「では授業を始める…と言いたいがその前にクラス対抗戦に出る代表者を決めなくてはな」
クラス対抗戦?なにそれ?と周りを見渡してみたがみんなも知らないみたいだ
「代表者とは文字通り、このクラスの代表者だ。分かりやすく委員長とでも言うべきか。クラス対抗戦ではそのクラスの代表者達が実際にISを使い、その実力を測るものだな。現時点ではそこまで差はなかろうが…我こそはという者はいるか?自薦でも他薦でも構わんぞ」
他薦…その言葉を受けてほぼみんなが手を上げていた
「織斑くんを推薦します!」
「私も織斑くん!」
「私もー!」
さすがはイケメン。みんなに推薦されてる
しかし当の本人は「俺!?」とものすごく困惑している。
これは一夏に決まりかなと思いきや
「私はともぴー!」
「私も巴くんかなー」
「私も!試験で勝ったって言うし!」
のほほんさんが俺の名前を出したのを皮切りに俺も推薦されてしまった…
記憶ないからどう戦ったかすらわからないんですけど…
「でも巴くん試験のこと覚えてないんでしょ?」
「多分初めて乗ったからインパクトありすぎて忘れてるだけでしょ!」
「そうかなー?」
と女子のなかで俺の記憶がないのはこういう理由だと色々と議論が上がるが
「待て、覚えていないとはどういうことだ?」
と織斑先生が話を遮り睨みながら俺に問いかけてきた…
山田先生も心配している
それにしてもすごいプレッシャー…蛇に睨まれた蛙みたいになりそう
「えっと…試験の時、ISを触った後から試合が終わるまでの記憶がないんです」
「自分がどうISを使い、どう戦ったか覚えてないんだな?」
「はい。申し訳ないですがそこのところは全く覚えていないです」
「そうか…巴、放課後に職員室に来い」
「わかりました」
織斑先生は険しい顔をしたままだった。
やっぱり記憶がないのは普通じゃないみたいかな…
とりあえず放課後に色々話してみよう
「ではとりあえず巴は保留にする。他にはいないのか?」
「納得いきませんわ!」バァン!
オルコットさんが今度は自分の机を叩きながら立ち上がった
代表候補生なのに誰にも推薦されなかったらそりゃ納得いかないよね…
でもこの状況で同情するのは火に油を注ぐことになりそう…
「そのような選出は認められません!クラス代表が男だなんていい恥さらしですわ!このセシリア・オルコットに1年間その屈辱を味わえというのですか!?」
やばいこれ結構頭に血がのぼってないか?
しかしどうすればいいか考えがまとまらずオルコットさん怒涛の反論は続く
「実力で言えばわたくしこそクラス代表にふさわしいですわ!それを物珍しいからという理由で極東の猿にされては困ります!」
物珍しいって理由だけで代表候補生の自分は無視されたのだからそりゃ色々言いたくなるだろう…
しかしオルコットさんは俺と一夏だけにいってるつもりだろうけど、今このクラスの大半はその猿がいる極東出身の人たちばかりだ
俺よりもみんなの方がイラついてるように見える…
しかしオルコットさんの罵倒は続く
「大体、文化としても後進的な国で暮らさなくてはいけないこと自体、わたくしにとっては耐えがたい苦痛で「イギリスだって対してお国自慢ないだろ。世界一まずい料理で何年覇者だよ?」…なっ!?」
とうとうしびれを切らした人が出てきた…一夏だ
「あ、あ、あなたねぇ!わたくしの祖国を侮辱しますの!?」
「先にバカにしたのはそっちだろ!?」
「な、なんですってぇ!?」
と二人がどんどんヒートアップしていく
ヒートアップした二人の勢いで周りのみんなもイラついてたのはどこかにいっておろおろし始めた!
あぁもう!これじゃ収拾がつかない!
「 ス ト ー ー ー ッ プ ! ! 」
と俺は大声を上げながら立ち上がった
何事かとみんながこちらを向く
仕掛けるなら今だ!
