System Mind──── 機械の少女は涙を流す   作:feel0330

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二話 「感情」

二話「感情」

 

冬樹は静かに自身の部屋で目を覚ました。

朝の日差しが睡眠の終わりを告げた。

まだわずかに残る眠気を我慢し、いつものように洗面台に行こうと、ベッドから降りる。

 

久しぶりに夢なんて見たな…。

僕の自殺に機械少女のお手伝い…。

妙にリアルな夢だったな。

けど、なんだかとても久しぶりに朝が気持ちいいって思うな。

 

冬樹はそんなことを思いながら、寝室から出ると、いい匂いが漂ってきた。

 

何の匂いだろ?

 

その匂いにつられてキッチンの方へ行くと、夢に出てきた少女がキッチンに立っていた。

 

「…シアル?」

 

冬樹が少女に声をかけると、少女は振り向き

 

「やっとお目覚めですか。もう九時ですよ」

 

冬樹はその少女の顔を見て、息をのんだ。

 

「あれは夢だったんじゃ…?」

「何をぶつぶつ独り言を言ってるのですか?」

「君は本当にシアルなのか?」

「当り前じゃないですか」

 

呆れたようにシアルは言った。

 

「とりあえず、その寝ぼけた顔を洗って、歯を磨いてきてください」

 

冬樹は混乱したまま、洗面台に足を運んだ。

 

朝の用事をすべて済ませて、リビングに戻ると食卓の上にはご飯と鮭にお味噌汁が並んでいた。

 

「…これは?」

「朝食ですよ」

「いや、それはわかってるんだけどさ…。ちょっと多すぎない?」

 

これだけの量なら昼食でも全然足りると思うな…。

 

「朝食はその日、一日を決めると言ってもいいくらいに重要なんですよ?これくらい当たり前です」

「そう、なんだ…」

 

朝はいつも食パンを半分食べる程度なんだけど…。

抵抗しても無駄だろうしおとなしく食べるか。

 

「そう言えば、昨日あったことは夢じゃなかったんだね」

「夢にして逃げるつもりですか?」

「違うよ。ただの確認さ」

「それならいいですけど…」

 

シアルは僕のことを信頼してないのかな?

まぁ、昨日会ったばかりだしなぁ…。

 

「確か昨日はお手伝いのことを聞いて寝たんだよね?」

「そうですね」

「今日はそろそろ教えてくれないかな?」

「では、朝食が終わったら外へ出ましょう」

「外?今じゃダメなの?」

「ここでもできますが、実際に見た方が早いかと」

「じゃあ、早く済ませよう」

「早食いは健康に悪いですよ?」

 

僕は少し食べるスピードを上げた。

◇◇◇

朝食を終えた冬樹とシアルは、マンションから五分ほど歩いたところにある公園のベンチに座っていた。

 

「どうして公園に来たの?」

冬樹がシアルの方を向き、聞く

 

「私の仕事について説明するためですよ」

そう言うとシアルは、ゆっくりと立ち上がり前を通りがかった、老人と二十代に見える女性の方に歩き出した。

 

「どうかした?」

シアルは冬樹の質問には反応せず、老人たちの前まで行くと

 

「おじいちゃん、あたしのパパ、しらない?」

 

シアルは見た目通り、十歳くらいの声と口調で老人に話しかけた。

 

「おやおや、お嬢ちゃん、迷子かい?」

 

老人はシアルを人間の女の子と思ってるようだ。

 

「おじい様、この子は機械少女ですよ」

 

老人の隣にいた女性はシアルが機械少女であることに気付いたみたいだ。

 

「こりゃあ、驚いた。機械少女でも迷子になるんだねぇ」

「機械少女の迷子なんて聞いたことありませんが…」

 

女性はシアルに対して不信感を持っているようだ。

 

「あなたの管理システムへのアクセスを許可していただけますか?」

「うん、いいよ」

 

シアルが相変わらずの口調で応える。

シアルが許可を出すと、女性はシアルの頭に手を置いた。

すると、女性の手が淡い緑色に光った。

 

「一体、なにをしてるんだ?」

 

冬樹はその様子をベンチから見ていた。

しばらくすると、女性はシアルから手を離した。

 

「…故障か意図的かはわかりませんが、この機械少女の主データは残っていませんね」

「どういうことかのぉ?」

 

老人がいまいち分からない、と言う風に女性に尋ねる。

 

「私達、機械少女は主のデータを人間で言う記憶として扱っているんです。ですが、この子には主データがありません」

 

どうやら、女性も機械少女らしい。

 

「え~っと……?」

「簡単に言えば、誰が家族かは分からないけど、家族がいたことは記憶している、と言ったとこですね」

 

一種の記憶喪失と言うことだ。

 

