上里友海は勇者である 作:水甲
炎の海が広がる世界、そこに犬の姿をした白い生物が太陽の前にいた。
「天の神様。お聞きしたいのですが、人というのは一体どういった存在なのですか?」
問いかけるが太陽は何も答えなかった。僕は知りたい。人というものは一体何なんなのか……
「僕は人を知るために彼らの世界に行きます」
僕は数十体の星屑を引き連れ、神樹のもとへと向かうのであった。
友海SIDE
私達がママたちと合流してから一週間が過ぎた。その間特に敵が襲ってくることはなく、私達は勇者部の活動に精を出していた。
「友海ちゃん、こっちだよ~」
「はい、マ………友奈ちゃん」
私はママたちと一緒に海岸のゴミ拾いをする中、風おばさんの話が聞こえてきた。
「何というか新入部員が一気に4人も増えるなんて……思っても見なかったわね」
「私はあくまで監視よ監視」
「とか言って、この間の誕生日会すごく楽しんでたじゃない」
「あ、あれは……まぁ子どもたちの前だったし……あんなふうに誕生日を祝われることなかったし……」
ちょっと前に夏凛おばさんの誕生日会を幼稚園でやろうと話になったのだけど、私はパパに聞かされた話を思い出し、集合場所を間違えた夏凛おばさんを迎えに行った。
世界の流れとか違う気がするけど、それでもみんな仲良くできてる。
とはいえ……私は未だにあの人にはなれなかった。
牡丹SIDE
「赤嶺さん、サボらないでください」
「別にサボっていたわけじゃないよ。ちょっと連絡待ちかな」
「連絡待ちって……」
「あの、赤嶺さんと友奈さん似ているのに……」
「全然違うって?確かにね」
「友奈ちゃんと赤嶺ちゃんは似ているけど、考え方とかいろいろと違うから仕方ないわ」
樹おばさま、星海さん、お母様がそんな事言っていた。あまり皆さんに別世界から来たということはバレたくないから仕方ないことだけど……
星海さんはどこまで事情を聞いてるのか気になる
「それで赤嶺ちゃん、誰からの連絡待ちしてるのかしら?」
「う~ん、知り合いかな。でも忙しいから中々連絡が来ないみたいなの」
「忙しい?大赦の関係者なの?」
「それは秘密」
赤嶺さんは笑顔でそう言うけど、私はあることが気になっていた。赤嶺さんが持っている端末、あれって海おじさまが持っていたものと似ている気が……
「あの、赤嶺さん、お聞きしたいことが?」
「何?」
「その端末……」
私が聞こうとした瞬間、突然アラームが鳴り響いた。これは敵の襲来!?
「みんな、一旦作業中断よ」
風おばさまの指示を聞き、私達は樹海へと向かうのであった。
友海SIDE
樹海へと訪れる私達から離れた場所に沢山の白いバーテックス、通称星屑が暴れていた。
「あれが前に聞いたバーテックスね。弱そうだけど数が多いわね」
「でもでも、大きいやつはいないみたいだよ」
「それだったら、さっさと片付けてゴミ拾いに戻るわよ」
夏凛おばさん、ママ、風おばさんが星屑に向かっていき、私と赤嶺も一緒に前に行こうとした瞬間、物凄い速さで何かが私達の間を通り抜けていった。
「今のは!?」
「大型……十二体のバーテックスじゃないみたいね。一瞬確認できた限りだと……中型かしら?」
私達二人の間を走り回るバーテックス。何とか倒そうとするけど動きが早くて捉えきれない
「パパだったらワイヤーで縛り上げたりするのに……」
「いつまでも親を見習うのはやめときなさい。こういうときは……」
赤嶺が目を閉じ、バーテックスが赤嶺の横を通り過ぎようとした瞬間、赤嶺はバーテックスを思いっきり殴った。
「気配を読む。これぐらいできないとだめよ」
「……すごい」
「というかあっちでは師匠みたいに大火力でぶっ放すことしか考えてないのかな?」
「違うもん。今度は私が……」
私は赤嶺が殴ったバーテックスを見た。そのバーテックスは全身真っ白で姿が犬みたいだった。
犬バーテックスは私に襲いかかってきたけど、さっきとは違って動きが遅くなった。それだったら……
「勇者ハイキック!!」
回し蹴りが直撃させることができた。バーテックスは苦しそうにしながらも起き上がり、直ぐ様どこかへ去っていった。
「待って!?」
「追いかけないの。罠かもしれないわよ」
追いかけようとしたけど、赤嶺がそれを止めた。確かに罠かもしれないけど……
「……わかった。ありがとうね」
「本当に無茶ばかりするね。あの人と同じ……」
「あの人って……」
私があることを聞こうとした瞬間、樹海化が解け始めた。もしかしてさっきのバーテックスは撤退したのかな?
樹海へと戻ると学校の屋上に来ていた。
「あんまり手応えなかったわね」
「夏凛ちゃん、油断は禁物よ。もし大型のバーテックスと同時に出現したら大変だったかもしれないわ」
「そうね。それは面倒ね」
「そこら辺の対策をしておかないとね」
みんながそんな話をする中、私は赤嶺のことを見つめるのであった。一緒に戦うのだからこれからは……
「ふぅ、何とか潜入できたな。けどいてて……」
僕はお腹を抑えた。流石に強いな。勇者というのは……
「気付かれないようにしないといけないから、早いところ要件を済ませないと……」
僕は歩き出そうとした瞬間、お腹の痛みにうずくまった。これは回復を待ったほうがいいかもしれないな。
「やっぱり無茶な潜入だったかな……」
「あの……大丈夫ですか?」
突然誰かに声をかけられ、顔をあげるとそこにはさっき蹴りを喰らわした勇者が目の前にいた。
「き、君は……」
「お腹痛いんですか?すぐに見せてください」
「い、いや、大丈夫だ」
「でも……そうだ。秘密にしてくれるのでしたら……」
勇者は僕のお腹にそっと触れた瞬間、急に痛みが消えた。今のは……
「一応覚えておいてよかった。治療スキル……」
おかしい勇者にこんな能力があるなんて聞いてないぞ
「それじゃ私、行きますね」
「ま、待って……君は……」
「上里友海です。それじゃまた」
友海はそう言って去っていった。それに何だこの心が苦しくなるのは……
とある世界
「……何だ?」
「どうかしたの?海くん」
「いや、なんか急に怒りが芽生えたと言うか……」
「もしかしてなにかしちゃった?私?」
「そんなことはないって、ほら、足元気をつけろ」
「あ、ありがとう……それにしてもふたりともどこに行ったんだろうね?」
「どっかのクエストに出かけてるんじゃないのか?」
「そうだと言いけど……もしかして桔梗くんたちの世界に行ってたりして」
「あっちの世界か……こっちの桔梗とあっちの桔梗は少し違うからな。もう一度会いたいな」
「今度、天ちゃんに頼んで行ってみようよ」
「……エリスさんに怒られそうだけど……」