今回まではこんなお話で我慢してくださいm(_ _)m
投稿に関しては、区切りのいいところまで書き溜めて一気に更新する形式です。
1話ずつ出来上がって投稿という方が良い読者の方々には申し訳ありませんが、私の我儘に付き合ってくれれば幸いです。
「よ、おはよ諸葉」
「いらっしゃい響香……あがっていいよ」
時は少し戻り、雄英からの合格通知を受けて数日後。現在諸葉の家の前には私服姿の響香が。
「あれ、今日は親父さん達いないんだ?」
「今日は二人とも仕事に行ってる。お茶用意するから、先に部屋に行ってて」
「わかった」
諸葉に促され、二階にある彼の自室へと先に向かう響香。その間に諸葉はお茶とお菓子の準備をし、それらを部屋へと運ぶ。
中に入ると、部屋の座椅子に背中を預けた響香が諸葉へと顔を向ける。
「お茶、持ってきたよ」
「ん、ありがと」
二人分のお茶とお茶菓子を机に置き、諸葉も響香の対面に座る。
さて、ここからが本題だが、なぜ本日 響香が癒代家を訪ねてきたのか。諸葉と幼なじみの関係である彼女なら、単に遊びに来たという理由でも納得はいく。しかし今日は遊びに来たわけではないのだ。
「それじゃ考えよっか……『
「……うん」
響香が諸葉の家を訪れた理由。それは雄英へ送る『戦闘服』をどのようなものにするかを考えるためだ。
雄英は入学前に自身の個性に合った、または補助・強化するための『戦闘服』の要望を提出させる。そこに書かれている要望を可能な限り再現し、彼らの個性に幅を効かせるのだ。
ヒーローとは『ただ個性を扱える』だけでなれるものではない。個性を手足のように扱い、尚且つ応用を効かせることが重要となってくる。
しかし個人の努力だけでは限界があるのもまた確か。そこで『戦闘服』に頼ろうというわけだ。科学の力はすごい!
というわけで、『戦闘服』について考え始める二人。
「響香はイメージできてるの?」
「まぁ少しはね。服装に関してはさ、前々から考えてはいたんだ」
そう言うと響香は鞄から取り出したノートを見せる。そこには簡易的に描かれた服の絵があり、それが彼女のコスチュームであるというこがわかる。
服装は裾の丈がお腹までの黒の上着に赤いシャツ、白い指ぬきグローブ、そして黒いズボンに黒の靴といったもの。
「こんな感じだけど……どうかな」
「うん、いいと思う。ただ……」
やはり他人に見せるのは恥ずかしいのか、耳たぶのコードを弄りながら問いかける響香。
そんな響香の『戦闘服』をぱっと見た際の諸葉の反応はというと
「これ、ロックをイメージしてる?」
「……まぁ、ちょっとだけ」
響香は大の音楽好きだ。聴くだけではなく、大抵の楽器を弾くこともできる。中でもロックがお気に入りで、サバサバとした彼女の性格はロックが好きなのが関係しているのかもしれない。
おそらく『戦闘服』にもロックな要素を組み込んだのだろう。見た感じ、バンドのメンバーの中に紛れていてもなんら不思議ではない格好だ。
「やっぱおかしいかな……」
「ううん、響香らしくていいと思う。俺はこれ、好きだよ」
「……そっか」
響香はぶっきらぼうに呟きつつそっぽを向く。しかしその頬は朱に染まっており、傍目から見ても照れているのがバレバレである。
『好き』と真正面から言われたら照れるのもわかるが……サバサバした性格をしているとはいえ中身は乙女な響香なのであった。
そんな響香の様子に気づいていないのか、はたまた気づいていて敢えて無視しているのか、諸葉は響香の『戦闘服』についてある疑問を投げかける。
「響香、この『戦闘服』何か補助つけないの?」
「あ、ああっ……ごほん。それについては一応考えてはあるんだけど……こういう感じのヤツ」
「……スピーカー?」
「そ……ウチの個性は挿さないと効果ないからさ。ならスピーカーを使って振動を飛ばせないかなって」
そう言い、響香がページをめくるとそこにはブーツと一体化したスピーカーの絵が描かれていた。
響香の個性は『イヤホンジャック』。耳たぶのコードは最大6mまで伸ばすことができ、先端のプラグを繋ぐことで対象に自身の心音を衝撃波として叩きつけることができる。
また壁などにプラグを挿すことで微量の音を聞きとることができ、壁の向こうの話やある程度距離の離れた人数も把握することが可能。さらにコードも速さ・精密度は非常に高く、近・中距離に対応した非常に汎用性の高い個性だ!