「そんなことがあるのかい?」

「わかりません…。とりあえず、マイシンに連絡して対応してもらいます」

 

そう言うと女性は、自分の右手で右耳を押さえた。

 

「マイシンに連絡が取れるまで私は動けませんので、おじい様はこの機械少女を見ていてもらえませんか?」

「あぁ、いいよ」

「おじいちゃん、あたしお腹すいたー」

 

シアルが老人の手を引いて言った。

「おや、そうかい?」

 

老人はカバンの中を探り出した。

 

「ん~、何もないねぇ…」

「そこに、コンビニがあるから行こうよー」

「でも、美咲が…」

 

老人は困ったように機械少女──美咲の方を見る。

 

「お腹すいたー!お、な、か、すいたー!」

 

シアルが老人に必死に訴える。

 

「わ、わかったわかった。じゃぁ、行こうか」

「やったー!早くいこー!」

 

シアルが老人の手を引いて、公園の出口に向かって歩き出した。

 

「シアルもさっき朝食食べてたよな?」

 

冬樹はシアルの行動に違和感を感じていた。

 

「あの美咲って機械少女は置いて行っていいのか?」

 

未だに、右手を右耳にあてたままの美咲が少し心配になったが、冬樹もシアルたちを追って公園を後にした。

◇◇◇

シアルと老人は、公園から見える程度の距離にあるコンビニの中にいた。

冬樹もコンビニに入り、シアルたちの会話が聞こえる距離にいた。

 

「何食べよっかなぁ♪」

「なんでもいいよ。好きなのを言ってごらん」

 

シアルのやつ、昨日はカップラーメンに怒ってたくせにまだ食べる気なのか?

 

「じゃあ、じゃあ、これ!」

 

シアルが手にしたのは、プリンだった。

 

「うん、いいよ。レジに持って行こうね」

 

老人はシアルからプリンを受け取り、レジに持って行った。

老人がシアルから離れたので、冬樹はシアルに近づいた。

 

「シアル、これが仕事にどう関係あるんだ?」

「見ていればわかりますよ。それと、仕事中は私が許可するまで話しかけないで下さい」

 

見ていればわかる、と言われたので冬樹はおとなしくシアルから距離を離し、シアルはお会計を終えた老人の方へ歩き出した。

 

「それじゃあ、公園に戻ろうか」

「うん!」

 

そのまま、シアルたちはコンビニから出ていった。

冬樹も追いかけようとしたが、何も買わないのは悪いと思い、缶コーヒーを買って、コンビニを出た。

◇◇◇

公園に戻ると、機械少女の、美咲の姿はどこにもなかった。

 

「あれ~?お姉ちゃん、いないねー?」

「美咲…どこに行ったんじゃ…」

 

老人は慌てたように美咲の姿を探した。

 

「おーい、おーい、出てきてくれぇー。美咲―」

 

老人がいくら、呼んでも美咲の姿は見当たらない。

 

「うぅ、美咲、お前がいなくなったら、わしは一人、どうやって生きて行けばいいんじゃ…」

 

老人は疲れ果て、ベンチにうなだれた。

その時だった。

公園の奥から美咲の姿が見えた。

 

「…美咲?美咲か!」

「やっと見つけました。勝手にどこかに行かないで下さい。心配するじゃないですか…」

 

そう言ってこちらに向かってくる美咲の服には、葉っぱや枝がついていた。

どうやら、公園中を、探し回ったようだ。

 

「すまんかったのぅ…」

 

老人も心底安心し、美咲に近づく。

美咲と老人が抱き着く。

 

 

すると、老人の手や足から力を抜け落ちた。

 

「ふふふ、これでもう安心です」

 

美咲の顔から恍惚とした笑みがあふれる。

 

「本当に、本当に心配したんですよ」

 

美咲が老人の頭を強く抱きしめる。

 

「さて、おじい様を誘拐したあなたにはスクラップになってもらいましょうか?」

「お姉ちゃん…?」

 

美咲がシアルに向けて、歩き出す。

シアルの体が震えだした。

 

「あなたのその口調、イラっとくるのでやめてもらえませんか?」

 

美咲がまた一歩、シアルに近づく。

 

「…来ないで」

「そうはいきません。私にとってはおじい様は存在意義でした。それを一時的にとは言え、奪ったあなたを、許しおくことなどできません!」

 

美咲がシアルに向けて走り出す。

 

「シアル!!」

 

遠目から見ていた冬樹が、たまらず声を上げる。

だが、その時には美咲の腕がシアルの首を捕えていた。

 

「おやぁ?あなたは誰ですか?」

 

美咲の目が冬樹に向く。

 

「もしかして、この子の主ですか?」

 

冬樹はその圧に耐えることが限界で、声を出せない。

 