「オルコットさん!まずあなたは怒った理由は自分が代表候補生なのに推薦されなくて代表候補生になるために必死に努力したのにそれが認められないと思い、自分のプライドが踏みにじられたと感じたから!違う?」
「え、えぇそうですわね…」
「代表候補生じゃないからどれだけ悔しいかはわからないけど…さすがに言いすぎ!男の俺と一夏だけに向けて言うならまだわかる!」
そこで「おい!?」と一夏が言ったが気にしないでこのまま続ける
「でも日本をバカにするのは違うと思うよ。それとも日本はバカだっていうのはイギリスの総意なの?」
「い、いえそのようなことは…」
「なら発言に気を付けること!わかった!?」
「す、すみません…」
まずオルコットさんはこれでいいか
よし次!
「よく言ったぜ楠木!」
「えぇいうるさい一夏!次は君だ!!」
「なんでだよ!?」
「なんでもクソもあるか!確かにオルコットさんは言いすぎだしイラついたのもわかるけど、だからって言い返していいってことにはならないでしょ!」
「あんな言い方されたら誰だってイラつくだろ!楠木だってイラついただろ!?」
「そりゃイラついたさ!でも俺はそこでオルコットさんが何故そこまで怒ったのかを考えたんだ。さっき言った通り自分の努力が無視されたんだよ。一夏だって何か必死に頑張って努力したのにそれが完全に無視されたら嫌でしょ?」
「そうだな…」
「ね?まぁオルコットさんも度が過ぎてたけど」
「すみません…」
オルコットさんがしゅんとなってしまったが自業自得だね
「てかお前はどっちの味方だよ!?」
「敵も味方もあるもんか!喧 嘩 両 成 敗 だ!!」
「お、おう…」
これでなんとか喧嘩は収められたかな…だいぶ強引だったけど
あとはどうやって代表者を決めるか…
大層なこと言ったけどなにも思い浮かばない!
「織斑先生、それでなんですけど多数決だとオルコットさんが納得いかないので何かいい方法はありませんか?」
これぞ必殺!先生に頼る!
案が思い浮かばないなら先生の知恵を借りよう!
「そうだな、なら3人で総当たりの模擬戦を行い、その結果で代表を決めるか」
「待ってくれちふっ…織斑先生!俺はやらな「他薦されたやつに拒否権なんかない。いいな?」…はい」
「オルコットもそれでいいな?」
「はい!ありがとうございます!」
模擬戦か…確かにそれならオルコットさんも納得するな
待って?“3人”?俺は保留なのでは?
「なんだ巴。確かにさっきは保留と言ったが二人にあぁまで言ったんだ。参加させないわけがないだろう?なに本当に不味いならその前に止めるさ」
言いすぎたかぁ…でもISに乗れる機会だしいっか
今度は記憶があればいいな
「わかりました。織斑先生」
「では模擬戦は1週間後に行う。では授業を始める」
その後は特に問題もなく授業が終わり放課後となった。
一夏は箒さんに「久々に会ったんだ。剣を見てやろう」と半ば強引に一夏を連れ出した。
周りから嫉妬の目を向けられていたが幼馴染みの特権というやつだね
一夏から聞いたが箒さんは剣道の全国大会で優勝をしてるほどの達人らしい。それに一夏も剣道をやってたみたいだ。
…なるほど。それは二人きりになれる口実になるな
俺も放課後なので職員室に来ている。
職員室って行くと関係なしに緊張するよね…
そして織斑先生に会い、内容が内容だから場所を変えると言われ生徒指導室に連れていかれました。
やっぱ記憶がないのは相当やばいのかな…
「巴。お前に来てもらったのはお前の入試の時の試合を見せるためだ。これを見て思ったことを素直に言ってほしい」
とディスプレイをこちらに向けた。
自分がどんな試合をしたのかずっと気になっていたから願ったり叶ったりだ
最初は手足を動かし動作確認していた。
なにせISを動かすのは初めて、それくらいはやるだろう
そして手足の動作確認が終わるとアリーナの周りを飛んだ。
問題はここからだった。
俺は飛んだことなんてない…そのはずだ。飛行機にすら乗ったことないんだから
だが急加速、急減速や急転回、急上昇、急下降などとても初めてでいきなりやることとは思えないことをやっていた。試験官も舌を巻いていることから精度もそれなりだと思う。
そして試合…信じられない光景だった
試合が始まったと同時に俺は右手にハンドガン、左手に近接武器のブレードを持ち試験官に突っ込む
試験官もそんな単直な攻撃に当たるかと横に避けるが、俺は相手が動く先がわかっていたかのように右手のハンドガンで試験官を撃ち抜く。
その後も試験官は変則的に色々と動くが全て読んでいたのか俺の持つハンドガンに当てられていた。
試験官もこのままやられるものかと
織斑先生が初心者相手にこれは大人気が無さすぎると言っていた。
これには俺も少し驚いたように見えたがはすぐにブレードを両手持ちにし、こちらもブーストを吹かし突っ込んできた試験官にカウンターとして胴に一撃を与えた。
その一撃で試験官のISのシールドエネルギーが尽き試合が終わった。
一方的すぎる…
果たしてこれが初めてISに乗った人間の動きなのか?