ただそれらは全てプラグを挿すことで発揮することができる。逆を言えばプラグを挿せない限り相手に決定打を与えることができないわけだ。
それを補うため、響香はブーツに特製スピーカーを設置。それを使うことで衝撃波を飛ばすことを可能にしようというわけだ。
「これなら相手に近づかなくても対処できるし、ウチ的には結構いいかなって思うんだ」
「確かに、これだったら戦闘の幅も広がるし、いいと思う」
「よし、じゃあウチの『戦闘服』はこれで完成かな。次はあんたのヤツだけど、何か考えてるの?」
響香は自身の『戦闘服』については一通り完了。次は諸葉のものを考える番で、諸葉は響香と同じく勉強机からノートを取り出すと、机の上に広げておく。
そこに描かれていたのはチャイナドレスのような『戦闘服』だった。色は黒を基調とした上着の部分の裾は脛あたりまであり、腰部から裾の終わりにかけてはスリットのような加工が施されている。そしてスリットの部分から覗くのは白い袴で、しかしゆったりとしたものではなくややしぼってある。
見た目はかなりシンプルな中国格闘家のような服装だ。
「動きやすさと目立つの考えたら、これくらいしか思いつかない」
「まぁいいんじゃない? あんた薙刀使うんだし、結構マッチしてると思うよ」
響香の言う通り、諸葉は基本的には薙刀、または棒術を用いて戦闘を行う。彼の考案した『戦闘服』は自身の戦闘スタイルと非常にマッチしていると言えるだろう。
「でも、あんたの個性って補助のしようがないから辛いよね」
「……まぁ戦闘向きじゃないし。サポート型だから」
諸葉の個性『
「ただ、鎮痛剤とかつけてくれたら嬉しい」
「だね。てか、鎮痛剤飲んだらもっとたくさん個性使えるんじゃない?」
「わからない。でも、多分無理だと思う。体の限界だから、痛みを感じる感じないじゃないと思う」
『代傷』とは『痛み』や『ダメージ』の蓄積だと諸葉自身考えている。いくら鎮痛剤で痛みを抑えたとしても、体に蓄積されたものが消えることはないだろう。
しかし痛みを抑えることができれば、無理をした治癒をしたとしても戦闘を行うことができるようになるはずと予想し、諸葉は『戦闘服』に鎮痛剤を仕込むよう要望を出す。
「それじゃ、この話に関してはこれくらいでいいかな」
「うん……響香、お昼食べていく?」
「え、もうそんな時間……ほんとだ。じゃあご馳走になろうかな」
諸葉の言葉で目覚まし時計に目を向ける響香。どうやらそれほど長く話し合っていたらしい、時計の長針と短針はぴったり重なり合っていた。
昼を自覚した途端、突然お腹が減ってくる。響香は諸葉の言葉に甘え、お昼をご馳走になるべく一階のリビングへと向かった。
「それにしても、オールマイトが雄英に来るなんて驚いたよね」
それは昼食後、リビングで寛ぐ響香が何気なく放った一言。
「確かに驚いたけど、オールマイトは雄英出身。教師としてくるのも納得はいく」
「そうだけどさ、でもあのオールマイトだよ? No.1ヒーローに教えてもらえるってだけでかなり贅沢だと思うけど」
オールマイト。No.1ヒーローとして名高い彼に教えてもらえるのは、ヒーローを目指すものたちにとってはこれ以上ないほどの贅沢だ。
事実、今はいつもの平坦な声で答えている諸葉だが、あの合格通知の時には呆然としていたのだから。
「というか今更だけどさ、二人揃って合格できてよかったよね」
「うん……響香は兎も角、俺も受かったことに先生驚いてたし」
「ははっ、そういえばあんたのとこの担任泣いてたもんね!」
思い出したかのように笑う響香。諸葉も口元を綻ばせ、当時のことを思い出していた。
あの時の諸葉の担任の泣き様と言ったらそれはそれは物凄いものだった。普段は寡黙で厳しい印象を与える先生だったのだが、まさか一人の生徒の合格でここまで涙を流すのかと、そのギャップに目を疑うほどに。
「まさかあんなに泣くとは思ってなかったなー。普通に『おめでとう』って言うのかと思ってたのに」
「先生、根は優しい人だから。厳しさも、あの人なりの優しさ」
優しさとは、ただ優しくするだけではない。時に厳しく叱ることもまた、優しさの形の一つなのだ。
「それに、おかげで頑張らないとって思えた」
「だね。先生たちの期待には応えないとね」
自分たちの中学校始まって以来の雄英合格者。当然、教師たちの期待も高まる。そんな彼らの期待に背く結果を出さない様、これからも日々精進しなければ。
「……響香」
「ん? なに?」
不意に名前を呼ばれ顔を向けると、諸葉は真剣な表情をしており。
「頑張ろう、これから」
「……うん、がんばろ」
自分たちの目指す『ヒーロー』になるため。
少年少女は残りわずかなこの平穏に身を委ね、これから始まる過酷な日々への決意を固めるのだった。
主人公の戦闘服は「銀魂」の「神威」の服装に近いものだと思っていただければイメージしやすいです。
次回からようやく雄英編に入ります!