「まぁ、いいでしょう。この子をスクラップにすれいい話です!」

 

そう言って美咲がシアルの首を掴んでいる手に力を込めた。

冬樹は思わず、目を逸らした。

 

バタッ

 

何かが倒れる音がし、冬樹は恐る恐る目を開ける。

するとそこには立っているシアルが見えた。

 

「シアル…」

 

シアルの首は繋がっていてた。

 

「無事だったんだね」

 

冬樹が安心して、シアルに近づこうとすると、シアルの足元に美咲が見えた。

 

「どう、して…」

 

倒れている美咲が顔を上げ、ノイズが混じった声で言った。

 

「本気で相手を殺したいなら、まずは自由を奪わないといけませんよ」

 

シアルが美咲を見下ろし、感情のない声で言う。

その言葉を聞き、美咲の顔は下を向いた。

 

「シアル…?」

「仕事中は許可するまで、声をかけないでくださいって言いましたよね?」

 

シアルが冬樹の方を向いた。

 

「それは…」

 

冬樹が言葉に困っていると

 

「うっう…」

 

美咲に抱きしめられ、倒れていた老人が起き上がった。

 

「何が…」

 

老人が事態を把握できず、周囲を見渡すと視線が倒れている美咲を捉えた。

 

「美咲!?」

 

老人が慌てて、美咲に駆け寄る。

 

「どうしたんじゃ!いったい何が…」

 

老人は美咲を抱え上げ、美咲の顔を見る。

 

「美咲ぃ、わしを置いていかんでくれ…。わしは、わしはぁ…」

 

老人の目から涙が落ち、美咲の頬を伝う。

 

「冬樹さん、行きますよ」

 

シアルが老人に背を向け歩き出す。

 

「え、でも…」

「ここに居てあなたにできることがありますか?」

「……」

 

冬樹はシアルの後を追った。

 

「…美咲さんはどうなったの?」

「人間の心臓と同じようなパーツにウイルスを送り、エラーを起こしました。もう動くことはないでしょう」

「そんな…」

 

冬樹の心の中は、あらゆる感情が渦巻いていた。

 

「どうして、あんなことになったの?」

冬樹がシアルに聞くと、シアルは立ち止まり内ポケットから瓶を取り出した。

その中には細くて中央が赤くなっている五センチほどの何かが入っていた。

 

「それは?」

「リミットコードです。これは機械少女に様々な制限をかけるコードです。しかし、このコードは何らかの原因で機能しなくなっています。その証拠に中央が赤くなっています」

「それが機能しないとどうなるの?」

「先ほどの美咲さんのように、暴走したり、主に害を与えたりもできます。もちろん、人を殺すことも」

「それを集めるのがシアルの仕事なの?」

「半分正解ですね」

「もう半分は?」

「機械少女が人類の敵になることを防ぐことですね」

 

シアルはリミットコードを内ポケットに入れ、再び歩き出した。

 

「このエラーの原因さえわかれば、事件は起きず姉妹は研究者どもの手に渡ることはなくなるはずです」

 

シアルは姉妹を助けたいために、頑張っている。

そのことはわかっていても、冬樹は

 

「あのやり方は、ダメ、なんじゃないかな…」

 

シアルが冬樹の方に振り向く。

 

「どうしてですか?あの機械少女はいずれ誰かを襲いましたよ?」

「それでも、それでもさ、あの二人が可哀想すぎるよ…。あんなのはこれ以降やめてくれ」

「では、あなたならどうしましたか?」

「わからない」

 

冬樹はシアルの目を見てはっきりと口にする。

「話になり──」

「それでも、もっとみんなが納得できるやり方をするよ」

 

シアルは目を見開いた。

「やり方はあるんですか?」

「わからない」

 

その言葉を聞き、シアルから笑みがこぼれる。

 

「何も分からないのにできるんですか?」

「うん、絶対にできる」

「分かりました。では次からはあなたに任せます」

 

そう言って、シアルと冬樹はマンションに向かって歩き出した。

 




読んでいただきありがとうございます!
今回の話が書き終わったのが投稿の30分前...
今週は色々あって、すっかり先延ばしになってしまいました...
ですが、しっかり間に合ってよかったと安堵しています!
今回のようなことがあり、定期投稿の難しさを痛感しました。
ですので、読者の皆様には申し訳ないのですが、定期投稿は中止させていただきます。
しかし、週に一話上げるというペースはできるだけ維持していきたいと思いますので、どうか読んでいただければと思います!!
急いで書いたので誤字があるかも知れませんので、ありましたら報告お願いします!
私敵にはこの作品のイメージを決める話でもありましたので手は抜いていないつもりです!!
感想、評価のほどよろしくお願いいたします!!
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