁の外にできた黒い穴……こっちだとブラックホールって言うんだっけ?あれも突然あらわれるし……訳がわからないことだらけだね」
一体何が起きているんだろうか?聞いていた話と大きく違っている。
気がつくとこっちに近づいてくる5つの影を見つけた。影がこっちにたどり着くとママたちだった。
「友海ちゃん、牡丹ちゃん、赤嶺ちゃん」
「あんたら異変に気がついてたのね」
「はい、ごめんなさい。早めに伝えておくべきだったんですが……」
「何かしらの変化が起きてると思ってね。伝えないでおいたのよ」
「未来の情報だからって言うことね。まぁ仕方ないわ」
「あの、そちらの方は?」
樹おばちゃんは蒼くんのことが気になっていた。正直に話すべきかどうか悩んでいると、蒼くんは……
「僕はバーテックスだよ。今は君たちの協力者って言うこと」
『バーテックス!!?』
園子おばちゃん以外が驚いていた。驚かなかった園子おばちゃんはというと
「う~んと、協力って言うと、今回はバーテックスが関わってないの~」
「一応ね。でもかなり厄介なことになっている。みんな、壁の外に」
私達は蒼くんに言われるまま、壁の外に出るのであった。
壁の外は聞いていたとおり炎に包まれた世界だった。私達はあたりを見渡すと黒い穴が大きくあいていた。あれがブラックホール……
「東郷さんの反応……あそこから……」
「久しぶりにあった友人がブラックホールになってたなんて初めてだわ……」
「お姉ちゃん……」
「あんたがいるから敵が攻めてこないからまだ安心できるわね」
夏凛おばちゃんがそう告げた。何だかそれフラグっぽいけど大丈夫かな?
私の心配どおりこっちに何十体ものバーテックスが攻めてきた。私達が戦おうとすると蒼くんが前に出た。
「待て!!彼女たちは敵じゃない!!」
蒼くんは戦いを回避するために襲ってくるバーテックスを説得してくれた。確かに聞いてもらえば戦いを回避することが……
だけど牡丹と樹おばちゃんはあることに気がついた。
「バーテックスの色……」
「前のと違う?蒼さん?」
確かに前は白だったのが真っ黒だった。蒼くんもそれに気が付き、直ぐ様人の姿から三首のワンコに姿を変えた。
『こいつら!?何かしらの力に支配されてる!?』
真っ黒なバーテックスは私達に襲いかかってきた。本当に何が起きてるの?
とある世界にて
天の神が部室にやってきて、調査していたことを話した。というかいつの間に灯華に協力させていたんだよ
「つまり邪神っていうのが関わっていて、おまけに天の神の力も女神の力も通じない結界が張られていると……」
「そう。魔王の力なら何とか出来るかと思ったけど……」
「ごめんなさい。私でも無理でした」
神や魔王の力が通じないか……かなり厄介なことになっているな
「とはいえ、打ち破る術はある。私は協力を仰ぎに行ってくる。帰ってきた時、覚悟しておくのだな」
「あぁ、分かってる。だけど邪神がいう例外って?」
「それはだな。お前みたいなことを言うのだよ」
天の神はそう言い残して姿を消すのであった。僕みたいなことってどういうことだ?灯華の方を見ると灯華もわからないみたいで、首を横に振っていた。
すると美森と友奈の二人が部室に入ってきた。僕は二人に事情を話すと……
「例外……もしかして運命を変える人のことじゃないかな?」
「運命を?」
「あぁ、前に海くんが言ってたよね。私達の世界と海くんの世界じゃ全然違う感じになってるって、天の世界の住人達と和解してなかったりとか……」
「友奈ちゃんの言うとおり、桔梗くんが和解の道を作ってくれたから運命は変わったの。逆に海くんの世界はまだ四国しかないけど、バーテックスの脅威はなくなってきているらしいって……たった一人の動きで歴史……運命が変わる。多分それが例外なんじゃないかな?」
「なるほどな……」
僕もその例外だとしたら海もまた例外か……その邪神とやらは一体例外を使って何をするつもりだ?