今俺がISに乗ったとしてもこんな動きが到底できる気がしない。
まずこれは本当に俺なのか?まだ他の人の試合だと言われた方が信じられる…
しかし顔を見た感じは俺だ…一体なんなんだ?
「どうだ?何か思い出せたか?」
「いえ全然思い出せません。というかこれは本当に俺なんですかね…?」
「私にはお前に見えるが?」
「ですよね…あまりにも自分だと思えないんです。今ISに乗ったとしてもこんな動きができるとは思えません…」
「そうか」
「あと色々と納得しました。こんな動きをしたら教師の方々は期待しますよね…」
「記憶がないとは思わなかったからな」
「普通記憶が無くなる…なんてことはないんですよね?」
「あぁ、興奮して忘れるというのはあるがそれでも何もかも覚えてないというのは聞いたことがない」
興奮して覚えてないか…
「すみません織斑先生見たいところがあるんですがよろしいですか?」
「いいぞ。どこだ?」
「試合の前に飛んでいる時なんですが俺の顔がはっきりわかるところってありますか?」
「顔?いいが少し待ってろ……これでいいか?」
織斑先生は俺の顔がアップしたところで映像を止めてくれた
「ありがとうございます。…それで何ですけど織斑先生にはこの顔はどんな風に見えますか?少なくとも俺には興奮しているようには見えないです」
「そうだな。私には色々試してみて『この程度か』と言っているように見えるな」
「やはりそんな感じに見えますよね。こんな興奮もしていなさそうなのに記憶って無くなるものなんですか?」
「普通はないな」
「男性でISを使えるからですかね?」
「それもわからん。なにせお前を含め二人しかいないからな」
そうだ、そもそも前例が無いんだ。
今この世界でISを起動できるのは俺と一夏だけ…他にもいるかもしれないが世界が認知してるのは俺達二人だけだ。
だとしたら何かあるかもしれない。だけど…
「織斑先生…俺はロボット物が好きです。だから自然とISに憧れました。でもISは女性にしか動かせない…最初はそれを聞いてひどく落胆しました。だけど俺にもISが動かせるのを聞いてほんとに嬉しかったんです。憧れのISに自分が纏って空を飛べるんだって…」
今でもそう思う。あんなカッコいいスーツを纏って空を飛べたならどれほど気持ちいいんだろうか?どれほど興奮するんだろうか?
なのにこんな顔だ。俺は本当に感動も興奮も何も感じなかったのか…
「俺の記憶があってこんな顔をしてるのを覚えているならまだ納得します。でも、今空に飛べるなら飛びたいと本気で思ってます。だから今この何も感じていなさそうな自分が怖いんです…」
自分のことが怖い…
こんなことは生まれて初めて思った
卓越した戦闘技能
感動も何も感じていない顔
そんな自分とは思えない自分
…怖いけど、いや怖いからかそんな自分の正体がなんなのか知りたい
だから…
「織斑先生、俺のことを調べてくれませんか…?」
記憶がないだけでも自分が何したかわかんなくて怖いのにその時の自分が自分以上の動きや働きをしてたら恐怖を感じません…?